特集

スタークス株式会社代表取締役・上ノ山慎哉氏インタビューvol.2


社員は必ず10連休! 離職率が低いベンチャーが取り組む2つの人事制度

2018.04.11

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テクノロジーを駆使し、社会課題を解決すべく、現在は、Eコマース市場や物流業界の課題を解決するサービスを開発・提供しているスタークス株式会社。同社では、社員のモチベーション・パフォーマンスを向上させる2つの斬新な人事制度を取り入れています。

今回は、2つの人事制度「10連休制度」「ピアボーナス制度」について、概要と導入した理由をお聞きしました。

目次
  1. 全社員が必ず取得! 年1回の「10連休制度」
  2. 大きな目標を持つために、社員の視野を広げる機会を作る
  3. ITベンチャー企業の「山ごもり休暇」に触発される
  4. 社員同士が賞与を送り合う! 「ピアボーナス制度」
  5. 「Unipos」の導入で、将来のマネージャー候補が見つかる
  6. 「一度も褒められたことがなかった」総務の先輩の言葉
  7. 貢献度が高いのに、賞賛されない人を評価する仕組み
  8. 創業から6年間で、辞職した社員はごくわずか

全社員が必ず取得! 年1回の「10連休制度」

──「10連休制度」について、概要を教えてください。

上ノ山氏: 
これはその名の通り、年に1回、10連休の休暇がとれる制度ですね。土日と合わせて10日間ですので、最大平日を6日間休める制度になっています。取得時期は自由ですが、休む時期は3ヵ月前に申請してもらいます。チームが全員いなくなってしまったら業務が止まってしまうので、事前に誰が休むかはチームに伝えるという趣旨ですね。また、「10連休してもいい」ではなく、全社員が年1回必ず取得する「義務」となっているのが特徴です。

──この制度を導入しようと思った理由を教えていただけますか?

理由は大きく分けて2つありますが、一番は自社のバリューを追求するためです。

スタークスのバリュー

我々は会社のバリューとして「10倍の未来」というものを掲げていて、「10連休」という数字も、ここから来ています。ちなみに、このバリューは「大きく、魅力的な未来を描き、実現する」という意味です。「10倍の未来」を実現するために、10連休を活用して社員に視野を広げてもらいたいと考えました。

大きな目標を持つために、社員の視野を広げる機会を作る

「甲子園で優勝しようと思って練習している人」と「甲子園に出ようと思って練習している人」では、おそらくやっていることが全然違うと思うし、「特に甲子園に出たくなかった人が、たまたま甲子園で優勝した」ということはないと思うんです。

「どこに目標をセットしたかで人生が決まる」部分があると思っていて、セットする目標の大きさが重要だと思うんですね。だから、自分の持っている力や想像で「これだったらできそう」ではなくて、「これができたら最高に面白い」ということを考えてもらいたい。そういった大きな目標を持つためには、さまざまな情報や経験だったり、自由に考える力が必要です。そうした力はオフィスにいるだけではなかなか身に付けることができないので、海外に行ってみたり、たくさんの人に会ったり、そういう時間を作るべきだということで、この長期休暇制度を作りました。

10日現場を離れる機会を設けることで、仕事の属人化を防ぐ

もう一つの理由は、仕事の属人化を防ぐためですね。

事業が現在急拡大する中で、「あの人しか分からない」ということがあるのは、事業拡大の障害になります。「10連休」となると、10日間現場に自分がいないことになるので、いつまでに休むかを決めた後、社員は「マニュアルを作らなくてはいけない」であるとか「引継ぎの準備をしなければいけない」ということを考えるようになり「脱・属人化」につながります。

ITベンチャー企業の「山ごもり休暇」に触発される

──なるほど。この10連休制度は、上ノ山さん発案の制度ですか?

上ノ山氏:
そうですね。原案は、株式会社ロックオンというITベンチャーの岩田社長からお聞きした「山ごもり休暇制度」にあって、これは社員に9日間休んでもらって、その休暇の間は携帯電話もPCも持たない状態になってもらうという制度です。我々の10連休制度では、必ず山に行ってもらう必要はないんですけれども、海外はじめさまざまな場所を訪れて、視野を広げてきてもらいたいと思っています。

──制度に対する社員の意見や感想などがあれば教えてください。

上ノ山氏:
反応としては、素直に喜んでいましたね。強制的に「休め」と社長が言うので、それが免罪符になるんですね。「今年の夏はどこへ行こうか」という話をしていました。

──大胆な取り組みだと思うのですが、実施する上で課題はありましたか?

上ノ山氏:
生産性の意識が次の課題ですね。自分も若い時は長時間労働で仕事量をカバーしてしまうことがあったのですが、長時間労働を続けると心も体も疲弊してきます。生産性の意識を持って、効率よく仕事を終わらせることで、10連休を取るという形にできればと思います。この取り組みは今後も必ず続けていきたいと思っています。

社員同士が賞与を送り合う! 「ピアボーナス制度」

──次に、「ピアボーナス制度」の概要を教えてください。

上ノ山氏:
これはITベンチャーの「Fringe81」さんが提供している「Unipos」というサービスで実現しています。「Unipos」は社内SNSと連携できるサービスで、社員が他の社員に対して、感謝のコメントとともにポイントを送ることができるんですね。このポイントが、社員に対して毎月ボーナスという形で支給されるという仕組みです。

Fringe81のUnipos

現在の上限原資は毎月10万円ほどで、ピアボーナスが支給された月の給与明細には、ポイントをくれた社員からの感謝のコメントがついています。

──「ピアボーナス制度」を導入したことで、社員にどういった変化が起きましたか?

上ノ山氏:
特に人事や総務などのバックヤードを担当している社員や、エンジニアのモチベーションが上がりましたね。ポンと2万円渡されるより、感謝のコメント付きで、数字では測れない面を評価されて2万円のボーナスがもらえる方が意義を感じやすい。新人の子もすごい喜んでいました。

「Unipos」の導入で、将来のマネージャー候補が見つかる

上ノ山氏:
他の変化としては、マネージャー候補が見つかりましたね。

マネージャーという仕事は、仕事の管理能力はもちろん必要ですが、人の強みを引き出すこと、伸ばすことが求められます。人間は、悪い部分を見つけることは誰でも得意なところがありますが、良いところを見つけて伸ばしてあげる、褒めてあげるというのは、ある意味スキルなんですよね。

Uniposでの投稿を見ていると、「この人は見る目がある」であるとか「周囲への気配りの意識がある」ということが分かります。自分の関連している部署の人たちを褒めるだけではなくて、関連していない部署の功績をあえて見つけに行っている社員の存在が分かるので、この投稿は、次のマネージャー候補を発見するために役立っています。

「一度も褒められたことがなかった」総務の先輩の言葉

──「ピアボーナス制度」を導入した理由を教えてください。

上ノ山氏:
この制度の導入には、僕の原体験が関係しています。前職で社会人1年目の時に、お世話になっていた総務の先輩がいて、とても感じの良い優しい人だったのですが、ある日突然退職されました。先輩が辞めると分かってから理由を尋ねた際に、その先輩は、

毎回コピー機が壊れるたびに私のところに来て『〇〇さん、コピー機が壊れているんですけど』と言われた。私は修理屋さんでも便利屋さんでもないけど、仕事だからやっていた。でも、一度も褒められたことがなかった

と言って、辞めていったんです。

貢献度が高いのに、賞賛されない人を評価する仕組み

スタークス株式会社代表取締役の上ノ山慎哉氏上ノ山氏:
「総務だからコピー機を直す」だとか「仕事だから当たり前にやらなきゃいけない」という話も、今思うとおかしかったと思います。その先輩が残した言葉はずっと心の中に残っていて。ただ、自分で会社を始めてみて、同じことが起きはじめていると気づいたんですね。

我々の会社も、2年ほど前までは社員のほとんどが営業職だったのですが、今は、半数程度がエンジニアになっています。営業という仕事は評価が分かりやすくて、受注を獲得したら社内が盛り上がるし、評価もされます。ただ、エンジニアの場合は、プロダクトを作って、バグを起こさず日々安定した運用をしていても、それが「当たり前だ」と捉えられてしまいがちなんですね。エンジニアも大変な仕事をこなしているのですが、それが評価されない。それでいて、バグが起きると非難される。

貢献度は高いのに、称賛されることが少ない人たちのモチベーションは、必ず下がってくるんです。そこで、目立ちにくい仕事をしている人たちモチベートするためには、評価しにくいところを賞賛する仕組みが必要だということで、いろいろな制度を調べて研究する中で「Unipos」を見つけました。それで、公開直後のベータ版の頃から使わせていただいていますね。

──上ノ山さんの原体験が、「Unipos」の導入につながっているんですね。

はい。社員には「僕には感謝の言葉みたいなものは(Uniposで)書かなくていい」と言っているんですけど、たまに書いてくれる社員がいると単純に嬉しいです。自分がたまにコメントをもらうと、そういうところを見てくれているんだなと気づいたり。社長になると、褒められることってあまりないんですけど、やはり、褒められるのは嬉しいことだなと思います。

創業から6年間で、辞職した社員はごくわずか

──2つの人事制度を導入してから、離職率などには影響はありましたか?

上ノ山氏:
今、当社は6期目で、正社員でいうと23人、アルバイトも入れると35、36人を雇用しているのですが、その中で辞めたのはトータルで4人ですね。

──6年間続いている会社で、辞めた方が4人というのは、かなり少ないですね。

上ノ山氏:
そうですね。社員が表彰し合えたり、自分の視野を拡げ続けるような仕組みを組織に取り入れ続けることで、自己成長を感じながら納得感を持って、働ける人を増やしていければと思います。

【2018年2月、スタークス株式会社本社オフィスにて取材:聞き手、撮影 @人事編集部】

企業プロフィール

社名 スタークス株式会社(英文名 STARX Inc.)
設立 2012年7月
主要事業 クラウド・プラットフォームサービス事業
URL https://starx.co.jp/

【編集部より】
物流業界の人手不足解決に挑む、スタークス株式会社の事業に関する記事はこちら。

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