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スタークス株式会社代表取締役・上ノ山慎哉氏インタビューvol.1


テクノロジーで物流危機を救う! スタークス株式会社・上ノ山慎哉氏

2018.04.09

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国土交通省によれば、2017年度の宅配便取扱個数は前年度比7.3%の40億個1861個となり、ついに40億個を超えました。そんな中、物流業界ではドライバーをはじめとした人手不足が深刻化し、日本中で消費地や取引先にモノが運べない「物流危機」が起こる可能性が指摘されています。

今回は、テクノロジーで物流危機の解決に挑むベンチャー企業、スタークス株式会社を取材し、代表の上ノ山氏から、同社のサービスと、実施している斬新な人事施策について聞きました。

上ノ山慎哉氏

starx022704スタークス株式会社 代表取締役

大学卒業後、ダイレクトマーケティング支援事業のファインドスターに入社。新規事業立ち上げ、営業マネージャー、グループ会社役員を経験。東日本大震災を機に起業を決意し、退職。
同社からの出資を得て、2012年7月にスタークス株式会社を創業。代表取締役に就任。インターネットを活用したサービスの開発、販売を行う。サービス利用企業数は、1,500社を超え業界シェアNo.1に。孫正義氏の後継プログラム「ソフトバンクアカデミア」最終合格。

倉庫会社と配送会社をネットでつなぎ、物流を最適化する

──スタークス株式会社の主な事業について教えてください。

上ノ山氏:
主力のサービスは「クラウドロジ」というものです。

これはクラウド型の物流プラットフォームで、「全国にある倉庫会社と配送会社をネットでつないで、最適なEC物流を作る」というサービスです。

サービスとしてはネットプリントの「ラクスル」さんとコンセプトが近く、ラクスルさんの場合は、全国にある印刷会社の非稼働リソースを使って、印刷をしています。我々のサービスは、その倉庫・物流版と思っていただければ理解しやすいかと思います。

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売れた後の作業が実は非常にアナログだった物流業界

上ノ山氏:
スタークスは2015年より、クラウドロジの前身サービス「リピロジ」を提供してきました。これは、EC事業者の商品の管理・伝票発行・梱包作業など、発送業務を一括で代行するというサービスです。

ミクロなところでビジネスモデルの話をすると、これまで、少なくない数のEC事業者は、ネットで商品が売れた際に、商品が売れたという報告や、倉庫現場での梱包・発送業務の指示出しを「FAX」や「Excelを添付したメール」で行っていたんですね。いかに購入意向を高めるか、コンバージョンを高めるかなどの、売る前の部分はどんどんテクノロジーが発達しているのに、売った後がとてもアナログな世界だったんです。また、作業が非常に忙しいため、梱包現場でもよくミスが起きていました。

そこで、この「発注」の部分をまずIT化しようと考え、発注作業を簡素化して、今まで何時間も掛かっていた発注作業を数分で終えられるITシステムを作りました。具体的には、クラウド化によって出荷作業・緊急時の対応・在庫管理を全てオンライン上で完結するシステムです。発送作業をする側も、システムから送られてきたデータに基づいて作業すれば、ミスなく発送を行えるという仕組みです。

「物流危機」の深刻化で、ビジネスモデルを転換することに

上ノ山氏:
そんな中、昨年、2017年からいわゆる「物流危機」が深刻になってきたわけです。EC市場の急拡大に伴い荷物量が爆発的に増え、そのしわ寄せが特に配送会社へ来てしまい「これ以上、荷物を受け入れられない」といった事態も一部で起こってしまいました。

この問題が起こった際に「何が問題の本質か」を立ち止まって考えたのですが、これは配送会社が悪いのではなくて、この物流産業、市場自体に問題があると気づいたんですね。

EC市場の急拡大に、物流業界が追いつけなくなっているという現状を変えるには、EC事業者、倉庫会社、配送会社といった、物流に関わる企業が協力しあい、負担を軽減する仕組みをつくらなければいけないと考えました。

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「物流危機」で見えてきた、EC市場の2つの問題

上ノ山氏:
1つ目の問題は、消費者の物流に対しての捉え方です。消費者にとっては「今日注文したら明日届く」状況が当たり前になり、配送会社への要求が高くなってしまっています。それでいて、現在、日本の個人向け配送の再配達率は、かなり高いんです。これが本当に大きな問題で、ただでさえ人手不足なのに、1つの荷物に対し、何度も配達に行かないと届けられない状態になっている。仕事量が倍々になっているんです。

2つ目は、EC事業者の配送コストに対する考え方です。事業をやる以上、自分たちの収益を最大化しようとするのは仕方がないのですが、そのために、EC事業者は物流コスト、配送費を下げてもらえないか、配送会社に相談をするケースが多いのが現状です。

消費者側は、「自分の要望に合わせてもらえる」というのが当たり前になっていき、EC事業者側からはコスト削減の第一候補として「物流費を下げてもらえないか?」と相談される。その結果、板挟みになった配送会社はどんどん苦しくなって、利益が出づらく、ドライバーや働き手が集まりにくい段階にまで来てしまった。配送会社・物流会社の経営陣としても、この状況を見れば、配達量を減らす、条件を変えるということはやむを得ない選択だったと思います。

スタークスが課題解決のために行った3つの工夫

上ノ山氏:
こういった状況の中で、どうすれば業界・社会の課題を解決できるかを考えて、ビジネスモデルを変え、2018年3月に新たに提供開始したサービスが「クラウドロジ」です。

1.在庫を全国に分散し、配送距離を最短にする

今までは1つの倉庫に荷物があって、注文があったら全国に届けるというのが普通でした。このやり方では、長距離移動が発生し、配送会社にも大きな負担となっています。

そこで僕らは、全国に倉庫を分散して配置することで、届け先に一番近い倉庫から最短距離で運ぶという形を取っています。

分散化についてはテクノロジーを使っていて、過去の購買データなどのビッグデータをAIで解析し、需要予測を立てて、その予測をもとに全国の倉庫に荷物を分散しています。

2.配送される商品を予測して、配送会社に伝える

もう1つの工夫としては、配達予測を配送業者に伝え、人員やリソースを調整しやすいように協力しています。我々のサービスはECの中でもサブスクリプション型といわれるような、サプリメントや、コスメ、水や野菜といった「定期購買をする商品」に特化しているんですね。こうした商品は、定期的に購入されるものなので、次の注文が予想しやすいんです。

その予想を把握することで、事前に倉庫会社に物量を伝えることができ、配送会社のリソースも最適化することができるという仕組みです。

3.荷物をポストインできる大きさにし、再配達を減らす

最後にもう1つ行っているのが、EC事業者に対する「荷物をコンパクトにしましょう」という提案です。

荷物をコンパクトにすると、ポストインが可能になるので、再配達を減らすことが出来る。クラウドロジを導入しているEC事業者にも、「大きな箱にボールペン1本」のようなことをやめて、小さく梱包しましょうと伝えています。

  • 移動距離を最短にする
  • 配達予測を伝える
  • 再配送を減らす工夫をする

という取り組みを伝えることにより、各配送会社も「それだったら一緒にやろう」と提携を進めてくださっています。

拠点分散が、物流危機を解決するための1つの解

上ノ山氏:
この物流危機を解決するためのキーワードは「エリアデリバリー」、つまり拠点を分散させることが1つの解だと思っています。

そこで我々は、新サービス「クラウドロジ」で、ロジティクス(物流を管理する過程)そのものをクラウド化したサービスを提供していく。昔はどの会社にもサーバーが1台ありましたが、今、会社にサーバーがあるところはほとんどないと思うんですね。それと同じような考え方で、一番効率よく、移動距離を短く、負担を少なくしていく、クラウドのロジティクスサービスを多くの方に提供していこうと考えています。

今までは「対消費者」や「対売り手」で利益を追求していたサービスがほとんどだったのですが、僕らはもちろんそこも考えた上で、配送会社にとっての利益も追及していく。それぞれにバランス良く利益が出される、そういうプラットフォームを作るというコンセプトで事業を行っています。

成長産業で起きている課題は、ビジネスで解決できる

──上ノ山さんが、日本の「物流危機」解決に取り組もうと考えた理由を教えてください。

上ノ山氏:
日本は「少子高齢化」が世界で最も進んでいる国と言われていて、さまざまな問題が今起きていますが、これはある意味「課題先進国」という言い方もできると考えています。

問題の中には、例えば「貧困」や「治安」など、公的な資金や機関で解決した方が良いことがある一方で、民間の事業の方が解決しやすい課題もあると思っています。具体的には、成長している産業で起きている社会課題は、ビジネスで解決しやすい。

ECの市場規模というのは右肩上がりに増えていて、現在、2018年の段階で15兆円のマーケットがあるんですね。この市場はあと2年で20兆円に到達して、いずれは50兆にまで届くという予測もあります。ECの市場規模は、既に日本の国内産業規模でトップ10入りしていて、将来的には自動車産業を超えると言われています。

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上ノ山氏:
ビジネスとして問題を解決した場合、法人税の10%の利益は結果的に公的な場に回ります。自社の事業が、直接的にも間接的にも社会課題の解決につながっていく。そのようなことを会社のミッションとしています。

日本はある意味で、最先端のビジネス環境にある

上ノ山氏:
日本は先進国の中で最速で少子高齢化が進んでいますが、どの先進国もいずれは日本のように少子高齢化が進みます。だからこそ、ここで日本の問題をビジネスで解決することが出来たら、そのビジネスは、他の先進国にもいずれ必要とされると考えています。

日本の自動車が世界中で使われたり、飲食業界では、中国に日本のラーメン屋さんが出店しているといった話がありますが、こうしたことがなぜ起きたかと言えば、やはり日本の消費感覚だったり、品質へのこだわりが世界で一番厳しかったからだと思うんですね。その世界で一番厳しい基準、つまり「課題」をクリアしたから世界に広まったという部分があると思います。課題先進国の日本はある意味、最先端のビジネス環境なんじゃないかと思っています。

課題先進国の日本で、ビジネスモデルを磨く意味

──ある意味では、「課題先進国」である日本で事業をやることに意義がある。

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上ノ山氏:

はい。この状況はチャンスだと思っています。社会課題の先進国である日本でビジネスモデルを磨けば、おのずと世界から求められるサービスになる。そうやって世界に進出していくのが、本当の意味での「グローバル化」だと考えています。

僕はホンダ自動車創業者の本田宗一郎氏を尊敬しているのですが、彼は「一度も世界展開しようと思わなかった」と言っているんです。ただ、「自分たちで作ったバイクは本当に良い物で、日本人だけでなくたくさんの人に乗ってもらうべきではと思って海外に送った」と、そう言っているんですね。

僕は、これがあるべき順番なんじゃないかと思って、「このサービスは、世の中の課題解決手段として、日本だけではなく、アジアやヨーロッパ、アメリカなどにも使ってもらうべきだ」と思われるサービスでないと、グローバルでは勝てないと思っています。

【編集部より】
ベンチャー企業として異例の低離職率を誇る、スタークス株式会社の人事制度に関する記事はこちら。

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