働く方のためのメンタルヘルスLab
怒られる若手社員と怒る上司、両方から考える「怒り」の対処法
2018.02.27
職場で怒りを感じることは、誰しもがあるかと思いますが、怒ることも、怒られることも、なるだけ避けたいですよね。怒られた方は傷ついたり落ち込んだりしてしまうし、怒った方は後悔したりどっと疲れたりしてしまいます。できるなら心穏やかに過ごし、冷静にサクサク仕事をしたいものです。
「怒り」という感情は、どんな時に発生してしまうのでしょうか? その理由は、実はとても単純です。「自分のルールが破られた時」に怒りは生じます。つまり、怒る機会・怒られる機会を減らすには、相手の状況を理解して、「ルール」を明確にしておけばよいのです。
では、具体的にどうしたらいいのか。今回は怒られる若手社員と怒る上司、両側から解説し、解決方法を提案します。
怒られる若手社員の心理状況
怒られるって本当に嫌な経験ですよね。よく怒られることが続くと、怒る人が怖くなってしまって、自発的に行動しなくなったり、極度の緊張を感じるなど軽いパニックのような状態にもなってしまいます。
しかもそこから、いつも監視・評価されているように感じる、辛い、早く帰りたい、しまいには早く会社辞めたいという感情にまで発展してしまうことも……。もしかして、心あたりはありませんか?
もし怒られなくて済むのであればあなたの状況はガラッと変わるはず。毎日がもっと楽になるかもしれません。
怒られてしまうのは、「相手側のルールを知らない」から
「もちろんそんなことはわかっているし、自分だって怒られたくないんだ」という声が聞こえてきそうですが、それはそうですよね。では、なぜ上司から怒られるようなことをしてしまうのか? あなたに能力が足りないから? 社会人としてなっていないから? いいえ、そんなことはありません。あなたは上司のルールを知らないのです。
学生から社会人になったり、部署が移動になったりしたときはとても大きな変化。新しく入ったあなたが知らないことだらけなのは当たり前です。
でも、ずっと会社にいた人たちは今の環境に慣れすぎていて、あなたにとってなにが「新しい」ことなのか「なにを知っていてなにを知らないのか」想像もつきません。あなたに対しても「わかっている」だろうと仮定して行動してきます。
ただあなたはそんなこと知る由もないので、結果「これくらいわかるでしょ」や「考えてやってよ」というお叱りを受けてしまいます。
自分の状況を明確にするために、伝えるべき3つのこと
怒られるというのは暗黙の了解を理解していないというのが大半の原因です。でも新しく入ったあなたに暗黙の了解は知るすべもないでしょう。ではなにができるか。答えは簡単! 自分の状況と相手の要求を明確にしておくのです。
自分の状況を明確にするためには、
- 何を知っていて何を知らないのか
- どこまで理解していてどこから理解していないのか
- 自分もうまくやりたいと思っている
ということを適宜伝えましょう。
新しい環境です。知らないことは多くて当たり前。「こんなことも知らないのか」なんて思われたらどうしよう、ということはあまり心配しなくても大丈夫です。「わからないから、理解して、ちゃんとうまくやりたいんだ」。これを明確にしておくことで「なぜできないんだ」「なぜ聞かなかったんだ」のお叱りが減ります。また自分の今の状況を明確にしておくと、相手もあなたのことをよくわかるので、意思疎通がしやすくなります。
「いつまでに何を求めているか」をしっかり聞く
相手の要求を明確にするためには「いつまでに何を求めているのか」を具体的に聞きましょう。特に「何」の部分は念入りに。上司は予想外のこだわりをもっていたりします。また、時間がなければどのタスクを優先すべきか、などの指示も仰ぎましょう。これを行うと「全然違うじゃないか」「なんだこれは」のお叱りが減ります。
怒る上司に困っている若手社員の皆さんは、是非上記を参考にしてみてください。
ただ悲しいかな、世の中には本当に理不尽に接してくる上司がいるというのも事実です。これはハラスメントだ、いじめだ、と思った時は、我慢せずに社内の関係部署や行政の機関に相談して、状況を改善しましょう。
あかるい職場応援団(厚生労働省)
https://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/inquiry-counter
怒る上司側の心理
いちいち指示したくない、自分で考えてできるだろうと部下を野放しにしておいたら予想外の行動を取ってきた!あまりにも目に余る、失礼だと思って怒ったら、今度は意気消沈してしまった……。
これはよくあるお話です。部下が翌日切り替えて出社してくれたらいいのですが、そのまま会社に来なくなってしまった、なんてことになってしまうと大問題!あなたは会社のため、部下のため、良かれと思って怒ったとしても、経営層から目をつけられてしまうなんてハメになってしまうことも…。自分のキャリアのためにもそれだけは避けたいにですよね。
「相手と自分が違う」という当たり前の事実に立ち返る
ではなぜこんなにイライラするのか―それは相手が全く自分とは違うから。生まれ育った環境が違うだけでなく、あなたと部下は生きてきた時代も違うため、あなたの常識を兼ね備えていません。結果、部下はあなたが大切にするルールをどんどん破ってしまいます。それでは怒ってしまいますよね。
では“大人”のあなたになにができるか。それは部下を知って部下の立場で考えてみるということです。
1980年以降に生まれた「ミレニアル世代」の5つの特徴
まず、新しい環境に入った部下からすると知らないことだらけです。社会のルールを含め「これくらい知っていて当然だろう」という期待をことごとく裏切っていきます。加えて、知らないのであれば当然自分で学んでいってくれるだろう、と希望を持ちたいところですが、それも叶わないことがほとんど。
ではこの部下の世代とはどのような世代なのでしょうか?1980年以降に生まれたデジタルネイティブをミレニアル世代と呼びますが、大量の情報に晒されて、SNSで世界とつながってきたミレニアムズには下記のような特徴があると言われています。
- 個人主義
- 会社への帰属意識が薄い
- 既存権力を重視しない
- 成長しないと思えばすぐに辞めてしまう
- 頻繁なフィードバックを好む
つまり、会社にこだわっていないし、これまでの世代ほど役職が上だから偉いとも思っていないし、理不尽なことが多く成長できないと思えばすぐに辞めてしまいます。
別にこれはミレニアル世代が悪いという訳ではなく、世界が広く選択肢が多いことを幼少期から知っていた、彼らのとても合理的な特徴ということができます。
頻繁にフィードバックをして、成長の実感を伝える
ではこんなミレニアルズに怒らずに上手く一緒に仕事をしていくにはどうしたらいいか―こんなに違うんです。以心伝心ができるわけもなく、背中を見て育つという概念もありません…。異星人だと思って一から丁寧に教えましょう。また「いいね」で育ってきて、フィードバックを好む彼らに、どんどんフィードバックをして、「成長している」という感覚を持たせましょう。
具体的には、
- いつ、どこで、何が求められているのか、それはどうやって達成することができるのかをわかりやすく指示する
- 質問を快く受け入れる
- フィードバックを与える
が鍵になります。
フィードバックは論理的に、人格否定だけは絶対に避ける
フィードバックについては、どうしても指摘しないといけないことが出てきます。その時は、まずできたことを称賛し、あなたが部下に求めたことがどの程度達成されたのか、何が達成されなかったのか、達成されなかった部分は今後どうしたらいいのか、を論理的に説明しましょう。「お前はできないやつだ!」と人格否定することだけは避けましょう。あくまで業務内容に沿って話をしていきましょう。
コミュニケーションの円滑さが、お互いのストレスを減らす
また、人はそれぞれ得意な情報と不得意な情報があります。音の情報の方が理解しやすい人、目の情報の方が理解しやすい人、その両方が必要な人がいます。部下に限ったことではないですが、コミュニケーションをとる際は、口で説明しながらイメージ図を見せるという方法が一番理解を得られやすいです。口だけでまくしたてられるとパニックになってしまい、言われていることが全然頭に入らないということはよくあります。
「上司になるとはなんと大変なことなんだ!」と思うかもしれません。ただ、部下を上手く育てることは、結果的に自分の身を守り自分に利益をもたらします。部下のみなさんも上司のみなさんも、コミュニケーションを円滑にすることで、お互いストレスレスな状況で働きましょう。
イラスト:さっこさん
執筆者紹介
清水 あやこ(株式会社HIKARI Lab代表) 新卒で数年間外資系証券会社で勤めた後、退職し東京大学大学院臨床心理学コースにて臨床心理学を学ぶ。在学中に株式会社HIKARILabを設立。会社のモットーは「今までにない心理ケアを提供し、簡単に心理ケアを受けられる社会を実現する」。現在は、オンラインカウンセリング「ココロワークス」と心理ケアゲーム「SPARX日本語版」などの開発に携わる。著書に「ちょこっとポジティブ。」(大和出版)、「女子の心は、なぜ、しんどい?」(フォレスト出版)がある。
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