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あなたの職場の困った上司は「中年期危機」かも? その原因と対処法

2018.08.29

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 ジェネレーションの壁をなくし、どの世代もイキイキ働くには

最近、全然働かない、仕事に無関心、怒りっぽい、愚痴ばかりの中年社員がいて困るという話をよく耳にします。中には、若手社員がこういった中年社員の上司になってしまい、「年上部下」となった中年社員に対する扱いが分からずお手上げ状態、ということもあるようです。

せっかくなら、ジェネレーションの壁をなくし、どの世代の人にもイキイキ働いてもらって、会社全体の生産性を高めたいものです。

そこで今回は、なぜ上記のようになってしまう中年社員が多いのか、原因を心理学的観点から解説し、お互いが気持ち良く仕事をするための対処法を提案します。

「中年期危機(中年の危機)」が、中年層の心の不安定を生む

意欲がない、イライラしやすいというのは、心が疲れている証拠。でも、心の疲れというのはなかなか外から把握することはできません。しかも相手が自分よりも年上ということであれば、無意識に「精神的に安定しているはずだ」と思い込んでしまっているかもしれません。しかし、心の疲れに年上か否かは関係ありません。むしろ、実際は中年層ほど揺らぎやすい年代層と言えるのです。

みなさんは「中年期危機(中年の危機)」という言葉をご存知でしょうか? これはユングという有名な心理学者によって提唱された言葉です。彼は中年期を「人生の正午」とし、それまでの価値観の変容を余儀なくされる、人生の中でも大きな変化が訪れるときだと定義しています。

身体の変化が現れる子どもの急成長に比べると、大人の変化というのは分かりにくいものでしょう。しかし、中年期は、見えないところでさまざまな変化が押し寄せる時期なのです。例えば、自分のキャリアパスの限界に直面したり、身体の衰えを感じたり、育児や介護のストレスがかかったり、といったことが一気に起こります。

これらの出来事は、当人に大変なショックと心理的負担をもたらします。実際に、中年層の女性はうつ病患者数が、男性は自殺者数がとても多い年代層なのです。

こう考えると、あなたを困らせている目上のあの人も、自分の悩みと向き合っている最中なのかもしれません。なぜなら、上記のような変化が重なると、仕事に素直に向き合えなくなってしまうからです。

例えば、それまで出世至上主義で働いてきた人が、出世が止まるという現実に直面したときに、ものすごい挫折感を感じることがあります。出世至上主義の価値観のままでいると、出世できない自分がとんでもない負け組であるかのような錯覚に陥り、全てのことに対して投げやりになってしまうことがあります。

その結果、仕事に意欲がわかなくなったり、些細なことでイライラしてしまったりする、ということはよくある現象です。

「頼りにする」「感謝する」ことで意識転換を促す

仕事に興味がない、何もせずに文句ばかり言っているという人は、仕事に対して無力感を覚えていることが多いです。「どうせ何をしても変わらないのだから」「仕事はもう自分にとって重要ではないのだから」という心理が、手を抜いたり愚痴を言ったりするという行動につながるからです。

これを改善してくれるのが「人に頼られる体験」です。誰かに頼りにされる体験は、自分に優れているところがあるという自信の裏付けになり、その人の無力感を和らげることができるのです。

ほんの些細な表現――例えば、「〇〇さんのときはどうしていたんですか?」「〜〜がわからないので教えてください。」と言うだけでで、頼りにされているということは十分伝わります。

そして、その後実際にやってみて感謝されると、「自分は役に立ったのだ」と職場での自分の存在意義を見出すことができるようになります。また、「感謝された」という体験が良いフィードバックになり、「仕事に前向きに関わってみるのも悪くないな」という意識転換にもつながります

中年期危機に陥ってしまったら、「価値観の再構成」をするべき

仕事への意欲がなく怒りっぽい中年社員に手を焼いている今の若手社員も、年を取れば、同様に中年期危機に陥る可能性があります。そうなってしまったときに大切なのは、「今の自分にあった価値観を再構成する」ということです。

身体が変化した、周囲の評価が変化した、社会的な責任が変化した……これらを否定するのではなく、変化を受けとめて今の自分にあった生き方を模索していくことが必要なのです。
  
先ほどの例だと、これまでは出世主義だったとしても、「出世だけが全てではない、今の立場でもできることはいっぱいある」と意識転換ができると、同じ状況でももっと前向きにいきいきと働くことができます。

このように、中年期危機に陥ってしまった人は、以前とは異なる新しい目標や意義を業務内で見出すことで、前向きな姿勢を取り戻すことができるはずです。

最終目標は、チームの生産性向上

一つだけ気をつけないといけないのは、「相手ばかりを優先しない」ということです。「頼りにする」「感謝する」という行為は、あくまでチームや自分の快適さを取り戻し、生産性向上につなげるために行うものです。こういった行動が行き過ぎて、いつも相手のご機嫌取りをするようになってしまうと、今度は自分がとても消耗してしまいます。

そうなってしまうと本末転倒。相手だけではなく、あくまで、「お互いのためにやっている」ということを心に留めておきましょう。

イラスト:さっこさん

執筆者紹介

清水 あやこ(株式会社HIKARI Lab代表) 新卒で数年間外資系証券会社で勤めた後、退職し東京大学大学院臨床心理学コースにて臨床心理学を学ぶ。在学中に株式会社HIKARILabを設立。会社のモットーは「今までにない心理ケアを提供し、簡単に心理ケアを受けられる社会を実現する」。現在は、オンラインカウンセリング「ココロワークス」と心理ケアゲーム「SPARX日本語版」などの開発に携わる。著書に「ちょこっとポジティブ。」(大和出版)、「女子の心は、なぜ、しんどい?」(フォレスト出版)がある。

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