林修三先生のなるほど人事講座
人事担当者がぜひ取得しておきたい資格(対会社・経営陣編)
2018.01.11
経営陣に対して、人事担当者の価値を高められる3つの資格
日頃人事担当者の方々は、社員のステップアップをどう進めていくかや、キャリアパスをどう示していくかなどに心を砕いているかと思います。ただ反面、ご自身のステップアップをどうしていくかについては、なかなか思い描けないこともあるかと思います。
そこで、今回は人事担当者様ご自身のステップアップを図るための資格をご紹介いたします。
もちろん世の中にはさまざまな資格がありますが、今回は「対会社・経営陣」という視点から、人事担当者ご自身の存在価値を高められるものを3つピックアップしてみました。さっそくご紹介していきましょう。
社会保険労務士(社労士)
社労士は、社会保険労務士法に基づいた国家資格で、言わずと知れた社会保険に関するエキスパートです。
社労士資格を取得するメリット
社労士の業務内容には様々なものがありますが、「行政機関(主に労働・年金関連の官庁)に提出する書類の作成や提出の代行」「労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類の作成」の2種類については、社労士の独占業務であることが法令で定められています。したがって、人事担当者が自身で各種手続きや帳簿作成を行うのでない限り、必ず外部の社労士に依頼をしなければなりません。ということは、人事担当者が社労士レベルの知識を持っていれば、必ずしも外部の社労士に依頼をする必要がなくなり、会社としては費用の節減になり、その人事担当者の存在価値が大きくなることに繋がります。
試験の概要
試験は年1回、例年では8月下旬に行われます。
試験科目は、労働基準法等、雇用保険法、健康保険法、厚生年金保険法、など全8科目あり、択一式と選択式の問題が出題されますが、いずれもマークシートでの回答となります。
公式HP:社会保険労務士試験オフィシャルサイト
社労士資格の取得難易度、合格率
正直に言って、社労士資格の取得難易度は極めて高いです。直近試験(2017/8実施)での合格率は、1桁台の6.8%となっています。
科目数・出題範囲が極めて広く、かつ1科目でも基準点を満たさないものがあると、他がどれだけ高得点でも不合格になります。さらに「科目合格」という概念がないので、毎回が一発勝負です。そのため、苦手科目を作ってしまうと合格はほぼ不可能になってしまいます。
なお、特定の講座を受講しなければ受験できないというものではないので、その気になれば独学でもいけるのですが、なにせ前述のように難易度が極めて高いので、学習時間を確保しにくい社会人であれば、スクールに通うのが現実的な学習法かと思います。
衛生管理者
衛生管理者は、事業場の衛生全般の管理を行うための資格です。
衛生管理者を取得するメリット
常時50人以上の労働者を使用する事業場では、衛生管理者の選任が義務づけられています。事業場の規模が大きくなるにつれて選任しなければならない人数も増えていきますので、成長途上の会社では必要になる可能性が極めて高い資格です。
逆に言えば、特に成長中の会社にお勤めの人事担当者の方は、この資格を持っていると安定した立場を得られやすいということでもあります。
ちなみに、衛生管理者には第1種と第2種とがあり、第1種は全ての業種で通用するもの、第2種は金融、情報通信、小売など、比較的有害業務の少ない業種でのみ通用するものとなっています。
試験の概要
試験は毎月1回以上、各地方毎の安全衛生技術センターにて行われます。
試験科目は、労働衛生、労働管理、関係法令、の3つに分かれていて選択式の問題が出題されますが、いずれもマークシートでの回答となります。
公式HP:安全衛生技術試験協会
衛生管理者の取得難易度、合格率
試験自体の難易度はそれなりに高く、平成28年度の合格率は、第1種・第2種全体で48.7%となっています。
資格の性格上、化学や生物学に関する知識を問われる問題が多く、文系出身の方にとってはやや苦しい内容の試験です。
ところが、試験そのものの難易度とは裏腹に、資格取得の難易度としては実は決して高くはありません。というのも、毎月1回以上(地方によっては月5回も)試験が実施されており、何度でも頻繁にチャレンジできるからです。また、何パターンかの試験問題が使い回されていることが多く、受け続けていればそのうち受かると言っても過言ではありません。強いて言えば、試験が平日に行われることが多いので、受験のためのスケジュール調整が大変ということがあります。
メンタルヘルス・マネジメント検定(Ⅰ種)
メンタルヘルス・マネジメント検定(Ⅰ種)は、社内のメンタルヘルス対策を推進していくために必要な知識・考え方を習得するための検定です。
メンタルヘルス・マネジメント検定(I種)を取得するメリット
自社の人事戦略・方針を踏まえたうえで、メンタルヘルスケア計画、産業保健スタッフや他の専門機関との連携、従業員への教育・研修等に関する企画・立案・実施ができることが資格の到達目標となっています。
社員のメンタルヘルス対策は現代では急務となっていますが、そのために会社としてどのような仕組みをどう作り上げていけば良いのか、専門的な知識や考え方が身につきますので、人事担当者として社内での存在価値を確固たるものにしていけるでしょう。
なお、メンタルヘルス・マネジメント検定にはⅠ種・Ⅱ種・Ⅲ種の3つがありますが、Ⅰ種は人事スタッフや経営幹部向け、Ⅱ種は管理職向け、Ⅲ種は一般社員向けの内容になっています。
試験の概要
試験は年1回、例年11月に行われます。出題内容はメンタルヘルスに関する基礎知識から社内体制の作り方まで多岐に渡ります。
問題は選択式(マークシート)と論述式とに分かれていて、計150点満点中、105点以上で合格となります。(但し、論述での得点率が50%未満だと即不合格)
公式HP:メンタルヘルス・マネジメント検定試験
メンタルヘルス・マネジメント検定(I種)の取得難易度、合格率
直近試験の合格率は18.7%と、難易度としては少々高いものとなっています。試験そのものは公式テキストに準拠して行われているため、選択式の問題に関しては、テキストを繰り返し通読して問題集を解いていけば独学で十二分に対応できます。ただ、論述式に関しては正直言って独学では難しく、できれば対策講座を受講するのが望ましいでしょう。
今回は、経営陣や会社側の視点で見た際に、人事担当者が持っていると嬉しい3つの資格をご紹介しました。次回の記事では、「対一般従業員」という視点から資格をご紹介してまいります。どうぞお楽しみに。
執筆者紹介
林修三(はやし・しゅうぞう)(株式会社ヒュームコンサルティング代表取締役) 1975年生まれ。仙台市在住。東北大学法学部を卒業後、大手自動車部品メーカーの経営企画職~IT企業の人事・採用職を経て現職。現在は東北地方の複数の大学でキャリア系科目講師として学生の就職指導に努めるほか、人事・採用コンサルタントとしても活動中。
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