コラム

林修三先生のなるほど人事講座


学生からの内定辞退を防ぐ、心理学を応用した4つの対策

2017.12.13

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この時期、採用担当のみなさま方は、内定者からの電話やメールが来るたびに寿命が縮む思いをなさっているかと思います。基本的に内定者が自社に用事があるケースというのは滅多にはないわけで、内定者からの連絡=悪い知らせであることがほとんどです。私自身、かつて採用担当をしていた頃には、内定辞退の連絡を受けた後、応接室に10分ほどこもってふさぎ込んだ経験もあります。

そこで今回は「内定者からの内定辞退をされにくくするためにはどうすればいいか?」というお悩みに対し、心理学の手法を応用した対策をご紹介してまいります。

内定者が内定を辞退する2つの理由

はじめに、内定者がその内定を辞退する理由について整理してみましょう。
もちろん細かな事情は人それぞれではありますが、大きく分けると、

  1. 本人にとって、より魅力的な会社から内定を取ったため
  2. 本当にこの会社に就職していいのかという不安が増大したため

という2つです。
(現実には「3.留年が確定してしまったため」というものもありますが、今回は無視します。)

まず「1」についてですが、ハッキリ言ってこれはもう致し方ありません。
内定者の望む条件に関して、自社が他社よりも劣っているということですから、もはや翻意など期待できません。せめて少しでも自社に良いイメージを持ち続けてもらうために、器が大きいところを見せていくしかないものと考えます。

問題は「2」のほうです。いわゆる内定ブルーと呼ばれる心境ですね。

内定辞退を減らす、4つの具体的アプローチ

内定者にこの「内定ブルー」のような心境を乗り越えてもらえるようにするためにはどうすれば良いのでしょうか? ここからは、具体的なアプローチを紹介していきましょう。

1.入社後の生活を具体的にイメージできる情報を伝える

王道は、当然のことながら、不安そのものを緩和してあげることです。

不安は、単にネガティブな経験だけでなく、ポジ・ネガ問わず「変化」というものが大きな発生要因となります。そして、変化が不安につながるのは、変化後の状況への未知(あるいは無知)が、恐れにつながるからだと言われています。そのため、「未知」を多少なりとも「既知」に変えられれば、その分だけ不安は減少することになります。

特に内定者が不安を感じる一番大きな理由は「入社後の生活の変化をリアルに想像しきれないこと」ですので、できるだけリアルな情報を提供していくことが最大の対策になります。特に、会社説明会での説明内容のようなポジティブなことだけではなく、“生活”というものを具体的にイメージできるような情報を伝えていくことが重要なポイントです。

2.内定者との接触を増やす[単純接触効果]

また、「単純接触効果」と呼ばれる心理効果を活用していくことも有効な対策です。

「単純接触効果」とは、簡単に言えば「接する機会が多ければ多いほど、その相手への好感度が高まる」という効果のことです。つまり、内定者と頻繁に接触を図っていくことで、自社への好感度をより高めていく(=入社への不安を緩和していく)ことができるということです。
御社では、内定者との接触の頻度はどれくらいでしょうか? もし、10月に内定式や懇親会を行ったきりになっているとしたら、やや危険ゾーンに入っている可能性があります。接触の名目や内容は何でも結構ですので、内定者との接触を図る何かしらのアクションをこまめに起こしていきましょう。

以降は、王道以外の(やや邪道な)方法として、「返報性の法則」「一貫性の法則」と呼ばれる心理効果を応用した対策をご紹介します。

3.内定者に対して、しっかり恩を提供する[返報性の法則]

返報性の法則」とは、「他者から何か恩を受けたら、その恩に報いなければならないという心理が働きやすくなる」という法則です。ここでいう恩とは、必ずしも具体的なメリットが得られるものである必要は無く、好意を向けるという精神的なものであってもOKです。しかも、自分のほうから一方的に提供する恩であってもこの法則は成立します。

つまり、内定者に対して何かの恩を提供することで、内定辞退(ある意味で「恩を仇で返す」という行為)をするという決断をさせにくくすることができるということです。
提供する恩の種類は、さまざまなものが考えられます。懇親会を開催して飲食を提供するというよくあるケースも、恩の提供に他なりません。それ以外にも、自社のノベルティグッズをプレゼントする、クリスマスカードを贈る、年賀状を送る、などなど、発想次第でいくらでも行っていけますね。

4.内定者自身から「入社したい」という行動を引き出す[一貫性の法則]

一貫性の法則」とは、「人は自身の行動、発言、態度、信念などに対して一貫性を保っていこうとする」という法則です。この法則、心からの行動や発言でなく、何の気なしの行動や発言に対しても働いていくというのがすごいところです。

例えば、多くの企業で内定者に対して提出をさせている「入社誓約書」を考えてみます。この入社誓約書、法的には何の効力もないのですが、御社に入社するという意思表示を内定者にさせることにより一貫性の法則が働き、内定辞退をしにくくさせるという心理効果をもたらします。そのため、効果的な手法であること自体は間違いないのですが、昨今では「オワハラ」の代表例として非難が強まっているということも付記しておきます。

「御社に入社したい、働きたい」という行動や発言を、学生自身から引き出すことがこの法則の肝要な部分ですので、例えば「来シーズンの採用活動での広告宣伝用に、応募者へのアピールメッセージを書いて欲しい」などのように、自然にそのような行動や発言をしてもらえる状況や理由を作っていければOKです。

「王道」と「邪道」を組み合わせたアプローチを

今回は、王道の対策と、あまりおおっぴらには言いにくい王道以外の対策とをご紹介してきました。この2種類は完全に分離できるものでもありませんので、例えば恩を提供する(返報性の法則)という方向での接触回数を増やす(単純接触効果)など、うまく組み合わせながらご活用頂ければと思います。

執筆者紹介

林修三(はやし・しゅうぞう)(株式会社ヒュームコンサルティング代表取締役) 1975年生まれ。仙台市在住。東北大学法学部を卒業後、大手自動車部品メーカーの経営企画職~IT企業の人事・採用職を経て現職。現在は東北地方の複数の大学でキャリア系科目講師として学生の就職指導に努めるほか、人事・採用コンサルタントとしても活動中。

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