企業とシニア求職者のミスマッチをひもとく 第2回
シニア人材の活躍事例――これまでのキャリア・専門性を生かす
2023.08.18

シニア人材の採用と活躍:スキルと経験を生かす方法
第1回では、リクルートの調査研究機関『ジョブズリサーチセンター』が実施した「シニア層の就業実態・意識調査(個人編・企業編)」をもとに、シニア層の就業実態および意識を、シニア個人と企業双方の視点からお伝えしました。
中編からは、シニア人材の採用で大切にしたい観点と、生き生きと活躍しているシニア就業者の事例をご紹介してまいります。
参考:
第1回 シニア層への採用意欲――「シニア層の就業実態・意識調査2023」分析レポート
解説 株式会社リクルート ジョブズリサーチセンター長 宇佐川 邦子
リクルートグループ入社後、一貫して求人領域を担当。2014年4月より現職。
さまざまな業界の特色を踏まえ、求人・採用活動、人材育成・定着、さらに活躍促進のための従業員満足メカニズムなど、「『働く』に関する課題とその解決に向けた新たな取組」をテーマに全国で講演・提言を行う。全国求人情報協会常任委員のほか、経済産業省、厚生労働省、東京商工会議所などにおいて委員も務める。
解説 株式会社リクルートスタッフィング エンゲージメント推進部兼ネクスト
ステップ支援部 部長 小久保 まどか(こくぼ まどか)
1996年、リクルートスタッフィングに入社。事務職領域の派遣営業部にて部長を歴任後、2022年、派遣スタッフの方のキャリア支援に関わる研修やカウンセリングなどを担当するネクストステップ支援部長に着任。2023年、多様な働き方の実現に向けた特化型サービスを運営するエンゲージメント推進部長に着任。シニア層の雇用創出、未経験から事務職へのチャレンジを応援する無期派遣サービス、障がい者雇用、ZIP WORKなど多様な働き方を推進している。
シニア人材の採用は「アンコンシャスバイアス」を取り除くことから
前回お伝えしたとおり、「働きたい」と考えるシニアは増えており、しかしながら仕事を探してもなかなか採用に至らないケースがあります。企業側はいまだ約7割が「シニア採用に積極的ではない」状況。しかも、特に明確な理由なくシニア採用を避けてしまっている企業も多いようです。
その中でも、「求める人材像にマッチしていれば年齢は関係ない」と、シニアを積極的に受け入れている企業もあります。
実際、最初は「体力を使う仕事だからシニアには難しいのではないか」と懸念を抱きながらシニアを採用した企業から、「当初の想定以上の活躍をしてくれている」「若いスタッフにあいさつの仕方やマナーを教えてくれるので、店長の負担が減った」といった声も聞こえてきます。
企業は、シニアの仕事ぶりや雇用のメリットを感じる前に、「この仕事はシニアでは働けないだろう」とアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)を持ってしまっていることも多々あるようです。
採用を行う場合は、以下2つのポイントに着目していただくとよいでしょう。
一つは「これまでの仕事経験を通じて蓄積してきた専門性・スキルをうまく生かせるのではないか」という点です。
もう一つは、「60~70年の人生で培われた知識・経験を生かせるのではないか」という点。職場は個人の集まりですから、一見仕事とは関係がないように思われる知識・経験でも、組織の円滑な運営や活性化につながることも多いのです。
これまでのキャリアで得たスキルや専門性を生かす
企業がシニアの採用に踏み切れない背景には、「これまで採用したことがないので、どんな人が自社に合うのかわからない」「どんな仕事を任せればいいのかわからない」「どうマネジメントすればよいかわからない」といった不安があります。
そこで、人材派遣会社が介在・サポートを行うことで、企業とシニア人材のマッチング・定着を図っています。
特に1社で長く勤務して定年を迎えたシニアなどは、自分の「強み」を認識できていないものです。市場価値が高いスキルであっても、勤務していた会社内では「皆が当たり前にできること」だったからです。
人材派遣会社では、シニアの方々のキャリアの棚卸し・強みの洗い出しをサポートし、その経験・スキルを求めている企業に接続しています。
先ほど挙げた採用の観点の一つ――「これまでの仕事経験を通じて蓄積してきた専門性・スキルを生かす」について、株式会社リクルートスタッフィングの事例をご紹介します。
リクルートスタッフィングにおいては、60 歳以上の派遣スタッフが増加傾向にあります。中でも、これまでのキャリアで培ったスキルや専門性を生かして即戦力として働く「シニアプロフェッショナル人材(シニアプロ)」が増えており、コロナ禍前の 2018 年度と比較して3.53 倍に伸びました(2022 年度実績)。
エンゲージメント推進部長・小久保まどかさんによると、「スキル優先で人材を受け入れたい派遣先企業を中心に就業が増えている。シニアを迎え入れ、仕事に対する経験の深さや高度なスキルを実感したりITリテラシーの高さに気付いたりすることでバイアスが消え、さらに良さを見いだし、シニアプロの就業数が1年で倍以上となった企業もある」といいます。
シニアプロフェッショナル人材の活躍事例を2つご紹介します。
【事例-1】60代後半・ITスキルを生かして派遣就業
Aさん(60代後半/男性)は、 IT 業界でネットワークシステム開発を経験し、定年退職。家にいるだけの生活に飽き足らず「何かしたい」と考えていたところ、派遣求人サイトで家から通いやすい場所、かつ現役時代に得意としていた業務を見つけました。シニアプロ派遣としてIT職(ネットワークシステム設計)に就業し、時給5000円・週5日・9時~17時(テレワーク含む)の条件で勤務しています。
派遣先の採用担当者によると、「シニア層人材はシステムに強くないという印象があり、これまで検討していなかった。実際働いてもらうと、高度な知識と経験によって頼りがいがあり、いてくれるだけで安心感がある」とのことです。
【事例-2】60代前半・事務スキル+語学スキルを生かして派遣就業
Bさん(60代前半/女性)は、外資系銀行を中心に、英語力を生かし、事務職の正社員として活躍してきた方です。「体力があるうちは、社会とつながっているために生涯働いていたい」という思いが強く、定年退職後、シニアプロ派遣スタッフとして就業。OA 事務・契約管理・ベンダーとの交渉・リーガルチェック業務など、英語力を生かして活躍しています。勤務条件は、時給2200円台・週5日・9時~17時(テレワーク含む)。
「スキル重視で探した」という派遣先の採用担当者からは、「当初は周りとなじめるか、新たなことに柔軟に取り組めるか……という不安もあったが、問題なかった。謙虚ながらも経験を生かしたアドバイスをくれることが良い効果をもたらし、ムードメーカーとなってくれている」との感想が寄せられています。
このように、企業からは「シニア層求職者の受け入れへの不安は思い込みだった。長年のスキルを駆使して活躍してくれている」との声が聞こえてきます。
採用ポジションに必要な「スキル」にフォーカスすることで、シニアの活躍の機会を広げることができるといえるでしょう。
次回は、もう一つの採用の観点「60~70年の人生で培われた知識・経験を生かす」をテーマに、未経験で介護業界に入って活躍しているシニアの事例、外食業界でのシニアの受け入れの工夫についてご紹介します。
>>>第3回 シニア人材の活躍事例――これまでの人生経験を生かす
編集部注:この記事はリクルート社から提供の寄稿です。2023年7月時点の情報をもとに作成しています。
企業とシニア求職者のミスマッチをひもとく(全3回)
第1回 シニア層への採用意欲――「シニア層の就業実態・意識調査2023」分析レポート
第2回 シニア人材の活躍事例――これまでのキャリア・専門性を生かす
第3回 シニア人材の活躍事例――これまでの人生経験を生かす
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