コラム

林修三先生のなるほど人事講座


地方学生就活のリアル~首都圏と地方の情報格差

2015.10.13

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今回は「首都圏と地方の情報格差」がテーマです。
といっても、インターネット上で一般公開されている情報に関しては首都圏も地方も関係なく入手できますので、今回は、

  • リアルコミュニケーション(Face to Face)による情報
  • (主にSNSを中心とした)ネット上でのクローズド情報

という2種類の情報について、ご紹介します。

1.企業とのリアルコミュニケーション(Face to Face)による情報

端的に言って、地方の学生と首都圏の学生とでは、接触できる企業数に圧倒的な差があります。
例として、合同説明会(合説)の頻度を見てみます(下図参照)。ここでは、地方中核都市の代表例として仙台を、一般的な地方都市の代表例として盛岡を取り上げました。

2016年卒向け。筆者調べ。

東京と仙台とを比べると、仙台は東京のほぼ1/2の頻度でしか合説の開催がありません。さらに仙台と盛岡とを比べてみると、盛岡は仙台の1/2の頻度でしか合説の開催がありません。

加えて言えば、盛岡(さらに言うなら宮城以外の東北各県)では大規模合説は行われないため、仙台での開催時に、東北中の大学からチャーターバスに乗って学生が集結することになります(そのほとんどは日帰り前提で、大学によっては集合時間が朝5時というところもあります)。このこと一つを取ってみても、地方の学生にとっては大きなハンデです。

しかし、だからといって東北地方の学生が東京の合説に参加できるかというと、交通費という気持ちだけではどうにもならない制約条件があるため、気軽に参加しにいくというわけにもいきません。そのため、どうしてもリアルコミュニケーションによる情報量が限定的なものとなってしまいます。

2.ネット上でのクローズド情報(主にSNS)

このリアルコミュニケーションによる情報量の不足が、主にSNSを媒介としたネット上でのクローズド情報の不足につながっていきます。
クローズド情報とは、仲間内だけで情報交換されていく企業情報や選考情報のことを指しますが、その特性上、流通する情報の元ネタは、仲間内の一人ひとりが企業とのリアルコミュニケーションを通して得た中身になります。

したがって、企業とのリアルコミュニケーションが豊富な首都圏の学生同士のコミュニティでは情報交換が活発になり、雪だるま式に全体の情報量や質が高まっていくのに対し、それが不足する地方の学生コミュニティにおいては、いわゆる“意識高い系“と呼ばれる一部の学生層を除き、そもそも情報交換が活発になること自体が難しいという状態です。

このように、地方の学生から見ると、残念ながらリアルとネットの両面で、企業情報や選考情報の量や質において首都圏の学生と比べて大きな後れを取っていることになります。これは個々の学生の努力だけでは埋めきれない、地方ならではの課題と言えるでしょう。

しかし、これは逆に言うと、良くも悪くも情報の海に溺れておらず、むしろ企業情報・選考情報を欲しているということでもあります。

少しでも良い人材を一人でも多く確保したいという企業の方は、いわゆる就職ナビ経由の情報だけではなく、ぜひ地方都市における大学内個別説明会や合説に乗り出すなど、地方学生とのリアルコミュニケーションをより一層増やしてみてはいかがでしょうか?

個々の学生の情報量が不足している分、いったん自社情報を吸収してもらった場合、学生個々の中での貴社のウエイトは首都圏学生のそれと比べて相対的に大きなものとなります。結果として、母集団の拡大や歩留まりの向上に大きく寄与することになるかと思います。

たとえ今からであっても、ぜひご一考くだされば幸いです。

執筆者紹介

林修三(はやし・しゅうぞう)(株式会社ヒュームコンサルティング代表取締役) 1975年生まれ。仙台市在住。東北大学法学部を卒業後、大手自動車部品メーカーの経営企画職~IT企業の人事・採用職を経て現職。現在は東北地方の複数の大学でキャリア系科目講師として学生の就職指導に努めるほか、人事・採用コンサルタントとしても活動中。

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