効果的な研修のための処方箋
いかにしてOff-JTとOJTを結びつけるか
2015.09.24
はじめに
人材育成や人材開発に携わっている人ならば一度は耳にしたことがある言葉、「Off-JT」と「OJT」。 研修を効果的なものとするためには、いかに「Off-JT」と「OJT」をうまく連動させるかがポイントになります。本稿ではその理由と連動方法を考えていきたいと思います。
Off-JTとは
そもそもOff-JT(Off the Job Training)とは、「職場・仕事から離れた場で行われる教育訓練のこと」を指します。Off-JTのメリットは、業務に関する体系的な知識・技能を講師から受講者へ効率的に伝達することが可能なことです。Off-JT形式は誰もがなじみのある学習スタイルなので、研修を企画する側と受講する側双方とも抵抗なく受け入れられます。その理由は、小学校以来慣れ親しんだスタイルだからです。
研修の目的は、第一回目のコラムで書いたように、研修を受講することで受講者の行動変容が起こり、その行動変容が業務に活かされることにあります。残念ながらよく見られるパターンとして、現場の上司やマネジャーがOff-JTの目的や学習目標を把握しておらず、Off-JTと実際の業務に乖離が生じ、意図した行動変容が起きづらい状況がみられます。
このような状況になると、「仕事は現場で覚えるもの」「座学研修なんて意味がない」などという声があちらこちらから聞かれるようになります。
しかし、新しい知識やスキルをOff-JTにより習得することは、受講者が業務において自分がやるべきことや注意・意識することなどを方向づけるという観点から、たいへん意味のある人材育成方法なのです。
OJTとは
一方、OJT(On the Job Training)とは、「職場における上司と部下の関係で、上司が部下に対し一定の仕事を任せ、アドバイスを行う中で行われる育成方法」です。職業訓練では伝統的に行われており、また支持されている学習方法です。
このことを裏付けるデータとして、成人が仕事をするにあたり必要な業務知識量を身につけるのは、仕事における直接経験(70%)、他者の観察やアドバイス(20%)、研修・読書(10%)といわれています。しかし、このOJTも目的意識がなく、ただ何となくやらせているOJTであるならば効果的な能力形成に結びつきません。明確な目標設定とそのフィードバック、責任をともなうかたちでの業務の割り当て、権限の移譲を行ってからこそ能力が形成されます。
そして、このOJT手法は、上司と部下による太いコミュニケーションの「場」という副次的効果が現れてきます。私がOJT担当者研修に関わらせていただいた案件で追跡調査を行ってみると、部下(特に新入社員)の能力形成が狙い通りいき、また上司・部下双方の満足度が高い職場ほど、太いコミュニケーションが取れていました。
Off-JTとOJTをどう結び付けるか
世の中には二元論的な考えがあります。二元論的な考え方とは、どちらか一方がよくて、残りは悪いというような両極端に偏った考え方なのですが、人材育成・人材開発の世界も同様に、「Off-JT」対「OJT」の図式があります。効率的な人材育成・人材開発を図っていくためには、それぞれの「党派」を形成するのではなく、いかに2つの手法を結びつけていくかがポイントになってきます。つまり、Off-JTとOJTの連続性を高め相互関係を高めていく仕組みづくりが必要なのです。その方法やポイントは以下の通り。
- 研修企画者は現場の上司やマネジャーからニーズを研修・学習ニーズを引き出す
- 上司やマネジャーは研修の目的と学習目標をしっかりと把握する
- 研修企画者は研修終了後、学習目標の到達度やテスト点数などの客観的データを上司やマネジャーに提出する
- 受講者が研修から戻ってきたら、研修で習得した項目に沿って実践目標を受講者とコミュニケーションをとりながら設定し、行動変容を客観的な側面や主観的な側面からチェックする
このように、研修企画者、上司・マネジャー、受講者との間にしっかりとコミュニケーションをとる場を意図的に設けることで、Off-JTとOJTとの間に連続性をもたせることが可能になり、Off-JTで習得した知識やスキルを実際の現場で効果的に活用することができるようになります。
次稿では経験学習モデルを使いOJTを深めていきたいと思います。
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宮崎照行(みやざき・てるゆき)(Training Office 代表) 中央大学経済学部を卒業後、人材開発系ベンチャー企業の参画に携わる。その後、衆議院議員秘書を経て、研修事業・人事コンサルティング事業を主な業務内容としたTraining Officeを設立。
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