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コラム

効果的な研修のための処方箋


ビジネスマナーを効果的に身に付けさせるための実践的な学習・指導方法とは?

2016.11.14

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ある調査によると、新入社員に直してもらいたい点を上司・先輩に尋ねたところ、「行動」「あいさつ」「言葉遣い」「携帯電話」について多くの意見が寄せられたとのことです。

上記の回答はすべてビジネスマナーに関する領域です。多くの企業でビジネスマナー研修が実施されているにも関わらず、このような問題が浮き彫りになる要因と解決策を「学びの特徴」と「コーチング」の観点から本稿では提起していきます。

目次
  1. 学びのマトリックス
  2. 個人の学習のプロセスから見たビジネスマナーの習得
  3. コーチングとフィードバック
  4. まとめ

学びのマトリックス

学びのマトリックス

図1 学習のマトリックス

まず、仕事における学びの全体的な俯瞰を行っていきます。仕事における学びには、「頭~体」「研修・講義~実践」の組み合わせから構成されています。実際のイメージとして、マトリックスの右半分がOFF-JT、左半分がOJTになります。

右半分の講義・研修領域において学習する内容は、一般化された内容を取り扱います。例えば、ビジネスコミュニケーション、敬語、ビジネス文書作成・ファイリング、職場のマナー、名刺交換、電話応対等がカリキュラムとして編成され実施されます。

しかし、組織ごとによってビジネスマナーというのは変わってきますし、ビジネスマナーは相手がいて成立するものですから状況や環境に大きく左右されます。これを補完する役割として左半分の実践領域を活用しなければなりません。

このため、図1の学習項目のうち1つでも欠けていると効果的な学習が期待できません。また、右半分と左半分の領域がしっかり関連づけられていないと効率的な学習は期待できません。

個人の学習のプロセスから見たビジネスマナーの習得

前段では、仕事における学びを全体的に俯瞰してきましたが、ここでは、個人の熟達の観点から学びの特徴をみていきます。

学習曲線

図2 学習曲線

図2は、人がどのようして知識や経験を積んで熟達化していくかを模式的に描いた図です。横軸に時間経過、縦軸に知識や行動などの学習水準を示しています。第1フェイズと第3フェイズの矢印の傾きの度合いは、能力向上のスピードを表しています。

さて、ビジネスマナー習得は入社後すぐの学習目標にあたりますので、第1フェイズで習得しなければならない学習項目です(図2赤丸で囲んだエリア)。第1フェイズにおける学習項目の特徴は一般的で基本的なものであり、基礎研修の受講、上司・先輩からの指示の履行、規則やルールの遵守で占められています。

ビジネスマナーの学習水準を高めるためには、反復練習と継続が鍵になります。ビジネスマナーは体で覚える学習であり、体で覚える学習項目は反復練習での習得が一番効果があります。第1フェイズにおける反復練習では、「確実に」「できるだけ多く」「休まずに」という特徴があります。このことを成長曲線でみていきましょう。

成長曲線

図3 成長曲線

「確実に」とは、図1の第1、4象限の研修で学んだことや第2象限でアサインされたことを第3象限の業務体験で着実に実行することです。非常に重要なポイントです。ここをおろそかにすると習得に時間がかかりますし、研修で学んだことを活かすことができません。このため、研修内容を把握しておく必要があります。

次に「できるだけ多く」とは行動の量的充実です。図3からわかる通り、何事もやり始めてすぐに習得できるものはありません。必ず停滞期という試行錯誤期間を経ることになります。

しかし、量的充実を図ることで停滞期の期間を短くすることができます。そして、加速期に移行すると習得すべき行動が自動化・無意識化され違和感のない行動をとることができるようになります。

最後に「休まずに」とは、手を抜かずに継続するという意味です。休まずに続けることは量の充実化を図ることもできます。また、停滞期で諦めることなく続けることは、粘り強さなどの忍耐力を養うことができるという重要な側面もあります。

コーチングとフィードバック

前段では、図2、3を用いて主にプレイヤーの行動に焦点を当ててきましたが、ここでは上司・先輩などのフォロワーの行動をコーチングとフィードバックの観点から考えていきます。

人は自発的に発達・成長できるものです。しかし、ビジネスの文脈ではできる限り早く、確実なレベルアップが望まれます。

図2の第1フェイズにおいては、プレイヤーは確実なアサインのもとで業務を実践していきます。その際、第一にフォロワーによる具体的な短期目標を設定することです(ここでも研修内容と目標が一致していることが望ましい)。

具体的目標設定をすることでプレイヤーに対し訓練の効果が伝わりやすく、短期目標を設定することで効果のフィードバックを得られやすくなります。また、短期目標を多く達成することで自信を深めさせる効果も期待できます。第二に、プレイヤーが誤ったビジネスマナーや行動に対し不安を抱いている状況が確認されたら、いつもより注意深くプレイヤーの行動を観察し適宜フィードバックしていきます。

フィードバックには現在の方向性や習熟度をプレイヤーに知らせる役割があります。第三に、質問を用いることによって実践で経験したビジネスマナーをプレイヤーの頭の中で整理・統合させる必要があります。

この一連の作業のことを「振り返りによる概念化(図1の第2象限)」といいますが、振り返りによる概念化には、誤った行動の再発防止とうまくいった行動の確実な定着には不可欠なものです。

ここで再度、図3を見てください。新しいことを習得するには停滞期を経験しなければなりません。停滞期ではプレイヤーの思う通りにレベルが向上しません。チャレンジするけど上手いかない。このような状況が続いてしまうとプレイヤーの効力感や自信が喪失し、離職という最悪の結果を招きかねません。

停滞期をうまく乗り越えるためにも、第四にフォロワーにはプレイヤーを励ますという役割も担わなければなりません

ここで注意していただきたいのがコーチングの定義です。ビジネスの文脈におけるコーチングとは、コミュニケーションを図ることで対象の目標達成を図る技術とされていますが、ここでは、コーチングの定義を幅広い意味で使用しています。どちらかというとスポーツ選手のコーチの役割を想像してください。

まとめ

記事冒頭でも言及したように、多くの企業でビジネスマナー研修が実施されているにもかかわらず、実践とのギャップを指摘されています。その要因として、研修・講義と実践の分断化があげられます。図4の具体的行動を含む学習マトリックスの内容を漏れなく確実に踏襲していくことで分断化を防ぐことが可能になり、効率的にビジネスマナーを習得できるようになります。

具体的行動を含む学習マトリックス

図4 具体的行動を含む学習マトリックス


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執筆者紹介

宮崎照行(みやざき・てるゆき)(Training Office 代表) 中央大学経済学部を卒業後、人材開発系ベンチャー企業の参画に携わる。その後、衆議院議員秘書を経て、研修事業・人事コンサルティング事業を主な業務内容としたTraining Officeを設立。

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