HRトピック
福利厚生を利用した「第3の賃上げ」は、中小企業の人材不足解決の鍵となるか
2025.02.13
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人材不足の問題が年々深刻化している。売り手市場では大企業に人材が流れやすく、とくに中小企業では厳しい状態が続く。企業はこの問題をどのように打破すれば良いのか。その解決策のひとつとして関心を集めているのが福利厚生を活用した「第3の賃上げ」だ。
年明け以降、とりわけ中小企業の賃上げ機運が高まっている中、1月29日に都内で「#第3の賃上げアクション2025」新プロジェクト発表会が行われた【TOP写真】。当日はプロジェクトの発起人、福利厚生サービス提供会社のほか、実際に「第3の賃上げ」を行った中小企業が集まり、「中小企業における第3の賃上げ」について意見を交した。
【関連記事】
・企業と社員、双方にメリットがある「第3の賃上げ」とは?
・「食事補助上限枠緩和を促進する会」が衆議院議員へ要望書を提出。食事補助非課税枠の拡大が、今求められるワケとは?
「第3の賃上げ」とは?
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第3の賃上げで“実質手取りアップ”を掲げた関係者ら(ローンチ発表会で)
そもそも「第3の賃上げ」とは、従来の賃上げとは異なる、福利厚生を活用した新しい賃上げ手法だ。
給与とは異なり、福利厚生は一定の条件下であれば税金や社会保障の影響を受けない。給与で還元するよりも、従業員は実質手取りを増やすことができるのだ。
実質手取りが増え、企業の税負担も抑えられる福利厚生を「第3の賃上げ」と定義し、2024年2月には「#第3の賃上げアクション」としてプロジェクトが始動した【上写真】。
■「第3の賃上げ」のメリット
- 従業員は実質手取りの増加、企業は税負担の軽減など、双方にメリットがある
- 少額でトライできるため、企業規模問わず導入しやすい
- 福利厚生は、賃金よりもメッセージ性があり、定着率アップに貢献する
- 福利厚生の充実は、企業のブランディングや他企業との差別化にもつながり、採用力アップに貢献する
人材不足による中小企業を取り巻く状況
2024年、日本では高水準の賃上げが記録された。それでも中小企業は依然として厳しい状況に直面している。この指摘をしたのが、この日最初に登壇したエデンレッドジャパン社長の天野氏。エデンレッドジャパンは「#第3の賃上げアクション」の発起人でもある。
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株式会社エデンレッドジャパン代表取締役社長の天野総太郎氏
「昨年は33年ぶりに5%以上の賃上げを達成しましたが、物価の高騰もあり、実質賃金はマイナス成長に留まっています。さらに、国民の税金や社会保険の負担は増え続けている状況があり、昨年の賃上げは『実感なき賃上げ』であったと言わざるを得ません」
「さらに、大企業と中小企業の賃金格差は拡大傾向にあります。今後、格差是正のために、中小企業に向けた賃上げの要請が入る向きもあり、中小企業の方々にとって大変厳しい状況であるといえます」
なぜ今「第3の賃上げ」が中小企業に広がっているのか
このような状況下で、福利厚生を利用した「第3の賃上げ」が、中小企業のあいだで広がりを見せている。
実際、エデンレッドジャパンの提供する食事補助サービスは、2021年比で新規契約件数が7.3倍に増加。そのうち9割は中小企業が占める。
「第3の賃上げアクション」賛同企業で同じく福利厚生サービスを提供しているフリーの相澤氏は、中小企業における福利厚生導入の増加について、次のように語った。
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フリー株式会社 エンパワーメントプロダクト事業部 福利厚生チーム 事業責任者 相澤茂氏
「人口減少、少子高齢化で、人材確保は今後さらに厳しくなることは明白であり、どの企業さまも危機感を抱いているという状況です。一方で、人手が不足していない企業にその要因を尋ねた中小企業庁の調査では、4位に福利厚生の充実が挙げられています」
「つまり、ここに挙がっている賃金の引き上げや働きやすい職場環境づくり、福利厚生の充実を図ることができれば、人材確保にもつながるといえます。そして、いきなり賃上げをすることが難しい中小企業さまにこそおすすめしたいのが、第3の賃上げです」
以前は大企業の贅沢品のような扱いだった福利厚生だが、中小企業にも導入しやすくなっているのだという。
「弊社も意外だったのが、5名から20名規模の企業さまにも多くのご契約を結んでいただいている点です。確かに少人数ですと、1人辞めることでのインパクトが大きくなります。こうしたことからも、あらゆる規模の企業さまに福利厚生が浸透してきたことを実感しています」
今回、新たに「#第3の賃上げアクション」に参画することになった、家事代行サービスを提供するベアーズの赤荻氏は、人材確保に向けて、問題は別のところにもあるという。

株式会社ベアーズ 社長室 Well-being推進チーム 赤荻未加氏
「今、共働き世帯は1,200万世帯を超えています。一方、東京商工会議所による『子どもを持つ場合にハードル・障壁となると思うもの』という調査では、1位が経済的な不安であり、2位は家事や育児の不安」という結果になりました」
「このような状況下で企業が求められているのは、結婚、出産、育児、介護といった、ライフイベントとキャリア形成を両立できるようにサポートすることです。つまり、福利厚生で共働き世帯への家事や育児の負担を軽減させることができれば、採用競争に大きくリードできるのではないかと考えています」
実際に福利厚生サービスを導入した中小企業の声
イベントの終わりには、実際に「第3の賃上げ」を行った中小企業3社も登壇し、導入の経緯や社員の反応、導入の意義などを語った。
▼ダイナミックマッププラットフォーム株式会社 人事部長兼広報課長 樋口慶 氏
オフィスが表参道に移転した際にランチの相場が高くなることから、社員の負担を軽減したいと考え、「チケットレストラン」を導入しました。会社側の負担は最小限で、従業員側のメリットは大きく、大変好評です。私は以前大企業に勤めており、社員食堂の恩恵を受けていました。
現状、社員食堂は非現実的ですが、チケットレストランであればランチ代の補助ができ、中小企業だからと見劣りすることもなく社員の満足度を上げることができます。福利厚生は投資です。特に若いエンジニアの採用は非常に厳しい時代ですので、給与だけではなく、福利厚生も重視しています
▼株式会社TECO Design 代表取締役 杉野愼 氏
弊社も60名程度の中小企業ですが、現在、「freee福利厚生 ベネフィットサービス」を導入しています。クーポンを通して社員の毎日の出費が軽減できる福利厚生サービスなので手軽に使えますし、実質手取りを増やすことは生活に直結することだと思います。
また、「私はこれを買ったよ」など、社内でコミュニケーションが活性化されたのは意外な効果でした。福利厚生は「中小企業だからやらない」のではなく、「中小企業だからこそやるべき」ことだと感じています。少ない負担で始められますし、大企業並みとまではいきませんが、待遇差を縮めるための手段のひとつになるのではないでしょうか。
▼レバレジーズ株式会社 総務部 佐々木杏優 氏
弊社はまもなく創業20年を迎えますが、今後はより一層、会社の根底を支える社員へのサポートを拡充させていきたいと考えており、そのひとつとして、昨年ベアーズさんの福利厚生サービスを導入しました。
家事代行、料理代行と、生活に直結したライフサポートで、実際に利用した社員からは本当に助かったという声が上がっています。人手不足の今は、人が企業を選ぶ時代であり、優秀な人材の確保はどの企業さんも課題のひとつではないでしょうか。給与以外の手当である福利厚生サービスを拡充させることは、採用や離職防止につながると思います。一緒に選ばれる企業になっていきましょう。
今回集まった3社はいずれも大きな手応えを感じているようだ。
「福利厚生は大企業のもの」なるイメージは過去のもの。人材不足や人材流出に悩む中小企業は、一度福利厚生にも目を向けるときなのかもしれない。
イベント概要
イベント名:中小企業にこそ、福利厚生で賃上げを「#第3の賃上げアクション2025」新プロジェクト発表会
日時:2025年1月29日(水)
場所:エデンレッドジャパン本社(東京都港区)
主な登壇者:エデンレッドジャパン 代表取締役社長 天野総太郎氏、フリー株式会社 エンパワーメントプロダクト事業部 福利厚生チーム 事業責任者 相澤茂氏、株式会社ベアーズ 社長室 Well-being推進チーム 赤荻未加氏
参考情報
- “福利厚生”で実質手取りアップを実現「#第3の賃上げアクション」|エデンレッドジャパン
- 「チケットレストラン」https://edenred.jp/ticketrestaurant/
- 「freee福利厚生 ベネフィットサービス」https://www.freee.co.jp/benefit-service/
- 「Well-Being」https://www.happy-bears.com/special_corp
※編集部注:本記事はエデンレッドジャパン社による寄稿です。画像の著作権は同社に帰属します。
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