2024年版日本における「働きがいのある会社」 ランキングベスト100 記者発表会レポートvol.1
2024年の働きがいはやや低下傾向。新たなトレンド「静かな退職」の関連性と対策とは?
2024.02.09
株式会社働きがいのある会社研究所(Great Place To Work® Institute Japan、以下GPTW Japan)(東京・港)は2月8日、「2024年版日本における『働きがいのある会社』ランキング」を発表した。
同日に開催された記者発表会では、同社代表取締役社長の荒川陽子氏が今回のランキングの傾向と、トレンドとなっている「静かな退職」について解説。株式会社タイミー(東京・港)執行役員緒方仁暁氏とのトークセッションも行われた。
GPTW Japanは、エントリーした653社にアンケート調査を行い、調査結果が一定水準を超えた「働きがい認定企業」の中から、特に働きがいの水準が高い上位100社を「『働きがいのある会社』ランキングベスト100」として選出している。2024年版ベスト100の第1位は、昨年に引き続き、シスコシステムズ(大規模部門)、コンカー(中規模部門)、あつまる(小規模部門)であった。
vol.1では、荒川氏によるランキング結果の解説についてレポートする。
関連記事:2024年版「働きがいのある会社」ランキング 1位にシスコシステムズ(大規模)、コンカー(中規模)、あつまる(小規模)
- 目次
-
- ランキング結果の解説
・前年からの変化|大規模・中規模は低下傾向、小規模は下げ止まり
・設問ごとの変化|スコアが上がったのは「連帯感」
・設問ごとの変化|スコアが下がったのは「経営・管理者層」関連 - 新しいトレンド「静かな退職」
・「静かな退職」とは
・「静かな退職」に関するアンケート結果
・「静かな退職」が増える前に
- ランキング結果の解説
ランキング結果の解説
今年のランキングの参加企業の業界分布について荒川氏は、傾向は例年と大きな違いはなく、情報通信、IT系の企業が最も多いことを紹介した。
前年からの変化|大規模・中規模は低下傾向、小規模は下げ止まり
次に、2年連続で調査している企業の「前年からの変化」について傾向を解説。前回は「変化なし~小」、プラスマイナス2ポイントが最も多かったのに対し、今年は大規模部門と中規模部門においてスコアの低下が見られたという。その結果、全規模のデータで見ても「低下傾向」のボリュームが最も大きかった。
規模別では、大規模部門の「低下傾向」は30.3%、「変化なし」がボリューム的には一番大きいが、「改善傾向」と「変化なし」がやや減少した。
中規模部門では、「低下傾向」のところの増加が「改善傾向」の増加をわずかに上回る。全体のボリュームとしても「低下傾向」が最も多かった。
小規模部門では、「低下傾向」と「変化なし~小」が減少して「改善傾向」が増加しており、小規模部門では改善傾向の増加が顕著だった。昨年、低下傾向が非常に大きかったのが小規模部門であったため、下げ止まりと見られる。
設問ごとの変化|スコアが上がったのは「連帯感」
次に、どういう設問のスコアがこの2カ年で上昇し、どういう設問が低下したのかを解説。
スコアが最も改善した「休暇がとりやすい」について荒川氏は「こうした柔軟な働き方への配慮は重要なテーマであるため、(改善が)推進されたことがうかがえる」と評した。
その他に改善しているのは、「特別なことがあれば祝い合っている」「楽しく働けると感じている」「誰もが認められる機会がある」「お互いに思いやりのある会社である」など、働きがいのあるモデルでは連帯感に当たる項目で、「お互いが自分らしく職場で連帯感、一体感を感じながら働けるということは、働きがいにおいて重要な要素の一つ」(荒川氏)という。
さらに、リモートワークが進む中、職場内のコミュニケーションについて各社が難しさを感じていた状況から、「実践的、実効的な施策を取ったこと、あるいは対面が増えてきたためでもあるかもしれないが、実践的な取り組みを進められたことがうかがえる」と解説した。
一方、低下した設問のトップ5には、経営・管理者層や経営といったキーワードが並んだ。
荒川氏は特に最も下がった設問「経営・管理者層が重要事項・変化を伝えている」に着目し、この設問がコロナ禍で一度上がったことを挙げ、「有事の際、緊急事態に陥ったときに会社が今どういう状況にあり、どういう方向性に行くのかということを多くの経営者、管理者層が従業員に語りかけたことでこの設問のスコアが上がったが、コロナ禍も落ち着いてきたことで、従業員に語りかける施策のやり方や頻度を変更した、緩やかにしたことが考えられる」と見解を述べた。
加えて、こうしたメッセージを伝えることや、働きがいを上げるために同じ施策をやっているだけではスコアが下がるため、「やり方を常にアップデートしていくことが重要。従業員は経営・管理者層の振る舞いを見ているため、しっかりと対策を打っていくことが必要だ」と指摘した。
新しいトレンド「静かな退職」
「静かな退職」とは
「静かな退職」とは、仕事に全力投球をすることをやめて必要最低限の業務をこなす働き方のことである。
退職という語感から既にやめている人もしくはやめようとしている人を指すと思われがちだが、もともとアメリカで2022年に説明動画※が公開されたことから始まったQuiet Quittingの日本語直訳だ。その意味するところは、いま働いている状態だが、仕事に没頭せず、最低限のこと、言われたことをやる働き方を自ら選んでいる人、仕事に意義を見出さない働き方のことである。
似たような概念に「ぶら下がり社員」があるが、こちらは日本型のメンバーシップ型の雇用の慣行の中で、キャリアオーナーシップやグローバルに通用する専門性などを自ら獲得する機会を得ることができず、結果的に日本の構造の中でぶら下がってしまうもので、中高年に多いとされる。両者はやや異なる概念である。
※「静かな退職」という言葉を作った、アメリカのキャリアコーチであるブライアン・クリーリー氏が2022年に自身のTikTokとYouTubeでこの言葉を説明する動画を公開した。
「静かな退職」に関するアンケート結果
「静かな退職」は今アメリカで若手に広がっており、日本でも同じく若手へ徐々に広がっていると言われている。実態として、「日本の若手人材は、自ら選択してそういう働き方をしている」(荒川氏)
GPTW Japanでは、「静かな退職」がどういうものなのか、どういうきっかけで始めたのか、どういう年代に存在しているのかをアンケート調査した。結果、「静かな退職」を選択している人たちは、各年代にそれぞれいることが分かった。
選択の理由については、「プライベートの時間を確保できる」「仕事のプレッシャーがなくなり、心身の健康を保てる」といったものが挙がり、日本においても若手で既に「静かな退職」を選択している、実践、実行している人が一定数存在するということが判明した。
ではなぜ従業員が「静かな退職」という働き方を選ぶのか、そのきっかけは個人というよりは企業側にあると荒川氏は指摘する。
「もちろんプライベートを優先したいという個人の要求、自分のやりたい趣味に没頭した方が時間の使い方としてメリットがあると思う若手が多いということも一定程度あるが、『努力しても報われない』という項目が選択のきっかけとして2番目に入っている」
アンケートからは、入社後に、働いて頑張ったとしても、金銭的もしくは非金銭的なインセンティブがないため「プライベートを優先する」という選択をしてしまう若手が一定数いることが明らかになった。
「静かな退職」が増える前に
企業としては従業員が「静かな退職」を選択してしまう前に改善の手を打っていく必要があると荒川氏は指摘する。
なぜならば、「静かな退職」を一度選んでしまった人は、この先企業の施策や働き方に変化があったとしても、恐らく「静かな退職」という働き方は変えないと思われるためである。
「選んでしまう前が重要であって、『静かな退職』を選んでしまった人たちが一定数増えてしまったら手遅れだと思った方が良い」(荒川氏)
まだ日本において若手の働き方のマジョリティであるとは言えないが、徐々に「静かな退職」が増えているのではないかというのが、荒川氏の見立てだ。こうした人たちが増えていく前にしっかりと手を打つ必要があるとして、対策のポイントを次のように述べた。
「プライベートの充実を確保できるということは、働きやすさがあるということです。一方で、やりがいも大事。働きやすさとやりがいが両方そろっているのが働きがいのある会社です。いきいきした職場、働きがいのある職場にしなければならないが、現状は、ぬるま湯職場だったりしょんぼり職場だったりする現実に、「静かな退職」を選ぶ人たちが徐々に発生してきている。
そこで、一人一人のやりがいをどうすれば高められるかということが、非常に重要なポイントとなる。そしてやりがいを高めていく上では、上司と部下の信頼関係が一つの大事なポイントになります」
さらに具体的な対策を考えるうえで、働きがいのある会社が普段行っている取り組みからヒントを見出そうと、荒川氏とタイミーの緒方氏によるトークセッションが行われた。
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■働きがいが「静かな退職」を防ぐ|荒川氏✕タイミー緒方氏
株式会社タイミー(東京・港)執行役員緒方仁暁氏【写真左】と荒川氏によるトークセッションの様子を紹介する。「静かな退職」の具体的な対策を考えるうえで、働きがいのある会社が普段行っている取り組みからヒントを探った。
【おすすめポイント】
・働き方の多様化がもたらした「静かな退職」
・タイミーの働きがいをつくるもの
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