残業しない仕事の進め方
ムリ・ムダ・ムラを解消 「ムダ」をなくして仕事量を減らす
2015.07.10
去る4月3日に、ホワイトカラーエグゼンプション(残業代ゼロ制度)※1が閣議決定されたことは記憶に新しい。せちがらい世の中だと捉える向きもあると思うが、これを機に労働のあり方を見つめなおすことは悪くない。
事実、2013年度の日本の労働生産性※2はOECD加盟34ヵ国中22位と決して高い水準とは言えないことからも働き方の改善が必要であると言える。自社の生産性向上は、多くの人事担当者が抱えている課題のひとつ。解決に向けたヒントとなるべく、「残業しない仕事の進め方」について考えてみたい。
※1 労働時間と報酬とを連動させず、仕事の成果に対し賃金を払う仕組み。安倍政権では「高度プロフェッショナル制度」と呼び、2016年春の導入を目指している。
※2 GDPを就業者数で割った数値(公益財団法人日本生産性本部の統計)
強い意志が残業を減らす
いつも朝早くから夜遅くまで忙しく働いていても、会社が指定するノー残業デーには早く上がって習い事や飲み会に出かける人は少なくない。また、出張のフライト時刻が決まっている場合や、決められた時刻までに保育園に子どもを迎えに行かなければならないケースではその時刻に遅れたりはしない。
言うまでもないが、タイムリミットが決まっていると、人は「スピード」を基軸として働く。しかしその制約がなければ、プロセスやアウトプットの質を重視すると同時に無意識のうちに自分にとって快適なレベルにスピードを調整して仕事を進めてしまう。
日本人は仕事のクオリティにこだわる傾向が強いと言われている。しかし、顧客満足やワークライフバランスの観点から考えると、スピーディーに仕事を完成させることも大切である。その意識を強く持てば、デッドラインがなくても仕事を早く片付けられるはずであるが、そのためには、『仕事のムリ・ムダ・ムラ』を徹底的に解消していくことが必要になる。
ムダを削ぎ落として「仕事の量を減らす」
日々の仕事には無数のムダが溢れている。例えば、定例の会議。議論するトピックやその議論に必要な情報が乏しければ、それは時間のムダとなる。また、一回の会議のためだけに手の込んだ資料を作り込むこともムダである。多くの人が薄々気づきながらもその仕事が習慣化していると、そのムダを思い切って指摘することは難しい。しかし、ちょっとしたムダの積み重ねが大きな負担になってしまうため、看過すべきではない。
さて、そうしたムダを削減するためには次の二点を意識する必要がある。
(1)業務の目的・ゴールの明確化と最適な作業デザイン
例えば定例会議は、その会議を開催すること自体が目的化してしまい、本来の目的が曖昧であることが意外に多い。もし、会議の目的が意思決定であればそれに必要なメンバーだけを招集すればよいし、単なる情報のシェアであれば電子媒体などでも代替できる。これまでの慣習に捉われず目的に応じて仕事をデザインすることでムダを省けるようになる。
(2)作業の単純化
仕事を丁寧に進めようと考えるうちに、業務プロセスの複雑化やオーバークオリティになる事例は多い。また、似たような作業を重複して行っているケースも散見される。個々の作業について、「本当に不可欠なものか」「簡略化できないか」という視点から改めて問い直し、余分なものを排除することで仕事の総量を減らすことができる。
(「ムラを減らす」「ムリをなくす」方法については、後編に続く。)
執筆者紹介
桐田博史(きりた・ひろし)(ブライトゲート株式会社代表) 大学卒業後、国内大手自動車メーカーにて11年HR領域を幅広く担当。その後、外資系トータルヘルスケア企業の採用部門において新卒・ミッドキャリア・ハイキャリアMBA等の採用業務や新人トレーニングなどをマネージする。2014年7月、ブライトゲートを設立。
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