実録・ワークスタイル変革
「働き方革命」ここにあり!注目を集めるネットワンシステムズの取り組みとは?
2016.08.19
世界の最先端技術を取り入れた情報インフラの構築と関連サービス、戦略的なICT利活用を実現するノウハウを提供しているネットワンシステムズ。“ICT利活用の匠”として、自ら「働き方革命」を実践している同社の人事制度について、経営企画本部人事部の下田英樹部長に詳しく聞いた。【トップ画像:6人掛けの大型テーブルが並ぶスペースは、バーベキューでワイワイ話し合いする風景をイメージし「Camp Fire」と呼ばれる】
自分たちでまず実感しなければ、というトップの強い意志
経営企画本部人事部の下田英樹部長
生産性アップや過重労働削減のため、2009年ごろから人事制度改革に取り組み始めた同社。改革が加速したきっかけは、2011年に起きた東日本大震災後の計画停電だった。顧客の勤務時間シフトに伴い土日や夜間に勤務する社員が増えたことで「このままでは休日出勤や残業時間が青天井化してしまう」危機感を持った、という下田部長。「わが社の場合は、全員同じ時間に働くことを前提にした制度は成り立たない。各業務の特性によって働き方を工夫できる制度にしていかなければ」という想いを強くしたという。
ICT業界においては目まぐるしく技術やサービスが進歩、拡大しており、同社にとっても“成長の踊り場”だった時期でもある。働き方を変えて生産利益率を上げる、という経営陣の判断もさることながら、社員の間でも仕事と育児、また介護などを両立できる仕組みを求める機運が高まっていたのも影響した。
人事制度改革が成功するか否か、鍵を握るのはトップの考え方だと言われている。同社の場合は「顧客に提供しているものの利便性や効果について、自分たちでまず実感するのが重要」という明確な経営陣の意思があり、トップダウンで「働き方革命」に着手。「走りながら考える」という言葉通り、まずは制度や環境を整え、社員の意識を変えていく道を探った。
改革には紆余曲折あり!実態に合わせて舵を切りなおした経験も
オフィスはフリーアドレス。個人に与えられているスペースは小さなロッカーだけだ。
ワークスタイルの変革に必要な要素として同社が考えたのは「ICTツール」、「ファシリティ/環境」、そして「人事制度」。環境面では2013年5月に、天王洲から丸の内へ本社が移転。個人の決まったスペースは小さなロッカーだけ、というフリーアドレス化されたオフィスで、どこでも働ける環境が整っていく。一方で、天王洲にはバックエンド部門が残ったため、物理的な距離を埋めるにはICTの活用が欠かせなかった。結果として、自然にICTを介した質の高いコミュニケーションスキルが、社員の中で養われていくこととなる。
さらにICTツールと新オフィスがもたらす新しいワークスタイルには、人事制度の改善も必要不可欠。その改革の柱となったのは「テレワーク」、「フレックスタイム」、「シフト勤務」の柔軟な組み合わせである。
このスタイルができるまでには紆余曲折もあった。当初は一部の上位エンジニアに限っていた裁量労働制の拡大と、テレワーク制度の導入、成果重視の報酬体系への変更をパッケージ化して適用する予定だった。スピード重視の社風だけに、これらの制度改革について社員向けの説明会も開いていたが、裁量労働制が実態に合わないことが分かってきた。
「地方のエンジニアは東京ほど分業が進んでおらず、一人の社員が担当する守備範囲が非常に広い。新しい技術にもどんどん対応しなければならないし、特定の技術を持った社員に案件が集中する傾向もあった」。この状況では、時間外手当が労使協定に基づいて固定化されている裁量労働制を導入しても、社員の中では不公平感が広がってしまうだけ。そう考えた人事部は経営陣と再び交渉を重ね、代わりに「フレックスタイム」制度を導入するよう舵を切りなおした。
オープンな空間での打ち合わせ。ふらっと通りかかった社員が自由に意見を交えることができる。
裁量労働制は一部の職種に限ってしか導入できなかったが、フレックスなら全職に適用できる。また1ヶ月の総労働時間を管理しながら働く、という点でも、状況に応じて柔軟なスケジュールを立てられるメリットがあった。「当時はフレックス制度を辞める会社も増えていました。しかし社員には、繁閑に応じて働く時間を工夫するという、前向きな感情を持ってもらいたかったですし、社風にもあっていると思いました」。現在はコールセンター業務や夜間のネットワーク構築作業などはシフト勤務、それ以外の社員にはフレックス勤務を導入する使い分けを行っている。
人事部自らが新制度を先行導入し、トライ&エラーを繰り返した
人事制度改革の重要な柱のひとつ「テレワーク」の導入には、当初、マネージャークラスを中心に賛否両論があった。「見えない場所で働いている部下を、どうやってマネジメントすればよいのか」という率直な意見もあれば、会社に来て働くのが当たり前、という固定概念も強かったからだ。
そのため、まずは人事部とプラットフォーム部、さらに任意でトライしたい社員を集めて3か月間、テレワークを先行導入。「もともとITリテラシーがそれほど高くなかった」という人事部自身が、いちはやく仮想デスクトップやiPadなど新しいツールやハードウェアを使いながら制度設計に乗り出した。しかし最初からすべてうまくいくわけはなく、「これで本気で生産性を上げようとしているのか?」と揶揄されることもあった。それでも「最初はだれか手を汚す人が必要」と割り切ってトライ&エラーを継続。メリット、デメリットを洗い出したおかげで、半年後にはきちんと制度化して全社員に導入できた。
テレワークに対するありがちな不安や疑問に対しては「ガイドブック」を作成しているほか、引き続き、社内報なども利用しながら理解と周知に努めている。また、マネージャークラスとは何度も意見交換を重ね、勉強会も継続。必要に応じて、随時、仕組みの見直しも進めている。
導入から5年が経過し、同社の中ではすっかり定着感のあるテレワーク。上下間の信頼関係が構築されてくると、事前連絡や業務内容のレポートを厳格に管理しなくても成果が見えるようになったのは良い傾向だという。一方で「体調が悪いので今日は自宅でテレワークに切り替えたい」という場合は休暇を取るべきであり、慣れによる“運用の緩さ”が弊害を招く事例も目に付くようになった。
ガイドラインでは上司のマネジメント責任として、テレワークの事前申請や報告がない場合や、成果が見えない場合には利用停止を命じることもできる、と定めている。人事部としては当初、このような利用停止事例はないものと考えていたが、実際には数件、行われていた。しかし中には「病み上がりの社員がいきなりテレワークをするよりは、まずは会社に決まった時間、来る癖をつけた方がよい」という、前向きな理由だった例もあり、判断の軸がぶれないよう考えのすり合わせを行っている。
これからが勝負!目指すはもっと質の高い働き方
人事制度改革の結果として、アンケートにおける「ワークライフバランスの実現度」では、ほぼ半分の社員が「実現できている」、「まあ実現できている」と回答した。一般的な会社の比率よりは高い値だが、人事部としては6割以上の社員にまで満足度を上げていきたいと考えている。
会社としての体質強化を図り、社内でナレッジを貯めようということから業務委託や外注費を抑制する時期にある、という同社。全体のERPを刷新して効率化を進めるのにもう少し時間がかかることもあり、結果的に時間外労働が増え、ワークライフバランスの満足度が下がる傾向も見られるという。
「日々、利益率や生産性のアップを目指して努力を重ねているわけですが、まだまだ頑張れる余地はあると思います。生産性を上げることはお客様への還元につながるので、ハードルが高いことは知りつつも会社としては挑戦し続けなければいけません」。
社員に働き方について問うアンケートでは「テレワークを計画的に使うため、先のスケジュールまで考えるようになった」や「ICTコミュニケーションがとれる環境で働けて良かった」というポジティブな意見が多数、見られているのも確か。生産性のアップや労働時間の短縮を図りつつ、チームの連携も取れた質の高い働き方を実現するため、「これからが本当の勝負」と語る同社の取り組みに今後も注目していきたい。
執筆者紹介
吉岡名保恵(よしおか・なおえ)
和歌山県の地方新聞で記者として勤務した経験を活かし、結婚、子育てを経てフリーライターとして独立。2015年には記者や編集職出身の女性ライターでユニット「Smart Sense」を結成し、仕事の幅を広げている。人の心を読み解く人物インタビューを得意とするが、企業や教育、医療関連の取材も多い。
(http://officenaoe.her.jp/ )
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