企画

吉本新喜劇 酒井藍さん特別インタビュー(後編)


母性を持って接する。新喜劇初の女性座長・酒井藍が語るリーダー論

2019.10.09

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60周年を迎えた吉本新喜劇で、初の女性座長として活躍する酒井藍さん。特別インタビューの後編では、女性座長だからこそできること、組織をまとめる女性リーダーとして大切にしていることを聞きました。【取材:2019年9月12日 @人事編集部 大西里奈】

※前編記事:リーダー論は小籔千豊さんたちが教えてくれた。新喜劇初女性座長のモットー(前編)

酒井藍(さかい・あい)

1986年9月10日生まれ。奈良県出身。奈良県警に就職後、幼い頃からの憧れだった吉本新喜劇への夢を断ち切れず、2007年に吉本新喜劇のオーディションを受験、入団。2017年に吉本新喜劇初の女性座長となる。ぽっちゃり体型を生かして「そうそう、ブーブー、ブーブー。私、人間ですねん」とノリツッコミするギャグが人気。

目次
  1. 座長になってから時間が経っても、感謝の気持ちを高めていく
  2. 座長が母性を持って接したら、座員も思いを返してくれるはず
  3. 親子愛、恋愛、女のあるある。女性だからこそ作れる新喜劇もある

座長になってから時間が経っても、感謝の気持ちを高めていく

――座長になってからの2年間でできるようになったこと、まだできていないことはありますか。

今もできないことだらけですよ!座長として1カ月に2本、毎回新しい新喜劇を作らないといけないので、悩みは無限に出てきます。しかも舞台は生でお客さんは毎回違うし、やり直しもきかないですからね。

この2年でできるようになったことは、スケジュール管理ですかね。初めは座長としての打ち合わせの時間に追われて、いっぱいいっぱいだったんですが、「ここは打ち合わせする、ここで寝る、ここはしっかりごはんを食べる」と時間を区切っていかないとしんどくなる。これは(先輩座長の)すっちー兄さんに教えてもらったことです。

吉本新喜劇の座長の(左から)小籔千豊さん、川畑泰史さん、すっちーさん

先輩座長の(左から)小籔千豊さん、川畑泰史さん、すっちーさん。酒井さんを含めて計4人の座長が、持ち回りで新作の新喜劇を作っている

組織のリーダーって、時間が経つとだんだん感謝の気持ちが下がっていくと思うんです

座長を始めたころは「座長だからしっかりしなきゃ、みなさんに『ありがとう』の気持ちを持たなきゃ」と思えますが、座長になったら得することもあるし、自分が好きなお話を作って、自分でキャストを決める権利もある。普通なら、長年リーダーをやっているとだんだんふんぞり返ってしまい、感謝の気持ちが落ちていくと思うんです。そこは落ちないようにしないとな、上げていかないといけないなと心掛けています。

酒井藍氏

座長が母性を持って接したら、座員も思いを返してくれるはず

――女性座長として気を付けていることはありますか?

こんなん言っていいか分からないんですけど、女性座員の体(生理)のことですかね。

女性座員は舞台もそうですけど、ロケで川の中にばしゃばしゃ入っていくとかもあるし、しんどいやろうなと思っていました。男性座長では「あの子、生理でつらそうやな」とはなかなか気付けないはずですし、女性座員が男性座長に「お腹が痛い」と言うのも難しい。私は女なので直接言ってもらいやすいと思いますし、気付いたときは自分からもなるべく声を掛けるようにしています。

――「女性が新喜劇の組織をまとめる」という点で苦しんだことは?

もちろん苦労がないとは言い切れないんですが……それよりも、座員に対して母性が生まれ始めました(笑)。年上の先輩方がいるから今の新喜劇があるので、先輩には感謝の気持ちで「いつもありがとう、かわいいお兄ちゃん、お父さん」と。後輩もみんな「かわいいな」と思っているので、「苦労」というよりも「母性」です。ハゲてる座員も、もう赤ちゃんに見えてくるんです(笑)。

私の新喜劇には、優しい人に出てほしいんです。私が母性を持って接したら、相手もその思いを返してくれるはず。座長が座員から「もっとこうしたら?」とアドバイスをもらったら、「私、絶対負けない!ふん!」じゃなくて、そのアドバイスを一度受け入れてから自分の思いを伝える。相手も、私のことをもっとよくしようと思って意見を言ってくれているので。「上の立場になったから、みんなの意見聞きません!」とかは、男とか女とか関係なくだめだと思うんです

酒井藍氏

他にも、舞台初日で忙しいときはなかなかできませんけど、できるだけ座員の様子を見るようにします。女性座員だけでなく、男性座員がしんどそうにしているときにも「しんどくない?」と声を掛けています。

親子愛、恋愛、女のあるある。女性だからこそ作れる新喜劇もある

――今後はどんな新喜劇を作りたいですか。

いつでもお客さんに「お話が面白いな」と思ってもらえる新喜劇にしたいです。

親子愛、恋愛、女のあるあるとか、女性だからこそ作れる新喜劇もあるんです。女子が男子にされてみたいこととか、「こんな女は腹たつな」とか、「お父さんに対してこんな気持ちになるときもあるよな」とか、そんなことを描けたらいいなと思います。

「男性座員が女性座員を後ろから抱きしめる」とかって、男性座長では恥ずかしくて書けないんですよ。私は、自分が男性にしてほしい妄想を他の座員たちに演じてもらうのが嬉しくて(笑)。そこに一番権力を振りかざしてるかもしれません。これ、パワハラかもしれないんですけど、ここだけ演出に熱を入れます(笑)。

酒井藍氏

――そこが女性座長としての、酒井さんの個性なのかもしれませんね。

いやいや、先輩座長の笑いの装備ってもっとすごいですから!私はもう、何も持たず裸で「わー!」って走ってるみたいな感じなので(笑)。

まずはちゃんと新喜劇の基本を作れるように頑張っています。自分の色って言っても、土台ができていないとだめなので。今は新喜劇の作り方を学んで、いつか「藍ちゃんの新喜劇」はこれやな、と思ってもらえたらいいなと思います「女性だから、女性なのに面白かった」ではなく、一人の座長として「面白かったな」と思われるようになりたいです。

――最後に、いろいろな場所で組織を束ねている女性リーダーに向けて一言お願いします。

女性のリーダーだとやっぱり周りから、やいやい言われることもあると思うんです。でもその分、優しい味方もめっちゃおる。そっちに目を向けてみてもいいんじゃないかなと感じます。

周りにやいやい言われるからって、無理に「男性に負けないようにしないと!」とは考えなくてもいいんです。男性リーダーでも女性リーダーでも、やいやい言ってくる人は必ず出てくる。女性だからではなく、一人のリーダーとして目の前の仕事に向き合うのがいいのかなぁ、なんて思います。

リーダーとして重大な決断をするときは、やいやい言う人に「ほんならお前も、この役職で決断してみい!できるんか!」と言い返せるくらいの気持ちで、気合いを出しちゃいましょう!リーダーはこれくらいの気持ちでいいんじゃないかなと思っています。

女性リーダーどうこうではなく、目の前の仕事に向き合い続ける

関西出身ではない筆者が新喜劇の大ファンになった理由は、仕事やプライベートでつらいときに新喜劇を見て、心から大笑いしたり、ちょっとほろっとしたりできる時間に救われたからでした。

酒井さんは座長として組織をまとめながら、自分ならではの新喜劇を作るために日々前進しています。女性リーダーどうこうではなく、目の前に仕事に全力で取り組む。そんな酒井さんの思いを知り、来週の新喜劇がもっと楽しみになりました。

酒井藍さんも出演する「吉本新喜劇ワールドツアー ~60周年それがどうした~」が11月からは海外にて公演!

詳細はこちらから。
https://shinkigeki-60th.yoshimoto.co.jp/

【編集部より】
組織のリーダーの在り方について考えた記事はこちら

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