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学生向けキャリア支援団体「エンカレッジ」に聞く、最新の就活動向


高学歴学生が明かす、好印象な企業の特徴2つと就活へのホンネ

2019.04.25

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マイナビの調査によれば、企業が新卒の採用活動にかける平均費用は、上場企業で約1,532万円、非上場企業で約372万円となった(※1 株式会社マイナビ「2019年卒マイナビ 企業新卒内定状況調査」)。特に中小企業にとっては、新卒採用は社運の懸かる重要なプロジェクトだ。自社のビジネスを牽引するような優秀な人材が採用できれば、数年で業績が大きく向上することもある。

こうした優秀層の人材は学生時代から社会に出て企業と接していることが多く、自社を実際以上に良く見せるようなアピールは通用しない。 では彼らはどのように就活に取り組み、どんな視点で企業を選んでいるのだろうか。学生向けキャリア支援団体「エンカレッジ」の早稲田大学支部で代表を務めた沖汐友弥さんに話を聞いた。【取材:2019年3月4日】

目次

納得して就活を終える学生を増やしたい。

学生が主体となり、同じ学生にキャリア面談を行うNPO法人エンカレッジ。全国47都道府県、72の大学で活動し、約20,000人の学生をサポートする。早稲田大学支部には45人のスタッフが所属し、1,000人の学生を支援してきた。

2018年度の支部長を務めた沖汐さんは、早稲田大学大学院創造理工学研究科の修士2年生(取材当時)。2019年卒として就活に取り組み、10社から内定を獲得した。就活中、エンカレッジのメンターに支えられた経験から、早稲田大学支部の支部長に就任。利用者を集める傍ら、自身も20年卒の学生とキャリア面談を重ね、納得感のある意思決定をするためのアドバイスをしてきた。

キャリア面談を受ける早稲田生は、どんな悩みを持っているのか。沖汐さんによれば、初めは「選考対策がしたい」という理由で会いにくる学生が多いという。だが面談で話を聞いてみると、十分な情報を持たずにキャリアを考えていることが多い。そこで面談を重ねながら「どんな仕事がしたいのか」「何を大切にしたいのか」を考え、必要な情報を取りに行くためのアドバイスをしていくのだ。

学生のキャリア面談

沖汐さんが担当したある大学院生は、「市場価値が上がる仕事だから」という理由でデータサイエンティストを志望していた。だが面談でデータサイエンスへの理解が十分ではないと感じた沖汐さんは、実際に企業と接触してみるようにアドバイスをする。彼はOB訪問やインターンシップを通じて仕事の理解を深めるうちに、エンジニアとしてプロダクトを作ることよりも、リーダーとして組織をまとめることが好きなのだと気付いた。その結果、データサイエンスよりも事業創造ができる企業を志望するようになったという。「決して誘導するわけではないが、本人が納得できる選択にたどりつけるように、欠けている視点や取るべき行動をアドバイスしてきた」と沖汐さんは振り返る。

優秀層の注目を集めるIT業界。

優秀層の学生はどのような仕事に関心を持っているのか。沖汐さんによれば、文系・理系を問わずIT関連企業や商社を志望する学生が多いという。エンカレッジが2020年卒の学部生・大学院生に行った調査でも、IT企業は男子学生の志望度1位、女子学生の志望度2位、また商社は男子学生の志望度3位、女子学生の志望度4位となった※2 NPO法人エンカレッジ「2020年卒大学生意識調査」)。

自身がベンチャー企業志望だったこともあり、沖汐さんは多くのIT業界志望の学生にアドバイスをしてきた。IT志望の学生は、情報分野を専門に学んできたタイプと、漠然とIT業界に憧れているタイプに分かれる。前者は「クラウドサービスを開発したい」というように志望動機が明確な場合が多いが、後者は「これからはITの時代だから」といった漠然とした動機を持っていることが多い。

沖汐さんは後者のタイプに対し、インターンシップやOB訪問で企業と接点を持ちながら、自分の好きなこと、やりたいことを考えるようにアドバイスをする。志望理由が明確になると、彼らは「優秀な人と一緒に働きたい」という理由でITベンチャーを志望するタイプや、「大きい仕事がしたい」という理由で大手のSIerを志望するタイプに分かれていくという。

最上位層の学生が、好印象を持つ企業の特徴。

中小企業では、優秀な新入社員の採用が大きな成長につながることも珍しくない。では優秀層の学生は、就活を通じて企業のどんなところを見ているのか。沖汐さんは2つのポイントを挙げる。

1.選考を通じて学生にも気付きがある。

沖汐さんは「自分にとってメリットのある時間だったか」が学生の印象を左右するポイントだという。

企業の姿勢が明確に表れるのが、面接のフィードバックだ。学生のキャリア観形成につながるようなフィードバックがあると、ただの選考で終わらず有意義な時間だと思える。話し方や表情・姿勢などの指摘にとどまってしまう企業もあるが、このレベルの指摘は場数を踏んだ優秀層の学生には響かない。自分の価値観や目指す人物像に、新しい視点が得られるようなフィードバックがあると、彼らにとっても有意義な時間になる。

沖汐さん自身も、選考中のフィードバックで新しい気付きを得た経験がある。人材業界の企業のインターン選考に参加した際、沖汐さんは面接官に「集団としての一体感がある環境に身を置きたい」と伝えた。すると面接の最後に「本当は一体感をつくる人間になりたいのでは」と指摘された。この言葉が、目指す人物像を考え直すきっかけになったという。

2.意思決定に必要な時間と情報が確保される。

優秀層の学生は、複数の企業から内定を獲得することも多い。選考の早いベンチャー企業であれば、内定が出揃ってから時間をかけて企業を選ぶことができる。代表や社員と会って会社への理解を深められることもある。

一方、大手企業の場合、内定をもらってから数日で意思決定を迫られることが多い。学生は入社の判断材料となる情報を、内定が出る前に集め切らなければならないのだ。とはいえ選考が続いている段階で、企業と本音で接するのは難しい。沖汐さんは「情報が増えれば必ず学生の判断の精度が上がるとは言えないが、選考直後の緊張感のある時期ではなく、余裕のある時期に意思決定できるようにしてほしい」と言う。

優秀層の学生は、採用担当者が考える以上に、企業と向き合い、仕事の理解を深めようと努力している。学生の意思を尊重し、成長につながる時間を提供していくことが、彼らに魅力を感じてもらう第一歩になるはずだ。

キーワード一問一答 最上位学生の本音 

最後に、新卒採用に関連するサービスや最近のバズワードを優秀層の学生がどう捉えているか、沖汐さんにコメントしていただいた。

1.就活ナビサイト

志望業界を問わず利用者が多いと感じるのはONE CAREERです。ベンチャー志望の学生は、ベンチャー企業の掲載数が多いGoodfindを使うことが多いです。

また、ナビサイトを使わずに会社名を調べて直接連絡を取る人もいます。MatcherやVISITS OBを使ってOB・OG訪問をする人も多いです。

2.逆求人サイト(Offer box、キミスカなど)

登録するかどうかは、志望している企業が利用しているかによると思います。大手志望であれベンチャー志望であれ、大切なのは自分が働きたい会社からのオファーが来るかです。

3.AI採用

学生は気にしていないと思います。もともと学歴フィルターがあるので、AIがエントリーシートを選考しても大差ありません。ただリクルートがAIによる選考を導入したとき、インターンやOB訪問で長くリクルートと接触していたのに、AIの判断で選考に落ちた学生がいました。この学生からはAIの選考に否定的な意見が聞かれました。

4.ユニーク採用(インフルエンサー採用、卒論採用など)

「卒論だけで応募できる」「SNSのアカウントだけで応募できる」という理由で応募のハードルは下がらないと思いますが、エントリーシートを書くのが面倒だと思っている学生の応募は集まるかもしれません。

5.経団連の「就活ルール」撤廃

漠然としか受け止めていない学生が多いのではないでしょうか。すでにルールはあってないようなものなので、学生の動きはあまり変わらないと思います。

【取材・編集:@人事編集部】

【編集部より】
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