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イベントレポート


スキルマップ策定の意義と可能性――“個人の能力評価”の枠を超え、“会社全体の共通言語”へ

2025.01.29

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近年、人的資本経営の重要性が高まり、従業員のスキルや能力を可視化・分析することは、適材適所の人材配置や生産性向上のための基礎となっている。一方、社内の部門ごとに求められる専門性は大きく異なり、部署に応じた適切なスキル制度の整備に課題を抱える企業は少なくない。

タレントマネジメントシステム「カオナビ」を提供するカオナビ(東京・渋谷)は2024年12月、人事担当者ら向けのユーザー会を開催した。ゲストに本田技研工業(東京・港、以下 Honda)認証法規部の担当者が登壇し、同社が自社内で構築したスキルマップ運用の事例を紹介。部門ごとの専門性に合わせたスキル評価やカオナビの活用法について実践例を共有した。

編集部注:この記事はカオナビ社から提供の寄稿レポートです。

目次
  1. 年間1,200時間あった勤務評定や人事戦略検討(異動、研修など)業務の工数を約80%削減
  2. 現場目線で、部門に応じたスキル管理の環境を整備
  3. カオナビを活用したスキルマップの作成
  4. イベント概要

年間1,200時間あった勤務評定や人事戦略検討(異動、研修など)業務の工数を約80%削減

スキルマップの作成とカオナビの活用について説明するHonda山﨑一明氏|@人事ONLINE

スキルマップの作成とカオナビの活用について説明するHonda山﨑一明氏

セミナーでは、Honda認証法規部の山﨑一明氏と滝田倫氏が登壇。2020年に「カオナビ」を認証法規部で導入、運用開始し、人材データを一元管理することで人材管理プロセスの効率化と自立型人材育成の環境を整備し、工数の削減につなげたことを紹介した。(※3部門で共同導入、運用は部門ごと)

もともとHonda社内では、人事関連データが複数のシステムに分散していたため、タレントマネジメントは各部門が独自で運用。カオナビ導入前の認証法規部は、Excelによる手作業での管理が中心であり、人事に関連した業務に年間約1200時間の工数がかかっていたという。まずは、カオナビでデータを一元管理するところから始めた。

現場目線で、部門に応じたスキル管理の環境を整備

2020年の導入後は、部門独自のスキルマップと全社基準の両立を図りつつ、教育記録も含めた包括的な人材情報共有を実現することに注力した。山﨑氏は「認証法規部の目指す姿は自立型の人材を創出できる環境の整備を考えており、データの一元管理と見える化をしておく必要があった」と背景を説明する。
スキルマップ整備にあたり、Hondaでは以下の3種のシートを作成した。

Hondaが作成した3種のスキルシート|@人事ONLINE

  •  ①部門固有の作業項目を整理した「作業遂行力スキルシート」
  •  ②全社横断で必要となる能力レベルに対応した「業務推進力スキルシート」
  •  ③全社スキル基準と連動する「マネジメントスキルシート」

①の「作業遂行力」は、日々の業務に関連したスキルをまとめており、大中小の専門作業熟練度を設定。②の「業務推進力」は全社で定められた能力レベルに合わせ、部門ごとの専門性レベルの定義を設定している。例えば認証法規部の場合、①では衝突試験やブレーキ試験などを行える能力など部門特有の多様な専門性を反映したスキルシートだ。③は管理職登用のためのコンピテンシーなど、マネジメントスキルを測る内容を網羅した。

①、②について、スキルマップの作成に着手した2018年当時は、専門性の幅が広く、スキルも部門ごとで多種多様なことから、全社でのおおまかなスキルマップしか存在しない状態だった。そこで、現場へのヒアリングとフィードバックを重ねることで、運用可能なスキルマップを完成させた。取りまとめには1年以上かかったが、山﨑氏は「我々取りまとめる側も全ての仕事を100%把握しているわけではないため、現場でどういうことが行われているか細かいところまで見るようにした。当時の推進担当管理職が現場の納得と協力を得ながら進めた」と振り返る。

山﨑氏はスキルアップ作成について次のように考えを述べている。
今回のスキルマップ作成プロセスは、単なる「表づくり」にとどまらず、“現場が自分たちの専門性を自覚し、それを社内で共有する” ための重要なきっかけになったと感じます。特に、認証法規部のように高度な専門性を必要とする部門では、担当者しかわからない作業のツボや法規の更新情報など、他部門には見えづらい要素も多く、そうしたノウハウを見える化したことで、同業務をサポートする他部門との連携も取りやすくなるはずです。

また、マネジメントスキル③の項目は、今後の人材育成や組織づくりに大きなヒントを与えると思います。若手社員から見ても、管理職の要求水準を早い段階で把握できるのはキャリアをデザインするうえで有益です。組織が互いの強みや弱みを補完し合い、エンゲージメントを高める基礎になっていると考えられます。

総じて、このスキルマップは単なる“個人の能力評価表”ではなく、“会社全体の共通言語”として機能し始めていくように見受けられ、今後はこのマップをどう使いこなし、どのように更新していくかがさらなる課題になっていくと考えます。

カオナビを活用したスキルマップの作成

山﨑氏は、2020年にカオナビを導入した後、作成したスキルマップを活用するために使用するカオナビ機能を試行錯誤した経験も紹介した。
特に、①の作業遂行力は評価項目が450以上と非常に多いが、2024年のカオナビによる新機能「アビリティマネージャー」*1を活用し、①と②のスキルを作業レベルに応じて、管理できる仕組みを構築。③の「マネジメントスキル」は、評価シートをドラッグ&ドロップで自由自在に再現可能な「スマートレビュー」*2を活用した。また、評価者と被評価者の評価に乖離がある場合には1 on 1の実施時にすり合わせすることで、納得感のある評価フローを確立したことを紹介した。

スキル評価の流れ|@人事ONLINE

作業進行スキルシート|@人事ONLINE

カオナビ「アビリティマネージャー」を活用したスキルシートの画面。作業の習熟度に応じて、「エキスパートレベル」「習熟完了」など5段階で評価する

加えて、社内への浸透策として、被評価者・評価者向けの運用手引きをポータルサイトで共有。現場が手軽に参照できる状態を作り出した。従業員が自らスキル管理を行うことで、自己理解の深化や上司との対話を促し、結果として人材活用の精度向上や部門運営の改善にも期待を寄せる。

今後は、蓄積されたスキルデータを多面的に活用していく構想も示した。例えば、従業員個々人の評価タイミングをスキルの自己点検の機会として生かすほか、マネジメント層が部下の成長を把握し、適切な業務付与や異動を検討する材料とすることを視野に入れる。また、部門全体のリソース把握を通じ、残業予測や中途採用計画立案など、人事戦略上の判断材料としても活用していく方針だ。山﨑氏は「(スキル管理で)自己理解を深め、我々マネジメント側も従業員の成長をどのようにしていけばよいか、みんなで考えられるよう活用していきたい」と語った。

ユーザー会では、人事責任者や担当者、システム運用担当者が集まり、自社への応用方法や運用上の課題についても意見交換。事例共有を通じて、各社が自社特有の人事課題を明確化し、より効果的な人的資本経営の実践につなげようとする姿が目立った。

*1「アビリティマネージャー:スキルの定義付けから見える化までをワンストップで実現させる機能
参考:https://corp.kaonavi.jp/news/pr_20240307/
*2「スマートレビュー」:わずかな設定だけで評価制度が運用できる機能
参考:https://www.kaonavi.jp/func/smartreview/

イベント概要

本田技研工業株式会社様が実践 部門にあわせた「スキルマップの策定と運用」(カオナビ)|@人事ONLINE

イベント名:本田技研工業株式会社様が実践 部門にあわせた「スキルマップの策定と運用」
日時:2024年12月4日(水)
場所:渋谷ソラスタコンファレンス(東京都渋谷区)
登壇者:本田技研工業株式会社 品質改革本部 認証法規部 事業管理課 エキスパートエンジニア 山﨑一明、本田技研工業株式会社 品質改革本部 認証法規部 事業管理課 ゲストエンジニア 山王テック株式会社 技術支援2部 支援3課 滝田倫(敬称略)

編集部注:この記事はカオナビ社から提供の寄稿レポートです。

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