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残業削減・業務効率化・急成長をかなえる組織づくり


1日当たりの平均残業時間8分で上場? カオナビの組織改革の裏側

2019.03.15

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クラウド人材管理サービスを手がける「カオナビ」(東京・港区)が15日、東証マザーズに上場した。新機能の追加や利用企業数の増加などサービスは拡大中で、さらに上場準備にも時間をかけざるをえないが、社員の1日当たりの平均残業時間は8分らしい(2019年1月時点)。彼らは一体どうやって働いているのか? 限られた時間で成果を上げる組織文化のつくり方や社員のモチベーションの高め方を、同社執行役員でコーポレート本部の藤田豪人本部長に聞いた。【取材:2019年2月27日】

目次
  1. カオナビの売上高の推移と上場の狙い
  2. 平均残業時間8分が生まれるまで
  3. 逆算の方式とロジカルシンキング
  4. 組織文化についていけない社員を振り向かせる方法
  5. 定時退勤により社員のスキルアップや家庭との両立を促す
  6. 残業時間の短さが上場審査でもプラスに

カオナビの売上高の推移と上場の狙い

カオナビは社員の名前や顔、人事評価などの情報を一元管理するクラウドサービスだ。新規顧客の獲得と既存顧客の継続的なサービス利用を前提としたビジネスモデルとなる。同社の「新規上場申請のための有価証券報告書」によると、導入企業数は40社(2014年)から1,194社(2018年)に増加。売上高は2014年に5,122万円、2015年に1億1,341万円、2016年2億3,896万円、2017年に4億5,482万円、2018年に9億5,241万円……と毎年2倍ずつ成長を続けている。

カオナビが上場を目指した理由は信頼性の向上だ。上場審査ではコーポレート・ガバナンス、内部体制の管理、事業計画の合理性などを徹底的にチェックされる。上場を果たせば「上場審査をクリアした企業」として信頼性を高め、新しいユーザーの獲得や既存ユーザーの継続利用も期待できる。

ただし、上場審査の承認を得るには株式公開準備や事業計画の策定、内部監査などの準備をこなさなければならない。サービスの新機能追加も続く中、彼らは1日当たりの平均残業時間8分(*1)を実現していた。

(*1:1日当たりの平均労働時間-所定労働時間(8時間)と定義)

平均残業時間8分が生まれるまで

そもそもカオナビの「平均残業時間8分」の組織文化はどう生まれたのか。

定時退勤を推進し始めたのは2014年。カオナビのローンチから2年が経ち、約10人の社員はしばしば夜遅くまで業務に打ち込んでいた。当時はサービスの拡大路線を受けて社員数が増える見通しで、柳橋仁機社長は「今後新たに入社する社員にも同じ働き方を強いることはできない」と判断。残業時間の削減と業務効率化に乗り出した。藤田本部長は「人事業務を効率化させるプラットフォームを提供する企業として、社員が自ら効率的な働き方を体現しなければならなかった」とも語る。

カオナビコーポレート本部の藤田豪人本部長①

まずは社長本人や経営層が定時の午後6時半に退勤する姿を社員に見せ、「残業は美徳ではない」「労働時間は美徳ではない」とトップダウンで啓発した。

不必要な業務の精査と削減のため、経営層を中心とする「断捨離会議」も実施した。一例として全社的に連絡手段の使い方を改善。社員はビジネスチャットツールとメールを併用しているが、送信先の社員がどちらか一方しか見ていない可能性があるため、従前は同じ連絡事項を両方のツールで送信していた。2つのツールで情報を送信、確認する余分な時間を削減するため、社内メールを禁止して社員間の連絡手段をチャットに統一した。断捨離会議は年に4回開催し、随時削減できる業務を洗い出している。

経営会議では部署ごとの残業時間や業務内容を洗い出し、組織課題を見極める。勤怠情報や残業時間をデータ化し、残業が多い部署は残業の原因を分析し、他社事例も参考に業務内容の見直しや人員増加を検討する。経営会議は週1回実施する。

逆算の方式とロジカルシンキング

社員の働き方にも変化が求められた。経営層は「トラブル発生時を除いて、定時は業務時間の一区切りではなく、絶対に帰らなければならない『終電時間』と同じだ」と強調。社員は午後6時半までに全ての業務を終わらせるために、不必要な業務の洗い出し、時間の使い方、業務スケジュールの立て方を「逆算の方式」で日々考えなければならない。「終電時間」が決まっていれば、どれだけ業務量が増えても「終電」に間に合うように1日の過ごし方を工夫せざるを得ない。

個々の業務を遂行するには、ロジカルシンキングが求められるようになった。上司に何かを伝える際には「伝えるべきことのゴール」と論理的な理由が求められる。自分の意見や伝えたいことが整理されていないと全ての業務が先に進められないため、社員は8時間の勤務時間で頭をフル回転させて業務を遂行する。

組織文化についていけない社員を振り向かせる方法

組織改革は進んでいくが、すぐに定時退勤が全社員に定着するわけではない。創業当時には長時間労働が可能だったため、一部には「サービス残業してでも成果を出したい」と考える社員が残っていた。経営層は「長労働時間で成果を上げるビジネスはサービスが実現したい世界と対極にある。人事領域のマネジメントに問題提起する立場でありながら、自社がマネジメントできていなければ説得力がない」(藤田本部長)と全社的に発信し続けた。役員が対象社員と個別面談し「これまで努力してきたあなたを否定するわけではないが、これからは効率化を目指す必要がある」と直接話し合うこともあった。

生産性向上のためのロジカルシンキングも、全員が簡単に身に付けられるものではない。社員は上司からその都度アドバイスを受けながら自身の思考能力を地道に高めていく。年に数回、外部講師によるロジカルシンキングの講座を開き、希望者がノウハウを学ぶ機会も設けている。

定時退勤により社員のスキルアップや家庭との両立を促す

組織改革により、ロジカルシンキングで会話がスムーズに進み、事業の決定スピードが早くなった。定時退勤ができれば、家庭の都合で限られた時間しか働けない社員も受け入れやすくなる。

カオナビコーポレート本部の藤田豪人本部長②

また、カオナビでは全社員107人中12人が副業している(2018年12月時点)。彼らは定時後や休日に副業してスキルアップし、カオナビでの業務にも生かす。定時退勤で生まれた時間を育児や家事、キャリアアップに充てるため、勤務時間内に集中して仕事をする意識が高まっている。

業務量の分配には課題がある。定時退勤する社員が必ず生産性が高いとも、残業する社員が生産性が低いともいえない。生産性が高い社員に業務が偏り、残業せざるを得ない状況に陥っている場合もある。

社員は月に1回上司との定期面談(1on1)を行い、残業が多い社員には上司が残業内容や残業理由を確認する。一部の社員に過度な負荷がかかっていないか、業務量を調整できないか考える。また、残業をする際は毎回残業時間と理由を事前申請する必要があり、上司の承認を受けないと残業できない。上司が日々、社員の業務内容や時間、能力や生産性を確認することで「定時退勤=生産性が高い」の認識に偏らないようにする。人事評価も個人のパフォーマンスや成果を基準とし、会社の方針を制度面で体現している。

残業時間の短さが上場審査でもプラスに

藤田本部長によると、残業時間が少ないことは労務管理が重視される上場審査でもプラスに働く。社員がロジカルシンキングや逆算の方式を身に付ければ、業務量が増えても時間の使い方を工夫できる。これがカオナビの成長と上場を支える組織文化だった。カオナビのサービスと、それに携わる社員の両方で生産性向上の重要性を発信していく柳橋社長の狙いは、実現しつつあるのかもしれない。

企業情報

株式会社カオナビ
・事業内容:クラウドサービスの開発運用
・従業員数:107人(2018年12月時点)
・設立:2008年5月
・本社所在地:東京都港区元赤坂1-2-7 AKASAKA K-TOWER 5階
・東証マザーズ上場(2019年3月)

【編集部より】
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執筆者紹介

萩原かおり(はぎわら・かおり) フリーランスのライター・編集者。美容と心理が専門で、婚活パーティーの取材人数は200人を超える。三度の飯と執筆が同じくらい好き。求人・化粧品・社史制作を経て独立。現在は執筆業を中心に、取材記事から広告・LP・メルマガ作成まで幅広く活動中。休日はエステとジムに通い詰める美容オタク。 https://note.mu/hagitaro1010

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