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リクルートHRセミナー|第1回・企業調査からひも解く”日本型雇用の変化”・後編


働く人から選ばれる企業とは? エンゲージメント課題への取り組み事例

2023.12.25

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株式会社リクルート(東京・千代田)は、11月24日、「“働く”のこれから企業と個人の変化と2024年以降の展望」をテーマにセミナーを開催。第1回の今回は、同社研究員の津田郁氏と水野理哉氏が登壇し、「人材流動化時代」における企業の雇用のあり方についての調査結果や企業の取り組みを解説した。

労働力人口が減少する中、そして働く人の価値観が多様化する中、企業が持続的な成長をするためには何が必要か? この「人材流動化時代」において、企業と働く人の幸せを実現する雇用の在り方とは? 調査結果に基づく分析、解説と、ゲスト企業によるパネルディスカッションで考察した本セミナー。
後編では、パネルディスカッション部分、エンゲージメントに関する取り組みについて紹介する。

前編>>>人材流動化時代に選ばれる企業へ。カギは「Closed to Open」

目次
  1. エンゲージメント向上の2つのカギと6つの事例
    事例1:主体性を重視するエンゲージメント尺度の深い解像度|Microsoft
    事例2:事業戦略にひも付くエンゲージメント尺度の設定|Unipos
    事例3:非財務指標と財務指標の相関を分析|東洋製罐グループホールディングス
    事例4:社内外のネットワーク活性化|しずおかフィナンシャルグループ
    事例5:対話によるエンゲージメントサイクルの構築|味の素
    事例6:好奇心と強みを機会につなげる|リクルート
  2. パネルディスカッション:エンゲージメント課題の解決に取り組んだ4社のポイント

エンゲージメント向上の2つのカギと6つの事例

冒頭に、津田氏が「経営と個人をつなぐ深い解像度」「個人の機会を未来につなぐ対話」というエンゲージメント向上の2つのカギと6つの事例を紹介した。

事例1:主体性を重視するエンゲージメント尺度の深い解像度|Microsoft

画像:企業調査からひも解く”日本型雇用の変化”

深い解像度でエンゲージメントを捉えている例として、Microsoftを紹介する。同社では、エンゲージメントについて、単に「従業員が満足している」、あるいは「この会社が好きである」といったことではなく、社員がエンゲージしている状態とはどうであるかを具体的に検討していると津田氏は言う。社員が自身の仕事に対して意義を感じている、仕事を通してエンパワーされているといったことが重要であるとして指標化し、独自の指標とその構成要素を定義し、人種や性別など属性別に細かくスコア化している。

事例2:事業戦略にひも付くエンゲージメント尺度の設定|Unipos

画像:企業調査からひも解く”日本型雇用の変化”

Uniposは、eNPSという「職場に対する推奨度」を公表している。事業戦略を大きく変更した中、元々の従業員の目指す方向やパーパスと会社のそれとの乖離が予想され、その一致度やギャップがあるのかを数値化して具体的な課題抽出につなげる。

事例3:非財務指標と財務指標の相関を分析|東洋製罐グループホールディングス

画像:企業調査からひも解く”日本型雇用の変化”

東洋製罐グループホールディングスでは、エンゲージメントを年代別や部門別で開示している。同じ会社でも部署や職場によって違いがあり、状況をデータで精緻に把握することで会社の改善やエンゲージメント向上につなげる。また、エンゲージメントと財務指標である一人当たりEBITDAとの相関を見出し、そのつながりやメカニズムを表す。

これら3社の企業の共通点として、津田氏はエンゲージメントを漠然と捉えるのではなく、深い解像度で把握して戦略の推進や個々の働きやすさ、働きがいにつなげていることを挙げた。

事例4:社内外のネットワーク活性化|しずおかフィナンシャルグループ

画像:企業調査からひも解く”日本型雇用の変化”

Closed to Openを体現する取り組みとして、しずおかフィナンシャルグループの事例を紹介。金融機関がClosedになりがちなことを問題意識とし、行員を積極的に外に出す取り組みを行っている。積極的な出向や、週に1日希望する部署で働く制度を活用し、社内外で地のネットワークを広げる。

事例5:対話によるエンゲージメントサイクルの構築|味の素

画像:企業調査からひも解く”日本型雇用の変化”

味の素では、対話によってエンゲージメントを高めるというプロセスをマネジメントサイクルに昇華している。細かくプロセスをつくり、働く個人と組織の間に存在するギャップをごまかさず、対話と相互理解を通してそれぞれの目標に落とし込むプロセスをマネジメントサイクルとして実施する。企業のパーパスと個人の自己実現を重ねていく丁寧な作業として紹介。

事例6:好奇心と強みを機会につなげる|リクルート

画像:企業調査からひも解く”日本型雇用の変化”

会社のコンセプトを「CO-EN」と名付け、町の公園のように垣根を越えて人が集い出会いが生まれるような会社を目指す。一人ひとりの好奇心や強み、持ち味を中心と考え、それを外向きに発信していく機会として、希望による異動、ダイナミックな異動、あるいは社外の機会を提供する。また個人と会社をつなぐ接点としての職場に注目し、エンゲージメントサーベイの結果を職場単位でフィードバック、職場内での対話を促している。その中でより進化するチームや職場をつくるための話し合いなどを実施する。

パネルディスカッション:エンゲージメント課題の解決に取り組んだ4社のポイント

Unipos株式会社代表取締役社長CEO田中弦氏、東洋製罐グループホールディングス株式会社人事部人事企画グループリーダーの鈴木誠氏、味の素株式会社コーポレート本部執行理事人事部長の山本直子氏、株式会社リクルート人材・組織開発室室長/ヒトラボラボ長の堀川拓郎氏の4名が登壇し、取り組みのきっかけや背景、課題などについてディスカッションが行われた。

画像:企業調査からひも解く”日本型雇用の変化”

投資家や求職者だけでなく社内にも「会社のコンディション」を開示(Unipos株式会社)

田中弦氏はまず、eNPSという言葉について、「現在の職場で働くことを友人や知人にどの程度お勧めしたいと思うか」という質問であると紹介。推奨者から批判者を引くという計算法で中立者を無視することにより、バイアスを排除した正しい推奨度が分かることを説明した。また、その数値について、他と比較することよりも、大きな事業転換を行ったときにどのくらい社員がついてくるかということを、投資家や求職者、社内に開示し、正しい会社のコンディションを理解してもらうことを重視すると語った。したがって、絶好調のときや転換期以外の時期にはeNPSを出す必要はなく、大きな変化に対する説明責任がある場合に重要な数値であるとする。データを踏まえたソリューションを考える上では、数の多い中立者を推奨者に変えていくことが非常に重要なポイントであるとも語った。

eNPSを使ってどのような議論をいつ行う?

山本氏の「具体的にこの情報を使って議論をする場はあったか、あったならどんな会話があったか」という質問に対しては、社外への開示は1年に1回で良いが、一方で社内では3カ月に1回調査しており、例えば部署別、年代別など細かい分析をし、必要な対象に対し対話の機会を増やしたり、パーパスの再確認をしたりという運用をしていること、調査の結果が経営会議でもアジェンダとして取り上げられていることを紹介した。

エンゲージメントと相関関係の強い因子を分析(東洋製罐グループホールディングス株式会社)

鈴木氏は、自社の取り組みについて、「ベースの経験」と「直近の数年間の取り組み」に分けて説明した。
過去にグループ会社のいくつかが赤字になったタイミングがあり、経営層から事業に貢献する人事部門であれという厳しい声が上がったこと。社内で「生き生き人材プロジェクト」というものを構想したが、「『生き生き』という言葉が定義されてない」などの厳しい指摘を受けて頓挫した経験があり、そうした経験も踏まえて現在のKPIの組み方が生まれたと説明した。

直近では、2013年にホールディングス体制に移行した後、管理職から順次人事制度を統一化したという。その際、特に管理職の賞与の連動指標について経営企画や経理部門とも議論をし、一人当たりEBITDAを設定した。また、ストレスチェックのシステムもグループ内で共通化し、エンゲージメントサーベイを加えたものを採用。
そのデータから、エンゲージメントに大きな影響を与える相関係数の高い因子を分析、議論を積み重ね、データに基づく議論を積み重ねてきた結果実現したという。

エンゲージメントと一人当たりEBITDAが相関しないケースは? 結果についてどのようなコミュニケーションを行う?

堀川氏からの、「エンゲージメントと一人当たりEBITDAが相関しない事業部門やケースはあったか、その時に人事として手を打つ順番など、体験されたことがあれば教えてほしい」という質問に対しては、エンゲージメントは1年分、一人当たりEBITDAについては過去3年分程度を取って各社をプロットしてみるとおおむね近似曲線であったが、原料費高騰などの影響で低い会社もあったことを紹介した。

田中氏からの、「分析結果についてどのようなコミュニケーションを行ったか」という質問に対しては、経営会議やグループ会社の人事部長会の場などでの共有に留めていること、自身の理解では、人的資本系のKPIとはデータを踏まえて議論をして立てた仮説に基づいて設定をするものであり、PDCAを回して検証し、より適切なKPIがあれば組み替えれば良いとしてグループ内の了承を得ていると回答した。

会社の理念を対話を通じて理解し「自分ごと化」するサイクル(味の素株式会社)

味の素では、紹介されたマネジメントサイクルをASVエンゲージメント強化サイクルと呼んでいると山本氏は言う。ASVとは、「Ajinomoto Group Shared Value」。横断チームを作って活動を始めたのは2020年で、現在はサイクルの4周目である。

中でも重要なのは「ASV自分ごと化」という、ASVを理解し、共感して自分ごとにする部分、特に対話を通じて理解するというところを重視している。
難しい点は、対話の量は十分だが、質のケアについて特に上位者にトレーニングを実施したり、言いやすい雰囲気を作るなどの工夫をしたり、やりっ放しにしないようにすることであるという。

個人と会社の関係のみでなく個人と個人の関係も考え、チームごとに個人のやりたいことを認め合い応援し合うという自己開示ができる場所として、個人目標発表会も実施してエンゲージメントを高めている。

実際の対話にはどのような種類があるか?

堀川氏の「CEOや本部長との対話には実際にどんな種類があるか」という質問に対し、グループでは上位者から部門ごと、部門の長とさらに主体のユニットといったカスケードダウンのものもあり、水平方向では企業行動委員会という、毎年テーマを決めて部門長クラスが対話し合うもの、個人では7名のメンターを作るなど、さまざまな組み合わせで全方位的に実施していることを紹介した。

個人と会社をつなぐ「職場」に注目(株式会社リクルート)

堀川氏はまず、退職率が約10%、そのうち独立起業するケースが13-4%程度あるとして、一人ひとりが自律的に働きたい、自分らしく生きたいと思う内発的動機が高いとパフォーマンスが高まると考える同社のカルチャーを説明した。そのために企業ができることは、一人ひとりに期待をかけ、機会を渡していくことであると言う。個人だけではなく職場やチームにこだわることも同社のユニークなポイントであるとして、ベースの考え方である人材マネジメントポリシーを紹介した。

画像:企業調査からひも解く”日本型雇用の変化”

そこでは会社は従業員に対し約束を掲げている。個人と会社をつなぐものが職場であると捉え、個人と会社が実現したいことを阻害する課題を確認をするために職場で半期ごとに対話を行う。職場の中でアクションプランを立てて実行し、また半年後に対話をするというサイクルを回すことが人材マネジメントポリシーの実現につながるとする。

社内外のネットワークはどのくらいあるか? 世代間の違いは?

田中氏からの、「社内外のネットワークがどれぐらいあるか、もしくはそれを増やす仕組みへの取り組みはあるか」という問いに対し、新規事業制度を挙げ、リクルートの従業員のみではなく社外の人も自由に参加でき、内外の人を巻き込んで新しい事業価値の創造を行う制度を紹介。社内ではキャリア相談制度を設けて斜めのラインでネットワークを作ることにもチャレンジし、人材流動性を高めるために異動を増やし、機会を提供し続ける挑戦をしていると説明した。

山本氏の、「世代間の違いによる対応などがあれば教えてほしい」という質問には、世代間はあまり意識したことがないが、近年の不確実な状況の中で一人ひとりの能力だけではなく、お互いの強みを生かし合う関係を作り、チームでのパフォーマンスが最大化することにチャレンジしていることを紹介した。【おわり】

※記事内のスライド資料画像は株式会社リクルートより提供されたものを使用

参考:【セミナー動画配信のお知らせ】“働く”のこれから 企業と個人の変化と2024年以降の展望(株式会社リクルート)

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【@人事編集部(株式会社イーディアス)】

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