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「インターンシップでリアルを伝えるための対話型セミナー」レポート


石川県の6社が「ありのままの姿」を学生に伝え、企業理解促進へ

2022.04.25

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学生が企業で就業体験を行う「インターンシップ」。企業で働いている人から直接話を聞いたり、実際に仕事を体験してみたりできることから、具体的な進路を考えるよい機会となっていることも少なくありません。一方で地方企業はインターンシップ受入に対応するリソースの不足やノウハウがあまりないなどの課題があり、インターンシップを活用しきれていない側面もありました。
今回紹介する、2つのイベントレポートは、そのような課題を解決しようと挑戦した地方企業の取り組みを紹介するものです。

第1弾は、インターンシップに課題感を持つ石川県の企業6社が、石川県「いしかわ就職・定住総合サポートセンター(ILAC)」とともに、インターンシッププログラムの改善を実施。2021年11月25日、その取り組み事例を共有する「インターンシップでリアルを伝えるための対話型セミナー」を石川県/ILACと就職みらい研究所(リクルート)で開催いたしました。そのオンラインセミナーの内容を抜粋し、レポートします。

編集部注:この記事はリクルート社から提供の寄稿レポートです。

目次
  1. 学生が知りたいのは、「企業のありのままの姿」
  2. 新人が実際に行う仕事を、学生に体験してもらう(オノモリ)
  3. 昼休憩の模様など、「あまり見せたくない部分」もさらけ出す(第一電機工業)
  4. 若手社員を巻き込みプログラムを設計、社内の協力体制も構築(小松電業所)
  5. 「ありのまま」の体験が企業理解を深め、入社後ギャップを減らす

学生が知りたいのは、「企業のありのままの姿」

中小企業がインターンシップを実施する狙いの多くは、「インターンシップを採用につなげ、入社後のミスマッチも防ぐ」ことにあります。しかし、「学生の満足度が低い」「その後の応募につながらない」などの悩みを抱える企業は少なくありません。

今回の取り組みで企業へのプログラム改善を実施したヒルストンの監査役、金内康人氏によると、「学生が最も知りたいのは 、企業のありのままの姿」だと言います。

「自社のいいところばかりアピールしても、学生からすれば『果たして本当なのか』と疑問に思い、むしろ迷ってしまうもの。インターンシップを通じて職場や仕事のリアルを伝えることで、学生は納得のうえで就職先を選ぶことができ、より良いマッチングにつながります」

しかし現状、企業が提供している情報と、学生が求めている情報には大きなずれがあります。以下は、リクルート就職みらい研究所『就職白書2021』の「企業が提供した情報と学生が知ることができた情報」のギャップを示したグラフですが、「社内研修・自己啓発支援の有無とその内容」や「自社が求めている具体的な能力・人物像」「具体的な仕事内容」など、企業は「伝えた」と思っていても、学生は把握できていないというケースが多く、大きなギャップを生んでいることがわかります。

画像:石川県6社の事例を紹介~「インターンシップでリアルを伝えるための対話型セミナー」レポートより(株式会社リクルート提供)

本セミナーのコーディネーターを務めたリクルート就職みらい研究所所長(当時)の増本全は、「ありのままの姿を開示できている企業と、そうではない企業では、入社予定の学生の納得度に大きな差が出るというデータもあります。リアルな情報提供が成されたほうが、その会社を納得のうえで選択することができるため、入社後の定着や活躍にも影響すると思われます」と説明しました。

そこで、今回の取り組みでは、「ありのままの事実を学生に伝える」そのためにも若手の実務経験を渡すというコンセプトでプログラム改善を実施。現状のインターンシップと、ありのままの実態との間のギャップを洗い出し、「課題設定・若手の実務経験を渡す」→「プログラム自体の工夫」→「経営や現場との協業」→「成果」というサイクルをうまく循環させることを目指しました。

画像:石川県6社の事例を紹介~「インターンシップでリアルを伝えるための対話型セミナー」レポートより(株式会社リクルート提供)

その後、今回の取り組みに参加し、2021年度のインターンシップ改善に取り組んだ石川県内企業によるパネルディスカッションがスタート。登壇企業は、オノモリ、加賀建設、金沢村田製作所、木村経営ブレーン、小松電業所、第一電機工業の6社です。
各社の発表や質疑応答の中から、一部を抜粋しご紹介します。

新人が実際に行う仕事を、学生に体験してもらう(オノモリ)

パネルディスカッションでは、各社が抱えていた課題と理想とのギャップ、そして改善のポイントと成果についての説明がありました。

環境関連機械などを手掛けるオノモリは、毎年インターンシップを開催しているものの1、2名の学生しか集まらず、苦戦していました。理想の姿は、参加学生が増えること。特に機械について興味を持つ理系学生に多く参加してもらいたいとの思いを持っていました。

そこで、これまでグループディスカッション中心だったプログラムを見直し、新入社員が実際に手掛ける実務を体験してもらうというプログラムを新たに導入。その結果、機械やロボティクス選考など、5名の理系学生が参加しました。

「皆さんに体験してもらったのは、機械についた油をふき取る、ボルトの穴を掃除するなどといった、雑用ともとられかねない地味な作業。学生が不満を感じないか不安ではありましたが、新人が携わるリアルな仕事です。地味ではあるものの、製品を作るうえで必要不可欠な工程であることを説明したうえで、この手入れが全体業務にどんな影響を与えているのか、この機械がなにに役立っているのかなど、仕事の意義をしっかり伝えるよう工夫しました」

「終了後のアンケートでは、実は満足度はそれほど高くありませんでした。ただ、地味だから満足度が低いわけではなく、『業務のほんの一部にしか携われなかったので、もっとうまくなれるまでやりたい』『もう少し先に進んだ仕事もしてみたい』など前向きな意見が多いという結果に。今後はこの方向性で、より仕事内容が伝わるプログラムに改善していきたいと思っています」(オノモリ)

昼休憩の模様など、「あまり見せたくない部分」もさらけ出す(第一電機工業)

県内の公共施設を中心に電気・空調・衛生工事などを手掛ける第一電機工業。これまでのインターンシップでは、本当に建設業界で働くイメージを持ってもらえているのか、施工管理の仕事が理解できているのか、確信を持てずにいたそうです。

そこで、現場見学のみではなく、自主検査体験をしたり、実際の検査に立ち会ったりしてもらいました。さらに、新たにグループディスカッションも導入し、業界や自社の魅力について皆で考える時間を確保しました。その結果、5日間のプログラムでも最後まで緊張感のある空気が保てたうえ、企業理解が進んだという実感も得られたと言います。

また、昼休憩の時間も、企業理解の促進に役立ったとのこと。

「学生用に別途個室を設けて休憩してもらう予定でしたが、それが叶わず、現場の事務所で社員と一緒に昼食を摂ってもらうことに。現場では、休憩時に電気を消して社員が休めるようにしていますが、その情景を見た学生に『社員の体調管理が徹底されている』という印象を持ってもらえたようです。飾ることなく、ありのままの姿を見せる大切さを再認識しました」(第一電機工業)

若手社員を巻き込みプログラムを設計、社内の協力体制も構築(小松電業所)

産業機械メーカーの小松電業所は、インターンシップを通じて会社の雰囲気や人に魅力を感じてくれる学生はいるものの、「仕事内容に魅力を感じて入社してくれる理系学生が少ない」ことに課題感を抱いていました。

そこで、若手社員が経験するテーマの中で、理系学生が興味を持てそうなものを検討し、「大型プレス機をロボットで自動化するにあたっての課題抽出と、課題解決提案」という、機械系の学生にとっても難易度の高いテーマを設定。ただ、参加者には文系学生もいるため、プレス機の作業工程や、なぜロボットによる自動化が必要なのかなど、前提となる情報を事前にインプットする時間を設けました。

「これらの事前説明は、文系出身の総務部の若手社員に任せました。機械系の知識はありませんが、彼が自分なりに調べたうえで自身の言葉で説明すれば、文系学生にも伝わるのではないかと判断したからです。現場で働く社員や生産技術部の社員など、いろいろな立場の人にヒアリングしてプレス機に関する理解を深め、資料作成なども手伝ってもらった結果、わかりやすいインプットにつながっただけでなく、現場との関係性が構築でき、インターンシップに協力してもらうこともできました」(小松電業所)

「ありのまま」の体験が企業理解を深め、入社後ギャップを減らす

パネルディスカッション終了後、リクルート就職みらい研究所所長の増本全は、「今のプログラムは果たしてリアルな従業員体験になっているのか?という視点が、インターンシッププログラム改善のポイント」と説明しました。

「学生は、ありのままの仕事・社風・人から、企業の魅力を感じ取りたいと思っています。企業からすれば、見せたくない場面も多いかもしれませんが、例えば先ほどの第一電機工業さんの昼休憩のように、学生は『従業員を思って休ませているんだ』と感じ、企業理解を深めるのです。また、入社後に経験する実際の仕事を学生に渡すこと、そして現場や経営と協働してインターンシップを会社全体の取り組みにすることも重要。特に現場を巻き込むことで、社員が自身の仕事の価値を再認識し、モチベーションを高めるという結果にもつながっています」

画像:石川県6社の事例を紹介~「インターンシップでリアルを伝えるための対話型セミナー」レポートより(株式会社リクルート提供)

この後、セミナー参加者が【現状のインターンシップでは伝えきれていない「会社の魅力/実態」やそれを阻害する「壁」】についてシートにまとめる個人ワークを実施。オンラインで3~4名に分かれ、「自社のより良いインターンシップをグループ全員で考える」グループワークを実施し、イベントは終了しました。コロナ禍で人事同士の交流が減る中、他社の人事の課題や取り組みを聞くことができる貴重な機会となりました。

若手社員の早期離職の理由トップ2は、「人間関係」と「仕事内容」と言われています。インターンシップの段階で、ありのままの仕事を学生に経験してもらうことは、入社後ギャップの軽減にもつながると思われます。今回の事例が、インターンシップに悩む企業のヒントになることを祈念しています。【おわり】

※情報は2022年11月時点

>>>第2弾「大学×学生×企業の持ち味を生かしあう実践学習型インターンシップで働くイメージをつくる」につづく

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