株式会社リクルート/ジョブズリサーチセンター
2021年度の最低賃金改定額は全国加重平均930円、前年度比28円増加(+3.1%)で過去最大の引き上げ額
2021.10.01
株式会社リクルート(東京・千代田)の調査研究機関『ジョブズリサーチセンター(JBRC)』は9月29日、「2021年度 最低賃金改定影響に関する調査レポート」を発表。2021年度の最低賃金改定額は全国加重平均で930円、前年度比は28円増加(+3.1%)で過去最大の引き上げ額になった。
以下、レポートの一部を抜粋して紹介する。
詳細:2021年度 最低賃金改定影響に関する調査レポート[PDF]
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・【2021年8月度アルバイト・パート募集時平均時給】三大都市圏の平均時給が1,099円で前年同月より15円増加。「専門職系」が2カ月連続で2006年1月度の調査開始以来の過去最高更新
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最低賃金改定影響に関する調査レポート
この調査レポートは、ジョブズリサーチセンターが毎月調査発表している「アルバイト・パート募集時平均時給調査」と人材インフォのメールマガジン会員向けアンケートをまとめている「ジョブズコミュニティレポート」の調査データを利用して、最低賃金改定の影響についてまとめたものです。
トピックス
- 2021年度の最低賃金改定額は全国加重平均930円、前年度比28円増加(+3.1%)で過去最大の引き上げ額となった。以前と比較すると、全国で引き上げられていることが特徴で、特に島根県や大分県など近隣に政令指定都市がある地域での大幅引き上げが目立つ。
- 2021年8月時点で改定後最低賃金額を下回る求人原稿の割合をみると、全国で24.7%が下回り、地域別では東海34.8%がもっとも多かった。また2割を超える地域が北海道や東北、首都圏、関西、中国・四国、九州の6つで、以前よりも地域ごとの差が目立たなくなり、全国的に一定数の企業が直前まで時給を据え置いている状況がうかがえる。
- 2021年8月時点で改定後最低賃金額を下回る求人原稿の割合を職種別にみると、2021年は「販売・サービス系」35.5%がもっとも多く、2016年以降同様の傾向である。一方その割合が減少しているのは、コロナ禍で注目されるエッセンシャル系職種のうち、「製造・物流・清掃系」のドライバー・配送・デリバリー、清掃・洗浄・クリーニングや、「専門職系」の医療関係技術者、看護師、介護スタッフなどで、堅調な採用ニーズによる継続的な時給上昇の影響と考えられる。
- 採用担当者向けのアンケートで最低賃金改定による経営への影響を聞くと、回答者の50.1%が「事業計画など、経営全体にかかわる影響がある」とし、「採用計画の変更など、経営の一部に影響がある」19.4%をあわせると、69.5%が経営や採用活動などへの影響が小さくないと回答した。
近年の最低賃金改定の状況(全国)
最低賃金は毎年10月上旬に各都道府県別に改定されます。まず、全体の状況を掴むために全国加重平均の推移を確認しましょう。
今年2021年度は中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)より全国一律28円の引き上げが目安として答申され、全国加重平均930円となりました。この20年間で全国加重平均267円増えています。
過去より推移をみると、引き上げ額28円は2002年以降最大、特に2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の考慮で1円の引き上げに留まったため、前年比較も最大です。
少し前に遡り、日本経済に影響をもたらしたリーマン・ショックや東日本大震災の期間と比較しても、2020年度から2021年度の引き上げ額の増額は大きいことがわかります。中央最低賃金審議会による引き上げ目安が示されなかったのは、2009年度(リーマン・ショック後)と2020年度ですが、その翌年の引き上げ額の違いは2017年に政府より示された「働き方改革実行計画」の存在が大きいでしょう。計画では、非正規雇用の処遇改善や生産性向上、長時間労働の是正とともに最低賃金の引き上げが言及され、賃金の地域間格差是正にも注目が集まりました。最低賃金については年率3%増加、全国加重平均1,000円を目安とする旨が言及されています。
出所: 厚生労働省 「平成14年度から令和2年度までの地域別最低賃金改定状況」、「働き方改革実行計画」
地域別にみる前年度差と前年度比
2016年度から続く前年度比3%程度の引き上げは全国を対象としていることが近年の特徴です。左は2009年度(リーマン・ショック後)前後の3年間で、前年度比3.0%を超えるのは東京、神奈川の2地域のみに対し、右は2020年度(新型コロナウイルス感染拡大)前後の3年間は2020年を除き、ほぼ全国的に前年度比3.0%以上です。
以前は生活保護基準との乖離解消のために20円以上の引き上げが続いていた東京や神奈川の増加が突出していますが、近年は2019年度の鹿児島や2021年度の島根のように首都圏以外の最大引き上げが目立ちます。
地域別にみる最低賃金額
前年度差が他よりも大きい地域(下記グレー箇所)の特徴の一つに、隣接する地域に政令指定都市があり、その隣接地域と最低賃金額に差があることがわかります。
求職者の居住する地域によっては、県外でも勤務先まで同程度の距離であればより賃金が高い勤務先を選ぶこともあり、最低賃金を引き上げることはそのような人材流出を防ぎたいといった狙いも考えられます。
また、求職者がより多くの求人の中から希望する条件(仕事内容、勤務時間、賃金など)をもとに選びたいという場合は、隣接する地域も仕事探しの対象にすることがあります。ハローワークの求人件数をみると、島根と広島では2.7倍、佐賀と福岡では4.6倍もの差がみられます。最低賃金額前年度差が大きい地域では、このような求職者意識も考慮しているのではないでしょうか。
調査データの概要
調査名:アルバイト・パート募集時平均時給調査
内容:アルバイト・パートの募集時の平均時給について、地域別、職種別にまとめている
調査手法:『TOWNWORK』『fromA navi』に掲載された求人情報より、アルバイト・パートの求人情報を抽出、集計
調査期間 :
・月次で集計、調査発表
・毎月1日~末日までの掲載分を集計、まとめ ・月次で設問配信、集計
集計対象数 :月次で変動。2021年8月は22万9,198件
調査名:ジョブズコミュニティーレポート
内容:採用担当者に対し、採用に関する設問を毎月聴取し結果を地域別、職種別等でまとめている
調査手法:リクルート 人材インフォ*のメールマガジン会員に対し、毎月1問アンケートを配信、回答を集計 *人材インフォは求人広告・掲載相談のwebサイト
調査期間:月次で設問配信、集計
集計対象数:月次で変動。2021年8月はn=860
ほか、「改定後最低賃金額を下回る求人原稿率の推移(2016年~2021年地域別) 」や「改定後最低賃金額を下回る求人原稿率の推移(2016年~2021年職種別)」、「改定後最低賃金額を下回る求人原稿率 2021年8月時点の職種別×都道府県」、「最低賃金引き上げへの影響 採用担当者アンケート2017年~2021年の推移」は、下記のレポートを参照してください。
参考:プレスリリース「2021年度 最低賃金改定影響に関する調査レポート」|ジョブズリサーチセンター・2021年9月29日】
編集部おすすめサービス
■最低賃金の引き上げに64.7%の企業が「経営に影響がある」と回答
プレシャスパートナーズの9月15日発表調査によると、最低賃金の引き上げに66.2%が「反対」、33.8%が「賛成」と回答し、64.7%が「経営に影響がある」と答えた。また、最低賃金の引き上げ対応策を聞いたところ、上位3つは「サービス価格の見直し、値上げ」、「非正規の残業・シフトを削減する」、「採用を抑制する」。だった
【おすすめポイント】
・最低賃金の引き上げは66.2%が「反対」、33.8%が「賛成」
・最低賃金が時給1500円に引き上げとなった場合、90%が経営に影
・65.2%が年末に向けアルバイト・パート採用を行う
【株式会社プレシャスパートナーズ】
「同一労働同一賃金」に向け企業が行うべきパート・契約社員への対応
【社労士解説】今までの法令において「賃金」は、労基法における賃金支払いの規制や、最低賃金法における地域別の最低賃金の基準等は定められていました。しかし今回の法改正で、そうした最低要件ではなく、実際の賃金の額に踏み込んだ規制が初めて行われることになります。
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