成功企業に聞くwith/afterコロナ時代に有効な採用手法【後編】
バルテスが「フルオンライン選考」で実践した選考方法と業務効率化
2020.11.04
「オンライン選考」で前年比167%の内定承諾率を達成したバルテス株式会社(大阪市/東京・千代田)に、選考活動のフルオンライン化の工夫や課題解決法を聞くインタビュー企画。後編は、学生のリアルな声を引き出すオンライン面接ならではの工夫や、フルオンライン化によって実現した業務効率化などについて、コーポレートブランディング本部人事戦略部の渡邉舞さんと宮友里恵さんに語ってもらった。【取材:2020年9月15日 @人事編集部がZoomで実施】
【前編はこちら】
バルテスが「フルオンライン選考」で内定承諾率167%を達成した工夫と課題解決方法
プロフィール
渡邉舞(わたなべ・まい)/コーポレートブランディング本部 人事戦略部
電機メーカーの法人営業を経て、2018年10月に入社。以降、年間を通じて新卒採用に従事。営業時代に培った傾聴力を生かした、学生の個性を引き出しながら志望度を高めていくような採用活動を得意としており、採用目標数を毎年達成。2021年卒採用活動より、新卒採用チームのメイン担当者として採用戦略の作成から人事セミナーへの登壇まで幅広く活動中。オンライン採用活動における課題に向き合い、内定承諾率アップへと導いた。
宮友里恵(みや・ゆりえ)/コーポレートブランディング本部 人事戦略部
不動産会社の個人営業を経て、2019年12月に入社。以降、新卒採用に従事。人事未経験ながら、入社後わずか2か月で、合同会社説明会における学生からの支持率No.1を度々獲得するなど、自身がIT業界未経験であることを活かした分かりやすい説明と学生に寄り添った採用活動を得意とする。オンライン採用活動においてもその持ち味を活かし、内定承諾率アップに貢献した。
学生のリアルな声を引き出す、オンライン面接ならではの工夫
──オンラインで行う面接の制限時間は決まっていますか。アイスブレイクの時間をどの程度設けているのかも知りたいです。
渡邉舞(以下、渡邉):面接自体は1時間程度でこれは対面時と同じで、学生からの質問に答える時間も含めてです。アイスブレイクの時間も例年より多めに意識して入れています。アイスブレイクで話す内容に指定は特になく、大学のことを話す子もいればサークルのことを話す子もいます。「これをやっています」という紹介に対してアイスブレイクがてら面接官から「これ」について質問する、という感じです 。
──学生が緊張せずにありのままの状態で臨める雰囲気づくりの工夫を教えてください。
渡邉:実際に面接している学生と同じ大学出身の社員がいたら「こういう人が働いているよ」と伝えます。「今、授業は実際どうなっているの」と聞くこともあります。あとはプロフィールを見て趣味のことを書いている方がいるので、なるべくこちらとの共通点を見つけて「私もこれ好きなんだよね」ということも伝えます。
宮友里恵(以下、宮):面接官は、選考面接前のセミナーやワークで会った際に自己紹介をしているので、「初対面」ではないのですが、とは言えやはり緊張する学生さんはいますよね 。
ガチガチになってしまう人については、志望動機よりもアルバイトや学業など、「なぜこれをやっているのか」「どのように取り組んでいるのか、」と学生が好んでやっていることに対し掘り下げる質問をするようにしています。
個人的にはアルバイトやサークルをやっている話を聞いると、少し表情が緩む時がありますので、「これはこの子が本当に好きでやっていたことなんだな」と判断し、その部分を突っ込んで聞くようにしています。
──名刺風の背景を現在使用していますが、これも工夫の1つですか。
宮:「自分たちの情報は学生に見えていた方が良いよね」という人事内の認識ができ 、5~6月からこの名刺風の背景を使っています。
このQRコードが何なのという質問はたまにもらいます。名前の下のQRコードがメールアドレスで1番上のQRコードがホームページへアクセスします。
──「オンライン選考における課題と4つの工夫」(※)の工夫②-2にある、「企業理解が深い状態で最終面接を迎えてもらうために、次回面接時の宿題を提示」について、この宿題の提示は選考に直結するという認識でしょうか?。
渡邉:はい。「面接で次にここを聞くよ」と言ったところは、その期間を学生がどう使ったかというところを含めて判断材料にしています。対面の時もありましたが、必ず宿題を出すというよりは、面接慣れしてない学生に対して「この時間を使ってやっておいて」と道筋を示すという形で宿題を出していましたので、オンライン時とは意味合いが違いますね。
──そうした対応の違いには、やはり企業理解に対面時とオンラインで差があったからですか。
渡邉:学生の雰囲気については対面時の方が得られる情報は多かったという認識があります。「対面が良いです」と言ってくる学生もいましたが、その場合、きちんと事前準備をして、意欲を持って面接に来てくれる学生が多かったからともいえます。
宮:正直、面接中はそこまで対面とオンラインの差は感じませんが、セミナー・グループワークの理解のスピードにはある程度影響があったかなと思います。一方で、地域問わず色んな学生と会えるという点ではオンラインの方がむしろメリットが大きいといえると思います。
──セミナーや説明会もオンラインで実施していた中で、工夫された点はありますか。
渡邉:基本的にセミナーや説明会など大人数が参加するものは「zoom」で行い、zoomが使えない場合は、URLだけで利用できる「whereby」でアクセスしてもらいます。できるだけパソコンでアクセスしてもらいますが、できない場合はスマホでも大丈夫と伝えます。無料で学生が使いやすいツールを選んで使っていました。
採用管理ツールの導入で大幅な工数削減達成
──人事担当者二人で数百の面接を短期間でこなすのは工夫が求められます。何か業務効率化のツールを使っていましたか。
渡邉:採用の1番ピークの時期に慌てないようにと、「採用管理ツール」を2019年の11月くらいから試験的に導入していました。新卒採用に本格的に力を入れる前までは、採用情報を全部エクセルで管理していました。新卒採用に注力するようになり、この管理につきっきりになるスタッフもおり、対応にかかる日数も時間もかかるので、早めにツールに置き換えようという話になりました。
──21卒採用は最初からツールが入った状態でスタートしたということですか、どのくらい業務効率化が進んだのでしょうか。
渡邉:採用に進んでいる人数の可視化が簡単になったのと、圧倒的に学生への連絡が早くなりました。今までは1人ひとりにメールを送っていましたが、ツールの導入によってボタン1つで全員に連絡が送れるようになりました。ここが一番大きな効率化の成果です。
宮:内定承諾を決めた理由を聞いたところ「他社に比べてバルテスの連絡が早くて安心できたから」と答えた学生もいました。
もともと連絡までに1週間は空けないようにしていましたが、ツール導入前は人の手による作業でしたので抜け漏れが出ていたこともありました。採用管理ツールで連絡が容易になり、早め早めの対応ができるようになりました。面接で「いつ頃には連絡します」と伝えますが、むしろその期日より早くメール送ることも可能になりました。
──採用活動ではスピードを重視しているということですか。
渡邉:そうですね。学生から「問い合わせしてから返事が来るまで1週間かかったり、結果通知が遅かったり、その時間が最も不安なので嫌だった」と言う感想を聞いたことがあります。
──当然早く連絡するには、早く見極めができていなければなりません。「この学生は合格」だと素早く、ミスマッチのリスクも考慮しながら判断できるのはなぜですか。
渡邉:どんな学生を採用したいかという共通認識が人事内、そして役員や技術部門などの関係者間で浸透していたので、選考のジャッジが早くできました。そこが、今年採用がうまくいった理由にもつながってくるのかなと思います。
本当に早いと面接中に「合格にしよう、次に行きましょう」と判断することもありました。面接が終わってからこの学生はどうしようかと悩むことはあまりなかったと思います。
企業理解ができている、親和性を感じてくれている、という評価は面接中に分かるので、なら次の段階に行こうと決められました。終わってから「どうする?」という時間は最初からあまり設けていません。
宮:私の場合、面接中に学生さんが本音で話しているかというのはかなり早くに分かりました。面接が終わってどう判断されるというよりも、次に進む学生は自分で自分を出せた手応えを感じられていたのではないかと思います。
──他にも、オンラインにシフトして業務効率化できたことはありますか。
宮:採用よりもそれに付随する事務作業の効率化が進みました。会議室などの場所に捉われて採用の仕事をしなければならない部分が対面ではありましたが、オンラインに移行したことで担当者が空いている時間は全て面接に充てることもできるようになりました。
削減時間で言うと、オンラインなら自分のスケジュールさえ空いていれば会議室などの場所の制約がないので、調整が容易でした。今までは、スケジュール調整後に会議室の日程調整をしたり、予約を取ったりという作業があったので、5分~10分程度とはいえこの時間を削減できたのは大きいと思います。
──学生が面接を希望する時間帯はオンライン化によって柔軟になると思いますが、面接時間の確認フローはどうしていますか。
渡邉:まず事務の方に人事の予定を仮押さえしてもらい、予約できる状態にします。学生がその予定を画面で見て、希望してもらい予定を合わせるフローになっています。
選考のオンライン化で注意したいこと
──オンライン選考を実施する上で失敗しないために心がけていることがあれば教えてください。
渡邉:説明会は特にですが、zoomを使うと何人でも学生を呼べてしまうので企業理解をしてもらうことを考えると、人数が多すぎると見きれないという問題がありました。そのため、説明会1回の参加人数は10~15人前後に絞りました。
ワークやセッションで、人事の目が届かないところで学生だけでやり取りするのは、誤った企業理解が生まれてしまう可能性もあり、こちらが見通せ、把握できる人数に絞りました。それが10人から15人です。ワークでお互いに少し話す時間があるケースではもっと人数は絞った方が良いです。
──セキュリティ面はどうでしょうか。
渡邉:そのあたりは、フルオンライン化した際、弊社のICT担当が対応したので、会社として一律でセキュリティに考慮した対応がとられています。
──ずばり、フルオンライン選考をする上での最大の障壁は何でしたか。
渡邉:学生の素の部分がやはり見えづらいところです。その点はこちらで面接の仕方をさらに改善しなければならないと思っています。「ちょっとこの面接だけでは判断できないからもう一度面接しよう」となると、こちらの工数が増えすぎてしまいます。そのため、選考に直結しないにしても、ワークでネガティブチェックをしたり、採用の過程のスクリーニングは従来より注意したりする必要があると思います。
これからオンライン選考を導入する企業に向けて
──22卒採用に向けての改善点や、これから工夫してみたい部分はありますか。
渡邉:大きく分けて2つあります。
1つは、21卒採用を急きょオンラインに切り替えたので、今まで対面で使っていた資料をオンライン用に急ごしらえしました。オンラインが前提になる22卒採用には、オンライン用として見やすく分かりやすいものを用意する必要があります 。
もう1つは、21卒採用で承諾率が伸びたのは正直、弊社がいち早くオンライン選考をやっていたことでの差別化ができた部分があるからだと考えています。今後はオンライン選考が当たり前になったことを鑑み、オンライン選考の中身でどう他社と差別化していくのかをもっと詰めて考える必要があります。
例えばワークですと、内容を大幅に変えることはありませんが、オンラインでの実施だと「何となく分かったつもり」で終わってしまいがちな点が問題です。もっとオンライン用に分かりやすい資料にする必要性はありますし、対面とオンラインで資料を変えるといった対応はあっても良いと思います。
宮:対面時と比べてオンラインにシフトして面接回数が非常に増えたので、さらに増やすのではなく限られた接触回数の中でどう学生を見極められるのかという部分が課題ですね。
──新たにやってみたいことはありますか。
渡邉:こちらから地方に行って説明会やイベントなどを開催したいです。人事が行くので興味のある学生は来てくださいという試みを考えています。やはり採用のために福岡に行く、となると「来てくれるんですか」と反応をくれる学生はいます。
宮:地方で採用のイベントを開催すると毎回参加率も良く、「直接会ってみたいです」と言ってもらえることも多いです。オンラインでの接触が増えたからこそ、選考途中で直接会える機会は学生の中でも印象に残るのではないかと考えています。
──最後に、今後オンライン選考を導入する企業の人事担当者(読者)に対して、オンライン選考を成功させるためのアドバイスをお願いします。
渡邉・宮:4つ挙げさせていただきます。
1.複数の目で見る必要性が高くなることから、人事内だけでなく採用に関わるメンバー全員で採用したい学生像の共通認識を持つこと
2.一番不安を抱えているのは人事ではなく学生自身なので、可能な限り学生の不安を払拭できるような選考体系にすること(前後のフォローやフィードバックなど)
3.会社の雰囲気や社員の雰囲気などの直接確認した方が伝わりやすい情報は、積極的に企業側から開示すること
4.(オンラインに限らないため補足程度ですが)数ある人事に埋もれないこと。事業内容や雰囲気以外での差別化を図ること。
──「4」について、具体的にお二人が実際に心がけていることを教えてください。
渡邉:面接の際、特に最終面接前後で、学生によく話していたこととして、「面接は確かにバルテスからも学生を見る場だけど、学生からも本当にここで働きたいと思えるか見定める場だからね」と話していました。内定者からも「自分という個を見てくれていたのはバルテスだった」と言ってもらえることも多いです。
一方的に評価されるのではなく、あくまでお互いにマッチングすることを意識していると何度も伝えていました。また、就活以外の話も積極的にしており、安心して自身の弱みを話せる、社風以外の意味での雰囲気づくりを重視していました。
宮:選考過程では、学生を評価するのではなく、同じ目線に立って話をすることを意識しています。
例えば、
・人事面接(2次面接)の場合は、次選考が最終面接なのでその気持ちを持つ
・入社することが目的ではなく、入社した後に活躍してもらいたいので面接を行う
などです。学生が選考を進む目的を持って参加してもらいたいと思っています。また、面接の目的を話したうえで行うことにより、同じ目的をもって選考することを意識しています。
──ありがとうございました。
※情報は取材時点
バルテスが実施したオンライン選考における課題と4つの工夫
課題①:対面とオンラインで受ける印象にギャップがある
工夫①:マッチングを意識して面接回数を例年より多く実施
→志望度が高い学生との面接回数を多く設定し、接触機会を増やした。 面接の対応をする人事担当も毎回違う人選をし、さまざまな角度から「学生とバルテスがマッチングしているか」をより意識した両者間のギャップを埋めることに注力。採用担当者も志望度の高い学生に注力することができた。
課題②:学生がオンラインコミュニケーションに戸惑い、自分をさらけ出すことに苦戦する
工夫②-1:緊張を取り除くためにアイスブレイクの時間を 5分~10分設けた
工夫②‐2: 企業理解が深い状態で最終面接を迎えてもらうために、次回面接時の宿題を提示
→一次面接、二次面接では、その面接終盤において「もっと聞きたかったこと」「次回の面接に備えて考えてきてほしいこと」を宿題として明確に伝える 。学生は自分の考えを再度まとめるだけでなく、次回の選考に向けてホームページを何度も読み込んだり、事業に関する質問をたくさん投げかけるようになったりと、自ら企業理解を深めようという姿勢になった。その結果、自ずとバルテスへの興味も膨らみ、企業理解が深く、かつ志望度が高い状態で最終面接を迎えることになるため、ミスマッチの減少につながり、内定提示率も上昇した 。
課題③:例年とは違う新型コロナ禍における就職活動で、不安を感じている学生が多い
工夫③: 採用管理ツール導入で、学生が恐怖する「次選考待ち時間」を削減
→就職活動において学生が最も不安を感じる「次回選考の案内を待つ時間」を最大限削減するために採用管理ツールを導入。学生側が「いつ、どこで、何をしなければいけないのか」が常にわかる状態を作り、安心して就職活動を進められるようサポートした。
その結果、学生から「新型コロナ禍のなかで不安な就職活動だったが 、選考案内が早く、終始安心して準備ができて助かりまし た」という声をもらえた。
■各課題の解決方法や工夫を聞いたインタビュー前編はこちら
バルテスが「フルオンライン選考」で内定承諾率167%を達成した工夫と課題解決方法
企業情報
バルテス株式会社
2004年の設立以来、ソフトウェアテストをメインとした品質向上支援サービスを提供しており、年間1,800件以上のプロジェクトを手掛けている業界のリード企業。上流工程における品質コンサルティング及び体系的なテストエンジニアの教育プログラムを強みとしている。2019年5月に新規上場(東京証券取引所マザーズ)。
本社所在地
:【大阪本社】大阪市西区阿波座 1‐3‐15 JEI西本町ビル 8F
:【東京本社】東京都千代田区麹町 1‐10 麹町広洋ビル 3F
代表:代表取締役社長 田中 真史
事業内容:ソフトウェア テストサービス、品質コンサルティングサービス 、 ソフトウェア 品質セミナーサービス、セキュリティ・脆弱性診断サービス 、 その他品質評価、品質向上支援サービ ス
設立:2004年4月19日
従業員数:543 名(2020 年6 月末 グループ3 社計)
HP:https://www.valtes.co.jp/
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