企画

成長できない企業は「当事者意識」が育まれる「場作り」が足りない!?


元ガリバー・吉田行宏氏が提唱 経営者視点で業績を上げる人材の育て方

2019.05.31

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

創業4年で株式公開、10年で売上高1千億円を達成させた実績を持つ超成長企業の元ガリバーインターナショナル(現IDOM)で経営戦略から人事制度改革、社員育成を担当したのがLIFE PEPPER(東京・中央)代表取締役の吉田行宏氏だ。

ガリバーや多くの起業支援での人材開発や育成の経験をまとめたのが初の著書、『成長マインドセット』。「マインドセット」とは思考様式や信念、価値観を意味する。成長を阻害する「心のブレーキ」を外し、「動機と理念のアクセル」を踏んで成果を上げるメソッドをこの中で提唱している。多くの企業が人材育成に悩む現在、吉田氏は最も重要なこととして「自分が経営者だったらどうするか?と自問し、当事者意識を持って行動する社員を育てること」と明言する。

企業の成長を促進させる人材を経営者やリーダーはどう育てていけばいいのか? その実践方法を聞いた。【取材日:2019年4月18日】

吉田 行宏

元 ガリバーインターナショナル(現 株式会社IDOM)専務取締役。創業4年でガリバーを全国展開させ、同社を株式公開へ導く。創業10年で1千億円の売上を達成し、世界でも数少ない「ハイパーグロースカンパニー」となった同社で、FC事業・経営戦略・マーケティング・人事・教育・IT・財務等の担当役員を歴任。2012年に退任するまでの18年間、一貫して人事・評価制度の構築・運営及び社員・幹部の育成・教育を行い、独自の研修や育成理論を構築する。ガリバー退任後は、若手経営者の育成支援と、共同での新規事業創造のため、LIFE PEPPERの代表取締役に就任。
現在25社以上の企業の役員・戦略顧問などを務めるほか、出資支援等を行っている。著書に『成長マインドセット』、『全員経営者マインドセット』がある。

目次

未経験者でも100%の力を発揮、業績アップへ

「固定観念に縛られない人の方が成長スピードが速く、能力を発揮できる」と吉田氏はガリバーでの成果を振り返る。

自動車流通革命をビジョンに、新しいビジネスモデルの創造を行っていた当時のガリバーで大きく貢献したのは業界未経験の社員たちだった。
LIFEPEPPER代表吉田行宏氏「自動車販売業界が長い経験者はノウハウを知り尽くしている反面、限界を自分で設定してしまう。未経験者はまっさらな状態から改革の意義を受け入れていきました。その結果、顧客優先の徹底など、業界の玄人が挑戦しづらい方面で成果を出すことができました」

業界経験者を縛っていたのは業界の固定観念や改革への抵抗感だった。これらを吉田氏は「心にブレーキがかかっている状態」と表現する。「まっさらな人に伸び代があるのは、ブレーキが少ないからです。経験のない社員の方が、固定観念に凝り固まることなく業務を理解し、革新的なビジョンにも適応できる可能性を持っています」

吉田氏が現在代表取締役を務め、海外向けデジタルマーケティングを担うLIFE PEPPERは、2014年に吉田氏以外は全て学生によって設立されたスタートアップ企業だ。当然、ビジネスの経験者はいなかった。それでも高いモチベーションを維持しながら実績を作り、3年で業界のリーディングカンパニーとなった。

LIFE PEPPERの急成長にもガリバー時代の実践が生きているという。吉田氏はこう指摘する。

「もともと、私は学生の時から経営者になろうと思っていました。実際に働いてからも経営者ならどう考えるか常に意識していました。しかし、他の働いている多くの人たちはそういう視点を持っていないことに気づきました。多くは、会社は他人のもので、自分は社長や上司の指示に従っていればよいという意識で行動しているように見えました。これでは、本当の自分の力を発揮できない。私が代表を務めるLIFE PEPPERでは全員が経営者の視点を持っています。この考え方が心のブレーキを外し、社員の成長を後押しするのです」

「経営者視点」の日報で大量のアウトプット&フィードバック

経営者視点を持って働くとは具体的にどういうことなのだろうか?
吉田氏は「いわゆる本当のブラック企業もあると思いますが」と前置きしながらこう解説した。

「大半の会社はブラックでなく、かといって完全なホワイトでもない、いわゆるグレーなのではないかと思います。もちろん違法なことは絶対にやってはいけないですが、完全に黒白には分けられない。さまざまな人の解釈によって見え方が変わるのが経営や仕事、ひいては人生だと思うのです。グレーをより白に変えていけるかどうかは当事者としての行動にかかっている。経営者視点とは評論家的な決めつけで終わるのではなく、こうした当事者意識を持つことです

「経営者視点」は何も特別なことではないと吉田氏は説明する。

「この会社の雰囲気が暗いなと思ったら、今の環境を責める前にまず自分から毎日挨拶をしてみるんです。自分がまずやってみて同じマインドの人を増やし、良い風土を作っていく。それは他責にしない行動の力。自分の行動のオーナーシップを持つのが経営者視点を持った人のやり方です」

LIFE PEPPERでは、社長や役員も含めメンバー全員が毎日社内SNSで日報を書いている。その内容は、一般的な業務報告にとどまらない。その日あった出来事からの気付きや学び、仲間への感謝など、自己を内省し、他のメンバーに共有すべきと思ったことを感情を込めて書き込む。驚くほど長文のものが多く、一見すると経営者ブログのようでもある。

また、日報は単に書かれて終わりではなく、社員全員が各自の日報を読んだ上で翌日の朝礼時に最も良かったと思うものを発表し、互いにフィードバックをし合っている。吉田氏は、「日報は筋トレのようなもの。毎日の積み重ねで大量の学びを得られます。小さなことではありますが一年間このアウトプットとフィードバックを続けることで、見違えるような成長を感じられます」と話す。
LIFEPEPPER代表吉田行宏氏その2

自分が経営者だという視点で日々日報を書き、同僚の問題意識も知るため、「自分に関係ないこと」は存在しなくなる。社員は他人事にせず率直に課題を改善するためのコメントを送り合う。「会社をこうしていきたい」という展望を日報で語る社員も多い。

LIFE PEPPERの社員の多くはリファラル採用やインターンを経て入社している。重視するのはスキルだけではなく、経営者の視点を持ち成長できる資質があるかどうかだ。
吉田氏は言う。「経験やスキルを持っている人でも、新しい環境で変われる人と変われない人がいます。持っているスキルの高さと当事者意識にねじれがある人材がチームの中にいると、企業全体に大きなマイナスの影響を与えることがあります。会社の成長に貢献できる人イコール、スキルが高い人ではありません」

ベンチャーや中小企業では、最初から経験豊富でスキル・マインド両方が高い人材を採れる機会は少ない。長期のインターンなどを通じて仕事への当事者意識を持てるかどうか見極めるのは特に重要だ。

LIFE PEPPERの採用では

①心にブレーキがかかりやすい性格か
②問題をすぐ他責にせず解決策を考えられるか

の2点を見ている。転職の理由に「前の会社の落ち度がある」と話す人は、理由を深掘り、状況を改善させる努力をしたかどうかが重要であるという。一方、一見浮気な印象を抱くが、「自分はこれがやりたい」と新しい環境に挑戦した時、状況を他責にせず頑張れる人は成長が早く、経営者視点を持ちやすい。

LIFEPEPPER社の日報

毎日社員が書くという社内SNS日報。この日、もっとも目を引く意見を長文で書いていたのは社内で最年少(20歳)の学生正社員だった。 ※クリックで拡大

経営者のすべきことは「経営者視点を持てる社員を育てる」

吉田氏はこれまで社員を成長させる組織マネジメントをベンチャー・中小企業の経営者に指導してきた。多くの企業の傾向について「リーダーは組織マネジメントを自己流でやっていることが多いと感じています。業務遂行において優秀なリーダーでも組織マネジメントの経験が少なく、また、誰からも教わったことがない場合が多い」と解説する。

LIFEPEPPER社の組織論

会社の成長には戦略力と組織力・人材力が両輪で不可欠なもの。優秀な経営者でも、経営幹部となる社員を育てるのは難しい。多くのベンチャー・中小企業の抱える悩みの種の一つだ。

社員に主体性や当事者意識が感じられないのは、経営者やリーダーの組織マネジメントに問題があることが原因だという。「社長が重要なことを全て決定し、一方的に伝えるだけ、社員に考える余地や発言の場が少ない会社のケースによく遭遇します。そういう場合は、社長に少し発言を控えてもらいます。社員が当事者として発信し、行動してもいいという気付きの場作り、実際に権限を移譲していく必要があります」

企業のトップは、まずリーダー自身が完全な当事者意識を持てるようにしていく必要がある。その後で、次のメンバーの当事者意識を上げていく。経営上位層が仕事に対する100%の当事者意識を持てなければ、社員に成長を促すことはできないからだ。
「結果は選択できないが、行動は選択できる」というのが吉田氏の持論。人材育成に悩むリーダーにこうアドバイスを送った。

「そうそう変革はうまくいかない、時間がかかると思った方がいいですね。うまくいかない、時間がかかる前提で、あらゆる対処法を考える。それを愚直に継続する覚悟を持つ。すぐに結果がでなくても、駄目だったと諦めてしまうこともなく、次の打ち手を打つことができる。社員と成長し続けるために自社ではこうしていくというポリシーを持ってマネジメントを進めるべきです」

企業情報

株式会社LIFE PEPPER(ライフペッパー)
・事業内容:インバウンド調査/訪日外国人調査事業
インバウンド広告/海外プロモーション事業
・従業員数 20人
・設立:2014年4月2日
・未上場
・本社所在地:〒104-0045 東京都中央区築地3-1-10 Shinto GINZA EAST 6F
・HP:https://lifepepper.co.jp

【@人事読者特典】吉田 行宏(著)新刊プレゼント

人材育成のカギはマネジメント層から社員への意識改革にある!経営者、マネージャーを始め、社員全員が経営者視点を持つためのノウハウをまとめた吉田氏の新刊、『経営者全員マインドセット』が発売中。今回はこの新刊を先着10名様にプレゼントいたします。

全員経営者マインドセット表紙全員経営者マインドセット ─MSマトリクスで実現する次世代組織
吉田 行宏 (著)
単行本:288ページ
出版社:クロスメディア・パブリッシング
発売日:2019/4/12
Aamazon: www.amazon.co.jp/dp/4295402907

※応募は締め切りました。
多数のご応募、誠にありがとうございました。


【関連記事】

@人事では『人事がラクに成果を出せるお役立ち資料』を揃えています。

@人事では、会員限定のお役立ち資料を無料で公開しています。
特に人事の皆さんに好評な人気資料は下記の通りです。
下記のボタンをクリックすると、人事がラクに成果を出すための資料が無料で手に入ります。

今、人事の皆さんに
支持されているお役立ち資料

@人事は、「業務を改善・効率化する法人向けサービス紹介」を通じて日本の人事を応援しています。採用、勤怠管理、研修、社員教育、法務、経理、物品経理 etc…
人事のお仕事で何かお困りごとがあれば、ぜひ私達に応援させてください。

「何か業務改善サービスを導入したいけど、今どんなサービスがあるのだろう?」

「自分たちに一番合っているサービスを探したいけど、どうしたらいいんだろう?」

そんな方は、下記のボタンを
クリックしてみてください。
サービスの利用は無料です。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

あわせて読みたい

あわせて読みたい


資料請求リストに追加しました

完全版 HR系サービスを徹底解説! HR業務支援サービス完全ガイド 勤怠・労務管理 採用支援 会計・給与ソフト など