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レポート「成長を目指す企業のための、人財活用セミナー」


成長する企業と成長できない企業の人財の差は何か

2017.09.19

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成長する企業はどのような人事を行なっているのだろうか。採用ではどのような姿勢で臨むべきか、社員教育がどれほど重要なのか、そして中間管理職となって実力をつけていったときに会社とはどのようなコミュニケーションを取るべきなのか……。
採用のプロ、組織のプロ、人事のプロ、そして、また多くの企業を上場させてきた弁護士とベンチャーキャピタリストをまじえ、今の時代において、どのような施策を経営者や経営層、人事の責任者がとるべきか提言するセミナーが開催された。第一部では企画経営アカデミー株式会社代表の大槻貴志社長、株式会社ジョブウェブの佐藤孝治会長がそれぞれ講演し、第二部でフォーサイト総合法律事務所代表の大村健弁護士、それいけシステム・コンサルティング代表の森成史社長を加えたパネルディスカッションが行われた。

開催日時:2017年7月19日 17:00-20:00
場所:ジョブウェブ株式会社(東京都港区)
主催:企画経営アカデミー株式会社
登壇者:大槻貴志(企画経営アカデミー株式会社代表)、佐藤孝治(ジョブウェブ株式会社 会長)、 森成 史(株式会社インタープライズ・コンサルティング代表)、大村 健(フォーサイト総合法律事務所 代表パートナー弁護士)

企画経営アカデミー株式会社 大槻貴志「中間管理職をつなぎとめる職場作りのしかた~現場マネージャーのやる気を左右する仕事の与え方とは」

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大槻氏はIT企業を経営するなかで苦労した経験から組織開発コンサルタントや社外CHRO(Chief Human Resource Officer:最高人材責任者)として数々の企業の人事面のサポートに携わっている。実際に社外CHROとはどんな仕事なのか。「経営者は社員に期待していて、もっと働いてほしいという思いを持っているが、社員にしてみればもっと給料を上げてほしい、待遇をなんとかしてほしいと思っていて、気持ちの行き違いが生じている。社外CHROはそんな経営者と社員の間を取り持って、気持ちを通じさせる役」と大槻社長は説明した。

今の仕事の期限を決めて終わりをはっきりさせ、区切りをつけることが大切

今回の講演のテーマは「中間管理職をつなぎとめる職場作りのしかた」。将来を期待し、せっかく育てた中間管理職が辞めてしまうと、会社としてはダメージが大きい。また新しい人を採用して一から育てなければいけないし、新人教育をする人材がいなくなってしまうということなので、いつまでも経営者自ら人材を育てなければいけならない。

優秀な中間管理職がなぜ辞めてしまう要因はどこにあるのか。そんな社員は不安を感じているのだと大槻社長は分析している。
「会社から認められていない気がする、会社での存在意義がわからない……一生懸命会社のために尽くしているのに、いてもいなくても同じではないかと思って不安を感じているんです。しかし経営者からしてみれば期待しているし、もっと活躍してほしいと思っているから空回りして役割や仕事を振るんだけど、現場の人はそれをされるとどんどん冷めていって収集がつかなくなる。信頼関係が一度崩れてしまうと戻すのは難しい」

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なぜそのような乖離が起こってしまうのか。大槻社長は「経営者と社員のスピード感の違い」を挙げる。
「経営者はプロジェクトが途中でも、新しい戦略を思いつくとそちらに手を出す。そのたびに自分が期待している人を配置します。でも現場の人間からすれば1つのプロジェクトに2年3年かけて取り組んでいきたいと思っていたのに、1年くらいで部署が異動になって、仕事がちゃんと終わらないまま次の仕事を任されている感じがする。悪く言えば部署をたらい回しにされているような感覚に陥るわけです。未完了の事柄は気になってしまうし、積もり続けると大きなストレスになる。エネルギーも分散してしまい仕事に支障が出る」

このような気持ちの行き違いにはどのように対処すればよいのか。大事なのは、プロジェクトの終わりを明確に示すことだと大槻社長は語る。
「次々に新しいことに手を出すのが問題なのではなく、新しいことに手を出すのであれば、今の仕事の期限を決めて終わりをはっきりさせ、区切りをつけることが大切」

プロジェクトを終わらせるためのプロセスはとして以下が紹介された。
①今ある状況を認識する……今の状態をあるがままに受け入れる。目標設定や理想の状況ではなく、今何を変えたいかを考える。
②何にエネルギーを使うか決定する……焦点を定めて、やることとやらないことをはっきりさせる。
③アクションを起こす、実行する……起きているパターン、うまくいっていないことをチェックする。
④終わらせるための活動をする……プロジェクトの終わりに際し、自分たちは何をどこまで達成したのか、現状を認識して終わる。

「今までやっていた仕事はどうだったっけと振り返るだけでも、中間管理職の気持ちはだいぶ満たされる。プロジェクトがどこまで進んで終わったのか、発表会や、打ち上げなんかをやるのもいい。達成感のないまま次の仕事に移ることのないようにするのが大事」と大槻社長は締めくくった。

ジョブウェブ株式会社 佐藤孝治「ミスマッチを防ぐ採用のやり方~上場企業の新卒一期生採用から学ぶ~」

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次に登壇した佐藤氏は株式会社ジョブウェブの会長。ジョブウェブは佐藤氏が大学4年生のときに設立した学生団体で、佐藤氏は一般企業で就職したのち、ジョブウェブで学生の支援と企業の採用に関する支援活動をしている。

ミスマッチを防ぐには、「感謝される人事」を実行する

学生と企業のミスマッチを防ぐためには具体的にはどうすればよいのか。企業はまず学生と接点を持つことが必要だ。そしてその上で佐藤会長は採用に社長自らコミットすることを掲げる。DeNAが新卒一期生を募集する際に採用に関わった佐藤会長は、社長自らが登壇する「元マッキンゼー南場智子が教えるロジカルシンキング講座」を提案。優秀な学生がぞくぞくと押し寄せ、最終的には社長が直接口説いて優秀な学生を採用できたのだそうだ。

実際の採用には、原則として企業そのものの力、自社の魅力を伝える力、学生を見極める力が必要だと佐藤さんは語るが、その上でミスマッチを防ぐには感謝される人事を実行する、採用方法のやり方を変える、選考中インターンシップを行うことが有効だという。そのなかで佐藤会長が最も重要だと強調するのは「感謝される人事」だ。

「その人事と接点を持った人全員が感謝する人事。新卒採用では100人会えば採れるのは1人か2人。しかし落とした99人の学生にはなんのフィードバックもしない。そうではなく、関わった学生全員にフィードバックをして、どこが足りなかったか、または他の企業の方が向いているのではないかというアドバイスをします。第1志望が他にあるなら、第1志望に通すくらいにコミットする」と、生半可ではないコミット力を見せる。

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「感謝される人事を実践すると、合同企業説明会でプレゼンテーションをして立って話している段階から学生の反応がちがってきます。ここにいる学生をふるいにかけて、いい人材だけをピックアップしていこうという採用担当と、『ここに来ている学生は全員応援するよ!』というスタンスで来ている採用担当では発しているオーラがちがうわけです。そうすると実際にブースに来る学生の人数が変わります」と佐藤会長。

ここまでして自社の採用に結びつくのだろうか。コストがかかるだけではないのか。しかし実際には内定受諾率も変わってくるし、採用で採れる人数も変わってくるのだと佐藤会長はいう。
「感謝される人事の実態が広まって企業の評判がよくなれば、学生の間で口コミが広がって、募集にコストをかけなくても勝手に応募が集まる状況になってくる。大学のキャリアセンターから公演のオファーが来るようにもなった人事担当者もいます。また関わる学生は信頼して、『○○と××で悩んでいる』と悩みまで全部言ってくれるようになる。でもここまで振りきって親身になってコミットすると、第1志望よりこっちの方がいいと思って入社するなど、ありえない意志決定が起きたり、辞退率も変化したりします」
(佐藤氏の講演詳細はこちら)

勉強以外に情熱を傾けてきたものを見るには、応募者をグーグル検索し、ブログやFacebook、ツイッターを見る~パネルディスカッション

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パネルディスカッションには、大槻社長を進行役に進められた。ジョブウェブの佐藤会長に加えそれいけシステム・コンサルティング代表の森社長とフォーサイト総合法律事務所代表の大森弁護士が登壇し、成長する企業にはどういう特徴があるか、自社の経験や関わってきた企業のケースから話した。

「実際に上場している会社では、新卒と中途どっちが多いか」という質問に、大村弁護士は「新卒をまったく採らない会社は見かけ上は持っているけれど、本質的な意味では伸びていないんじゃないかと思う。中途だけで伸びている会社はあまり見たことがない」と自身の見てきた企業の傾向を語る。自社の経験も踏まえた「新卒が企業の伝統や文化をつくる」という言葉には森社長が「まさにその通り」と同意を示した。

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また大村弁護士は、大槻社長の「中間管理職が辞めていく企業は伸びないと思うか」という質問に対し、「中間管理職もそうだが、管理部門が辞めていく会社は厳しい」と返す。「管理部門のトップが辞めるとなると、上場準備も難しくなるし、上場に限らず会社が成長する過程では、管理部門がしっかりしていることが大事」というのが大村弁護士の見方だ。

大村弁護士は管理部門の重要性を説くが、他のパネラーはどの部門が鍵だと捉えているのか。

佐藤会長は人材採用に関して「経営者の方が採用の重要性を認識して、自ら時間を割いている会社は強い」と社長の採用に対する意識を大前提とした上で、「人事担当者が経営レベルでものを考えているか」という人事側の意識も重要だと説いた。「たとえば10人採用として、なぜ10人なのか人事が理解していなければならない。その上で本当に10人で大丈夫なのか経営者と議論できるとなおいい。最終面接で社長に会ってもらうまでの社長代理人として人事が機能している人事、社長とよく議論していて、経営戦略を一緒に考えているような人事はいい」

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「人事マネジメントにはヘルスマネジメントも重要」と語る森社長は、「会社を訪問したときに、社員がハキハキと明るい会社は伸びようとしていると感じる。逆に社員が暗い顔をしていたり、あまりしゃべらないような会社はコンサルで入るとたいてい問題がある。また入口が清潔に保たれていない会社は伸びしろが少ないなど、そういうところから会社全体のメンタル面はわかる」と、伸びない会社のメンタル面の特徴を語る。

社員11人中5人は10年以上勤続しているという大村弁護士の事務所。ずっと居続けてもらうために、社員とはどういう関係作りを意識しているのか。

社員とコミュニケーションをとったり働きやすい環境をつくるようにしているとした上で採用には特に力を入れているという大村弁護士だが、大村弁護士の事務所にいわゆる「採用担当」はいない。「11人全員が採用担当。誰とでも仕事する可能性があるので、誰か一人でもNG出したら採用しない。仕事は増えていっているので結果的に人数が増やさないといけないが、うちは人数を増やすためにやっているわけではない。目的と手段が逆転してしまうと経営としてはよくない」

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会場からの「採用をするときに、会う前に知っておきたい情報は何か」という質問に、森社長は「趣味や出身地を知っておけば、話題ができる。難しい話でなく、共通の話題から信頼関係をつくって入っていけるかなと思う。新卒の場合は、勉強以外に何に情熱を傾けてきたかを聞きたい」と回答。

佐藤会長は「名前をグーグル検索する」と言って会場を圧倒させたが、そこには佐藤会長の採用への情熱があった。「ブログやフェイスブック、ツイッターを見る。誰とつながっているかが、その人の能力を表している。共通の友人がわかれば、その人がどんな人か、何をやっているのか聞いてみたりする。当日会うときは『○○さんとプロジェクトやってるんだって? すごい君のこと評価してたよ』と言うと、ぐっと距離が近づきます。10分時間をかけて検索するだけで、その人の趣味もわかるし、直接会うときの会話ははずむ」

直接会うときに質の高い濃密な時間を過ごすことが目的なので、そこで人ふるいにかけるようなことはしないという。ただ、実際には優秀な人物であるかどうかもある程度わかるようだ。
「文章の表現がおもしろかったり、価値のある発言をしていたりする人はビジネスマンとして期待できる。逆にまったく検索に引っかからないときは、超天才な場合があります」

今回のセミナーでは企業と社員・学生間でどのようなコミュニケーション齟齬が起こっているのかが明らかにされ、有効な解決策が数々挙がった。参加者にとっても、広い意味で人と企業を結びつけるためにはどうすればよいか、多くのヒントが得られたセミナーとなったようである。

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執筆者紹介

住本麻子(すみもと・あさこ)(株式会社スキマタイズ) 1989年福岡県生まれ。早稲田大学院文学研究科修士課程修了。フリーランスライター。文学や演劇などの文化系の記事やジェンダー関連の記事を中心に取材記事やコラム・エッセイなどを執筆している。小劇場系の演劇と女子漫画が好き。

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