日本で働く外国人 匿名座談会【後編】
入管法改正に物申す。外国人の視点から見る日本の「働き方改革」
2019.04.10
日本で働く外国人の方々による匿名座談会、後編は「働き方改革」や、「改正入管法」について普段感じていることを語ってもらう。中小企業で働く王さんと、誰もが名を知る大手メーカーで働くクマールさんとで、働き方改革の実感度に大きな違いが見られた。【2019年2月14日取材】
※参考:
日本で働く外国人 匿名座談会【前編】「空気読め」のハードルを超えろ?! 日本で働く外国人のホンネ
◆座談会参加者プロフィール
・王さん(仮名)
中国生まれ。中国の外国語大学で日本語を学んでから日本に留学、修士課程修了後、
日本の中小企業に就職。現在は大学生のキャリア形成支援に携わる。
・クマールさん(仮名)
インド生まれ。インドの大学院を卒業後、日本の大手メーカーに就職。
映像技術の研究開発に従事する。
・@人事編集部M
日本生まれ。生粋の日本人。
旅行以外の海外経験はなし。英語もからっきし。
日本で働く外国人が感じる「働き方改革」のリアル。企業規模による違いも
@人事編集部M(以下、編集部M):日本と自国とで、働き方の違いはありますか?
クマールさん(以下、クマール):はい。日本の多くの企業では出社時間が決められていて、タイムカードなどで労働時間が正確に記録、管理されていますが、インドでは時間は自由。成果さえ出せれば何時に出社してもいいし、会社にいるのは1日1時間でもいいし、完全にテレワークでもいいと聞きます。
王さん(以下、王):日本の場合は帰りづらいんですよね。定時になっても先輩に「何かお手伝いすることはありますか?」と聞いて、「ないよ」と言われて初めて帰れるという。前の職場では「定時だから帰ります」と言って帰ろうとすると「君はアウトだ」と言われたことがあります。
編集部M:今、日本では「働き方改革」が進められていますが、お二人は改革が浸透していると感じますか?
クマール:先輩の話を聞くと、以前よりは働き方改革が浸透しているようです。例えば、定時になったらすぐに帰れるし、残業したい人はしている。成果を出していればどちらでも、という感じです。
王:私は微妙です。残業する場合は、必ず1時間前に上司に申請する必要があって、一見、しっかり勤怠管理ができているように思えますが、急に仕事を振られる場合もよくあって。
融通の利く上司は残業代を付けてくれるのですが、そうではない上司だとサービス残業になってしまうこともあります。
編集部M:うーん、人によってサービス残業になる、ならないという状況は厳しいですね。
王:そうですね。なので、浸透しているという実感はあまりありませんね。
外国人雇用は、長期的な「教育コスト」を含めて実施を検討するべき
編集部M:4月から入管法(入国管理法)が改正し、日本で働く外国人が大幅に増えることが予想されています。これから外国籍の方を受け入れる企業に向けて、どんなことを準備しておけばいいか、アドバイスをいただけますか?
クマール:当社ではいろいろな国の人を採用していることもあって、日本語の教育には時間とお金をかけています。日本語がうまく喋れなければ仕事にも支障が出るし、日常生活ではもっと苦労します。私も入社して最初の頃はいろんな助けが必要でした。入社後の日本語研修はわずか3カ月と短期間、なおかつ仕事上の専門用語や特殊な言葉や言い回しが分からなかったので、グローバル採用の人事担当者にかなりお世話になりました。
これから外国人を採用する会社の人事担当者は、外国人を採用して放置するのではなく、半年とか1年とか、ある程度の期間を設けてきちんと面倒を見てほしいと思います。やはり、特に日本語教育には時間とお金をかけていただきたいですね。
王:同感です。私はクマールさんと違って、中小企業で社員もそれほど多くないです。だから外国人であっても、日本人と同じくらいに仕事をこなす必要があります。そのためには、日本語を高いレベルで扱う必要があります。私は確かに学生時代から日本語を勉強して、仕事の現場でも使ってはいるのですが、やはりどうしても日本人と同じレベルでは話せません。来日して最初に入った会社では、訳も分からずいきなり目が回るほど忙しい現場に放り込まれ、日本人の従業員となかなかうまくコミュケーションが取れず、すごく悩んだ時期がありました。
ですので、これから外国人を採用する会社には日本語教育など親身になってフォローしてほしいですね。
編集部M:日本語教育は必須かもしれませんね。あとは相談できる環境を用意することでしょうか。
王:入管法の改正によって、高い専門性を持った高度人材以上に、日本語スキルが日常生活レベルに達していない、技能実習生のような外国人がたくさん来ることになると思います。そういった意味でも、社内で日本語が学べる環境がないと、企業も外国人労働者も苦労すると思います。
また、外国人を雇用すれば確かに目先のコストは削減できますが、その後のことも考えて採用するべきですね。外国人を長期的に雇用するつもりがあるのか、長期的な視点で考えた方が後々トラブルが起きないと思いますよ。
編集部M:改正入管法で新たに設定された在留資格「特定技能1号」の在留期限は通算5年ですが、「特定技能2号」の条件はまだ未定です。今後提示される条件次第では、長期的な雇用も可能になるかもしれないですからね。
※参考:人事担当者が知っておくべき改正入管法と外国人雇用のポイント
「変な英語」はお互い様! 結局、思いやりが何より大事
編集部M:これから日本で働こうとしている外国人の方に、ご自身の経験からアドバイスがあればお願いします。
クマール:「郷に入っては郷に従え」という心構えでいれば、全ては丸く収まると思います(笑)
編集部M:実に日本的な考えですね(笑)
クマール:それと、自分が生まれ育った国をわざわざ出て、未知の国で働く理由は人それぞれいろいろあると思うのですが、その目的に応じて準備をする必要があると思います。まずは言語の壁を超えなければなりません。その上で成果を出すというのはかなりハードルが高い。つまり日本の会社で活躍したいのであれば、最低限の条件を満たすだけじゃなくて、さらに努力しなきゃいけない。その覚悟は必要ですね。
王:クマールさんの言う通りですね。角を立てずに自己主張をする技術は日本語の特徴。日本語にはいろんな独特の言い回しがあって、意味を正しく理解せずに使ってしまうと人を傷つけることになります。きちんと相手の反応を見て自分の意見を言うことを訓練しておかなければいけません。
編集部M:最低限の日本語スキルとプラスアルファで「空気を読む」(※前編参照)技術ですかね。そのためにやるべきことは?
王:日本語テキストだけには頼らずに、いろんな日本人の友達をつくることをお勧めします。それが日本語を習得する一番の近道なので。確かに最初は文化の違いなどで日本人と友達関係を築くのは大変だと思いますが、くじけずにできるまで続けることがすごく大事です。私も仕事だけではなくて音楽やスポーツなど趣味を通して友達をたくさんつくることができました。おかげで日本語がより上達したし、何より日本での生活が楽しくなりました。そういう意味では趣味のサークルなどに入るといいですよ。
クマール:確かに。日本人はシャイなので外国人に対してあまり積極的に話しかけませんから。友達をつくるためには、日本人の方から話しかけてくれるという期待はせず、自分の方からプロアクティブに話しかけていかないと難しい。これはとても大事なことなので、これから来る外国人には肝に銘じていただきたいですね。逆に日本の人には、外国人は話しかけてもらいたいと思っているので、間違った英語でもいいので、もっと積極的に外国人に話しかけてあげてほしいです。
編集部M:分かってはいるんですがね。英語に対して、コンプレックスのようなものがあって……変な英語で笑われないかな、とか。
クマール:全然問題ないです。
王:同じように、日本の方々には、お互いが理解しやすいような、もう少し優しい日本語を話してほしいですね。
編集部M:思いやりの気持ちが大事ということですね。
王:そういうことです。これからは、本当にいろんな外国人が日本に来ると思いますので、温かい気持ちで接していただきたいです。これは企業の大小や仕事の内容に関わらず、必要なことだと思います。
編集部M:今日は、実際に日本で働くお二人の実感がこもったご意見が聞けました。日本企業特有の文化や、言葉の壁の先にある問題など、外国人雇入れを検討している、または実際に雇い入れている企業が心がけておくべき視点、課題も見えてきました。
本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。
王・クマール:ありがとうございました。
■日本で働く外国人 匿名座談会【前編】はこちら
「空気読め」のハードルを超えろ?! 日本で働く外国人のホンネ
【編集部より】
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