コラム

林修三先生のなるほど人事講座


ES・GD・面接を使わない選考試験で、学生の新たな一面を発見する

2018.05.10

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そろそろ新卒採用活動の忙しさがピークに達する時期になってまいりました。採用担当の方々は目の前の一件一件の面接実施や段取りで目が回りそうな状況かと思われますが、それと同時に、来年に向けた採用活動の改善点も検討なさっていることかと思います。

そこで今回は、少々気が早いのですが、思考のリフレッシュも兼ねて「新しい選考試験」のアイデアをご紹介させて頂きます。

目次
  1. 応募者以外の他者から「他己紹介文」を提出してもらう
  2. GDの代わりに、ジグソーパズルやバーベキューをさせる
  3. 通常の面接の代わりに、観察眼を確かめるテストを実施
  4. 型にはまらない新たな選考で、求める人物像を見抜く

応募者以外の他者から「他己紹介文」を提出してもらう

学生向け就職支援を生業にしている筆者が言うのもなんですが、ESというのは今や就職支援者が二重三重に添削したうえで提出がなされていますので、明らかに低レベルなものを除けば、そうそう差のつかない文章や内容になってしまっています。

そこで、ESで見えてこない応募者の姿を知るためにご提案したいのが、応募者本人以外の方に応募者についての文章を書いてもらい、それを提出してもらうというアイデアです。この方式のメリットは2つあります。

メリット1.学生の普段のコミュニケーション能力が見える

一つ目は、文章の内容云々以前に、このようなことを人に頼めるような人間関係を構築できているかが見えるという点です。日頃から多少の無理を言えるような、あるいは自分のために一肌脱いでくれるような友人や知人を持っているようであれば、それだけでも一定以上の人間的魅力やコミュニケーション能力が備わっていることがわかります。

メリット2.紹介者を通じて学生の人となりが見えてくる

二つ目は、紹介者の属性や文章力自体が、応募者の人となりを類推する材料になるという点です。類は友を呼ぶということわざがありますが、応募者が主に属しているコミュニティを知ることができれば、応募者への期待値の精度が高くなるのではないかと思います。

GDの代わりに、ジグソーパズルやバーベキューをさせる

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これまた筆者が言うのもなんなのですが、GD(グループ・ディスカッション)もESと同じように、各大学で相当に対策されきっている選考内容です。そのため、お互いがフォーマット文を繰り出し合う、もはや茶番としか言えない議論風景が展開されている企業も多々あるのではないかと思います。

とはいえ、応募者が集団の中でどのような言動を取っていく人間なのかを見極めることは、採用選考において重要な要素でもあり、共同作業の要素を完全に無くしてしまうのも考えものです。

そこで、たとえグループワークを実施するとしても、ディスカッションではなく、例えばジグソーパズルを完成させるワーク、あるいはバーベキューを実施する、というアイデアはいかがでしょうか?

グループディスカッションではない共同作業で、学生たちの「素」を見る

ジグソーパズルを集団で完成させようとした場合、必ず自然発生的にさまざまな役割が発生します。全体を統括する役割、端っこのパーツを収集する役割、部分部分を完成させていく役割、等々。当然グループ内での密なコミュニケーションも必須ですので、GDの代替としてはうってつけですね。

バーベキューでも同じことが言えます。こちらはもって行き方次第では、応募者達を開放的なリラックス状態にすることができますので、より一層本人達の素の様子を観察することができます。何も手伝わずに食べているだけの人を不採用とするか、「大物の予感」ということで採用するかは、人事のみなさん次第です。

通常の面接の代わりに、観察眼を確かめるテストを実施

面接についても各大学で相当に対策を行っているのが現状です。志望動機や自己PR、いわゆるガクチカなど、ベタな質問をすると「待ってました」とばかりに用意してきた話がスタートしてくることになり、面接官の方は、うんざりしてしまうこともあるののではないでしょうか。

この問題に対する一つの解として、筆者は日頃「引き出し型面接」という手法を提唱しています。ただ、この手法は次回以降に詳しくご紹介させていただくため、今回は、もう少し気軽な解決策として「某格付けチェック」式の面接手法をご紹介しようと思います。

「質の高いもの」と「質の低いもの」を、その場で見極めてもらう

「某格付けチェック」式の面接手法とは、ある物事について質の高いものと低いものを各々見せ、あるいは聞かせ、あるいは触れさせて、どちらが質の高いものだと思うかを、その理由とともに語ってもらうというものです。

例えばプログラマを採用する企業であれば、よくできたコード進行データと、素人が作ったようなコード進行データを見比べてもらうという方法があります。コールセンター的な職種で採用する企業であれば、通話相手の気持ちをうまく鎮めるプロの話し方と、火に油を注ぎかねない話し方とを比較させるというのも良いかもしれません。

この選考を取り入れた場合、ただ単に物事の良し悪しを見抜く目や耳を持っているかどうかを把握できるだけではなく、自身の選択に対して即興で理論武装して語れるかどうかという思考力・表現力もチェックすることが可能となります。

型にはまらない新たな選考で、求める人物像を見抜く

これらはいずれもアイデアベースの内容ですが、自社の状況に合わせてうまくカスタマイズしていただければ、有力な選考内容になり得るものだと考えています。

単に奇をてらっただけの選考試験にしてしまっては何の意味もありませんが、求める人物像要素を見抜ける可能性があり、かつ応募者が事前に対策してくることが難しいものに仕上げられれば、採用活動全体の歩留まりを高くしていくことが可能です。ご参考になれば幸いです。

執筆者紹介

林修三(はやし・しゅうぞう)(株式会社ヒュームコンサルティング代表取締役) 1975年生まれ。仙台市在住。東北大学法学部を卒業後、大手自動車部品メーカーの経営企画職~IT企業の人事・採用職を経て現職。現在は東北地方の複数の大学でキャリア系科目講師として学生の就職指導に努めるほか、人事・採用コンサルタントとしても活動中。

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