コラム

書籍紹介

人事に薦める一冊


『感性の限界』ーリクナビNEXT編集長・藤井薫氏推薦

2018.04.06

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目次
  1. 二重性を孕む人間の本質を見つめる

二重性を孕む人間の本質を見つめる

『感性の限界―不合理性・不自由性・不条理性』
『感性の限界―不合理性・不自由性・不条理性』
高橋昌一郎 (著)
2012/4/18発売
講談社現代新書
書籍画像提供:講談社
※リンク先は講談社公式HP内の書籍紹介ページです。

突然ですが、結婚相手の選択問題です。金持ちブサメンvs貧乏イケメン。あなたならどちらを選びますか?

角度を変えて、もうひとつ問題。レモンのスライスをかじるシーンを想像してください。思わず口の中で出てきた唾を飲み込むのと、一度空のコップに吐いた自分の唾を飲み込むのと、どちらなら飲み込めますか? 逆にどちらだと気持ちが悪いですか?

私たちの意思決定は、見た目と効用が混濁すると、不合理な(時には愚かとも言える)答えを導きだします。

感情vs勘定、私情vs市場、金銭vs琴線。ほとほと私たちは、情理と合理の相剋に、人生の選択を迫まれ苦悩する動物なのです。

本書は、そうした不合理な意思決定をする人間の不思議の現況を、行動経済学、認知科学、進化生物学、実存哲学と、最新の学問(論理)を引きながら、驚くほど楽しく学べます。カーネマンの行動経済学、ドーキンスの生存機械論、カミュの形而上学的反抗。経済学、文学、心理学、生物学、哲学を網羅的にかじりたいエセ知識人(私)にとって、ここ数年の中で最も楽しく読める書でした。

中でも、人の脳内に併存する二重過程モデルと、その背景にある利己的遺伝子と利他的個体の競合のくだりが圧巻。なぜ私たちは、不合理な決断を繰り返し、わざわざ不自由な方へ人生を選択し、死に向かいつつ生き続ける不条理な生命なのか。私たち人類は、不自由な方向に進化することによって、生命を持続させてきた。そのことが楽しく語られます。

合理の固まりの経営戦略の中で、感情に満ちた組織に向き合う。合理のHRテックツールが浸潤する中、合理では割り切れない個の人生に寄り添う。そんな人事のプロフェッショナルにこそ、二重性を孕む人間の本質を見つめる本書をお勧めします。

執筆者紹介

藤井薫(ふじい・かおる)(リクナビNEXT編集長) 1965年生まれ。1988年慶応大学理工学部卒業。リクルート(現リクルートホールディングス)に入社。TECH B-ing編集長、Tech総研編集長、アントレ編集長、リクルートワークス研究所Works編集委員などを歴任。2016年4月より現職。リクルート経営コンピタンス研究所エバンジェリスト兼務。AI/IoT、自動運転などの人材獲得競争の深部。複業、People Analyticsなど、個人と企業が共鳴する新たな関係、HRMのあり方を発信中。https://www.works-i.com/column/works/藤井薫_02/

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