コラム

ドラッカーに学ぶ成果をあげる人の条件


あなたの強みは何ですか? ドラッカー流「強み」の見つけ方とは

2015.10.05

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「強みのみが成果を生む。弱みはたかだか頭痛を生むくらいのものである。しかも弱みをなくしたからといっても何も生まれはしない。弱みをなくすことにエネルギーを注ぐのではなく、強みを生かすことにエネルギーを費やさなければならない。」
(『経営者の条件』P134)

目次
  1. 強みは「与えられた現実」を受け入れることから
  2. 自分の強みを判断する方法
  3. 自分の弱みに目が行くことは「マイナス」でしかない
  4. 人間が弱みに目が行くのも、自然界の掟?
  5. 強みを意識する働き方を
  6. 同僚の「強み」に焦点をあてる

強みは「与えられた現実」を受け入れることから

ドラッカーが教える「成果をあげるための習慣的な姿勢と基礎的な方法」として最初に問いかけるのは、「あなたの強みはなにか?」ということです。

強みとは、基本的に自分が得意なことや関心のあることです。理系の人であれば、歴史よりも物理や化学の方が得意だったハズです。文系の人であれば逆でしょう。
もちろん、若いうちは自分の強みが何であるのかわからないことが多いと思います。

特別な才能のある人間は、小さい頃から自分が強みだと思っていたものが実を結びます。プロ野球選手やサッカー選手は、このパターンですね。
ところが大抵の人間は、自分の強みは野球なりサッカーだと思っていても、実を結ぶことはないでしょう。

大抵の人間は、自分の強みが何であるのか全くわからなくなってしまうような挫折を味わいます。ほんとはこんな会社に就職しようと思わなかったけど、他にないから仕方なしに働くことになった。あるいは、事務系の仕事をしたかったのに営業に回された。
こういう理不尽なことはたくさんあると思いますが、悲しいことにわれわれ凡人は特別な才能があるわけではないので、自分の希望を100%叶えるわけにはいかないのが現実です。
無い物ねだりをしても仕方ありません。

われわれの多くは、自分の強みは与えられた現実を受け入れることからスタートし、経験を蓄積することによって知るというイメージになるのではないかと思います。

自分の強みを判断する方法

こんな仕事は嫌だと思っていても、なぜか身につくものは強みがあるからです。逆に、好きでもなく、いくらやっても身につかないものは、やはり強みではないのです。
もし,自分の強みがわからない、あるいは本当に好きなことをやれていないと感じているのであれば、続けていられるか、あるいは仕事を覚えられているかどうかで、強みを判断するということでいいと思います。

続けられる仕事や覚えられる仕事というのは、それだけ経験を蓄積することが出来たわけですから、本人が気づくかどうかは別として、自然と強みになっているということです。
経験も立派な強みなのです。

自分の弱みに目が行くことは「マイナス」でしかない

問題となるのは、むしろ強みよりも弱みの部分なのかもしれません。
自分の強みに気がつかない人は、自分の弱みに目が行ってしまい自信喪失気味になる人が意外と多いものです。

どうやらわれわれには、強みよりも弱みに目が行ってしまう傾向があるのかもしれません。
例えば、足や手を怪我すれば、瞬時に痛みが伝わります。熱を出して体調が悪いときもわかります。泳ぎに自信がなければ、マリンスポーツはやりません。
身に迫った危機から生命の危機を回避するには、調子が悪いときや得意でないと感じるものには手を出さないことが鉄則ですので、サバイバルの本能として生まれつき備わっているわけですね。

人間にこうした能力がなければ、体調が悪いのにムリをして、致命的なダメージを負うことになりますし、泳ぎが得意でないのにマリンスポーツをやったら溺れ死んでしまいます。これでは命がいくつあっても足りません。自分の弱みに目が行くことは決して悪いことではないのですが、仕事の世界では,自分の弱みに目が行くことはマイナスでしかありません。

自分の気持ちが乗らず、いやいや仕事をやっているときも、こうしたサバイバルの本能が悪影響して、自分の強みには目が行かず、弱みに目が行ってしまい、仕事が出来ない理由やつまらない理由をつい探してしまうわけですね。

しかも、仕事をしていると上司からも自分の弱みを指摘されることが多いので、たまったものではありません。
人間は、自分の弱み以上に他人の弱みには厳しいものです。

リーダー的な立場から人をみると、部下の強みよりも弱みの部分に自然と目がいってしまいます。それゆえに、強みよりも弱みを克服するように注意してしまうことも多いようです。

人間が弱みに目が行くのも、自然界の掟?

他人の弱みの部分に焦点をあててしまうのも、サバイバルの本能がそうさせているのではないかという説があります。

弱肉強食の世界で捕食されるのは、常に弱った個体です。弱った個体を素早く見つけて捕まえることが狩りの鉄則です。
また、抗生物質がなかった時代では、病気で青白い顔をした人間には近づかないことが鉄則です。恐ろしい伝染病に罹っても治療法がありません。
人間が、強みよりも弱みに目が行くのも、言ってみれば自然界の掟に従っているのかもしれません。

また人間は、常に集団行動をしてきました。
集団行動をするためには、一癖も二癖もある人間を抱えるよりも、当り障りのない平均的な人間の方がまとまりやすかったということもあるのでしょう。
しかも狩猟採集生活では、今日ほど分業が進んでいなかったので、一人で何役もこなすことが要求されました。

例えは、道具をつくるのが得意でも、狩りが出来なければ話になりませんでした。狩りが不得意で、道具をつくることが得意な人間がいたとしても、まわりから狩りができるように矯正され、ダメなら猛獣に食われる運命だったと思われます。

分業が進んだ現代社会では、道具を作る人と道具を使う人は別人であるのが普通ですが、狩猟採集時代は食うために必死で、狩りが不得意で、道具をつくることが得意な個性のある人間を認める余裕などなかったのでしょう。

学校教育も、どちらかと言うと弱点の克服に焦点があてられがちです。その延長で、仕事でも弱点の克服に焦点があてられてしまいがちなのです。

もちろん、最低限の知識は身につけなければいけないので、あなたの上司や同僚が、弱点克服するように要求することは、それなりに意味のあることです。最低限の仕事をするという意味で、弱みを克服することは重要になります。

しかし、弱みを克服することだけに焦点をあわせてしまうと、あなたは無難な仕事をするようになり、自らの強みをいかすことを考えることはなくなってしまいます。いまや、分業と専門化が進み、他者・他企業よりもちょっとでも差別化できた人・組織が成果をあげる社会なのです。

強みを意識する働き方を

現代は、これといった弱みのないオールラウンダーではなく、人の強みに焦点をあわせることによって個性を発揮し、差別化しなければ生き残れない時代になっているわけです。
そういう時代になっているにも関わらず、われわれは、ある意味本能的に自らの弱みや相手の弱みに焦点をあててしまいます。

これは働く組織の問題であり、働くわれわれ自身が抱えている問題ですね。
人と組織、両方が変わらないといけないのですが、まずは自らが変わることを考えましょう。

その他大勢から抜けだそうとするならば、無意識のうちに焦点をあわせてしまう弱みではなく、強みをみることに焦点をあわせること。これを常日頃意識してみましょう。
「一日を振り返って、意外と上手くいった仕事は何か?」
「無理やりやらされたけれども、なぜか不思議と続けられた仕事は何か?」
これを毎日書き留めてみてはいかがでしょうか?

人間が強みに焦点をあわせることがあまり得意ではないからこそ、強みに焦点をあわせることが出来た人は、その他大勢から抜け出し、成果をあげることが出来る確率が高くなるわけです。

同僚の「強み」に焦点をあてる

そして、自らの強みをいかすことが出来たら、こんどは共に働く人の弱みではなく強みを見てあげるように手助けしてください。

「弱みをなくすことにエネルギーを注ぐのではなく、強みを生かすことにエネルギーを費やさなければならない」ということに、一人でも多くの人が気づき、実践をしていただきたいと思います。

執筆者紹介

大林茂樹(おおばやし・しげき)(大林税務会計事務所代表) 1999年大林税務会計事務所開設。開業以来、IPOや民事再生業務に携わると同時に、派閥争いによる内紛、骨肉の争い、経営者の自殺など浮き沈み激しいドラマに立ち会い、ドラッカーの著作に救いを求めるようになる。ドラッカーをテーマにしたメルマガでは、日本最大級の読者数を誇る。ドラッカー学会会員。

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