「コレカラ会議」開催レポート Vol.1
「ディグるキャリア」で越境転職が加速。お試し機会・新しいモノサシ・リスキリング採用で異能人材を獲得
2022.03.03
コロナ禍の転職市場で、業種や職種を超えた“越境転職”の割合が、過去最高を記録した。自身の経験やスキル、さらに感情を深く振り返り、心の声に従って夢中になれる異領域へキャリアチェンジする―-そんな兆しが見え始めている。
今回、リクルート社より寄稿されたセミナーレポートを通じ、コロナ禍を契機に大きく変動している転職市場の動向を紹介する。
構造的な人材不足ニッポンにおいて、個人に眠る才能を掘り起こし、企業の再成長を促すカギに
コロナ禍で、働く個人のキャリア観と企業を取り巻く環境は、大きな変化を遂げています。リクルートでは、一人ひとりが輝く豊かな世界の実現を目指し、「コレカラ会議」という場を通じて、未来に向けた提言を行っています。
2021年12月には、雇用領域から見える新たな兆しとして、「ディグるキャリア」をテーマに開催。働き手と企業、それぞれの可能性をひらくヒントを提示できればという想いのもと、4人の話者が事例とデータを交えながら話をしました。
「コレカラ会議」:https://www.recruit.co.jp/talks/recruit_voice/korekara/
「ディグる(Digる)」とは、掘り起こす・宝物を掘り当てることを意味します。
働く個人が自身の経験やスキル、感情を深く掘り起こすことで、心から夢中になれる新たな領域、新たなキャリアに挑戦する――そんな潮流をとらえています。
一方、企業側も構造的な人材不足を背景に、「異能人材」に期待し、迎え入れる動きが活発に。
実際、近年の転職市場においては「異業種×異職種」への「越境転職」が増加しています。
個人の中に眠る才能を掘り起こし、開花させていくこの潮流は、日本企業が抱える「人材不足」の課題解決、再成長の促進につながる可能性があります。
この連載では、リクルートグループが展開している事業の中から「社会人インターンシップ」「キャリア採用」「派遣」の3領域での「ディグるキャリア」の実践事例を交えつつ、企業と個人の変容の兆しをお伝えします。
第1回は、働く個人がキャリアをディグり、企業が「お試し機会」「新しいモノサシ」「リスキリング採用」で異能人材を獲得し始める、その背景で起きている雇用市場の変化について、株式会社リクルートHR統括編集長・藤井薫【写真】の講演内容を抜粋して紹介します。
働く個人はコロナ禍でキャリアを見つめ直し、「やりがい」「やりたい」を求め始めた
「ディグるキャリア」の潮流の背景には、働く個人々の意識の変容があります。
リクルートが転職検討中・転職活動中の方々を対象に行ったアンケート調査によると、「コロナ禍で将来のキャリアを見つめ直した」と回答した人が58.8%に達しました。
さらには、コロナ禍を機に「やりがい」「やりたいこと」を重視し始めている傾向が表れています。
「コロナ禍での転職活動のきっかけ」をたずねたところ、「会社の戦略や方向性に不安を感じた」に次いで、「よりやりがいのある仕事をしたいと思った」という回答が多く見られたのです。
また「企業に応募する際の重視項目」では、「やりたいことを仕事にできる」が56.3%で最多となりました。
多くの人が「より夢中になれるキャリア」に目覚め、行動を起こしている様子が見てとれます。
一方、「長期間の雇用が保証されている」の順位が高くないことも、近年の意識変化を象徴しているといえます。
企業はビジネスモデルの変化に伴い、人材要件を変更
企業側にも目を向けてみましょう。
以下のグラフのとおり、コロナ禍においても構造的な人材不足感は続いています。
リクルートエージェントを利用している企業へのアンケート調査*3株式会社リクルート「2021年度上半期中途採用動向調査」では、約7割の企業が「中途採用計画を満たせていない」と回答しています。
人材不足の危機感が高まる中、事業拡大に不可欠な人材を獲得するために、新たな動きが見られます。
「人材要件の変更」です。
「3年前と比較して、正社員採用の際の人材要件を変更したか?」という質問に対し、18.3%の企業が「変更した」と回答。変更の中身を見ると、「全面的に変更した」企業は18.1%、「重視する項目を絞り、新しい観点の項目を加えた」企業は30.7%に達しています。
変更の理由としては、「ビジネスモデルの変化でこれまでとは異なる人材が必要になった」(41.7%)「これまでの人材要件では必要人材を採用できなかった」(39.2%)が上位に挙がっています。
「要件変更」とは、単に「採用できないから、求める人材の質を下げる」ことではありません。企業は自社のビジネスモデルを変化させているため、これまでとは異なる視点で質の高い人材を獲得しようとしています。
企業側も新たな人材マッチングの手法や“モノサシ”を模索しているのです。
個人も企業も、異領域への「越境」で再成長を目指す
個人は、本当にやりたいことを求めて、あるいはスキルのアップデートを図るため、異領域を目指す。
企業は、新たな市場やサービスへの転換を図るため、異能人材の獲得を目指す。
双方とも再成長を狙い、異領域へと「越境」する動きが出てきています。
「越境」の動きは、転職者のデータにも表れています。
転職先のパターンには大きく分けて、「同業種×同職種」「同業種×異職種」「異業種×同職種」「異業種×異職種」があります。
「即戦力」を求めることが多い中途採用においては、かつては「同業界×同職種の経験がなければ採用しない・されない」というイメージを持たれていました。
ところが、2020年の転職決定者を見ると、「同業種×同職種」への転職はわずか19.6%。4パターンのうち、もっとも割合が低いのです。
最多は「異業種×異職種」への転職で、36.1%を占めています。
「ディグるキャリア」を加速させる、雇用市場の3つの変容
では、企業が「異能人材を『越境』によって獲得したい」と考えた場合、どのような方法があるのでしょうか。
私たちが注目するのは、「お試し機会」「新しいモノサシ」「リスキリング採用」という、雇用市場の3つの変容です。
この3つの拡大が、「ディグるキャリア」を加速させると考えています。
それぞれについて、具体的な動きは次のとおりです。
●お試し機会
在籍中の企業を辞めることなく、社外でキャリアをディグる「お試し」の機会として「社会人インターンシップ」があります。リクルートの社会人インターンシップサービス『サンカク』では、企業が課題を提示し、参加者が解決策を導き出すべくディスカッションを行います。
『サンカク』を通じて、働く人たちに「お試し機会」を提供する企業は、この6年で8倍に増加しています。
このプログラムをきっかけに、参加企業と参加者の間で副業や転職に繋がる事例も出てきています。
サンカク:https://sankak.jp/
●新しいモノサシ
キャリア採用の領域においては、先ほども触れたとおり転職支援サービス『リクルートエージェント』の決定者データから「異業種×異職種」への越境転職の割合が最多となっています。企業では求める要件を変更し、異業種での経験にも注目する、あるいは「微経験」といわれる微細なスキルも評価するなど、「新しいモノサシ」を採用選考に導入しています。この動きが拡大することで、越境転職も拡大していくでしょう。
リクルートエージェント:https://www.r-agent.com/
●リスキリング採用
「リスキリング」とは、「学び直し」「新たなスキルの習得」。人材派遣の領域では、入社後の「リスキリング」を前提とした新規採用が拡大しています。
エンジニアの人材派遣を行う『スタッフサービス・エンジニアリング』では、派遣会社が派遣スタッフのスキルアップを支援し、配属先企業に入社後も、その企業と一体となって派遣スタッフの育成を行っています。
スタッフサービス・エンジニアリング: https://www.staffservice-engineering.jp/
この3つの変容は「転職以前」「転職活動中」「入社後」と、あらゆるフェーズで起きていることになります。
転職以前の「お試し」、転職活動中の「新たなモノサシでの選考」、入社後の「リスキリング」です。
さまざまなフェーズでの「ディグるキャリア」の取り組みが、個人に眠る才能を掘り起こし、個人と企業双方の再成長の促進につながると期待できます。
【画像はセミナー資料より】
話者プロフィール
藤井薫(ふじい・かおる)
株式会社リクルート HR統括編集長
『リクナビNEXT』編集長。1988年リクルート入社以来、人材事業のメディアプロデュースに従事。TECH B-ing編集長、Tech総研編集長、アントレ編集長、リクルートワークス研究所Works編集部を歴任。リクルート経営コンピタンス研究所兼務。著書に『働く喜び 未来のかたち』(言視舎)。
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リクルートは、一人ひとりが自分に素直に、本当に夢中になれる時、よりよい未来を生み出すという世界観の元、一人ひとりが輝く豊かな世界の実現を目指しています。
次回より、「お試し機会」「新しいモノサシ」「リスキリング採用」それぞれについて、働く個人がどのように自分自身をディグり、本当に夢中になれる道を見つけてキャリアチェンジを叶えたのか、具体的な事例をご紹介してまいります。
編集部注:この記事はリクルート社から提供の寄稿レポートです。
>>>「コレカラ会議」開催レポート Vol.2 「ディグるキャリア」の越境事例 「社会人インターンシップ」での出会いから発展し、転職を実現
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