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書籍紹介


人事の10分読書vol.1『できる上司は会話が9割』

2021.04.27

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@人事が、本の要約サイト「フライヤー」とコラボし、人事のスキルアップにつながる書籍の要約をお届けする連載企画「人事の10分読書」。
初回は『できる上司は会話が9割』(三笠書房 )を紹介する。

>>>「人事の10分読書」シリーズ

目次
  1. レビュー
  2. 著者プロフィール
  3. 『できる上司は会話が9割』の要点
  4. 【必読ポイント!】自分から動く部下を育てる
  5. 部下の仕事力を上げる
  6. 成果を出すチームに変える
  7. 一読のすすめ

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レビュー

あなたが組織人なら、本書を読みながら何度も「あるある!」と激しく頷くこと請け合いだ。入社してそれなりの時間が経てば、多くの人が部下を持つことになる。この「部下」との関係性に悩む上司は少なくない。自分で考えない、すぐに問題を丸投げしてくる、目標達成に非協力的、裏で自分の陰口を言っている(ようだ)、自分だけが頑張っている気がする……。部下の性格や能力は千差万別で、中には自分より社歴の長い人や、年上の人もいるかもしれない。会社からのプレッシャーに耐えながらチームをまとめていかねばならない「上司」の悩みは、海のごとく深い。

本書では、コーチングのプロが説く「部下の能力の引き出し方」が、ケース別で紹介されている。「会話」に焦点が当てられ、上司がどんな関わり方をすれば部下をうまく育てられるかが、わかりやすく解説されている。人材の多様化が進む今、上司には部下一人ひとりに合わせた対応が求められる。それぞれの職務能力や思考、業務の違いを考慮しながら「個別化された会話」を進めることで、部下はチームの戦力へと育っていくという。

本書のテーマは「会話」であるが、「黙っている」や「ただ聞く」という、あえて話さないスキルも登場する。上司の「指導力」は、アグレッシブに指示したり相手を説得したりするだけではない。部下に寄り添い、その成長を「待つ」姿勢も、リーダーシップの一つの形であることを本書は教えてくれる。「部下」に悩むすべての「上司」必読の一冊である。

著者プロフィール

林健太郎(はやし けんたろう)
リーダー育成家。合同会社ナンバーツー エグゼクティブ・コーチ。一般社団法人 国際コーチ連盟日本支部(当時)創設者。
1973年、東京都生まれ。バンダイ、NTTコミュニケーションズなどに勤務後、日本におけるエグゼクティブ・コーチングの草分け的存在であるアンソニー・クルカス氏との出会いを契機に、プロコーチを目指して海外修行に出る。帰国後、2010年にコーチとして独立。2016年には、フィリップ・モリス社の依頼で、管理職200名超に対するコーチング研修を実施。日本を代表する大手企業や外資系企業、ベンチャー企業や家族経営の会社まで、のべ500人を超える経営者やビジネスリーダーに対してコーチングを実施。企業向けの研修講師としての実績も豊富で、フェラーリ社の日本における認定講師を8年間務めるなど、リーダー育成に尽力している。リーダーのための対話術を磨くスクール「DELIC」を主宰。2020年、オンラインでの新しいコーチングの形態「10分コーチング」(商標出願中)を開発。

○著者HP 合同会社ナンバーツー
http://number-2.jp/

『できる上司は会話が9割』の要点

  1. 上司は、部下から「どうしたらいいかわかりません」と言われても、答えを出してはいけない。「復唱」と「合いの手」を使い、「自分から動く部下」を育てよう。
  2. 「1on1ミーティング」では、部下の話にじっくり耳を傾けよう。口を挟みたくなったら、無になってみることだ。丁寧な傾聴が、上司への信頼を生み出す。
  3. 部下の「やる気スイッチ」を入れるのは上司の仕事だ。そのためには、部下一人ひとりの価値観を探る必要がある

【必読ポイント!】自分から動く部下を育てる

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部下が自分の頭で考えない

「無理です!」「どうしたらいいかわかりません!」と、いとも簡単に諦めてしまう部下たちの扱いに悩む上司は多いものだ。だが、部下を「すぐ諦める部下」にしているのは、上司であるあなた自身だ。上司が部下に代わって解決策を考えてしまうために、部下は「どうせ上司がなんとかしてくれるから」と、自分で考えることを放棄してしまう。あなたは部下にとって「チョロい上司」なのだ。

こんな歪んだ関係は、できるだけ早く逆転させるべきである。上司であるあなたは、部下ではなく自分がラクできる方法を確立し、やるべき仕事に集中しなければならない。

そのためには、部下が何かに困ってあなたに相談しに来ても、「答えない」ようにしよう。対話はするが、あなたが考えた解決策を部下に与えるという行為はすっぱりやめる。その代わり、部下本人が自分の頭で解決策を考えざるを得ないような対話の流れを作るようにする。

具体的には、部下が言った通り「復唱」する、部下の発言に「合いの手」を入れる、の2つのスキルを使おう。例えば、部下が「もう無理です」と言ったら「もう無理なんだね」と復唱する。それだけで次の言葉がなかなか出ないなら、「それについて、もうちょっと詳しく教えてもらえる?」「それで?」といった具合に合いの手を入れる。

上司から合いの手が入ると、部下はヒヤリとし、説明や言い訳を始めるだろう。それでも何も言わず、部下に最後まで言い切らせよう。これを続ければ、部下は解決策をくれない上司に代わり、自分で考えるようになる。

ほめて育てているのに効果がない

「部下をほめて育てる」というのは、昨今の人材育成のトレンドだ。ところが、積極的にほめているのに反応が鈍く、部下が成長している実感もないと悩んでいる上司もいるだろう。

ほめる育て方がうまくいかないのは、「ほめ方」を間違っているからだ。具体的には、「ほめる」を無意味に使いすぎてしまっているのだ。

ほめすぎると、「忖度(そんたく)する部下」が生まれてしまう。部下は上司の意図を読み取り、ほめてもらえる行動だけをとるようになるのだ。また、ほめられ慣れしてしまい、何を言われても心に響かなくなる。これでは、上司からほめられてもモチベーションアップにはつながらない。

だから上司は、心からほめたいと思ったときだけ、ほめるべきである。それ以外のときは、「承認」、すなわち「相手の存在」を認めるようにしよう。相手の存在や行動、発言を「気づいているよ」「聞いているよ」と、しっかりと言葉で伝えるのだ。

承認には「ほめる」と違って、上司の主観はさほど入らない。そのため、上司の意図を忖度させることなく、部下のモチベーションを高められる。

また、確実な成果が出ていない段階でほめるのは難しくても、「プロセスの承認」はできる。「進んでいるね」「その調子だよ」と声をかければいい。

承認の言葉を普段から伝えられれば、部下のモチベーションは高まるだろう。あなたから建設的なフィードバックをすることで、部下が素直にそれを受け入れる素地をつくることにもつながる。

つい自分がしゃべりすぎてしまう

昨今、導入が進められている「1on1ミーティング」(以下、1on1)。これは、部下の自律性を引き出すための人材育成メソッドとして、上司と部下が1対1で行う個人面談のことだ。

1on1は「部下に話をさせる」ことを重視しているが、気がつけば「上司ばかりが話していた」というケースも多い。つい口を挟んでしまい、話が止まらなくなってしまうのだろう。
しかし、上司が口を挟むことで、部下は忖度して本音を言わなくなる可能性がある。これでは、1on1の意味がない。

この状況を打破するためには「傾聴」が有効だ。相手の話に耳を傾けて、相手の言葉の裏にある「本質」を見極めていこう。
もし、それでも口を挟みたくなったら「無になる」のがおすすめだ。これは言い換えると、一切の判断を「先送りする」ことである。「解決したい」モードに入りそうになったら、ひと呼吸置き、「今はそれについて判断しなくてもいい」と、「判断する」という行為の優先度を一旦下げる。そして、部下の話を聞くことに専念する。

この態度を、1on1の間ずっと維持しよう。慣れないうちは、少なくとも持ち時間の最初の4分の1は傾聴に徹することから始めてもいい。

私たちは基本的に、親身になって聞いてくれた相手に対して好感を持ちやすくなり、信頼感も生まれやすくなる。部下に話をさせることが目的の1on1は、部下の自律性を促す機会であるとともに、上司と部下の間で信頼を醸成することにもつながる。

部下の仕事力を上げる

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部下が仕事を覚えない

人間は忘却する生き物であり、一度で仕事を覚えることは不可能に近い。とはいえ、もし何度説明しても覚えないなら、部下の「やる気スイッチ」が入っていないのかもしれない。

部下のやる気スイッチを入れるのは、上司の仕事だ。「やる気スイッチは自分で入れるものだ。自分自身もそうしてきた」という人もいるだろう。しかし、自分自身でスイッチを入れる人材だったからこそ、あなたは今「上司」として活躍しているのではないだろうか。世の中の大半の人は、なかなか自分でスイッチを入れられないものである。

ひと昔前なら、「マイホーム」「マイカー」といった、わかりやすい物質的な「鼻先のニンジン」があり、それが部下のやる気スイッチにつながっていた。しかし価値観が多様化する今、誰にでも共通するような「ニンジン」は存在しなくなっている。

現代の上司は、部下一人ひとりの「鼻先のニンジン」が何かを知っておかなければならない。普段から対話を重ね、相手がどのような価値観を持っているのかを把握しておこう。部下にとって意味のある「ニンジン」を見つけ出して共有すれば、部下はやる気を出してくれるだろう。

部下がついてきてくれない

自分とチーム内の部下の関係がどうもしっくりしない。部下と話すときも、話しかけるのはいつも自分で、反応もイマイチ……。このように、チーム内の空気に「空回り感」を察知した上司ほど、「なんとかしなければ」と焦ってしまいがちだ。しかしそんなときは、あえて「何もしない」のが一番である。

ただし、「何もしない」といっても、そのまま放置していてはいけない。上司として全力で走り続けるのを止めるだけだ。そして、冷静な目でチームに何が起きているのかを「観察」してみる。

観察の対象は次の2つだ。まず、「自分の内面」である。今、「どのような感情」がわき上がっていて、「どのような欲求」があり、「何をしたい」と考えているかなどを観察する。

仕事ができるビジネスパーソンほど、自分の感情をうまく隠す。そのため、多くの上司は自分の感情に目を向けない傾向がある。自分の感情を観察してみれば、やがて「他者の感情」にも意識が向くようになるだろう。

次に、「今、自分の周囲で起きていること」を観察する。自分のチームが、現在どのような状態にあるのかを注意深く見てみよう。チームとして、何がうまくいっているのか? チームがよりよくなるために、何が必要か? これらから気づくことは何か?

「空回りしている」といっても、全部がダメというわけではないはずだ。全否定せず、まずはうまくいっている部分を明確にして、改善点を探っていこう。焦らずに一度立ち止まることが、結果として最短で最善の解決法となる。

成果を出すチームに変える

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部下が目標達成に積極的にならない

「自分で決めた目標じゃないので」と、部下が目標達成に対してネガティブな発言をしたとする。そんなとき、上司の導き方によって、今後の仕事の成果や人間関係は大きく変わる。ここでうまく対処しないと、後に大きな問題に発展してしまうかもしれない。

そもそも、部下の発言の真意はどこにあるのだろうか。ネガティブ発言はあくまで会話のきっかけで、実はほかに伝えたいことが潜んでいるのかもしれない。上司がすべきは、その「伝えたいこと」を察知し、深い対話に繋いでいくことだ。頭ごなしに否定するのではなく、部下がどういう意図で発言したかを聞き取っていこう。

中には、「目標達成のためには、販売促進の予算がもっと必要です」など、上司の立場では解決できないような、会社への不満もあるかもしれない。その場合、あなたが解決策を導く必要はない。大切なのは「解決する」ことではなく、「ただ聞く」ことである。部下は、ただ聞いてほしいから不満を打ち明けているだけなのだ。

「上司に自分の話をじっくり聞いてもらえる」という経験は、部下の心に大きな変化をもたらす。丁寧な傾聴によって、相手は本当に話したいことを開示し、話していくうちに気づきを得て、問題解決に近づいていくかもしれない。

文句を周囲に言いふらす部下がいる

陰でこそこそと上司への不満を言いふらす部下がいる。このタイプの部下に遭遇したら、すぐに手を打つべきだ。

多くの上司は、この「裏でコソコソ」タイプの部下を放置しがちだ。「言わせておけばいい」「相手にするのはバカバカしい」と考えているのかもしれない。しかし、この問題は、チーム全体に影響を及ぼす可能性がある。「裏でコソコソ」部下はチーム全体の士気と生産性を下げる。チーム内の活気も奪われていく。その不満は何も手を打たない上司に向かい、不信感が生まれるだろう。

「裏でコソコソ」部下に遭遇したら、「自分は上司として、どんなチームをつくりたいのか」を再考してみよう。そのビジョンに照らして、「この部下の行動は、チームの目標達成に本当に必要なのか?」を自問する。

もし「チームの目標達成に必要だ」と判断したら、関係修復を試みて「育てる」方向にシフトする。一方、もしチームに不要と判断したのなら、「異動してもらう」ことを考えるべきだ。もちろん、「異動」は最終手段で、その前にできることはしなければならない。

あなたは部下の「やる気スイッチ」を入れられているだろうか。「裏でコソコソ」部下をつくり出した原因は、あなたにあるのかもしれない。上司の接し方次第で、部下はチームに貢献してくれる人材にも、マイナスの影響を与える人材にもなり得ることを心に留めておこう。

一読のすすめ

本書は組織(主に企業)の「上司」に向けたコーチングの本であるが、子育てや、学校や習い事での指導にも応用できる。「上」に立つ人は、目標達成や相手の成長のため、つい自分が頑張りすぎてしまう。かつて「下」だったときの気持ちをすっかり忘れて前のめりになっていたという経験は、誰もがしてきたものではないだろうか。

相手の話にただ耳を傾ける「傾聴」。一見受け身なこの態度が、自発性を促すカンフル剤となるのはおもしろい。人は誰もが潜在的に「聞いてほしい」「認められたい」と思っている。部下のやる気スイッチを押すヒントは、このあたりにありそうだ。

本書には、新人と既存メンバーの不仲、業務経験のない部署で管理職になった場合、締め切りを守らない部下とのやり取りなど、さまざまなケーススタディが掲載されている。「困ったときの一冊」として、重宝しそうである。

【出典:「できる上司は会話が9割」株式会社フライヤー

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