キャリアセンターに聞いてみました
学生の利用率が1.4倍に! 大学キャリアセンターを新卒採用で活用する方法
2019.09.19
母集団形成、採用費削減などに効果があるとして、新卒採用の手法の1つとして注目される大学キャリアセンター。@人事では過去に「キャリアセンターに聞いてみました」企画を実施。そこから数年の間で、「終身雇用制度の限界」「就活ルール廃止」など、新卒採用を取り巻く環境は大きく変化しつつあります。
これらの影響により、学生のキャリアセンターの利用方法に変化はあったのでしょうか。そこで今回、約3年ぶりにキャリアセンターへのインタビューを実施。3校のキャリアセンター担当者に、キャリアセンターの利用状況や近年の学生の変化などについてお聞きしました。
企業との関係構築を大切にしたい(学習院大学)
学習院大学のキャリアセンターでは、「面接対策セミナー」や「業界研究ワークショップ」を始めとする103の就活サポートプログラムを提供しています。2018年度の就活内定率は98.7%。この実績は、学生の実力はもちろん、前述のプログラムによって支えられているといいます。今回は、前回の企画でもご登場いただいたキャリアセンター担当事務長・淡野健氏を取材しました。
キャリアセンター基本情報
・キャリアセンターに登録がある大学3,4年生の人数
3年生:2,325人
4年生:2,488人
※学習院大学ではキャリアセンター利用は登録制ではないため、在籍者数をカウント
・キャリアセンターに登録がある企業求人数
16,977件(2020年卒向け)
・求人票の受付上限数
限度なし
・求人票の掲載開始~掲載終了期間
21卒:2019年3月~2021年3月
22卒:2020年3月~2022年3月
「内定者フォロー」の情報が求人紹介の参考に
―学生に求人を紹介する上で、参考にしている企業情報はありますか?
主に2点あります。これまで入社した卒業生の情報や、内定者に対する入社までのフォローの仕方を知ることができると、学生への紹介の参考となります。
卒業生の情報は、当時在籍していた学部や、入社後の配属先・活躍についてご共有いただけるとありがたいです。
インターンシップガイダンスや説明会の参加学生数が増加
―ここ3~4年間で感じる「学生の変化」があれば教えてください。
インターンシップガイダンスや説明会の参加学生数が年々増加しており、就職活動に対する関心の高さが伺えます。
特に2020年卒学生については、4月以降の企業説明会への参加学生が増え、納得のいく進路を見つけるために活動を続けている学生が目立っています。
「事前のアポ取得」で、どの企業にも関係構築のチャンスが生まれる
―企業の人事担当者に対する要望があれば、教えてください。
キャリアセンターへの訪問時は、事前のアポイントメント取得をお願いします。アポイントメントは電話で受け付けていますので、ぜひご連絡ください。アポイントメントを取っていただければ、企業規模や業種に関わらず、必ずお会いさせていただきます。
また本学は、オリジナルな企業説明会やマッチング手法(※)を用意しており、企業との接点や関係構築を大切にしていきたいと考えております。
※参考:【前編】中小企業は大学キャリアセンターとの結びつきを強化せよ!
「コンピテンシー情報」を明確に伝えてほしい(中央大学)
中央大学の2018年度の就職内定率は98.3%。キャリアセンターによる個人面談の積極的な実施や「ジョブ・フェスティバル(企業研究セミナー)」と呼ばれる大規模な企業説明会の開催などによって、高い就職率を支えています。今回の取材では、前回に引き続きキャリアセンター副部長・池田浩二氏にお話を伺いました。
キャリアセンター基本情報
・キャリアセンターに登録がある大学3,4年生の人数
※カッコ内は学年の在籍人数における登録者の割合
3年生:3,483人(58.4%)
4年生:5,255人(80.1%)
・キャリアセンターに登録がある企業求人数
18,560件
・求人票の受付上限数
限度なし
・求人票の掲載開始~掲載終了期間
21卒:2019年3月~2020年3月
22卒:2020年3月~2021年3月(予定)
企業には具体性のある情報提供が求められる
―学生に求人を紹介する上で、参考にしている企業情報はありますか?
四季報や有価証券報告書などの資料を参考にしています。入社後のマッチングのため、「事業概要の領域・強み」「具体的な業務内容」「歓迎する知識」「求める人物像」についての情報は、より具体的に知りたいです。
また、年代別モデル給与や有休取得率、福利厚生も参考になります。福利厚生の中でも特に、法定外福利厚生の具体的な内容(福利厚生サービス等)についても記載があるとなお良いです。
低学年の利用率増、3年生のイベント参加率は減少傾向に
―ここ3~4年間で感じる「学生の変化」があれば教えてください。
キャリアセンターの利用方法の変化としては、インターンシップやキャリアセンター主催のイベントに参加する低学年の学生は増えてきています。その一方、3年生のガイダンスやイベントへの参加率は減少傾向にあるようです。
全体的な傾向としては、答えを親や他人に求めるなど、自立に欠ける学生が増えたように感じています。
「欲しい人材像」をできるだけ明瞭にしてほしい
―企業の人事担当者に対する要望があれば、教えてください。
人事担当者の方から「中央大学の学生がほしい」とお話をいただくことがありますが、本学は学部も人数も大規模でさまざまな学生がいます。「どんな学生がほしいか」を始めとする最低限のコンピテンシー情報は、可能な限り明瞭にご提示いただきたいです。
また、キャリアセンターへの訪問時は必ず事前のアポ取得をお願いします。さらに現在、低学年から「OBOG訪問」を希望する学生が多くおります。学内での情報公開時には高いセキュリティと制限を付与しているため、可能な限りOBOG名簿の提供をいただけると幸いです。
学生の相談件数、イベント参加率が約1.4倍に(芝浦工業大学)
芝浦工業大学は、毎日新聞が発表する「全国240大学 実就職率ランキング」の卒業者数2,000人以上の大学部門で5年連続全国1位を獲得。その背景には、キャリアサポート課によって行われる入学~卒業までの一貫した就職支援があるといいます。今回は就職・キャリア支援部次長、三船毅明氏を取材しました。
キャリアセンター基本情報
・キャリアセンターに登録がある大学3,4年生の人数
3年生:2,120人
4年生:1,808人
大学院1年生:498人
大学院2年生:542人
・キャリアセンターに登録がある企業求人数
1,767件(2020年卒向け)
・求人票の受付上限数
限度なし
・求人票の掲載開始~掲載終了期間
21卒:2020年3月~2021年3月(予定)
22卒:状況に応じて掲載時期を判断
理系学生の応募には「募集職種の学科系統」や「歓迎されるスキル」の情報が必須
―学生に求人を紹介する上で、参考にしている企業情報はありますか?
1つはOB・OG名簿ですね。学生からの直接連絡がOKな方がいれば、ご指名いただけるとありがたいです。
また、人事担当者の方に「文系も理系も歓迎です」と言われ、うちは理系しかいないんだけど……と思うことがしばしばあります。募集職種の学科系統や必要なスキルなど、以下のような情報を具体的にいただけると参考になります。
・青少年雇用情報シート(3年以内離職率等の記載)
・募集職種の学科系統(機械・電気・化学金属・建築等)
・必要and/or歓迎される知識・スキル・経験
・勤務地
3年生のキャリアセンター相談件数が、2年間で1.38倍に
―ここ3~4年間での「学生のキャリアセンターの利用方法の変化」があれば教えてください。
エントリーシートや履歴書記入内容、面接対策など、就職に関わるノウハウを支援する機会は、5年前の年間3,000件から昨年度の4,200件と、コンスタントに利用者が増加しています。
一方、会社選びに関する相談は、就職活動が早期に終了するケースの増加に伴い10%から3%へと減少しています。さらに、学生の就活状況をWEB上で報告してもらう仕組みに変更したため、報告のためだけに足を運ぶ学生は、17%から7%へと減少しています。
学年別に見ると、近年のインターンシップ参加学生の増加に伴い、3年生の相談件数が昨年度1,800件近くになり、一昨年までの1,300件前後より急激に増えています。また、就職環境の好転により、既卒者の相談は5年前より半減しました。
キャリアセンターへの相談は「10月以降」が◎
―企業の人事担当者に対する要望があれば、教えてください。
3月から10月にかけて採用のお話をいただくことがありますが、最近はこの時期の学生のニーズが少なく、採用ご担当者様方のご期待に応えられないのが実情です。できれば10月以降、特に年が明けてからでも継続採用いただいている会社があればぜひ相談させていただきたいと思います。
また最近は、各学校ホームページを通じた情報発信に力を入れています。ぜひ、大学のホームページ、特にキャリアサポート関係のページを一度ご覧になっていただければと存じます。
キャリアセンターの効果的・効率的な活用を
取材前、昨今SNS採用や逆求人などの「企業と学生の接点」が増えたことで、キャリアセンターの利用率は下がっているのではないかと予想していました。しかしインターンシップへの関心の高まりをはじめとする要因から、3校ともに学生の利用率は上がっているといいます。新たな採用手法に注目が集まりがちですが、ここでもう一度企業の採用担当者は「キャリアセンターとの連携」を検討してみてはいかがでしょうか。
一方、今回の取材から「企業の人事担当者に対する要望」として次のような意見も挙がりました。キャリアセンター訪問に関して、企業には真摯な姿勢と効率的な観点が求められています。
■時間外の電話連絡は印象が悪い
本学は面会希望の企業についてはすべてお断りせず、時間の許す限り面談している。しかし、9時前・昼休み・17時以降にお電話いただくことが多く、スタッフは時間外での対応となり印象はあまり良くない。
学生にもそういう時間を避けて電話するように指導しており、社会人の常識としてどうなのか、と思うときがある。
■キャリアセンター訪問前には、ホームページに一度目を通してほしい
大学の就職関係のホームページについては、訪問前にざっと目を通してもらえるとありがたい。遠方から来校された採用ご担当者の方から「説明会の参加方法や求人票の提出方法が分からない」とよく質問されるが、すべてホームページに書いてある情報なので、もったいないと思う。
■1度の訪問には多くのコストがかかるのが現実。お互いにとって意義がある時間にしたい
あまりに事前準備がなく来校いただいていると、メール連絡だけでも充分だと思うときがある。
お互いの拘束時間と、訪問される方の移動時間・交通費など、1度の訪問にはコストがかかる。せっかく訪問いただくなら、お互いにとって意味のある時間にしたい。情報伝達や質問であればメールで全く問題ないし、それが失礼だとは思わない。
【編集部より】
キャリアセンターの活用に関する記事はこちら。
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