若者文化、どう見てる?
タピオカドリンクに真摯に向き合ったら、世代間ギャップの課題にぶつかった
2019.06.21
ある日突然、道端に若い女の子の行列ができていて何ごとかと思ったら、流行りのタピオカ専門店でした。「また若者の間でよく分からないものが流行っているな」と思っているあなた、実は仕事上のコミュニケーションでもソンをしているかもしれません。
まさに、「なぜ人気なのか意味不明」だったアラフォー記者が、後輩社員から「飲んだことないんですか?」と言われ、正面からタピオカドリンクと向き合ってみたところ、働き方改革でも課題になっている世代間ギャップを実感することに。若者文化をヒントに職場のコミュニケーション不全の解決法を探ります。
1.アラフォー世代が勇気を出して買ってみたら
ミルクティーの底に沈む、黒いゼリー状の玉。アラフォーライターには、どう見ても「かわいい」ものには映らないタピオカドリンクに、どうして若者は行列を作るのでしょうか。かつて何度かタピオカがブームになった記憶がうっすらあるものの、廃れて消えたはず……。
20代の後輩社員から「え~飲んだことないんですか?」と言われても、実はなかなか「買ってみたい」という気持ちが沸かなかった私。なんでしょう。年齢を重ねたからなのか、行列には絶対に並びたくないというのがポリシーでした。そんな時、話し方研修を行う「KEE’S」の講師で元アナウンサーの会田幸恵さんに先日取材した際に聞いた「相手を受け入れることがコミュニケーション不全を改善する一歩です」という言葉を思い出しました。
※会田さんに取材した記事「Web会議がうまくいく! 一生役立つ『話し方』メソッド」
現在、私は自分以外全員が年下というチームで仕事をしています。これまでは年配者と仕事をすることが多かったこともあり、さまざまな場面で「価値観のズレ」を感じていました。そして、自分の価値観を必死に守ろうとしていることも……。そこで、一念発起。「若者文化を受け入れる練習」のつもりで、会社近くのオフィス街にできたタピオカ専門店に足を運んでみることに。原宿では無理でも、オフィス街ならなんとか行ける! 後輩社員についてきてもらいました。
私たちの列の後ろには、意外にも50代とみられる二人連れの男性社員が。「初めて来たんです」と言いながらうれしそうに店の様子をスマホでパシャパシャ撮影するおじさんたち。「家で娘にも見せるんだろうな」と思わせるはしゃぎっぷりを横目に、アジア系の店員から大ぶりの容器を受け取りました。太いストローから飛び込んできたタピオカは予想以上にモッチリとして餅のよう。昼ご飯直後は重たかったな、という反省もありつつ「流行りのものを買っています」という高揚感はアリ。会社で普段話したことのない隣りのチームの社員に声をかけられたりして、なんだか青春時代に戻った感覚(気持ちだけ)を味わいました。
2.若者は「みんなが好きなものが好き」?
ほんの少し若者の気持ちになれたところで、タピオカ人気について入社3年目の女性社員に「どうして人気だと思う?」と聞いてみたところ、「流れに乗っているという一体感ですかね」と答えが返ってきました。私の場合は「流れに乗りたくない」という天の邪鬼な気持ちが働きがちですが、今の若い世代は「共感」や「シェア」を大切にすると言われています。身近なインフルエンサーに影響を受け「みんなで楽しみたい」という思考になるのでしょうか。
さらに、タピオカ人気について他の20代の若者たちにも意見を聞いてみました。
もともとは、インスタで自分の好きな芸能人やモデルがタピオカと一緒に映っていて「マネしたい」から始まった気がする。
中高生の間では「K-POPの音楽しか聴いていない」という子も多い。タピオカが韓国やアジア圏でも大人気という背景もあるかもしれない。
タピオカの容器が大きいから、インスタで小顔効果がある。
コーヒーブームに飽きた人が飲んでいるらしい。
いろいろな意見を聞いているうち、これらの考察に対して私は「ふ~ん」「よく分からないなあ」などしか答えられませんでした。ここ数年、20代との接点が少なすぎたからか、ストンと腑に落ちることができません。
そして話を聞いているうちに「みんなと同じものを好きになりたいのは、自分に自信がないからなのか」と、どこか否定的にとらえてしまうように。せっかくタピオカを買って飲んだのに、会話は深まることなく終了。店にいたおじさんたち、会社に戻ってうまくコミュニケーションが取れているだろうか、と心配になりました。ああ、タピオカで気付く、世代間ギャップ。
3.お互いの気持ちを動かす魔法の言葉があった
前述の会田先生の取材メモを見返すと、こういったことも実はコミュニケーション不全の一種なのかもしれないと気付きました。今、日本中の職場では働き方改革の推進によって会議が効率化されたり1対1の面談機会ができることで、さまざまなシーンで社員同士のコミュニケーション不足の課題が露呈していると言います。世代差のある上司と部下はもちろん、同世代や同性の社員同士でさえ、お互いに本音を言い合うことができないことが多いのだとか。これまではなんとかなっていても、効率化や生産性向上、人材の定着化などのためには、よりコミュニケーションを密にした他者との理解が求められる時代になっています。
会田先生は「働き方改革を推進するためには、会議ではもちろん、普段のコミュニケーションから、相手を受け入れて、主張するというアサーティブ・コミュニケーションが必要」と言います。「受け入れる」という行為は、実は日本人が苦手とするところだそう。すぐに「でも」「だって」「どうせ」の「魔の3D」が横行してしまい、相手を認められないのだそうです。「どうせ、若者のことはわからない」→これって、諦めの境地にも似ていますね。
若者が他者との「共感」を大事にしている一方、中年層ほど自己を大事にして他者を受け入れるのが苦手なのかもしれません。そんな中年層に会田先生がすすめてくれた魔法の2ワードが、「いいね」と「なるほど」です。
コミュニケーションを円滑にする魔法の2ワード
★まず一言目は強制的に「いいね」を言って同調する
★意見が違う場合は「なるほど」と相づちを打ってから反論を始める
SNSでは「いいね」をポチッとする人は多いと思いますが、実際の会話で口に出して相手を認めることは意外と少ないのではないでしょうか。そう、私も同僚との会話で「いいね」の精神がすっかり抜けていました。
4.アサーティブ・コミュニケーションを目指して
SNSは「承認欲求」の表れと言われますが、確かに相手に同調されることって心地よいですよね。これは世代関係なく、どんな人でも持っている欲求だそうです。
会話の中で同調の意思表示をすることで相手は心地よくなり本音を話しやすくなります。反論したいときは「なるほど」と言ってから主張すればいい。これは、多様性を受け入れるダイバーシティ視点からも、職場に限らずこれからの時代に求められる手法と言えそうです。
若い世代は受け入れるだけのノンアサーティブ・コミュニケーションになりがち。年をとると攻撃・主張するだけのアグレッシブ・コミュニケーションになりがち。私はまさに後者です。
「アサーティブ・コミュニケーションは難しく、トレーニングが必要。まずは小さなことを満たしていくことで社内のコミュニケーションが変わりますよ」と会田さん。そう、たった1杯タピオカを飲んだところで大して変わらない。世代のせいにして壁を作らず、素直な気持ちで会話をしていこう。モチモチの黒い玉を噛み締めながら思いました。【執筆:@人事編集部】
【編集部より】
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