人事・総務担当者が知っておきたい知識を解説
お歳暮、年賀状、バレンタイン…「虚礼廃止」の意味や、正しい対応とは?
2018.12.04
お中元・お歳暮、年賀状、バレンタイン、職場の飲み会……。どこか面倒だと感じている会社の慣習も、「毎年行っているから」「皆が参加しているから」と職場の雰囲気に流されてしまい、つい続けてしまうことはありませんか? 昨今、これらの慣習を見直す「虚礼廃止」の動きが加速しています。
今回は、「虚礼廃止」の意味やメリットを紹介し、実際に「虚礼廃止」を行う際の注意点について解説します。
「虚礼廃止」とは
「虚礼廃止」とは、形だけで心のこもっていない、意味のない儀礼はやめるという意味です。「虚礼」にあたるものとして、会社内や取引先企業との間で行われる以下の行為が考えられています。
・年賀状
・お中元、お歳暮
・葬儀、通夜の参列
・バレンタイン
・飲み会への参加
2018年2月には、ゴディバジャパンが日経新聞に掲載した「日本は、義理チョコをやめよう」という広告が話題になりました。こちらの広告内では、現在日本の職場で行われているバレンタインのイベントについて「そもそもバレンタインは、純粋に気持ちを伝える日。社内の人間関係を調整する日ではない」と指摘しています。
日本法規情報株式会社が2017年に行った調査によると、職場で義理チョコを贈るのを社内規定で禁じることに「賛成」と回答した男女は、全体の70%近くに上りました。そのうち半数以上が、「賛成」する理由について「義理チョコをあげる、ホワイトデーにお返しをするのが面倒」だと回答しています。
このように、本来の意味を失い、形だけが残って慣習化されている行為は他にも多く存在するはずです。社員の働きやすい職場づくりのためにも、明文化されていない社内の慣習を見直すことは必要かもしれません。
虚礼廃止の2つのメリット
虚礼廃止には、主に2つのメリットがあると考えられています。
1.経費削減・業務効率化
お中元・お歳暮や年賀状のやりとりには、少なからず費用や労力がかかります。取引先企業の数が多ければ多いほど、かかる費用だけでなく、送付先情報の管理や送り状の作成などの工数も重大なものとなります。効率的な経営を行うという観点から、虚礼廃止を検討しても良いかもしれません。
2.ハラスメント防止
飲み会やお中元・お歳暮、バレンタインなどのイベントは、良好な人間関係の形成のために行われてきました。しかし、それらの行為が慣習化され、やがて強制力が働いてしまうと、パワハラやセクハラをはじめとするハラスメント行為につながる可能性があります。そのため、社内や取引先企業とのフラットな関係づくりのためにも、虚礼廃止を実施する企業もあります。
虚礼廃止にまつわる5つの企業事例
従来、公務員は利害関係者から金銭・物品の贈与を受け取ることが禁止されていました。近年では、民間企業でもこのような流れを取る会社が増加傾向にあります。早速、5つの企業の事例について見ていきましょう。(2018年12月時点での情報)
1.LINE株式会社
LINE株式会社及びグループ会社は、2013年8月、接待および贈答品の受け取り禁止の旨を発表しました。その理由として、「同社が提供するコンテンツやサービスをあくまでユーザー視点で選定するために、パートナー企業とオープンでフェアな関係を築くこと」「接待や贈答品の受け取りを通して、役員や社員がおごりや高ぶりが生じることを防ぐため」を挙げています。
2.パナソニック株式会社
同社では、「企業は社会の公器である」という考えを基軸とする経営理念に基づき、取引先企業との公平・公正な取引実現のため、「クリーン調達宣言」を公表しています。その中で、購入先様との関係については、「より厳しい節度・倫理観」が求められており、公平な競争原理が働く健全な関係を構築するため、物品・サービスの調達にあたって、「中元・歳暮」等の贈答品の禁止をはじめとする行動規範が設けられています。
3.協豊会、栄豊会
トヨタ自動車の取引先企業でつくる団体「協豊会」や「栄豊会」は、2018年6月、会員企業に対し、トヨタの役員らへの中元や歳暮などを自粛する呼びかけが行われました。会員企業の間では、付き合いのある役員や社員に対してお中元・お歳暮を贈呈する慣習がありましたが、トヨタ自動車が掲げる「原価低減」の意識の高まりを受け、この慣習を見直すこととなったといいます。
4.ソニーグローバルソリューションズ株式会社
同社では、取引先企業との取引において、「公正・公明・公平」であることを旨としているといいます。この姿勢を保ち、健全で良好なビジネス関係を築くため、いかなる贈答・接待行為も要求すること、要求をほのめかすことを禁じています。
5.製薬各社
国際的に活動する製薬企業と団体で構成する国際製薬団体連合会(IFPMA)が規定を改定した影響で、国内の製薬企業各社は、来年1月をめどに医療関係者への贈り物を禁止する方向で検討を進めています。企業名の入ったカレンダーやボールペンなどの販売促進品だけでなく、これまで「重要な、国民的、文化的または宗教上の」理由があるとして例外的に認めていた日本の香典や供花、中国の菓子「月餅(げっぺい)」など各国の社会儀礼に合った贈答品も禁止されるといいます。
虚礼廃止を案内する文例
企業で虚礼廃止を実施することになった場合、社内外に通達する必要があります。特に取引先企業には、事前の案内や、失礼にあたらない文面で虚礼廃止の旨を伝えることが重要です。
そこで今回は、お歳暮・お中元を廃止するケースを想定して、「取引先に虚礼廃止の案内を行う場合」「送られてきたお歳暮・お中元を断る場合」の2パターンの通達文の一例をご紹介します。
取引先企業に虚礼廃止の案内を行う場合
毎年お歳暮・お中元のやりとりをしていた取引先企業には、事前に虚礼廃止を行う旨の案内をする必要があります。この場合、取引先企業からのお歳暮・お中元の贈答は不要であること、今後も変わらぬ取引を続けていきたい旨を伝えることが重要です。
師走の候、貴社ますますご清祥のことと心よりお喜び申し上げます。
さて、突然で甚だ勝手ではございますが、弊社では虚礼廃止の意味から、会社全体として中元・歳暮の贈答を廃止することと致しました。
つきましては失礼ながら弊社から中元・歳暮等をお贈りするのは差し控えさせていただきますので、貴社におかれましても弊社あての中元・歳暮のお心遣いはどうかご無用に願いたく存じます。
今までは、感謝の気持ちを込めお贈りさせていただきましたが、今後は、その気持ちを今まで以上に仕事に向け、さらに誠心誠意お応えしたいと存じますので、ご理解の程宜しくお願いいたします。
送られてきたお歳暮・お中元を断る場合
贈答いただいたことについての感謝を述べた上で、会社でお歳暮・お中元の受け取りを禁止されていることをはっきりと伝えることが重要です。
師走の候、貴社ますますご清祥のことと心よりお喜び申し上げます。
この度は、ご丁寧にもお歳暮の品を送り下さいまして、誠にありがとうございます。
お心遣い誠にありがたく存じますが、皆様との公正な取引のため、弊社ではお取引様からのご贈答はすべて辞退させていただいております。
つきましては、お贈りいただきました品はお気持ちだけありがたく頂戴いたしまして、はなはだ失礼とは存じますが、別便にてご返送させていただきました。誠に勝手なことでありますが、あしからずご了解下さい。
まずは、お礼方々お詫び申し上げます。
あくまで「形だけで心のこもっていない」儀礼をやめることが目的
以上、虚礼廃止を実施するメリットや通達の文例についてお伝えしました。
しかし、ここで注意しなければならないのは、虚礼廃止はあくまで「形だけで心のこもっていない、意味のない」儀礼をやめることだという点です。虚礼廃止の代表例として挙げられるお中元やお歳暮は、本来「日頃の感謝の気持ちを品物に託して贈る」ための慣習であり、それらを一概に虚礼廃止と決めつけて排除することはかえって失礼にあたります。
これらの慣習を続ける上でのメリット・デメリットを冷静に比較した上で、自社に合ったスタイルを見つけることが重要です。
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