コラム

「最優秀エージェント」受賞企業が伝える採用の秘策【第6回】


中小企業が「採用代行(RPO」を効果的に活用し、採用ノウハウを社内に蓄積する方法

2020.03.13

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中小企業の人事業務は、労務管理や社員教育など多岐に渡ります。加えて、昨今の人材難。採用を上位の経営課題と位置づけながらも、採用業務のあり方自体に問題を抱えている企業も多いのではないでしょうか。

転職市場の最前線で若手を支援し続ける株式会社MAPの代表・飯田健太郎氏が採用に悩む企業や人事担当者に向けて「若手人材採用のヒント」を伝えるコラム。第6回はRPO(Recruitment Process Outsourcing=採用代行サービス)の活用がテーマです。採用業務の問題を社内で解決できない場合、RPOをどのように活用するのか。RPO導入前におさえるべきポイントと、社内に採用ノウハウを蓄積する方法について解説します。

【第5回】「不人気業種、地方の中小企業経営者が取るべき採用の施策とは
【第1~4回】「最優秀エージェント」受賞企業が伝える採用の秘策(@人事プライムコラム連載)

目次
  1. 中小企業にとってのRPO活用メリット
  2. RPOを効果的に活用するための3つの準備
  3. 採用ノウハウを社内に蓄積する方法
  4. 「採用業務の100%内製化」にもリスクはある

中小企業にとってのRPO活用メリット

RPOは長らく新卒採用のシーンで利用されてきました。主に毎年数百人単位を採用する規模の企業が使うもの、というイメージを持たれているかもしれませんが、RPOの活用は中小企業や中途採用でも以下のようなメリットが考えられます。

  • 採用課題の再認識
  • 人的リソース不足の解消
  • 採用手法の抜本的改善
  • 業務効率の向上
  • 担当者の採用プレッシャー軽減
  • 採用業務の「見える化」推進

新卒・中途問わず、採用には多くの時間と工数が掛かるものの、専任担当者をおける中小企業は多くなく、管理部門が採用業務も兼任しているのが実態です。
RPOを効果的に活用すれば、最新の採用ノウハウを入手できるだけでなく、兼任社員の負担を減らし、業務効率を上げることも期待できます。さらには属人的になりがちな採用業務の「見える化」にもつながるので、人事担当者の離職リスク回避にもなります。

RPOは採用業務全てをパッケージでアウトソースできるだけでなく、企業の規模や課題に応じてアレンジすることができます。つまり、「採用のプロ」の力を借りて、社内で不足しているリソースやナレッジを補うことが可能な方法と言えるでしょう。

TumisuによるPixabayからの画像

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RPOを効果的に活用するための3つの準備

RPO導入前にまず社内で決めておくべきことは、次の3つです。

1.採用課題の洗い出し

まずは現状抱えている問題を明確にする必要があります。採用業務の課題が純粋なマンパワー不足の場合は、母集団形成や面接日程調整といった「ノンコア業務」を中心にRPOへ委託し、社内担当者は面接などの「コア業務」に注力できる体制を整えましょう。
業務内容や社内の状況によっては、RPOよりも一般的な人材派遣の活用が適している場合もあるかもしれません。
しかし、新卒・中途共に採用活動で望む結果が得られていない企業の課題は、リソース不足よりも次に挙げるようなノウハウ不足である場合がほとんどです。

  • 採用業務自体が体系化されていない
  • 採用すべき人材要件の定義が曖昧
  • 必要人材に適した募集方法がわからない
  • 採用後の定着率が低い

上記のような課題があるケースではRPO導入のゴールを「採用手法の抜本的な改善」とし、それぞれの業務についてプロのリクルーターからコンサルティングを受けるイメージで委託業務範囲を設定するとよいでしょう。

2.業務形式の確認

どの業務を、どの範囲で委託するのか。また、直接自社に出向いて業務を行ってもらうオンサイトサービスの場合は常駐するリクルーターの属性についても言語化しておくことが望ましいでしょう。例えば、エンジニアなど技術職採用がメインの場合、人事担当者の知識不足が原因で応募者にとって満足な面接が実施できないケースが多々あります。RPO導入でIT知識が豊富なリクルーターをアサインできれば、優秀な人材の確保が期待できます。

3.ゴール(期限)の設定

RPOを引き続き常用する、または、再び社内リソースのみで一連の採用業務を実行する。いずれの場合もメリット、デメリットがあります。今後の採用計画だけでなく、採用担当者の人員計画など社内の状況を鑑みてRPOの利用期限を設定しましょう。

採用ノウハウを社内に蓄積する方法

RPO導入のデメリットとして「社内に採用ノウハウが蓄積できない」という声が度々あがります。確かに、ナレッジ不足が課題の企業にとっては、採用業務を外部へ依存すること自体が懸念材料になるかもしれません。しかし、前述した通り「何を、いつまでに」という基本的なゴールを設定し、社風にフィットするリクルーターが常駐するオンサイトサービスを選択すれば、この問題は解決すると考えます。

RPOを利用して採用フローを一新し、最終的にすべての業務を自社内で完結させたい場合は、契約終了後に担当社員が自走できるよう、次の6つのポイントを押さえながら採用活動を実施してください。

mohamed HassanによるPixabayからの画像

  1. 求人媒体の特性把握
  2. 第三者目線での求人票作成
  3. エントリーマネジメント
  4. 採用評価基準の策定
  5. 面接時の具体的な質問項目の策定
  6. 採用広報、企業ブランディング

実例として、私自身も若手の応募が殺到する人気企業のRPOを受託した経験があります。この企業はエンタメという人気業界ゆえに、さばききれないほどの大量応募があるものの、自社に必要な人材が集められないことが課題となっていました。私はターゲットの再定義、求人媒体の選定、母集団形成から一次面接まで、一貫して採用に携わり、無事目標人数の採用に成功しました。

契約期間が終了した後は、採用業務の重要性を改めて感じていただき、社内ナンバー2の方が採用業務を引き継がれる形となりました。採用・育成を人事部の一業務と捉えず、あくまでも経営課題として取り組む姿勢に、経営陣の本気度が伺えました。

「採用業務の100%内製化」にもリスクはある

Pete LinforthによるPixabayからの画像

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RPO導入を機に、社内リソースのみで採用業務を完結させる必要性について再検討することも重要です。
例えば年収400万円の「ひとり人事」が、採用業務他すべての人事業務を担当することが、果たして会社にとってベストの選択なのでしょうか。営業やエンジニア、経理や財務など、さまざまなポジションにマッチする優秀な人材を、一人の担当者だけで確保するのはほぼ不可能です。最適解は企業規模やフェーズによって異なりますが、RPO導入を人事部再編のきっかけとする価値は大いにあると考えます。

冒頭でも触れた通り、人材の流動化が進む現在は人事担当者の離職リスクも否めません。一方で、ベテラン人事担当は長年慣れ親しんだ方法を変えることに、消極的になりがちです。また、同じ面接官は似たようなタイプの人材ばかり採用する傾向もあります。このように、採用業務を社内のリソースのみで賄うことにも、デメリットや落とし穴は存在するのです。

採用手法が多様化している今、一度構築した方法を永続的に活用することはできません。
今後も数年ごとにブラッシュアップする必要はあるでしょう。現在は幸い、中小企業でも利用できる規模のサービスが多数ありますし、すでに取引のある求人媒体社や人材紹介会社がRPOサービスを提供している場合もあります。

若手労働人口の減少は、想像以上のスピードで進んでいます。目先のコストや導入準備の煩わしさに左右されず、外部サービスの導入をきっかけに採用業務の再編にチャレンジしてください。


【編集部より】採用代行(RPO)の情報収集に役立つ記事はこちら

執筆者紹介

飯田健太郎(いいだ・けんたろう)(株式会社MAP 代表取締役) 1981年静岡県生まれ。(株)リクルートHRマーケティングを経て若者に特化した転職⽀援会社を25歳で設⽴、以降12期連続成⻑を達成中。働く意欲ある若い世代と優良企業をつなぐ多⾓的な事業を展開している。

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