人事がおさえておくべき適性検査の活用方法と選び方(3)適性検査を選ぶ時のポイント
新卒採用や中途採用で利用してきた適性検査の情報を、採用だけではなく配置配属や育成など、幅広いシーンで活用することが増えています。個人の価値観の多様化や企業を取り巻く環境変化を背景に、パフォーマンスやエンゲージメントを最大化することへの関心が高まっているようです。これは、個人の特性を生かすという視点が広がってきたことが影響していると考えられます。
この連載では、第1回目で「適性検査の基本」情報をおさえ、第2回目で「適性検査の活用とそのトレンド」、第3回目で「適性検査を選ぶときのポイント」について触れていきます。「自社に適性検査は関係ない」と思っている方にとっても、興味をもつきっかけになれば幸いです。
第1回:人事がおさえておくべき適性検査の活用方法と選び方(1)適性検査の基本
第2回:人事がおさえておくべき適性検査の活用方法と選び方(2)適性検査の活用とそのトレンド
目次
はじめに
第3回「適性検査の選び方」では、どのように適性検査を選ぶとよいかについて整理するとともに、意外と抜けがちな“適性検査の品質”という観点についてご紹介したいと思います。
適性検査を選ぶ観点
▼検討1:自社の利用場面・利用目的
世の中には多くの適性検査が存在しています。適性検査を選択する際には、まず自社の利用場面・利用目的を明確にする必要があります。第2回の記事でご紹介したように、昨今、さまざまな場面で適性検査が活用されています。図表1の利用目的例も参考にしていただきながら、自社における利用場面・利用目的を具体化してみましょう。
図表1 利用場面と目的の例
▼検討2:測定領域・実施形態・アウトプット
次に検討するのは、測定領域・実施形態・アウトプットです。第1回の記事でご紹介したように、適性検査の測定領域や実施形態にも種類があります。
図表2に簡単に整理しましたが、例えば、採用選考において多くの応募者の中から、面接に呼び込む応募者の優先順位付けを行いたい場合、測定領域としては基本能力や職務・職場への適性、実施形態としてはWEBテスティング、という選択があり得ます。
また、面接において応募者の人物理解にも使いたい場合は、性格も確認する必要がありますし、昨今の不正受検への懸念から、本人認証の仕組みを重視する場合は、テストセンターという選択もあり得ます。さらに、内定者研修において、本人に結果をフィードバックすることで、自己理解を促したいと考えるのであれば、本人に返却できる報告書が必要になるかもしれません。
このように利用目的や利用場面を具体化することで、適性検査に必要な機能を明確にすることができます。もちろん最終的に利用の意思決定をする場合は、費用面も考慮しての判断にはなると思いますが、ぜひ参考にしていただければと思います。
図表2
実は大切な“品質”という観点
上述した観点に加えて、適性検査を選ぶ際にご注意いただきたい観点として、「適性検査の品質」があります。適性検査は、採用選考場面などの重要な意思決定を行う際に用いられますし、昨今では、HRデータとして活用し、社内の配置・配属ロジックに用いられるなど、幅広い場面での活用がなされています。適性検査の品質が悪い場合、こうした意思決定に悪影響を与える可能性があります。
適性検査を始めとしたアセスメントの品質は、心理統計の分野では長年1つの研究対象となっており、考え方や指標が整理されています。
今回は適性検査の品質のうち、押さえておきたい「信頼性」と「妥当性」を中心に紹介します。
適性検査の品質
「信頼性」は、適性検査の得点がどの程度安定しているかを示す概念で、「妥当性」は、測定対象を適切に測定できているかを示す概念です。「信頼性」と「妥当性」のイメージは、以下の“矢と的”で表現されることがあります。
図表3
「信頼性」は、アセスメント得点の安定性を示す概念であり、矢が安定的に一貫して同じ場所を射ることができていることを示します。
「妥当性」は、アセスメント得点が測定したい対象を適切に測定できているかを示す概念であり、矢が的の中心を射ることができていることを示します。
このように見ていただくと、アセスメントの品質を捉えるうえでは、「信頼性」、「妥当性」の片方が満たされているだけでは不十分であり、双方が満たされていることが重要となります。
「信頼性」をどのように確認するか
「信頼性」は、信頼性係数という数値化された指標によって確認することが可能です。算出方法にはいくつかの種類がありますが、一般的に広く用いられる指標が内的一貫性から推定する方法で、“クロンバックのα(アルファ)係数”が最もよく使用されます。α係数は0~1の間の数値で示され、1に近いほど信頼性が高く、一般的に適性検査では、0.7~0.9程度が求められると言われています。
こうした基準を下回る場合は、結果の安定性に不安が残るアセスメントであると考えられます。特に、検査項目数が少ない場合、「信頼性」は低くなり、結果がぶれやすくなる傾向があります。受検者の受検負荷に配慮して、できるだけ項目数が少なく、短時間の検査を導入したい、という場合にも、「信頼性」の基準を最低限満たしているかどうかについては、ご確認いただくことをお奨めします。
【編集部注】参考:α係数とは何か(株式会社ビジネスリサーチラボ)
「妥当性」をどのように確認するか
妥当性は多様な観点から確認されるべき指標といわれており、何か特定の指標だけで判断ができるものではありませんが、最低限確認しておくとよい観点があります。
1つ目は適性検査と外的な基準との関連性です。例えば、採用時に利用を想定している適性検査であれば、入社後の評価やパフォーマンスと関連があるか、といった内容となります。できれば自社内のデータで確認できることが望ましいですが、導入検討時には自社データがなく、難しいケースも多いと思います。その場合は、適性検査ベンダーにおいて、そうした妥当性の検証がなされているか、他社ではどのような妥当性が確認されているかなどを確認してみてください。そして、導入後に自社でも妥当性が確認されるかを分析してみるのがよいでしょう。
2つ目は、実際の質問項目と測定領域の対応です。例えば、「言語検査」の測定を行う際、単語の意味を問う語彙だけの問題が用意されている検査は、妥当性があるといえるでしょうか。「言語検査」というからには、おそらく語彙だけでなく、文章を読み解く問題や正しく文章を構成する問題など、バランスよく多面的に言語能力を測定すべきだと考えられます。
こうした内容的な側面からの妥当性は、実際に質問項目を確認しながら、測定領域との対応が妥当かどうかを確認してみるのがよいでしょう。
まとめ
今回は、適性検査を実際に選ぶ際に注意すべきポイントについて整理いたしました。まずは、利用場面や利用目的の具体化することで、適性検査として必要な機能が確認できます。また、適性検査の活用方法が広がっているからこそ、適性検査の品質、「信頼性」と「妥当性」にも、一層ご留意いただきたいと考えています。HRデータ活用、アナリティクスの分野で適性検査データが活用されることも増えてきていますが、適性検査データ自体が不安定だと、結果や解釈に影響を与えかねません。
さらに加えるならば、こうした品質を定常的にメンテナンスできているかということも重要です。適性検査も他の商品と同様、経年で使用すると質問項目の性質が劣化したり、全体傾向が変化したりする可能性があります。こうした状況に目を向けながら、きめ細やかに商品のメンテナンスを行っているかということも、継続的な利用を検討する際には重要な観点となってきます。
本文は以上となります。この記事が適性検査を選ぶ際の一助になりますと幸いです。
【連載】人事がおさえておくべき適性検査の活用方法と選び方
・(1)適性検査の基本
・(2)適性検査の活用とそのトレンド
・(3)適性検査を選ぶ時のポイント
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