人事がおさえておくべき適性検査の活用方法と選び方(1)適性検査の基本
新卒採用や中途採用で利用してきた適性検査の情報を、採用だけではなく配置配属や育成など、幅広いシーンで活用することが増えています。個人の価値観の多様化や企業を取り巻く環境変化を背景に、パフォーマンスやエンゲージメントを最大化することへの関心が高まっているようです。これは、個人の特性を生かすという視点が広がってきたことが影響していると考えられます。
この連載では、第1回目で「適性検査の基本」情報をおさえ、第2回目で「適性検査の活用とそのトレンド」、第3回目で「適性検査を選ぶときのポイント」について触れていきます。「自社に適性検査は関係ない」と思っている方にとっても、興味をもつきっかけになれば幸いです。
目次
適性検査とは
適性検査とは、職務の遂行能力や組織への適応度を定量的に把握することで、人事の意思決定の質を向上させるためのツールで、一人ひとりの能力や性格など多様な側面を測定しています。日本では主に新卒・中途採用場面における応募者の適性把握や、総合的な人物特徴の理解を目的として用いられるほか、既存社員の資質を把握するためにも利用されることが多いです。
適性検査の結果をうまく活用すれば、自社のニーズに合った人材を効率的かつ効果的に採用することができるほか、人材育成やマネジメント、異動配置といった既存社員の人材活用の質向上にも繋げることができます。
第1回目の「適性検査の基本」編では、メインで使われる採用場面での利用を想定して、その種類やメリット・デメリットについてまとめていきます。
適性検査の種類
昨今ではさまざまな適性検査が提供されており、各検査によって特徴は異なりますが、測定している領域としては4つに大別されます。それぞれの要素を単独で実施できるツールや、さまざまな側面を組み合わせて総合的な評価ができるツールなどがありますが、日本の採用市場においては性格と基本的能力を組み合わせた適性検査が多いようです。
■図表1 適性検査の測定領域
出典:大沢武志他編 『人事アセスメントハンドブック』金子書房,P81を再構成
適性検査の実施形態としては、以下のような種類があります。
ペーパーテスティングやインハウスは事前準備の負荷は高いですが、試験と面接を1日にまとめて実施できるため、遠方からの応募や中途採用に適しています。
WEBテスティングはコストや手間を抑えられる反面、「替え玉受検」などの不正リスクが懸念されています。一方で、既存の従業員に実施する場合は手軽に社内で受検できるWEBテスティングが主流です。テストセンターは手間や不正リスクを抑えられる反面、コストが高くなりがちです。
このように、それぞれの受検形態の特徴を理解したうえで、自社にとって適切な方法を選ぶ必要があります。
■図表2 適性検査の実施形態
適性検査を導入するメリット・デメリット
適性検査を導入するメリットはとして、以下のような点があげられます。
・「共通のフレーム・基準」で評価できる
採用担当が定期的に変わると採用基準の継続性を担保することが難しくなります。
しかし、適性検査であれば評価者が代わっても同じフレーム・基準で評価することができます。
また採用要件の設計には、人材評価の基準を言語化し企業内ですり合わせをすることが必要になります。そこに適性検査があると、共通のフレーム・言語で議論ができるため、社内の認識すり合わせがスムーズになります。
・「客観的に」評価できる
採用ではエントリーシートやグループワークや面接での評価など、さまざまな評価情報が集められます。特に新卒採用では、未経験の仕事への応募になるため、客観的な評価基準をもつことが非常に難しくなります。そんな中、将来の職務への適性や、組織への適応といった指標を客観的な情報として提供してくれる適性検査は、人事の意思決定の大きな味方となります。
・「効率的」に情報収集ができる
面接では、非常に短い時間の中で人物像の見立てと採否判断を行う必要がありますが、短時間で両方を深く行うことは難しいです。適性検査は、短時間の面接で掘り下げることが難しい資質面を総合的に確認することができます。そのため、面接の時間は、事前に得られた情報との相違点と面接用の評価観点の確認のための時間に使うことができます。
・「公平・公正」な手法である
学歴や職歴によらない評価手法は、応募者にとって「公平・公正」な手法という印象を与え、評価への納得感を与えることができます。
・「定量的」なデータで分析できる
適性検査は定量的なデータであり、応募者や合格者全体の質を可視化できるため、採用のPDCAを回しやすくなります。たとえば、従業員に適性検査を実施し、活躍者の傾向を事前に分析したうえで、定量的な採用要件の基準をおいたとします。採用活動の結果、その基準を超えるねらいたい層がどの程度母集団に存在するのか、合格者の傾向は前年と変わっているのか、など、適性検査を軸に設計~振り返りを行うことができます。経営への報告や施策全体の振り返りの説得力が増すでしょう。
また最近では、職種転換など企業内の人材の流動性を高める動きがありますが、適性検査のデータを活用することで、異なる職種への適性を把握し、適切な人材配置を検討することができます。
適性検査のデメリットとは
一方、適性検査は万能ではなく、デメリットもあります。
たとえば、実施する企業や受検者への負荷は見過ごせません。最近では実施する側や受検者の負荷に配慮したサービスも展開されているため、得られる効果と天秤にかけて、自社にとって許容できる負荷か確認することが重要です。
また、適性検査では測定できない領域もあります。測定する概念を定義し、数値化できる領域が測定対象となるため、愛嬌やひらめきのような漠然とした概念や定義できない領域は測定することができません。
さらに、数値でわかりやすく結果が表示されることで、適性検査の結果を重視しすぎてしまう懸念もあるでしょう。数値でわかりやすく結果が表示される分、偏った見方であるバイアスを生むリスクもあります。
あくまで評価基準の一つと捉え、複数の評価手法を組み合わせて利用することが肝要です。
まとめ
ここまで、適性検査の種類やメリット・デメリットについて触れてきました。適性検査というと、スクリーニングに使うものというイメージをもたれがちですが、さまざまな利用シーンやメリットがあるため、採用人数が少ない場合や中途採用の場合でも大いに活用していただけます。たとえば、中途採用で過去の職務経験やスキルを重視して採用したら風土と合わなかった、少人数だから書類と面接だけにしたら基本的な能力が不足しており習熟に苦労した、などのケースは適性検査があることで改善するかもしれません。
適性検査があれば全てうまくいく、というわけではありませんが、採用選考など総合的な判断が求められるシーンでは、適性検査の情報をうまく活用することが、意思決定や人材採用・活用の質を向上させることにつながるでしょう。
>>第2回「適性検査の活用とそのトレンド」に続く
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