労務

産休の手続き

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掲載日時:2018.10.15

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6週間の産前休業と8週間の産後休業を合わせて「産休」と呼びます。従業員が産休に入るときは、社会保険料の免除申請や出産手当金の申請などやらなければならない手続きがたくさんあります。また、必要な場合は配置転換や勤務時間の変更など妊娠中の従業員への配慮も必要です。ここでは、産休の手続きや人事担当者がすべき対応について解説します。

産休の期間・大まかなスケジュール

産休の期間と大まかなスケジュールを説明します。

産休の期間は?

産休 産前休業6週間 出産 男性はここから取得が可能 産後休業8週間 育休 育児休業~1歳 ~1歳6カ月 ~2歳 延長 産休 産前休業6週間 出産 男性はここから取得が可能 産後休業8週間 育休 育児休業~1歳 ~1歳6カ月 ~2歳 延長

産休の期間は、産前休業は6週間(双子以上は14週間)、産後休業は8週間です。出産日は産前休業に含まれます。産前休業は従業員の請求があれば取れますが、産後は請求の有無に関わらず最低6週間は強制的に休業させなくてはなりません

産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)<いずれも女性が請求した場合に限ります>
産後は8週間女性を就業させることはできません。
(法第65条第1項、第2項)

出産予定日より出産が早まっても遅くなっても、出産の日までが産前休業として扱われます。出産予定日より遅く生まれた場合は、遅れた分だけ産後休業期間が延長されます。ちなみに、休業中の給与を有給とするか無給とするかは会社の労使間の取り決めによります。また、会社によって独自の祝い金を設けていたり、法律以上の条件にしていたりする場合があるため、実際に適用する際には自社の規程の確認が必要です。

産休前後の大まかなスケジュール

妊娠報告があってから育休に入る前までのスケジュールはおおむね以下の通りです。

1.妊娠の報告
2.妊娠・出産・育児に関して利用可能な制度や給付金、保険料免除などについて説明
3.妊娠中の働き方について確認
4.育休の申し出を受ける
5.社会保険料免除の申請(産前産後休業取得者申出書を年金事務所に提出)
6.出産の報告
7.予定日と出産日がずれた場合、産前産後休業取得者変更(終了)届を年金事務所に提出
8.扶養追加の申請や出産手当金の申請など

妊娠・出産・育児などを理由として、解雇その他不利益な取り扱いをしてはならない(男女雇用機会均等法)ため、妊娠中の働き方については本人の希望を尊重しましょう。厚生労働省のサイトでは、産休・育休取得者との面談シートが紹介されているためそちらも参考にしてください。また、里帰り出産する従業員もいるため、手続きが滞らないようあらかじめ書類の届け先や連絡先、給与振込先を確認しておきましょう。

人事担当者がやることリスト

区分 やること 対応時期 提出先
社内 産休の申し出 産休前 -
社内 育休の申し出+取り扱いの通知 育休前 -
住民税 住民税の徴収方法の確認 育休前 -
社会保険 社会保険料免除の申請 産休中 年金事務所
社会保険 扶養追加の申請 産休中 年金事務所
社会保険 出産育児一時金の申請 産休中 健康保険組合
社会保険 出産手当金の申請 産休中 健康保険組合
社会保険 標準報酬月額の改定の申請 産休後 年金事務所
社会保険 養育期間の標準報酬月額特例の申請 産休・育休後、出生時、3歳未満の子がいる従業員の入社時 年金事務所
社内
やること 産休の申し出
対応時期 産休前
提出先 -
社内
やること 育休の申し出+取り扱いの通知
対応時期 育休前
提出先 -
住民税
やること 住民税の徴収方法の確認
対応時期 育休前
提出先 -
社会保険
やること 社会保険料免除の申請
対応時期 産休中
提出先 年金事務所
社会保険
やること 扶養追加の申請
対応時期 産休中
提出先 年金事務所
社会保険
やること 出産育児一時金の申請
対応時期 産休中
提出先 健康保険組合
社会保険
やること 出産手当金の申請
対応時期 産休中
提出先 健康保険組合
社会保険
やること 標準報酬月額の改定の申請
対応時期 産休後
提出先 年金事務所
社会保険
やること 養育期間の標準報酬月額特例の申請
対応時期 産休・育休後、出生時、3歳未満の子がいる従業員の入社時
提出先 年金事務所

産休前後の手続き・対応

産休の申し出

Point

  • 産休を取得するかは女性従業員の希望による(ただし産後6週間は強制)
  • 解雇制限がある

従業員の申し出があった場合は、「産前・産後休暇願届」を従業員に記入してもらいます。産後6週間は強制的に休業が必要ですが、産前6週間については従業員が希望すれば働き続けることが可能です。また、産休中とその後30日間は従業員を解雇してはいけません。

産前・産後休業の期間及びその後30日間の解雇は禁止されています。(労働基準法第19条)

妊娠中の従業員への配慮

Point

  • 妊娠・出産を理由に不利益な取扱いをしてはならない

妊娠中の従業員が安心して働けるように配慮しましょう。ただし、「本人からの申し出がないにも関わらず、時短勤務や通勤緩和を強要することは法律違反になる可能性がある」ということには注意が必要です。男女雇用機会均等法では「妊娠・出産を理由に不利益な取扱いをしてはならない」と定められており、母体保護に関してさまざまな規程があります。下記にポイントをまとめました。

男女雇用機会均等法で定められている母性健康管理措置

  • 保健指導・健康診査の受診に必要な時間の確保
    妊娠中
    妊娠23週まで
    4週間に1回
    妊娠24~35週まで
    2週間に1回
    妊娠36週~
    1週間に1回
    産後1年以内
    医師の指示に従う
  • 医師の指導事項を守ることができるようにするため、措置を講じる
    妊娠中の通勤緩和(時差通勤、勤務時間の短縮等の措置)
    妊娠中の休憩(休憩時間の延長、休憩回数の増加等の措置)
    妊娠中又は出産後の症状等に対応する措置(作業の制限、休業等の措置)
  • ※主治医等の指導事項を事業主に的確に伝えるための書類が、母性健康管理指導事項連絡カードです。会社側はこのカードの内容に沿って適切な措置を講じる必要があります。

労働基準法における母体保護規定

  • 妊産婦等を妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせることはできない(具体的な業務は、重量物を取り扱う業務や有害ガスを発散する場所での業務など)
  • 妊娠中の女性が請求した場合には、他の軽易な業務に転換させなければならない
  • 変形労働時間制がとられる場合にも、妊娠中の女性が請求した場合には、1日及び1週間の法定労働時間を超えて労働させてはならない
  • 妊娠中の女性が請求した場合には、時間外労働、休日労働又は深夜業をさせてはならない(深夜業とは、午後10時~午前5時の就業のこと)

より詳しい対策や法律の解説については、厚生労働省委託サイトの女性にやさしい職場づくりナビを参考にしてください。人事担当者は、妊娠中の従業員の健康を考え、適切な措置を都度講じることが大切です。また、日頃から従業員への産休・育休制度の周知や、ハラスメント対策のための研修実施などに努めましょう。

育休の申し出+取り扱いの通知

Point

  • 申出書を1カ月前までに受け取り、通知書を交付する
  • 口頭ではなく、書面で取り決めを交わす

人事担当者は、育休開始の1カ月前までに「育児休業申出書」を従業員から受け取り、内容を確認したら速やかに「育児休業取扱通知書」を従業員に交付しなければなりません。「育児休業取扱通知書」には、休業開始予定日や終了予定日などの明示が必要です。申し出は書面で行うのが原則ですが、従業員からの希望があれば電子メールやファックスでも構いません。こちらについては「育休の手続き」でも詳細を説明しています。

住民税の徴収方法の確認

Point

  • 住民税の徴収方法を前もって決めておく

産休・育休中、社会保険料は申請すれば免除となりますが、住民税は引き続き給与から差し引かれます。従業員と話し合い、休業前に住民税の徴収方法を決めておきましょう。徴収方法は以下の3パターンがあります。

1.会社側が立て替え、復職後に徴収する
2.休業開始前の給与から一括徴収する
3.普通徴収に切り替える

休業中の支払いが難しい場合、各自治体の住民税の猶予制度を利用する方法もあります。これは、育休1年間の住民税の支払いを先送りにする制度で、本人の申請が必要です。復帰後は、延滞金とともに住民税を納める必要があり、地方団体の長の判断によって延滞金の半額もしくは全額が免除されます。

社会保険料免除の申請

Point

  • 申請のタイミング:産休中
  • 申請方法:会社側が年金事務所に申請書を提出
  • 免除期間:産休開始月から終了予定日の翌日の月の前月(産休終了日が月の末日の場合は産休終了月)まで

産休中は、従業員と会社側のそれぞれが負担する社会保険料(健康保険、厚生年金)が免除されます。免除期間は、産休開始月から終了予定日の翌日の月の前月(産休終了日が月の末日の場合は産休終了月)までです。申請は産休中に行わなければなりません。なお、免除期間中は被保険者としての資格は変わりません。育休中も社会保険料を支払ったものとみなして将来の年金額が計算されることも従業員に伝えておきましょう。

社会保険料免除については、出産予定日以前42日と産後56日のうち、労務に従事しなかった期間が対象です。そのため、例えば「従業員の出産が予定日より早く、本人は産休開始日ギリギリまで勤務していた」といったケースでは社会保険料免除の対象期間が短くなります。

  • 予定日より早く生まれたとき
社会保険料免除の申請 予定日より早く生まれたときのケース 社会保険料免除の申請 予定日より早く生まれたときのケース
  • 予定日より遅く生まれたとき
社会保険料免除の申請 予定日より遅く生まれたときのケース 社会保険料免除の申請 予定日より遅く生まれたときのケース

申請の流れ

STEP1:従業員から産休取得の申し出
STEP2:産前産後休業取得者申出書に必要事項を記入
STEP3:人事担当者が申請書を年金事務所に提出

予定日と実際の出産日がずれた場合や、産前産後休業を予定より早く終了する場合、産前産後休業取得者変更(終了)届を年金事務所に提出する必要があります。

扶養追加の申請

Point

  • 提出期限:事実発生から5日以内(発行に約2~3週間かかるため、速やかに書類の提出を!)
  • 提出方法:会社経由で年金事務所へ

出産後、会社の健康保険に加入している従業員には、出生届を提出して戸籍を取得してもらい、会社を通して扶養追加の申請を行う必要があります(自営業の場合は国民健康保険)。国民健康保険は即日発行が可能ですが、健康保険は発行に約2~3週間かかるため、赤ちゃんの1カ月検診に間に合わせるために事実発生から5日以内に届出を提出しましょう。

手続きの流れ(協会けんぽの例)
STEP1:従業員もしくは従業員の配偶者が出産
STEP2:「健康保険 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)」に必要事項を記入
STEP3:年金事務所に上記書類を提出

上記は協会けんぽの例ですが、そのほかの健康保険組合でも同様の手続きが必要です。

出産育児一時金の申請

Point

  • 1人につき42万円がもらえる制度
  • 医療機関が手続きを行う(直接支払制度を利用する場合)
  • 時効は2年

出産育児一時金とは、生まれた子1人につき42万円が健康保険から支給される制度です(ただし産科医療補償制度の対象外となる出産では39万円 ※平成27年1月1日以降は40万4,000円)。出産費用が支給額を上回ったときは、超えた額を医療機関に支払わなければなりませんが、下回った場合は差額を請求できます。請求期限は出産日の翌日から2年です。

支給方法は、直接支払制度受取代理制度の2種類があります。どちらの制度を利用できるかは医療機関によりますが、直接支払制度を利用するのが一般的です。直接支払制度を利用する場合、手続きは医療機関が行います。受取代理制度を利用する場合、従業員は専用の申請書を健康保険組合に提出しなければなりません。

受取代理制度を利用するとき、出産費用が支給額を下回ったとき、健康保険組合の付加給付があるときは、会社を通して手続きを行う必要があります。また、受取代理制度の申請書や差額請求書を提出する際に、出産費用の領収書や契約の合意書のコピーが必要になるため、従業員には事前に用意するよう伝えておきましょう。

従業員が退職する場合は?

出産した従業員が退職してしまう場合、資格喪失日の前日(退職日など)までに被保険者期間が継続して1年以上あり、出産日が資格喪失日から6カ月以内の場合は出産育児一時金が支給されます。資格喪失後、被扶養者となった場合は、資格喪失後の出産育児一時金または家族出産育児一時金のどちらかを選択して受けることとなり、二重に受けることはできません。また、被保険者の資格喪失後にその被扶養者だった家族が出産しても、家族出産育児一時金は支給されません。

出産手当金の申請

Point

  • 産休中収入が減る被保険者に賃金の3分の2程度の額が支給される制度
  • 手続きは本人か会社側が行う
  • 時効は2年

出産手当金は、産休中の収入減を補うために、健康保険の加入者に賃金の3分の2程度の額が健康保険から支給される制度です。手続きは本人か会社側が行います。休業中に申請書を記入してもらうことになるため、入院前に人事担当者の方から申請書を渡しておきましょう(申請書はホームページからダウンロード可能)。出産手当金は、全期間まとめて申請することも、産前・産後に分けて申請することも可能です。分けて申請する場合、申請書を2枚従業員に渡しましょう。なお、出産手当金の申請期限は産休開始の日から2年です。

出産手当金は、出産予定日以前42日と産後56日のうち、会社を休み給与の支払いがなかった期間が対象です。そのため、例えば「従業員の出産が予定日より早く、本人は産休開始日ギリギリまで勤務していた」といったケースでは出産手当金の対象期間が短くなります。

  • 予定日より早く生まれたとき
出産手当金の申請 予定日より早く生まれたときのケース 出産手当金の申請 予定日より早く生まれたときのケース
  • 予定日より遅く生まれたとき
出産手当金の申請 予定日より遅く生まれたときのケース 出産手当金の申請 予定日より遅く生まれたときのケース

従業員が退職する場合は?

出産した従業員が退職してしまう場合、資格喪失日の前日(退職日など)までに被保険者期間が継続して1年以上あり、資格喪失日の前日に、現に出産手当金の支給を受けているか、受けられる状態(出産日以前42日目が加入期間であり、かつ退職日は出勤していない)であれば、資格喪失後も所定の期間の範囲内で支給を受けられます。

標準報酬月額の改定の申請

Point

  • 提出時期:産休後できるだけ速やかに
  • 提出方法:会社経由で年金事務所へ

産休終了後に報酬が下がった場合、申請書を提出することで、産休終了後の3カ⽉間の報酬額をもとに、新しい標準報酬⽉額を決定し、その翌⽉から適用できます。対象者は、これまでの等級に1等級以上の差が生じる方や、産休終了後3カ月のうち少なくとも1カ月における支払基礎日数が17日以上の方などです。詳しい条件については日本年金機構のホームページを確認してください。

提出するもの

  • 産前産後休業終了時報酬⽉額変更届

※産後休業終了後にそのまま育休を開始する場合はこの手続きは行いません。
代わりに、育児休業等終了時報酬月額変更届を提出します。

養育期間の標準報酬月額特例の申請

Point

  • 提出時期:産休・育休の終了時、子どもの出生時、3歳未満の子がいる従業員の入社時
  • 提出方法:会社経由で年金事務所へ

年金受給額は標準報酬月額をもとに算出されています。養育期間の標準報酬月額特例とは、出産後、短時間勤務をして標準報酬月額が下がったような場合に、将来受け取る年金額が減らないように、以前の標準報酬月額を「みなし報酬月額」として計算する制度です。

これは本人の申し出に基づく手続きです。従業員から申し出がなければ、人事担当者から声をかけてあげましょう。対象者は厚生年金保険の加入者のみで、措置は3歳未満の子供を養育している期間に適用されます。

提出するもの

  • 厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書・終了届

妊娠・出産後の働き方は人それぞれ

近年、女性の社会進出が進み、妊娠・出産後も働き続ける女性が増えています。出産後も働きたいと考える従業員もいれば、家事育児に専念したいと考える従業員もおり、考え方は人それぞれです。妊娠の報告を受けたら、まずは「おめでとう」と会社から祝福の気持ちを伝え、今後の働き方については本人の希望を聞いた上で配慮し、安心して出産を迎えられるようにしましょう。

※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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