【会社印鑑の種類】覚えておきたい押し方のルール・法的効力

基礎

掲載日時:2024.01.30

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会社印鑑(法人印鑑)は使い道によりさまざまな種類があります。今回は、会社設立時や契約の時などに必要な印鑑や印鑑の法的効力、押印の使い分け方などについて説明します。また、デジタルデータで使用する電子印鑑についても解説します。【記事公開:2019年9月30日、最終更新:2024年1月30日】

目次

会社で使う印鑑の種類は?

会社設立の際には一般的に以下の4種類の印鑑を用意します。設立の手続きを行う際には、代表者印(会社実印)だけでも登記は行えますが、リスク分散のために複数用意するのがおすすめです。1つの印鑑のみをさまざまな書類に使い回すと偽造や悪用のリスクが大きくなります。

会社で使う印鑑の種類一覧

それぞれの印鑑の役割は以下の通りです。

代表者印(会社実印)

会社設立時に法務局に届け出る必要がある重要な印鑑です。外枠には会社名や屋号が、内枠には役職名が入ります。

代表者印の内枠の文字

事業形態 内枠の文字
株式会社・有限会社・相互会社 代表取締役印
医療法人・財団法人・学校法人・労働組合・NPO法人・農業協同組合・信用金庫・社団法人・社会福祉法人 理事長印・代表理事之印
有限会社 取締役印(取締役が1人の場合)
合資会社・個人商店・合名会社 代表者印
合同会社 代表社員之印
事業形態:内枠の文字
株式会社・有限会社・相互会社 代表取締役印
医療法人・財団法人・学校法人・労働組合・NPO法人・農業協同組合・信用金庫・社団法人・社会福祉法人 理事長印・代表理事之印
有限会社 取締役印(取締役が1人の場合)
合資会社・個人商店・合名会社 代表者印
合同会社 代表社員之印

銀行印

銀行口座の開設時や手形や小切手を振り出す際に必要になる印鑑です。内枠には「銀行之印」の文字が入ります。実印と区別するため、銀行印は実印より小さめのサイズで作るケースが多いです。

角印(社印)

日常業務でよく使われる印鑑です。見積書や請求書、領収書、稟議書などに捺印する際、意思確認や承認の意を示すために使用されます。社印とも呼ばれます。

ゴム印(住所印)

会社住所や代表者名、電話番号などの会社情報が記された印鑑です。住所印とも呼ばれます。契約書や小切手、領収書、会社封筒などに使われます。

印鑑の種類ごとに証拠能力は違う?

印鑑の種類により証拠能力が変わるのでしょうか。結論から言うと、印鑑の種類による法的な効力の違いはなく、証拠能力は「署名捺印>署名のみ>記名押印>記名のみ(正式な効力なし)」の順で弱くなります。「署名」は本人の直筆サイン、「記名」とはゴム印やパソコンでの氏名入力を指します。署名は筆跡鑑定で本人の筆跡と照合させられるため、証拠能力が高くなります。
つまり、基本的には印鑑の種類は関係なく、実印でも三文判(安価なハンコ)でも押せば契約に同意したという意思表示になります。印鑑を押しても押さなくても署名をすれば、契約が成立する点には注意が必要です。
ちなみに、署名捺印の略を捺印、記名押印の略を押印と呼ぶため、捺印・押印は似た言葉ですが厳密には定義が異なります。

実務で覚えておきたい押印と押し方のルール

署名の横に押す印鑑以外にも、契印や割印などさまざまな押印の種類があります。総務や経理は印鑑を押す場面が多いので、仕事をスムーズに進めるため、それらの種類や押し方のルールを確認しておきましょう。

契印

複数枚にわたるページが一連のものであることを証明し、引き抜きや改ざんを防止するためのものです。見開きの場合、全てのページで両ページにまたがるように押します。袋とじの場合は、裏表両面に、製本テープと表表紙(裏表紙)にまたがるように押印します。

割印

2枚の書類がもともと1セットだったことを証明するものです。契約書の場合、原本と写しを少し重なるように並べて、2枚をまたぐように押印します。領収書のように切り離せるタイプのものは、切り取り部分の左右をまたいで押します。

消印

印紙の再使用を防ぐためのものです。文書と印紙の絵柄にかかるように押印します。ちなみに、サイン(署名)による消印も認められていますが、「印」と表示する、2本線で斜線を入れる、といった方法は消印として認められていないため注意が必要です。
参考:国税庁「印紙の消印の方法

訂正印

訂正する際は、訂正箇所に二重線を引き、「削除四字、加入四字」のように記載します。印鑑は訂正箇所の近くに押します。

捨印

書類の欄外に事前に押印することで、「間違いがあれば訂正して構わない」という意思を相手に示すためのものです。相手の都合の良いように書き換えられるリスクがあるため、安易に押すことは避けましょう。

会社印鑑をデジタル化できる電子印鑑とは?

電子帳簿保存法の改正などにより、書類などをデジタルデータでやり取り・保管することが多くなっています。紙の書類では印鑑を押していましたが、データの場合はどうなるのでしょうか?

関連記事:今からでも間に合う!企業がやるべき電子帳簿保存法改正への3つの対応

法的効力と注意点

書類がデジタルデータの場合、電子印鑑や電子署名が使用できます。ただし、例えば無料で作成できる電子印鑑や印鑑を画像化したものなどは「誰にでも作成できる」ため、証拠としては認められません。

電子署名法第3条によるとデジタルデータは「当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているとき」に正しく成立していると認められるとされています。つまり、本人が押したと証明できるシステムなどを使用して電子署名や電子印鑑を付与した場合のみ、法的効力を持ちます。
無料のツールで作成できる電子印鑑などは多くの場合この条件を満たさないため、注意しましょう。

電子署名

電子署名とは、デジタルデータとして作成された書類に対するサインです。PDFやワードファイルなどでも、備えられている機能を使って電子署名を付与することができます。ただし、これらの署名は「誰でも作れてしまう」ため、法的には証拠能力を持ちません。

証拠能力を持った電子署名には、「本人性」と「非改ざん性」の証明が必要です。利用時のログインID(本人の操作であること)、日時(特定の日時以降改ざんされていないこと)などを記録できるサービスを利用すれば、法的効力を持ちます。

例えば、法人登記をする際、オンライン申請が認められていますが、添付書類をデジタルデータで提出する場合、電子署名の本人性を確認するために使用できる電子証明書が法務省によって指定されています。

参考:法務省「商業・法人登記の申請書の添付書面を電磁的記録で作成している場合について」

タイムスタンプ

タイムスタンプとは、ある時刻にそのデータが存在していたことと、それ以降改ざんされていないことを証明するものです。タイムスタンプは「時刻認証業務認定事業者(TSA)」にしか発行できませんが、導入するシステムによっては、直接契約しなくても利用できることもあります。データの作成時刻が証明されるため、「非改ざん性」を証明するのに有効であるため、電子帳簿保存法でデータの「真実性」を担保するための手段の一つとして使用できます。また、作成日時が重要になる特許などを扱う場合は重要になります。

参考:総務省「国民のためのサイバーセキュリティサイト タイムスタンプとは?」

会社書類に欠かせない「印鑑」の意味を理解しよう

印鑑はいざというときに契約の状況や内容を証明する証拠の一つになります。トラブルなく業務をこなすため、印鑑の意味や種類をしっかり理解しましょう。

※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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