おすすめの企業向け会計ソフトは? 選び方のポイントと注意点を解説

一口に「会計ソフト」と言っても、その機能やサービス形態は多種多様です。自社のビジネスモデル、職場の環境、予算に応じて最適なシステムを選ぶことで、会計業務の効率化が期待できます。このページでは、新たに会計ソフトの導入または入れ替えを検討している会計・経理担当者向けに、会計ソフトを選ぶ際の注意点や目的別の選び方について解説します。

目次

  • 会計ソフトの導入を検討する前に
    前提1:実は大きな差はない
    前提2:規模ごとの差は大きい
    前提3:そもそも対応できない業態もある
    前提4:税理士と一緒に選ぶことも多い
  • 会計ソフトを導入するステップ
    ステップ1:業務フローを整理する
    ステップ2:必要な要件を洗い出す
    ステップ3:税理士が使えるソフトかどうか確認する
  • 目的別・会計ソフトの選び方
    業務効率をアップしたい
    誰でも簡単に作業できるようにしたい
    経費を削減したい
    リアルタイムで財務状況を分析・把握したい
    安定した資金繰りをしたい
    企業規模が大きくなった
    インボイス制度への対応
  • 会計ソフトを選ぶ際の注意点
    どの規模を対象にしたサービスかを知る
    セールスポイントをうのみにしない
    対応の度合いを確認する
    「自動化」で安心しない
    初期費用よりもランニングコストを重視する
    修正機能の要不要を考える
    悩んだら業務フローの見直しに立ち返る
  • 自社に合った会計ソフトを見極めよう

会計ソフトの導入を検討する前に

会計ソフトの導入を検討する前に、把握するべきいくつかの前提があります。会計ソフトの種類は非常に多岐にわたるため、これらを知っておくことで選択の負担を軽減できるでしょう。

前提1:実は大きな差はない

会計ソフトは、その名の通り会計業務を効率化するためのツールです。そのため、財務情報管理、仕訳入力、帳簿作成、税金計算など、必要な機能は基本的にどのサービスにも備わっています。機能の差に注目するのではなく、「自社のニーズや業務フローに合っているか」という観点でサービス選定を行いましょう。

前提2:規模ごとの差は大きい

小規模の事業場や個人事業主向けの会計ソフトと、中規模・大規模企業向けのものでは、提供される機能や価格帯が大きく異なります。
例えば、小規模向けのものはシンプルで使いやすい一方、大規模向けのものは多機能で高価格帯となることが多いのです。企業規模に合ってない会計ソフトを選んでしまうと、機能が足りなかったり、余計なコストがかかってしまったりといった失敗を招きます。

前提3:そもそも対応できない業態もある

特定の業態や業種に特化した取引が多い場合、一般的な会計ソフトでは対応が難しいことがあります。
例えば、建設業や不動産業、病院・医療法人など、特有の取引や税制がある業態では、その業態専用の会計ソフトを選ぶことが望ましいでしょう。

前提4:税理士と一緒に選ぶことも多い

顧問税理士が使い慣れている会計ソフトを選ぶことで、後々のやり取りをスムーズに進められます。選定に悩んでいる時は自社の状況やニーズを伝えた上で相談するのも手でしょう。
例えば、部門の増設に伴い、部門ごとの売上管理をしたい場合、税理士の方からおすすめの会計ソフトを提案してくれるケースもあります。

会計ソフトを導入するステップ

会計ソフトを導入することで、関連業務の効率化やミスの削減、さらには経営の見える化を実現できます。導入する際の基本的なステップを紹介します。

ステップ1:業務フローを整理する

会計ソフトを導入する前に、現在の業務フローを整理することが大切です。
例えば、売上の記録方法、経費の管理方法、領収書や請求書の保管方法など、日常の経理業務の流れを明確にしましょう。情報の入力や管理において、エクセルや手書きの帳簿を使っている部分も明らかにします。どのような機能が必要か、またどの部分で時間を節約できるかが見えてきます。

ステップ2:必要な要件を洗い出す

会計ソフトにはさまざまな機能が搭載されています。その中から自社に必要なものをピックアップするためには、事前に要件を洗い出すことが必要です。
例えば、銀行口座との連携機能や電子領収書のスキャン機能、自動仕訳機能などが考えられます。また、業種や業態によっては特定の取引が生じるため、その取引を効率よく処理できるサービスを選ぶことがポイントです。

ステップ3:税理士が使える会計ソフトかどうか確認する

導入前に、顧問税理士がその会計ソフトを使い慣れているかどうか確認しましょう。多くの税理士は特定の会計ソフトを使用しているため、まったく仕様の違うサービスを導入してしまうと慣れるまでにロスが生じてしまいます。
税理士とのデータ共有が容易なサービスを選ぶことで、年末の確定申告時期など、特に忙しい時期の業務負担を軽減できます。

目的別・会計ソフトの選び方

小規模から大手企業まで、それぞれの規模や課題、目的に応じて最適な会計ソフトがあります。選定の際には、自社に合うサービスかどうかしっかりと見極めることが大切です。 具体例を挙げながら目的別にどのような会計ソフトを導入したら良いか、一例を紹介します。

業務効率をアップしたい

業務効率を上げるためには、自動化機能やAPI連携が重要です。
例えば、銀行口座との連携により、入出金情報の自動取り込みができるソフトや、クラウドストレージとの連携でデータのバックアップや共有が容易になるソフトがあります。また、一つのソフトで複数の業務(給与計算、人事管理など)を一元管理できるものもあり、業務の一貫性と効率を高めることができます。

誰でも簡単に作業できるようにしたい

会計業務に詳しくない従業員が使用することになる場合は、使いやすさを重視しましょう。
操作感が直感的なもの、ヘルプ機能やサポートオプションがあるものなど、「初心者向け」をアピールしているサービスは少なくありません。担当者がどこまで理解しているか、どのような仕様なら使いこなせそうかをすり合わせることが大切です。無料トライアルを利用するのもいいでしょう。

経費を削減したい

レシートや領収書のスキャン機能、カテゴリー分け機能など経費の入力を便利にするサービスや分析機能に優れたサービスを導入すれば、経費の管理を効率化できるだけでなく、無駄な経費を見つけ出し、コストの削減にもつなげられます。

リアルタイムで財務状況を分析・把握したい

クラウド型の会計ソフトは、オンラインでの管理や処理が可能です。スマートフォンやタブレットにも対応しており、リアルタイムで財務状況を把握する必要がある際に便利です。
また収支グラフや経費など、ダッシュボード機能が充実しているサービスを利用することで、各項目の推移が一目で分かります。

安定した資金繰りをしたい

安定した資金繰りを行うためには、決算書や資金繰り表の作成が必要です。しかし、記載しなければならない項目が多く、また資金繰り表にはさまざまなフォーマットがあるため、作成には手間と時間がかかります。
会計ソフトの中には、独自の資金繰り表フォーマットが用意されているだけでなく、銀行口座との連携によりリアルタイムでの入出金情報を取得し、自動更新してくれるサービスもあります。

企業規模が大きくなった

企業規模が大きくなると、多部門や多拠点の財務管理が必要となるため、多機能で柔軟性の高い会計ソフトを選ぶことが重要です。
例えば、複数の部門や拠点のデータを一元管理する機能のほか、生産管理や顧客管理などをしている別システムとの連携機能があるソフトを選ぶことで、経営の見える化や業務の効率化を実現できます。また、大規模なデータの取り扱いが可能で、セキュリティ面でも高い信頼性を持つサービスを選ぶことも大切です。

インボイス制度への対応

2023年10月からインボイス制度がスタートします。企業には、登録番号や適用税率、消費税額といった所定の項目を記載した「適格請求書(インボイス)」の発行が求められ、これがなければ仕入れや経費などの支払いの際に生じた消費税を控除できなくなります。
新しくインボイス制度に対応している会計ソフトを導入することで、対応した請求書の発行が容易に行え、複雑な業務を簡素化・効率化できます。

関連ページ:経理担当者必見|インボイス制度と電子帳簿保存法の対策ポイントを解説

会計ソフトを選ぶ際の注意点

自社のニーズや目的に合わない会計ソフトを導入してしまうと、後に業務フローとの不整合やトラブルの発生につながるリスクが高まります。いくつかの注意点を念頭に置きつつ慎重に選びましょう。

どの規模を対象にしたサービスかを知る

会計ソフトは、対象とする企業の規模によって提供する機能が大きく異なります。 例えば、大手企業向けのサービスは、多拠点や多部門の管理機能が充実している一方、中小企業や個人事業主向けのサービスは一般的に機能のシンプルさ、使いやすさに重きを置いている傾向があります。

自社の規模やニーズに合わないソフトを選んでしまうと、必要な機能が不足していたり、逆に使わない機能であふれていることがあります。さらに余計なコストがかかる原因にもなります。ベンダーが主なターゲットとしている規模や業種を確認しておくことで、ミスマッチの防止につながります。

セールスポイントをうのみにしない

多くの会計ソフトが「業務効率化」や「初心者向け」「シンプルな操作」などサービスの便利さをアピールしていますが、これらの表現は抽象的なものだと理解しておくことが大切です。
例えば、シンプルな操作感が売りなのであれば、その中で何ができて何ができないのか、機能の柔軟性を確認しましょう。エラーが発生した際の対応方法など、細かな点まで気付いて把握できれば運用のイメージもしやすくなります。

対応の度合いを確認する

前述した「インボイス制度」のほか「電子帳簿保存法」など、新たな税制に対応していることは会計ソフトの基本であると言えます。それらに対応していること自体は強い訴求点にならないため、選定を急いではいけません。
新たな法改正の際に機能面や使いやすさの対応の度合い、実際の操作画面、その他の機能の幅、サポート体制など、自社の業務フローやニーズにマッチしているかどうかを確認することが大切です。

「自動化」で安心しない

「◯◯の作業を自動化」「自動仕訳」はよく使われる表現であり、会計ソフトの基本機能の一つですが、対応範囲はサービスによって差があります。自動仕訳のルールが決まっているサービスもあれば、自社でルールを自由に設定できるサービスもあります。
また、はじめにオリジナルの勘定科目や取引先のデータを取り込む際は、手動で入力しなければならないということも考えられます。自動仕訳の精度に加えて、エラーが発生した際の修正は簡単なのか…など、具体的な範囲や内容を確認しましょう。

初期費用よりもランニングコストを重視する

初期費用は一度だけの出費ですが、ランニングコストは毎月、あるいは年間で発生します。会計ソフトは一般的に数年で変更するものではないため、初期費用を節約することよりも、ランニングコストを重視して選ぶことが賢明です。継続費用のほか、アップデート費用やサポート費用にも注意を払い、長期的な運用を見据えたコスト計算をすることがおすすめです。

関連ページ:会計ソフトの種類と費用は? 機能のチェックポイントも解説

修正機能の要不要を考える

会計ソフトの中には、過年度の決算書を修正できる機能を備えたものもあります。後にミスが判明した際には便利な機能である一方、不正が行われてしまうリスクもあります。反対に、不正や誤操作を防ぐために過去の記録を修正できない会計ソフトも存在します。
事前の確認や入力作業の慎重さが求められますが、こうした制限のあるサービスを導入していることは企業への信頼にもつながります。修正機能の特性やメリット・デメリットを理解した上で、自社における要不要を考慮しましょう。

悩んだら業務フローの整理に立ち返る

「会計ソフトを導入するステップ」でも言及したように、サービス選定を進める上で、業務フローの整理は特に大切な作業です。
部署や事業場の数、業態によって大きく異なります。一部では紙による運用が残っていたり、請求書の集約場所が一つではなかったりと、まずは自社ならではの業務フローを正確に把握しなければ、そもそもどんな機能が必要かを言語化できません。
自社にマッチした会計ソフトが見つからないという課題に直面したら、面倒くさがらずに業務フローの整理に立ち返ってみるのも一つの手です。業務フローの改善こそが必要だったという場合もあるかもしれません。

自社に合った会計ソフトを見極めよう

対応規模、機能、価格帯など、会計ソフトを選定する際には多くの条件を考慮しなくてはなりません。例えば機能の充実度は上を見るときりがありませんが、多ければ多いほど良いというわけではなく、必要な機能だけを効率よく使用することが業務負担の削減や正確性向上につながります。

会計ソフトは一度導入すると、長期間利用することが一般的です。余計なコストの発生を避けるためにも、慎重に選ぶことが重要です。事前にニーズを洗い出し、顧問税理士がいる場合はアドバイスももらいながら選定することで、自社に合った会計ソフトを見極めることができます。機能やサポートに対する説明が抽象的だと感じたら、無料トライアルを活用するなど、納得がいくまでベンダーに確認するのが良いでしょう。

関連ページ:会計ソフトの種類と費用は? 機能のチェックポイントも解説

※こちらのページに掲載している情報は2023年9⽉時点のものです。

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会計の知識やソフトの導入メリットを基礎から詳しく解説! 会計ソフトの基礎知識

  • 会計とは?

    企業における会計や決算書の目的、経理や財務との違いを解説しています。

  • 導入するメリット

    会計ソフトの機能や活躍するシーン、導入によるメリットを解説。事業規模ごとに異なる会計ソフトの役割が理解できます。

  • 会計処理の方法とルール

    適切な会計処理に役立つルールをまとめています。会計のタイミングや企業会計原則について理解を深めましょう。

  • よくある質問

    会計ソフトについて会計・経理担当者の疑問点をQ&A形式でまとめました。

最適なソフト選びのために、種類やコストを徹底解説! 会計ソフトの選び方

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