海外拠点×外国籍社員「育成の新常識」~グローバル人材を伸ばす実践ポイント

1990年代から日本で人材育成に関わり、グローバル関連をテーマとした研修を行ってきましたが、受講者の95%以上は日本人でした。しかし、ここ1〜2年で外国籍社員向けの研修が急に増えてきています。外国籍社員の育成とひと口に言っても、大きく3種類のニーズがあります。

1) 日本で採用した外国籍新入社員の研修
2) 海外の現地スタッフの国内研修
3) 海外の現地スタッフの海外での研修

どれも難しくはありませんが、従来の日本人向け研修とは少し違う工夫が必要です。ここでは、それぞれの研修でよく見られる問題と解決のヒントを紹介します。

目次

  1. 日本で採用した外国籍新入社員の研修
  2. 海外の現地スタッフの国内研修
  3. 海外現地スタッフの海外での研修
  4. クロージング

1.日本で採用した外国籍新入社員の研修

近年の新入社員研修では、全体の5%程度が外国籍社員です。そのうち、日本の大学を卒業して日本語の読み書きも問題がない人と、そうではない人がほぼ半々の割合を占めています。

特に日本語を勉強中で日本文化(とりわけ上下関係)に馴染みが薄い社員にとっては、新入社員研修をはじめとする入社後の環境の変化が大きなショックになるため、早い段階でフォローをしないとモチベーションが下がってしまい、3年以内に退職してしまうリスクが高まります。

効果的なフォローとしては次の3点が挙げられます。

(1)研修に文化的な背景説明を追加する

日本の伝統的な新入社員研修は、外国籍社員から見るとかなり独特で、強烈なアウェイ感を抱かせることがあります。そこで大切になるのが、最初に文化的な背景を説明することです。

例えば、ホームルームや団体行動は、日系企業が大切にしている集団主義や仲間意識の強化に必要だからです。また、マナー研修は権力格差が大きい日本において、目上の人への礼節を重視する文化があるためです。代表的な、外国籍社員にとって分かりにくい場面と文化的背景の例は次のとおりです。

  • 集団主義:周囲の人間と環境を意識して同じ行動を取ろうとすることや、仲間の意見を尊重することが強く求められる
  • 権力格差が大きい:上下関係を意識して、上司や先輩など“目上の人”にきちんと敬意を払う必要がある
  • ハイコンテクスト・詳細重視:状況や行間を読むことと、業務の細部まで正確さを求められる

研修中にこういった文化的背景を前もって説明すると、外国籍社員も「なぜその行動が必要なのか」をある程度理解しやすくなります。とはいえ、それでも配属後にさまざまな問題が起きることはままあります。

(2)配属先の受け入れメンバーのフォロー

研修中は、日本人の新入社員仲間とともに座学を受講するため、それまでの学生生活とそれほど大きくは変わりません。しかし、配属後となると、実務の難易度や周囲との関係構築などハードルが一気に上がります。
異文化研修(Working With Japanese Partners)などを外国籍社員に実施することはもちろん有効ですが、それよりも大切になるのは受け入れ先の上司と職場メンバーへの研修です。短時間(半日程度)でも良いので絶対にやるべきです。

おすすめする内容は、外国籍社員が受けた研修の逆バージョンで、ポイントは、外国籍社員と受け入れ先の双方に共通意識と共通言語を持たせることです。

(3)配属後の定期的なフォロー

異文化研修は間違いなく実施したほうが良いですが、それだけではフォローが不十分です。もう一つ実施したほうが良いのは、外国籍社員の定期的なフォローです。

【外国籍社員のフォローのイメージ】
・時間:1〜2時間
・頻度:1〜2カ月ごとに1回程度、合計3〜6回
・参加者:外国籍新入社員(日本人のメンターや人事も参加できれば理想的)
・講師:外部講師(日本での就業経験が豊富な外国人)
・内容:困ったこと、うまくいっていること、質問や疑問、目標設定、アクションプラン策定
・ポイント:外国籍社員の悩みを聞き、疑問を解消し、不安を取り除く

このように、導入研修の文化的背景の説明、受け入れ先の異文化研修、配属後のフォローをすれば、外国籍の新入社員のスタートをよりスムーズにすることができます。

2.海外の現地スタッフの国内研修

優秀な現地スタッフを日本に呼んで研修を行うケースは以前からありましたが、これまではリテンション対策や受講者のモチベーション向上が主な目的でした。

近年、海外拠点をマネジメントできる人材の育成や本社側で現地スタッフを把握する機会として日本の研修を導入する企業が増えています。海外拠点のスタッフにとって、日本での研修機会は大変貴重でモチベーションが高まる反面、プログラム設計を誤ると不満が募り、「せっかくの機会なのにもったいない」という評価につながる恐れがあります。そうならないために、よくある問題と解決ヒントを紹介します。

上記のような解決ヒントを研修プログラムに入れると、このようなイメージになります。

このプログラムはあくまでも一例ですが、海外拠点の現地スタッフを呼んで日本で研修を行う場合に参考となるはずです。 

3.海外現地スタッフの海外での研修

海外拠点の現地スタッフには、従来の人材育成とスキルアップというニーズもあります。これに関しては現地の人材育成担当者に任せるケースが多いのですが、本社として検討すべきポイントは以下の3つです。

(1)企業理念の浸透

海外の現地スタッフは、日本の本社が思っている以上に企業理念、ビジョン、ミッションへの関心が高いです。加えて、日系企業の基本的な考え方(ビジネスマナー、PDCA、問題解決、顧客志向など)を学びたがるケースも少なくありません。
これらのテーマを研修する際に、以下の表のような日本特有の文化的背景を付け加えて説明すると理解度と実務への応用効果が高まります。

(2)ニーズ把握と目的別研修

必要なタイミングに実施が求められる入社オンボーディングや新任管理職研修などを除き、海外拠点では目的別研修をメインとすべきです。大切なポイントは、一人ひとりの的確なニーズ把握です。

従業員はさまざまな背景を持っており、育成がしっかりした企業での経験を持っている人もいれば、OJTと経験でしか学んだことのない人もいます。まずは難しいアセスメントより、簡単なアンケートとヒアリングで従業員の知識・スキルを把握して、仕事で求められていることを特定しましょう。

それに合わせて適切な育成施策を考えれば良いでしょう。もし、集合研修を実施するほどの人数がいない場合は、オンデマンド研修とコーチングの組み合わせや個人別ラーニングジャーニーが効果的です。

参考:一人ひとりのカスタムラーニングジャーニーが可能な時代にようこそ

(3)リテンション対策としての研修

海外企業にとって、研修ラインアップの充実は従業員の満足度を高める大きな要素になっています。実際、研修が不十分に見えると、自分のスキルアップとキャリアに対して不安を覚え、転職を考え始めます。

最もシンプルな対策は、ラーニングコンテンツライブラリーの導入です。海外企業に映像コンテンツライブラリーが多いのは、効果的なスキル向上のためではなく、このようなリテンション対策のためです。

クロージング

外国籍社員の育育成ニーズは、これからますます高まっていくでしょう。そのときには、ぜひ今回紹介した工夫やアドバイスを参考にして、実践的・効果的な育成を行ってみてください。社員の成長だけでなく、組織全体のグローバル化や競争力の向上にも大きく寄与するはずです。

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