【解説】人材育成担当者がメンターをサポートするためのポイント
新入社員の成長促進は「配属後のフォロー設計」にあり!?

この時期(2〜3月)は新入社員の1年目の成果発表を聞く機会が多くあります。近年の印象として、4月からの新入社員導入研修はたいていうまくいくものの、配属後の成長は、職場環境と上司に大きく左右されているようです。
また、上司、先輩、メンター、指導員の役割は年々重要性を増している一方で、メンターや指導員の育成とサポートをしっかり行っている企業は残念ながらそう多くありません。
今回は、指導員やメンターのスキルを高めて、配属後の新入社員の成長支援がうまくいくためのヒントをお伝えします。
目次
新入社員の成長のステージ
企業、職種、部署、新入社員によっても多少異なりますが、新入社員のよくある成長パターンはこの4ステージです。
新入社員の状況と必要なフォローは、ステージによって大きく異なります。ステージごとに効果的なフォローを実現できるよう、「新入社員の状態」「メンターに求められる能力」、そして人事や人材育成担当者が現場のメンターをサポートするための具体的なアクションとの「人材育成サポート」について詳しく解説していきます
ステージ1:立ち上げ
配属直後の新入社員は期待に胸をふくらませていると同時に、不安でいっぱいです。職場メンバーに良い第一印象を与えたいと思うものの、どうすればよいかよく分かりません。初めてメンターを務める社員も同じく不安なので、人材育成担当者としてまず行うべきミッションはお互いを安心させることです。そのためには、少なくとも以下の3つが必要です。
1) メンターのマインドセット
マネジメント経験のないメンターが多いため、まずはプレイヤーからメンターへとマインドセットを変えることが重要です。
例)自分が手を動かさずに新入社員に任せる、答えをすぐ教えるのではなく新入社員に考えさせ成長する機会を与える。
2) OJTフォローの仕組み
最初は決まったルーティンがあると、メンターと新入社員どちらも分かりやすくなるのでおすすめです。図にすると次のようなイメージです。
- チェックイン(毎朝チームで共有):チームメンバーの業務内容を理解してもらう
- Dailyメール(PDCAを回す):ロジカルに報告して、振り返りと計画の習慣をつける
- Weekly Voice(振り返り):1週間の成長について振り返って、心境を確認する
- 1on1(コミュニケーション):新入社員の悩みを聞き、関係構築をする
3) ティーチングの基本
このタイミングであれこれ教えても、メンターはうまく吸収できません。必要最低限の内容に絞ったほうが良いでしょう。私がメンター研修を実施するときによく盛り込んでいる内容は、
- 教える(ティーチング)の基本
- 気づかせる(コーチング)の基本
- 定着させる(フォロー)の基本
このうち、早いタイミングから役立つテクニックはティーチングです。必要不可欠なテクニックはロジカルに分かりやすく伝えること、双方向のコミュニケーションをとって対話しながら相手の理解を確認して進めることです。
ステージ2:関係構築
配属から数カ月たつと、新入社員はルーティンに慣れてきます。業務への不安が薄れたこの時期に、人間関係やコミュニケーションに対する不安が出てくるケースは少なくありません。例えば、上司やメンターとの距離を感じてなかなか安心して話せない、困ったときに誰に話せばよいか分からない、などです。
このタイミングでは適切に反応してスムーズに乗り越えるメンターもいますが、対応方法が分からない、そもそも問題があることに気づかないメンターが大半です。そこで、次のようなサポートをおすすめします。
1) 新入社員へのヒアリングと課題の共有
メンターと新入社員の意識のずれをなくす第一歩は、新入社員へのヒアリングです。もちろん個別ヒアリングが理想ですが、簡単なアンケートでも問題はありません。ポイントは新入社員の意識と課題を確認して、それをすぐメンターに共有することです。これによって、新入社員の課題に気づいていないメンターに対応する必要性が伝わります。
2) メンターのソフトコミュニケーションスキル向上
ソフトコミュニケーションはロジカルな情報伝達や指示出しとは違い、心理的安全性をつくって信頼関係を構築することがポイントです。特に、業務で優れた成果を出している若いメンターに必要なスキルです。
代表的なスキルはアクティブリスニング、傾聴力、質問術、コーチングです。どれも本質的なスキルのため、簡単なeラーニングだけでは身につきません。メンター全員に強制する必要はなく、必要性が高い初めてメンターを経験する社員向けに演習中心の対面研修を提供するのが最も効果的です。
3) メンター同士のベストプラクティス共有
もう一つ、簡単にできてインパクトもある取り組みは、メンター同士のベストプラクティス共有です。忙しい中で多く時間を割いて新入社員の成長について真剣に考えられるメンターは残念ながら少ないですが、1時間程度で数人の話し合いなら誰でも参加しやすくなります。メンター同士がやっていること、うまくいっていること、困っていることなどについて話し合いながら、新入社員の成長に対する考えを深めることができます。
私たちが自社でよく行うスタイルは、プロコーチによるグループコーチングです。目的は、メンター同士の効率的なベストプラクティス共有と、メンターにレベルの高いコーチングの受講体験をさせてロールモデルを示すことです。実施イメージは次の通りです。
ステージ3:定着
下期の10月になると新入社員、業務内容、職種によってさまざまなパターンが出てきます。とても良い感じに急成長する新入社員もいれば、安定して成長し続ける人も、逆に落ち込む人もいます。共通して言えるのは、勢いとモチベーションが少し下がる新入社員がよく見受けられます。
ここでの成功ポイントは、新入社員一人一人の特性とニーズを的確に把握して対応することですが、マネジメント経験の浅いメンターにはなかなか難しいはずです。このタイミングで人材育成担当者としてできるサポートは、新入社員の特性や強みを特定する方法と課題別のアドバイスをメンターに教えることです。その際のちょっとしたヒントをご紹介します。
1) 新入社員の特性に合わせてモチベーションを上げる
新入社員の特性を理解してモチベーションを上げるには、診断ツールが役立ちます。自社がよく使っている診断ツールは、ギャラップ社のクリフトンストレングス®(ストレングスファインダー®)やエニアグラムです。
ストレングスファインダー®はかなり細かく新入社員の傾向や強みが分かるため、それらを日頃から発揮させるようにすればたいていうまくいきます。弱点は診断にかかる手間と費用です。エニアグラムはもう少し大まかな診断ですが、手間も少なく費用はありません。どのツールを使うにしても、新入社員本人の資質を理解し、その人に合いそうなフォローにつなげるとよいでしょう。
【参考】
・クリフストレングスのしくみ|GALLUP
https://www.gallup.com/cliftonstrengths/ja/253661/CliftonStrengths.aspx
・「エニアグラムについて<1>」|日本エニアグラム学会
https://www.enneagram.ne.jp/about/description/description_1
2) 必要に応じてフォローをする
1年目の後半になると、メンターは新入社員の状況に応じて柔軟に対応する必要が出てきますが、マネジメント経験が少ないと引き出しも多くありません。そこで、シンプルなマネジメントツールを用意してメンターに紹介し、参考にしてもらうのがおすすめです。イメージはPDFなどの簡潔な資料や数分程度の映像教材で、次のような切り口を入れると効果的です。
ステージ4:成果
最初の3ステージできちんとフォローをすれば、新入社員は十分な成果を出せるはずです。
ただ、成長して成果を出したからといって、新入社員自身がそれに気づけるかといえばそうでもありません。気づかせるために振り返る、頭を整理する、まとめる機会を与えましょう。やり方はさまざまですが、なかでも成果発表は大変効果的です。以下は成果発表のおすすめの内容と当日の実施イメージです。
クロージング
4月から人材育成担当者にとって大切な、新入社員の導入研修が始まります。良い研修を提供したあとは、ぜひしっかりとした配属後の現場フォローも行いましょう。今回ご紹介したステージごとのフォローを少しでも取り入れられると、今までよりずっとスムーズに進むはずです。ご健闘をお祈りしております。
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