自分用研修プログラムを実現するしっかりとした研修設計と賢いラーニングテクノロジーの組み合わせが生み出す確かな研修成果
一人ひとりのカスタムラーニングジャーニーが可能な時代にようこそ
最近「リスキル」と「アップスキル」は話題性があって、「定着」と「効果測定」も注目されていますが、いずれも従来の施策では十分応えられない領域です。集合研修では受講者の個別ニーズに合わせられないし、学習塾のようなマンツーマン研修も非現実的です。
一方、自己学習中心のeラーニングやオンデマンド研修は個別ニーズにある程度対応できますが、インプット中心のため定着や成果につながらないケースが多くなります。
幸い、受講者の個別ニーズに合わせた柔軟な研修スタイルがようやく可能になりつつあります。もちろんしっかりした研修設計と賢いラーニングテクノロジーの使い方が必要です。今回はその広がりつつある可能性と実用的な使い方についてお伝えします。
目次
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- Myラーニングジャーニーとは
- Myラーニングジャーニーの使い方
【ポイント】
(1) ニーズ把握
(2) インプット
(3) アウトプット
(4) コーチングフォロー
(5) 効果測定 - クロージング
1.Myラーニングジャーニーとは
受講者一人一人のニーズに合わせた研修スタイルの呼び方はまだ確立していませんが、私は「Myラーニングジャーニー」とネーミングしました。Myというのは個人のニーズに合わせるので「自分用」という意味、「ジャーニー」というのはインプットのみの研修ではなく、しっかりした定着フォローと職場実践があることを示します。
受講者の利点は自分のニーズに絞られた内容に集中できるため効率が良いことで、ちゃんとしたフォローがあり実際の仕事での成果につながります。一方、企業側のメリットは短時間で大人数のスキルアップ、行動変容、ビジネス成果向上が得られることです。
2.Myラーニングジャーニーの使い方
当然、他の人材育成施策と同じように全ての対象者、ニーズ、研修内容、組織、場面に最適なわけではありません。下記の図に集合研修や自己学習との比較をまとめました。
一言で言うと受講者が今携わっている仕事でのスキルアップと成果向上が重要な場合にMyラーニングジャーニーが非常に効果的です。実践していくための5つのポイントをご紹介します。
ポイント1:ニーズ把握
効果的なMyラーニングジャーニーの出発点は、研修内容と研修設計に先だつ的確なニーズ把握です。キャリアデザインのフレームワークに準じて必要性を3つにまとめました。
- Must(すべきこと)必要性の高いスキルであることは大前提です。そうでなければMyラーニングジャーニーは不要です。
- Can(できること)ある程度の知識と経験を持ち、実践して実力を上げる価値があるテーマは最適です。
- Will(したいこと)講師と受講者の上司は多少のサポートができますが、個人ワークが多いので、ある程度以上のモチベーションがないとうまくいきません。
その3つの要素を把握するための具体的な方法が次の通りです。
- 能力測定:アセスメント、360度評価、試験が便利です。受講者の負担を考えると20分程度のオンラインテストが適切です。
- 職場ニーズの特定:受講者とその上司のヒアリングが適切ですが、アンケートに回答したら自動的に分析できる設計が理想的です。
ニーズがわかったら次に研修の内容を決め、研修設計に移りますが、Myラーニングジャーニーでは受講者と講師が話しながら作るとスムーズです。
ポイント2:インプット
Myラーニングジャーニーは、ほとんどの場合に新しく学ぶ内容のインプットと実践演習・アウトプットの両方が必要になります。
インプットにはマイクロラーニングが定番です。10分未満の映像教材や短い読み物がよく使われています。幅広くいろいろなコンテンツが必要で、同じ内容でも複数レベルがあった方が良いので、既存のeラーニングやコンテンツライブラリーを使うケースが多いです。
大切なポイントは、受講者にとってバラバラなコンテンツではなくて、一つのジャーニーとして明確につながっているように見えることです。さらにモチベーションアップと職場実践を促進するため、受講者に短いコメントをもらうことが有効です。例えば、ビデオを見終わったときに「一番参考になったことは何か/この内容はどの場面で役立ちそうか/仕事でどのように生かせるか」を考えさせて投稿させましょう。インプットを提供するだけですと従来のLMSで十分ですが、インプット、アウトプット、上司の巻き込み、コーチングセッション、ソーシャルラーニング、研修効果測定を全てしようとするとラーニングジャーニーの専用プラットフォームを強くお勧めします。
ポイント3:アウトプット
ニーズに合わせた自己学習と言う考え方は、決して新しいとは言えませんが、Myラーニングジャーニーの最大の差別化ポイントはその後のアウトプットからです。
従来は数多くの反復練習(例:ロールプレイング)と個別フィードバックをさせたくてもリソース(時間・講師)が膨大で、大人数への実施は困難でした。しかし最近のAIツールのおかげでこれがようやく可能になってきています。
アウトプットには2つの要素があり、一つ目は「わかったことができるようになる」ための反復繰り返し練習です。ポイントは自分の能力を仕事の場面で十分貢献できる高いレベルまで上げることです。マネジメント、コーチング、ヒューマンスキルのようなテーマだと多くの場合、新しいインプットを学ぶより既に知っていることができるようになることの方が成果につながります。
効果的なアウトプットの条件は「実際の場面に近い演習、身につけるまでの回数、リアルタイムの個別フィードバック」です。完璧ではありませんが、十分使えるAIツールはすでにあり、驚くべきスピードでレベル(機能、性能、完成度)が上がってきています。
例として、数分のプレゼンテーションに対するAIフィードバックはこのようなイメージです。
アウトプットの二つ目の要素は職場実践です。受講者が研修期間中の実際の仕事で生かせた方が効果的です。周囲の理解と支援が受けられるようになりますし、明確な研修効果も得られ、経験と自信が高まります。この職場実践を促進するためにアクションプラン、コーチングサポート、上司・職場の巻き込み、個別フィードバックが重要です。
ポイント4:コーチングフォロー
Myラーニングジャーニーのもう一つの大事なポイントは講師の個別フォローです。プログラム設定後の講師やコーチの役割は、受講者の投稿内容と演習やアウトプットに対するフィードバックです。投稿から24時間以内に「いいね」をクリックして一言コメントを返すことが理想です。
さらに1対1のミーティングも必要です。目的は「受講者の内容に対する不明点や質問を答える/アウトプットに対するフィードバックを直接伝える/ロールプレイをする/アクションプランを具体化する/取り組みと結果を把握する/動機付けする」ことです。内容、頻度、期間は当然状況によって違いますが、研修期間が2-5カ月の場合には1対1のミーティングを月1回の頻度で1セッション@30分程度で行うことがお勧めです。
コーチングフォローのイメージは下記のとおりです。
■講師コメント(例)
■コーチングセッションの流れ(例)
ポイント5:効果測定
Myラーニングジャーニーは複雑で難しいので具体的な成果が求められますが、幸いなことに研修効果測定は簡単で明確です。研修を通じて得られる情報としては学習したコンテンツ、演習のAI分析結果、コーチのフィードバック、職場実践の結果などです。
研修効果測定の目的は
- 受講者と上司と努力、取り組み、成果を把握する
- 受講者の成長と到達レベルを特定する
- 今後の強化するヒントを得られる
下記の図は1枚程度の簡単なレポートイメージです。
3. クロージング
人研修から少し離れた知的活動の分野であるゲームの世界をのぞいてみても、多くのロールプレイングゲームの中で大人も子供も「自分の世界の構築、目標と戦略の設定、そしてジャーニーの中での反復訓練による主人公(自分)の成長」を繰り返しています。
全てのニーズに対してMyラーニングジャーニーが最適な育成施策だとは限りませんが、場合によってはとても効果的かつ効率的です。忙しい受講者が、数カ月以内に自分の実力を上げて職場での成果を出したい場合には、最新ツールも活用したMyラーニングジャーニーを強くお勧めします。ぜひ視野に入れてください。
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