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ワクチン休暇やっぱり必要?「3回目の職域接種」に向けて人事が検討すべきこと

皆様、株式会社Works Human Intelligenceの阿弥毅と申します。
約10年間、統合人事システム「COMPANY」のコンサルタントという立場を通じて、勤怠領域を軸に日本企業の人事業務課題に触れてきました。その経験から、現在は「働き方の多様性」に関する調査に従事しています。

2020年初頭より猛威を振るっている新型コロナウイルスですが、日本では2回目までのワクチン接種が広く浸透し、2021年10月に緊急事態宣言が解除されてからは、いったん落ち着きを見せています。一方で、諸外国と同様、日本でも3回目となる、いわゆる「ブースター接種」が、まずは医療従事者を対象に開始されました。
2022年3月からは職域接種も始まる予定となっており(2021年11月末時点の情報)、人事総務の担当者は2022年初頭から準備に追われることが考えられます。「ワクチン休暇」を始めとする各種勤怠に関する措置についても、再検討が必要になるでしょう。

そこで今回は、これまでのワクチン接種における各企業の対応を振り返るとともに、見直しの余地についても言及していきたいと思います。

※こちらの記事は下記の人事トレンド紹介コラム「「ワクチン休暇は必要ない?職域接種実施済み企業から学ぶ今後の対応とは」」を@人事の読者様向けに一部編集させていただいております。
https://www.works-hi.co.jp/businesscolumn/syokuikisessyu

目次

  1. ワクチン接種にまつわる勤怠管理措置のおさらい
  2. 前回対応の傾向と結果から考察する今後の展望
    ┗接種日の分散方法
    ┗ワクチン休暇の導入継続可否
  3. 「ワクチン休暇」から学ぶ、不確実な時代に発揮すべき柔軟さ

ワクチン接種にまつわる勤怠管理措置のおさらい

2021年夏頃に職域接種の仕組みが登場した結果、平日であっても従業員が安心してワクチンを接種できるように勤怠制度を工夫する企業が急増しました。また、副反応発症時にも気兼ねなく療養できる「ワクチン休暇の設置」等の制度づくりも進み、一般化しました。

当社でも2021年6月~7月に、当社製品「COMPANY」のユーザー企業様を対象とし、ワクチン接種にまつわる勤怠措置についてアンケートを実施しました。結果は下図の通りです。


※回答法人数:56法人(措置の内容については43法人)

通常の年次有給休暇とは別に、ワクチン休暇をはじめとする勤怠管理上の何らかの特別措置を「設けた」または「設ける予定である」と回答した企業は、全体の約7割となりました。

ワクチン接種にまつわる勤怠管理の措置はおおむね、移動時間も含めた当日の接種に要する時間を勤務時間とみなすか、該当日を有給休暇扱いにするかの2通りに分かれます。

措置を「設けた」または「設ける予定である」と回答した企業の約4割が「接種に要する時間を勤務扱いとみなす」対応を取っていました。

ただし、勤務扱いの対応が取られているのは、基本的に本人の接種当日のみです。
一方で、ワクチン接種について休暇扱いとする「ワクチン休暇」の適用範囲については、以下2つの観点で検討がなされているようです。

  • 取得タイミング(接種当日、副反応発症時)
  • 接種対象者(本人、家族)

前述のアンケートについて、上記の観点で「ワクチン休暇適用企業」の全体に占める割合を算出してみると以下の通りになります。

  接種当日 副反応発症時
本人 34.4% 36.1%
家族 11.5%

本人のワクチン休暇における適用割合は、接種当日よりも副反応発症時のほうが多いです。しかし、これは前述の通り、当日については勤務扱いとするケースがあるからだと想定されます。
いずれにせよ、本人に対して接種当日や副反応発症時のどちらか、または両方の場合に専用の有給休暇取得を認めている企業は、全体の半数以上にのぼりました。

また、家族についても、接種当日の、特に帰りの安全を考慮した付き添いに対応できるように休暇の取得を認める企業が1割強ありました。家族の副反応発症時については当該アンケートで情報を取得できていませんが、おそらく更に少ない傾向であったことが予想できます。

なお、専用の有給休暇取得制度がない企業においては、必要に応じて年次有給休暇を取得するように指示されているところが大多数であるように見受けられました。

前回対応の傾向と結果から考察する今後の展望

アンケート結果からも読み取れるように、前回は職域接種という取り組み自体が初めてであったことから、ワクチン休暇のような比較的手厚い対応・措置を講じている企業が多かった印象です。また、接種後の副反応が何日にもわたり、業務に影響の出るレベルで症状が出た人も多かったように思います。
このことから、ワクチン接種に関する休暇、もしくは勤務扱いの措置は当面継続される流れにあるでしょう。

ただし、前回の実施内容を振り返り、3回目の接種に向けて、よりよい形を検討すべき部分もあるのではないでしょうか。主な点を以下に記します。

接種日の分散方法

管理職や顧客対応従事者等が一斉に休暇を取ってしまうと、ビジネス全体への影響が即時に出る可能性があります。前回は急ピッチな対応であったため、ある程度は仕方がないことでしたが、従業員の接種日をいかに分散するか、各企業で工夫が必要だと言えるでしょう。

特に、職域接種で利用されている現行のモデルナ製ワクチンは、2回目接種後の副反応でおよそ8割近くに37.5℃以上の発熱が、うち6割は38℃を超える高熱が出たという厚生労働省の調査結果※もあります。3回目接種における副反応の強さは、現時点で定かではありません。ファイザーなど他のワクチンを2回目までに接種した人も対象とする交差接種の可能性もあり、断定的なことは言えませんが、業務継続が困難な副反応が引き続き出る可能性もあるため、これまでと同様に休養が必要となることも視野に入れるべきでしょう。
※参考:厚生労働省新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)
https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000816287.pdf

企業としての生産性や顧客対応に大きな影響が出ないように、人事と各事業部長とで相談しながら接種日を何日かにうまく分散させたり、可能であれば接種を休日の前日にしたりする等、接種日やワクチン休暇の取得日をコントロールすることが望ましいでしょう。

たとえば社員番号で分類して接種日を割り振ったとします。すると、管理職のワクチン接種が特定日に固まった結果、多くの管理職者が同じ日に副反応でダウンして組織コントロールが多方面で機能しなくなることも起こりかねません。こうした事態を想定し、回避できるように調整できると理想的です。

ワクチン休暇の導入継続可否

初期段階では誰にとっても未知への対応であったため、ワクチン休暇を別途用意したり、その用途を柔軟に設定したりという企業も多かったと思います。一方で、今回はその継続可否や用途について、再度整理をしてもよいかもしれません。言い換えると、わざわざワクチン休暇という専用の休暇を設けずとも十分に対応可能な選択肢もあり得るということです。

具体的な一例としては以下の通りです。ここでは、「積立休暇」の活用を選択肢に挙げています。

  接種当日 副反応発症時
本人 勤務扱いとして対応 傷病事由で積立休暇利用を認可
家族 看護事由で積立休暇利用を認可 看護事由で積立休暇利用を認可

積立休暇とは、失効した年次有給休暇を積み立てて、病気で長期療養する場合などで引き続き取得を可能とする仕組みに基づく休暇です。正式には、「失効年次有給休暇積立制度(失効年休積立制度)」といいます。
積立休暇の有用性については以前「子の看護休暇・介護休暇の法改正に見る積立休暇の有用性とは※」という記事でも解説しましたが、そもそも日本では、年次有給休暇の取得率が低いという実態があります。
※株式会社Works Human Intelligence「子の看護休暇・介護休暇の法改正に見る積立休暇の有用性とは」

それゆえ、積立休暇制度を導入している企業(平成28年段階の人事院の調査※では、500名以上規模の企業において54.6%)においては、その残日数を持て余しがちだと考えています。
ただでさえ溜まりやすい積立休暇ですが、一般的には私傷病のみに取得事由を制限しているケースが非常に多いです。それ故に、消化も難しいことが多いのが現状ではないでしょうか。私傷病以外、例えば看護を取得事由として認めている企業は、上記調査における54.6%のうち、さらに56.1%と限定的です。
しかし、積立休暇自体は法律の縛りがない休暇ですので、取得事由の制限緩和も企業の判断に委ねられています。

※参考:人事院 平成28年民間企業の勤務条件制度等調査結果の概要
https://www.jinji.go.jp/kisya/1709/h29akimincho_bessi.pdf

柔軟な見方をすれば、ワクチン接種の副反応も傷病と捉えることができますし、ワクチン接種に関わる家族の付き添いや看病も看護と捉えることができます。つまり、看護を積立休暇の取得事由として認め、さらにはワクチン接種に絡む休暇としても適用できるようにするという方法は十分に筋が通るでしょう。

まったく新たな種類の休暇を設けることと、既存休暇の取得事由を緩和すること、どちらのほうが導入や運用の負荷が低いでしょうか。
場合によっては、年次有給休暇や積立休暇の残日数が少ない従業員が一定数存在したり、元から休暇の取得率が高かったりする企業もあるはずです。メリット・デメリットを整理したうえで、自社の状況に合う選択肢を取ることが最善策と言えるでしょう。

ワクチン休暇といった専用休暇にこだわることなく、上記のように柔軟な選択肢も視野に入れつつ整理を行っていただけるとよいと考えます。

「ワクチン休暇」から学ぶ、不確実な時代に発揮すべき柔軟さ

いかがでしょうか。前回の職域接種という新たな取り組みへの対応は、企業人事としての柔軟性やスピード感が多少なりとも問われるものであったかもしれません。
しかしながら、より重要なことは、不確実な世の中の変化を追い続け、その時々で必要な形に自社の在り方や制度を見直し、場合によってはしっかりと変容させていくことではないでしょうか。

新型コロナウイルス対応に限った話としては、2022年より一般向けの3回目接種が本格化していきます。
新たな変異株も出てきている中ではありますが、国産ワクチンの開発や現行ワクチンの改良も日々進んでいます。遠くない将来、新型コロナウイルスのワクチン接種も現在のインフルエンザ予防接種のように当たり前の出来事に変わっていく可能性も唱えられ始めています。そうなると、ワクチン休暇のような特殊な勤怠措置は必要なくなるかもしれません。

こういった状況変化をつぶさに捉えながらも、トレンドやマジョリティに流されることなく、自社の休暇や働き方の制度に向き合い、最適化させていけるよう、定期的に見直しを行える体制の構築を強くおすすめいたします。

今回の考察が、柔軟かつしなやかな企業人事への変革の一助になれば幸いです。【おわり】

※記事の情報は公開時点です。

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