組織能力向上エンジンとしての人財部門へ

組織への提言に「ビッグデータ」、個人目標達成に「リトルデータ」

多種・多量・リアルタイムの情報入手が容易になるにつれ、人財部門でも各種データ活用への関心が高まっています。しかし、『管理』の側面が強いままで、『効率性』だけを追求してデータをいじっていても、『経営陣やライン部門と協働する、戦略的な人財部門』への刷新は成りません。
例えば、「最も利益が見込める選択肢はどれか?」に関しては、数字を見ることで、誰でも同じ判断ができても、「どれが、幸せか?」といった問いには、多様な解が存在し、正解がありません。同様に、 『人財部門として、何を狙い、各種データとどう接していくのが良いのか?』について、明確な方針を持つことが重要ではないでしょうか?

人財部門の役割は『恒常性維持』のマネジメント中心から、『創造・進化』のマネジメントもその範疇に

初回記事では、人財部門の仕事に、「人財部門主導で『管理的』な内容から、ライン部門と協働で『戦略的』な内容へ」という変化が求められている話を紹介していました。
図表1は、その変化について別の切り口からまとめたものです。

図表1のように、『恒常性維持』のマネジメント中心だった人財部門の役割が、『創造・進化』のマネジメントもその範疇に収めるようになってきたことを踏まえ、今後は、a)『市場を意識し、経営視点に立って、組織の将来的な課題を明らかにする』という側面、b)『他社が模倣困難な、独自資源としての人財・組織の育成に貢献する』という側面に意識を向ける必要を指摘したいと思います。

a)を可能にする一例には、『組織目標の達成を狙う、ビッグデータ分析のアプローチ』があります。

これは、厄介な緊急事態が生じるなど、経営者や各部門から助けを求められる前に、組織や人財に関わる重大案件に関する提言が主体的にできるように、また、『長期的な競争優位性の実現が可能になるよう、人財プールを充実させる』ため、『より魅力的な企業になっていく』ため、そして、『経営戦略や事業戦略の推進に役立つ知見を導出する』ため、さまざまな情報の分析を行うといった取り組みを指しています。

例えば、「LMS(Learning Management System:学習管理システム)のデータを『人財配置』に活用する」「離職を検討しようかと本人が意識する前に、人財部門が退職リスクを察知する」「特定業務の業績と相関関係の深い行動特性を明らかにする」「従業員定着率と高い相関を持つ要因群を特定し、場づくりや組織コミュニケーションに関して提言する」などといった内容です。

また、b)を可能にする一例としては、『個人目標の達成を狙う、リトルデータ活用のアプローチ』があります。

健康増進運動や睡眠などを含む、終日の活動履歴を記録したり、行動パターンを分析したりしてくれるデバイスやアプリの普及によって、私たちが自分自身について理解を深めるために用いることができる情報も豊富になってきています。

こういった個人向けに活用可能な情報『リトルデータ』と呼ぶ場合があります。
そして、日常業務におけるさまざまなリトルデータ(新規顧客獲得数、特許出願件数、生産性向上率、情報検索に費やす時間など)は、個々人の業務目標達成に向けた活動について話す場面で用いることが有効です。 

例えば、『リトルデータを用いたコーチング』『チーム共有の判断基準とリトルデータの比較に基づくフィードバック』など、『客観的なリトルデータを用いた、納得性の高い対話』を行うことで、実際に人が動き、目標の達成が容易になります。

人財部門として何を狙い、各種データとどう接していくべきか

上述のアプローチは、例でしかないのですが、私たちが、『人財部門として、何を狙い、各種データとどう接していくのが良いのか?』について、自組織なりの方針を定めるには、次のような側面への検討も忘れてはなりません。

『個人と組織の間でどういったデータへのアクセスを許可するのか』など、セキュリティやプライバシー、個人と組織の相互信頼に関係する側面

『機械的で冷徹な情報分析の結果だけでは、人は動かない』ため、人財部門をはじめ、各部門のキーパーソンには、『他者への働きかけ、他部門との協働を通して成果をあげるソフト・スキル』を高める取り組みが求められるという側面

さて、あなたの組織では、『社員どうしの協働や協創を導き、部門横断的な相乗効果を創出し、組織能力を高めるためのデータ活用法』について、どんな方針を定められるでしょうか?

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