過剰なwhy思考が新卒をつぶす~キャリアアップする新入社員が共通で持つhow can思考~

仕事柄、年間50名以上の経営幹部、人事教育担当の方と新卒や幹部の研修の打ち合わせをする生活が10年以上続いています。10年という歳月の中で、私が新卒研修を担当した新入社員さんが、役職に就かれていることも増えてきました。

その経験の中で、私自身、新卒入社した社員さんの中で、「順調に経営幹部として成長し、キャリアアップする方」と、そうでない方の違いが見えてくるようになってきました。

実際に、人事の方々にお話をお聞きすると、「採用面接、新人研修の際の評価」と、「入社3、5、10年目の評価」は相関関係が高いとは言えない、という方が多くいらっしゃいます。端的に言えば、面接の際に評価が高かった社員が、入社3年目で評価されているかといえば、必ずしもそうではない、ということです。

では、別れ道の要因となるものは何なのか? 私は、これまでの経験と人事の方を中心に行ったヒアリングをもとに、「将来幹部になる/なれない新入社員の思考習慣の違い」を6つに分けてまとめました。今回は、そのうちの1つをご紹介します。

将来出世する社員の特徴「why can’t思考<how can思考」

幹部になるような新入社員が持っている思考の特徴の1つが「why can’t思考<how can思考」です。

将来的に出世する社員の方は、「どうすればできるのか?」を反射的に考える習慣があります。これは当たり前のことと思われがちですが、極めて重要で、かつ、実践するのが難しいことです。

アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーが指摘するように、我々人間は、自分の思い通りにいかない事実が現れた時、認知的不協和( cognitive dissonance)という状況に陥ります。認知的不協和とは、矛盾する二つの認知をした場合に、自分にとって不都合な方の認知を変えようとする心理のことです。具体的には、自分にとって不都合な事実を変えるために、「自分には可能性がないから」「そもそも無理な目標だった」と非論理的な思考をしてしまいます。つまり、Why can't思考になってしまうのです。

成功者は「どうしたらできるか=how can思考」を持っている

このhow can思考の重要性は、ハーバード、オックスフォード、マッキンゼーの心理学者が「人生のあらゆる分野での成功に必要な最重要ファクター」をついに解明したとして、海外で大きな話題になった『やり抜く力 GRIT(グリット)』という書籍の中でも取り上げられています。成功のために最も重要なことは、まず「無理」と言わず「どうやったらできるだろうか」と物事を前向きに捉えるクセをつけることなのです。

ユニクロ創業者の柳井氏も、著書『一勝九敗』の中で、1勝9敗がビジネスの定説であり、9敗している状況でも1勝のために「どうすればできるのか?」=how can思考を貫けるかどうかが重要だと述べています。

例えば、「新卒同期で1年後にトップの成績を収める」という目標を掲げていたとしても、入社半年後、社会人の洗礼を受け、失敗体験をし、「このままではトップの成績は難しそうだ」という状態になったとしましょう。この状況から「どうすればできるのか?」を貫いて、行動ができる人は1~2割で、多くが「できない理由」を述べて、目標ごと消してしまいます。目標ごと消してしまった社員と、あきらめなかった社員で成長レベルはどちらが大きいか、答えは明白です。

成功者に共通する「学習性楽観主義」は後天的に身に付けられる

このwhy can’t思考、how can思考といったテーマを、アメリカの心理学者/ペンシルベニア大学のポジティブ心理学センターの長であるマーティン・セリグマン(Martin E. P. Seligman)の研究では、学習性楽観主義と学習性無力感と呼んでいます。学習性楽観主義とは、「自分には可能性があるから、結果はわからないが「どうすればできるのか?」を考え、行動しよう」という思考特性です。学習性無力感とは、自分には可能性がないから、「できない理由」を考えて自ら無気力を生み出す思考特性です。マーティン・セリグマンの研究では、この学習性楽観主義は、先天的ではなく、後天的に身につけることができると発表しています。つまり、生まれ持ったセンスではなく、努力によって身につけることができるスキルということです。

幹部へと成長していける新卒社員の多くは、この学習性楽観主義という思考特性を持ち、how can思考で、行動し続け、成長を手にしているということです。

「why can't思考」がクセになっている部下を指導するための問答集

「どうすればできるのか?」と考えるクセをつける訓練は、「そんなの知っている、自分はわかっている、できている」といった自己評価と他者評価のズレにもぶつかりやすく、教育指導するのが難しいのも事実です。

指導する側に一貫性がなければ「先輩だって、無理な理由を言っていますよね」「先輩がリスクヘッジしなさいと言ったので、できない理由について考えました」「どうすればできるのか?を考えて動いたら『勝手にやるなよ』と言われました。矛盾しています」といった形で逆襲を受け、「how can思考をしない方がいいのでは?」という疑問も出やすいです。

そういったテーマだからこそ、「なぜhow can思考が重要なのか?」を論理的に教育できる力が、上司、先輩には求められます。ここでは、how can思考の重要性を新卒社員が理解し実践するための、具体的な問答集を以下に3つ挙げましょう。

質問:事実として、無理なことはありますよね?

回答(例):
事実として難しいことは当然ある。しかし、それは今の自分の能力、環境で考えると難しいだけで、能力、環境が変われば成功するかもしれない。「どうすればできるのか?」を常に考え、行動することで、今回うまくいかなかったとしても、自己成長は100%手に入る。成長すれば、成功確率があがる。できない理由を考え続けることは、成長や可能性を生まない。成果は、どの時代もどんな環境でも、「どうすればできるのか?」の先にしかない。

質問:どうすればできるのか?を考え、実行したら、「勝手にやるな」と言われた

回答(例):
この場合の間違いは、上司へ事前に情報を伝えていなかったこと。どうすればできるのかを考えることは、間違いではない。上司への連絡を大切にしながら、「どうすればできるのか?」を考え、実行すればいい。

質問:実行して、損失を出してしまったら、どうするのか?

回答(例):
損失のリスクを踏まえて、実際にやるのか、やめるのかを判断するのは上司の仕事。上司に相談した上で失敗したことの責任は上司が取る。やはりこの場合も、「どうすればできるのか?」を考えること自体は、間違いではない。

質問:成功するかわからないことを考え続けるのはストレスが大きいのでは?

回答(例):
その通りかも知れない。ただ、ストレスには2種類ある。

1つ目は「どうすればできるのか?」を考え、実行するストレス。この実行の後には、必ず自己成長が手に入る。失敗でも成功でも必ず経験値になる。

2つ目が、物事が変わらないことによるストレス。具体的には、できない理由ばかり考え、行動しないことを選び続け、成長しないことによるストレス。同期にドンドン置いていかれる、後輩に抜かれる、窓際族になる、仕事ができないという烙印を押される、会社に必要とされなくなる、といったストレスがこれにあたる。

どちらにしろ、過度なストレスは良くないが、成長を求めるなら、前者のストレスは適度に取りに行くべきだ。

思考習慣で社員の将来が変化する

今回は「将来幹部になる/なれない新入社員の6つの思考習慣の違い」の1つ目、「why can’t思考<how can思考」を紹介しました。次回の連載では2つ目の「違い」についてご紹介します。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加


資料請求リストに追加しました