なぜカルチャー(企業文化)は企業価値を高めるのか?カルチャードリブンとは一体何なのか?
「カルチャーフィットで採用し、カルチャードリブンな組織を作り、創業〇年で上場」というように、カルチャーを軸とした経営、組織作りによって業績を伸ばし、成功している企業が増えていると感じるのは私だけでしょうか?
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・なぜ、優秀な会社は、企業文化を大切にするのか|PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
・強い体質にするために徹底して企業カルチャーを浸透させる急成長上場ベンチャー|CEO社長情報
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働きがいのある企業ランキング(GPTW)の上位企業を調べてみても、半数以上の企業がカルチャー(企業文化)・バリュー(価値観)の浸透や、それを基に行動している事が伺えます。
株式会社メルカリ、Starbucks Corporation(スターバックス・コーポレーション)、トヨタ自動車株式会社などといった企業も、カルチャードリブンな経営、組織作りをしている事で有名です。
【関連記事】バリューは研修で浸透できるものなのか?
このように、カルチャーを武器にサービスを生み出し、人を採用、教育することで企業価値を高めている企業が、規模を問わず増えているようです。
なぜ、一見業績とは直接の関わりが無さそうな「カルチャー(企業文化)」が、企業価値を高めるのでしょうか? また、そもそも企業におけるカルチャーとは何なのでしょうか?
今回はこれらを私なりに整理してみました。
目次
企業におけるカルチャーとは
まず、そもそも企業におけるカルチャーとは何か?という前提から考えていきます。
カルチャー(culture)は、日本語に訳すと「文化、教養、文明」を指す単語です。
(出典:https://ejje.weblio.jp/content/culture)
これらを基に定義するならば、企業におけるカルチャーとは「組織風土、社風、らしさ」といったものが当てはまるのではないかと思いますが、皆さんはどうでしょうか?
この定義を知るために、カルチャー、企業文化、バリュー、社風といったワードで検索して出てきた書籍をいくつか読んでみました。
2021年出版のものから20年以上前の書籍まであります。こちらからカルチャーの捉え方についてインプットした結果、「カルチャーとは○○である」という共通の定義は無く、年代や取り上げ方により様々な捉え方がされていることが分かりました。
以下にいくつか抜粋します。
◇カルチャーとは、「会社にとって何を優先すべきで、どんな意志決定をし、どんな戦略を立てるかを考える際、指針となる羅針盤のようなもの」 ◇カルチャー=組織文化。組織文化とは「企業と社員が共有している価値観や文化、行動規範」 ◇組織文化とは、「組織に属する人々が常に抱える、言葉にならない”問い”のこと」 ◇企業文化とは、「企業理念を元に構成される評価制度や報酬制度、商品やサービスのコンセプト、考え方、ロゴやデザイン、社員など、企業を構成するすべての要素が集まって醸成されるもの」 ◇社風は「金を生む」 |
このように様々な捉え方がされているためカチッと定義化するのは難しいのですが、上記を基に私なりにまとめると、『人の意志決定や行動に影響し、業績を大きく左右する、企業経営において重要なもの』。これがカルチャーだと考えました。
なぜカルチャーは企業価値を高めるのか
先ほどまとめた通り、カルチャーは人の意志決定や行動に影響し、業績を大きく左右するため、企業経営において重要であると言えます。
しかし、なぜカルチャーは業績に大きく左右するのでしょうか?
なぜ人の意思決定や行動に影響するのでしょうか?
こちらも各書籍によって少しずつ違いましたが、まとめると以下の3つになりました。
【2】組織開発や人の採用、育成には企業や上司の”一貫性”が重要であり、一貫性はカルチャーでつくることができる。
【3】他社との差別化は商品、サービス以上に、カルチャーで実現可能になる。
【1】仕事を頑張る理由が明確になる。
「なぜ頑張って働くのか?」という根本への問いに対する答えを持つことができると、業績につながるモチベーションや行動に大きなプラスの影響をもたらします。このwhyが明確になればなるほど、働く一人一人の行動の質と量が高まり、業績が上がりやすい、ということです。
例えば、ユニクロさんのwhyは「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」です。また、Amazonさんのwhyは「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」です。
雑用や単純作業も、クリエイティブな企画をつくることも、全て何のためかというと「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」ためであり、「地球上で最もお客様を大切にする企業である」ためで、このwhyを1人1人が認識出来ている方が、より頑張れるし、業績も上がりやすい、ということです。
しかし経済学者の世界的権威、ピーター・ドラッカーはこう記しています。
「知識労働者たる者は、自らの組織よりも長く生きる。したがって、自らをマネジメントすることができなければならない。(中略)つまるところ、これまで存在しなかった問題を考えなければならない」
(ピーター・ドラッカー著『プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか』)
これはどういうことかというと、「なぜ頑張って働くのか?」という問いに対する答えが、「生きるため」(狩猟・農耕時代)や、「より豊かに生きるため」(産業工業時代)のように、“自然に用意され、自分で考えずに済んでいた時代”が終わり、“働くための理由が用意されず、自分で考えなくてはいけない時代”になった、ということです。
こうした状況に対応するために、我々は「なぜ、働くのか?」の答えを自分で描き、決定し、頑張る理由・成長する理由・情熱を燃やす理由をセルフマネジメントする必要が出てきているのですが、我々はまだそれに対応しきれていません。
企業は「なぜこの事業をやっているのか」の答えを、個人も「なぜ働いているのか」「なぜこの事業に携わっているのか」「なぜこの職についているのか」の答えを、「生きるため」「より豊かに生きるため」では埋められなくなっています。
仕事の情熱の源になるwhyに対して、becauseが見当たらないのです。 「別に企業に所属して一生懸命仕事しなくても、豊かに幸せに生きられますけど……」と考える人が多いという現実は、今の日本に確実に存在し、かつ大きくなり続けています。
そうした中でカルチャーは、「なぜ頑張って働くのか?」という問いの答えになることができます。
上記で示した通り、カルチャーとは、「会社にとって何を優先すべきで、どんな意志決定をし、どんな戦略を立てるかを考える際、指針となる羅針盤のようなもの」です。
そのカルチャーを見ることで、働く人々の考え方や価値観を知ることができます。
極端な例ではありますが、“どんな時も顧客を優先するカルチャー”と、“どんな時も社員を優先するカルチャー”があった時に、どちらかが正しい、間違っているということではなく、好きか嫌いかで判断するものだと思います。
自分がどちらのカルチャーを持つ企業に魅力を感じるのか、という点を考え、それが自分に合った企業であれば、「なぜ働くのか?」の問いに対する「会社のこういう文化が好き」という答えを持つことが出来ますし、「この仲間と一緒に頑張りたいから」「会社のこういう文化が好きだから」といった、行動する上での動機も生み出せるのです。
逆を言えば「こんな人とは働きたくない」「この組織には魅力を感じない」といった不満から脱却させることもできます。
そうして集まった人々がカルチャーを基に同じ方向を目指して団結することで、企業は強くなっていきます。つまりカルチャーは仕事を頑張る理由を明確にするものであり、それと同時に業績につながる意志決定や行動ができるようになるものであるということです。
【2】組織開発や人の採用、育成には企業や上司の”一貫性”が重要であり、一貫性はカルチャーでつくることができる。
組織開発や人の採用、育成には企業や上司の”一貫性(朝令暮改を減らすこと)”が重要です。
「軸がブレないリーダーについていきたい」と考える人は多いため、リーダーとしてメンバーを率いる上で一貫性を持つことはかなり重要です。
データ主導の戦略・予測分析を行うインサイツ・アンド・アウトカムズ(Ins & Outs)社の共同創業者であるジョン・クリスチャンセン氏も、「リーダーは一貫性を持つべきである」としています。
出典:従業員に「辞めたい」と思わせるリーダーの8つの行動|(『Harvard Business Review』|2019.10.16)
とはいっても、現在はVUCAと言われる、時代や環境の変化が激しい状況です。世の中が求めること(マーケットやクライアントのニーズ)が不確実でドンドン変化しており、組織の目標や商品・サービスもそれに合わせてコロコロと変化せざるを得ません。
しかし、カルチャーは時代や環境の変化が早く激しい中でもその影響を受けづらく、変わりにくい存在です。カルチャーを1番に考え、目標や商品・サービスを2番手以降に考えることで、組織開発や採用、育成に一貫性を持たせることが出来るのです。
例えば、採用の際、「弊社は〇〇というカルチャーを何よりも大切にしながら仕事をします!」と示すのです。そしてこれに共感し、体現をしてほしいと明確に打ち出します。
その上で、「〇〇億、〇〇社の新規開拓、〇%のシェア獲得、クライアント満足度〇%」といった目標を2番手に掲げ、「この目標はマーケットやクライアントのニーズによって変更する可能性があるが、1番大切なカルチャーは変わりません。皆で体現し続けよう!」と伝えるのです。
【3】他社との差別化は商品、サービス以上に、カルチャーで実現可能になる。
顧客から選ばれるためには自社の強み、自社にしかできないサービスに磨きをかけるべきですが、顧客目線で見ると、そういったオンリーワンの何かを持つことができている企業は極めて少ないのではないでしょうか。多くの企業が、他社でもできるサービス、商品で顧客に価値提供をしているのではないかと思います。
さらにはエンジニアの世界でのオープンソース、Google、Facebook、インスタグラムも無料で使えるモデルが多数、その他ネット上で有益な情報がコラム等の形で無料公開されている中、顧客目線で有料のサービスが選ばれるために必要なことは、どんなにいい商品、サービスか?に加えて、どんな考えや価値観の人達が生み出し、提供しているものなのか?という、カルチャーに基づく共感が大きな要因となっています。
電気自動車(EV)で地球環境重視のブランディングをしていたテスラのイーロン・マスク氏が、ビットコイン(マイニングによる環境問題への懸念)を大量購入したことが投資家に影響を与え、株価が下落したニュースは記憶に新しいと思います。
このように、同じ商品、サービスであれば、どんなカルチャーの企業が、すなわちどんな考えや価値観で提供されているサービスなのか?ただ自社の利益追求なのか?大きな社会課題の解決を目指しているものなのか?といったカルチャーによって左右される部分で判断される世の中になってきています。
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