【解説コラム】労務管理の業務効率化を図ろう。システムの選定と導入、ペーパーレス化まで(2023年版)

ビジネス環境における労務管理の役割とは? 労務管理の効率化が企業・組織の成長を支える

現代のビジネス環境では、労務管理が企業の成長と競争力の維持に不可欠となっています。
労務管理システムは、人事・労務に関連する業務を効率的に管理するためのツールとして多くの企業で導入されています。従業員の勤務時間の管理、雇用形態別の社会保険の管理など、日常的に発生する煩雑なタスクを効率化し、精度を向上させることが可能です。
これにより、企業はコンプライアンスを確保し、従業員を的確に管理することができます。

しかし、数多くの労務管理システムが市場に出回っている中、自社に最適なシステムを選ぶのは簡単なことではありません。まずは自社の課題を洗い出すなど、考慮すべき点は多岐にわたります。

この記事では、労務管理システムの基礎知識だけでなく、選定ポイントについて詳しく解説。さらに、リモートワークや効率化の観点から注目されているペーパーレス化についても手順を紹介します。

※この記事は、@人事編集部が企画・制作をした、2023年10月2日公開の@人事e-book「《2023年版》労務管理システム基礎知識と選び方~ペーパレス化の手順とケース別おすすめサービス紹介~」の内容を編集して構成しています。

目次

  1. 労務管理の業務内容の一例
  2. 労務管理システムの機能
  3. 労務管理システムを導入するメリット
    メリット1:手続きを効率化できる
    メリット2:勤怠管理や給与計算など他システムと連携できる
    メリット3:法改正に対応できる
    メリット4:場所を選ばずに対応可能
    メリット5:セキュリティの向上
  4. ペーパーレス化で労務管理が快適に!
  5. 労務管理におけるペーパーレス化の必要性
    理由1:2020年4月から電子申請の義務化
    理由2:2022年1月からの改正電子帳簿保存法
  6. ペーパーレス化で成果を上げるための3つのポイント
    ポイント1:ペーパーレス化の範囲を決める
    ポイント2:全従業員が扱いやすいツールを選ぶ
    ポイント3:費用対効果を明確にする
  7. 労務管理業務のペーパーレス化を進める手順
  8. 労務管理システムの選び方
  9. 【ケース別】おすすめの労務管理システムの特徴

労務管理の業務内容の一例

「法令順守」と「生産性の向上」のために行われる労務管理の業務内容は多岐にわたります。

労務管理システムの機能

労務管理業務が多岐にわたる分、労務管理システムの機能も多様であり、サービスによって異なります。ここで紹介する基本的な機能のほかにも、サービスによっては勤怠管理や人事評価などの機能も備えているものや、別のシステムとの連携によって給与計算などの関連業務もカバーできるものなどもあります。

入退社管理

入社時の情報収集や、入退社時の書類作成などが行える機能。入社時にWeb上で情報を入力し、従業員情報を登録できます。
また、社会保険・雇用保険の手続きや、所得税・住民税の手続きに必要な書類をシステム上で作成でき、関係機関への提出も可能です。

Web給与明細

オンラインで給与明細を発行し、従業員が自分で確認できるようにする機能。給与計算や勤怠管理も機能として備えている、あるいは連携が可能なシステムの場合は、給与計算ルールや勤怠情報を自動的に反映でき、作業負担の削減・計算の正確性向上につながります。

年末調整

従業員データと連携して年末調整の書類作成・提出ができる機能。年末調整は国税庁の年調ソフトなどでも電子化できますが、従業員それぞれがソフトをインストールして作成・提出する手間がかかります。労務管理システムであれば、既存のデータを取り込んで作成でき、一括管理も可能です。

従業員情報管理・マイナンバー管理

従業員の扶養家族、住所、マイナンバーなどの情報を管理する機能。Web上で従業員が入力した情報をそのまま使用できる場合も多く、担当者の手間が省けます。

雇用契約書の作成・締結

従業員を雇用する際の労働(雇用)契約書や労働条件通知書をシステム上で作成・確認できる機能。完全電子化に対応しているシステムであればオンラインで締結まで完了できます。

労務管理システムを導入するメリット

労務管理システムの導入により、労務管理業務を効率化し、担当者の負担を軽減できます。代表的なメリットを「手続きの効率化」「勤怠管理や給与計算のシステムとの連携」「法改正に対応」「場所を選ばずに対応可能」「セキュリティの向上」の5つの観点から紹介します。

メリット1:手続きを効率化できる

電子化により業務負担を軽減
労務管理システムを導入することで、紙での申請が電子化・オンライン化され、担当者の業務負担を軽減できます。

電子申請も可能
申請が電子化されれば、オンラインでいつでも申請・承認でき、物理的な署名も要らなくなるため、郵送などの労力を大幅に削減できます。また、担当者が申請の状況をリアルタイムで確認でき、従業員側へ自動的に通知が行くため、漏れや遅延も起こりにくくなります。

情報が一元管理できる
紙で情報管理する場合、各部署や担当者が独自に情報を保管することが多く、重要な情報が散逸したり、データの整合性が保てなくなったりするリスクがあります。労務管理システムでは、情報を一元管理できるため、検索や更新が容易であり、データの整合性も保たれます。

メリット2:勤怠管理や給与計算など他システムと連携できる

労務管理システムの中には、勤怠管理機能や給与計算機能を備えている、または各種システムと連携できるものもあります。

勤怠管理システムとの連携
勤怠情報を正確に管理でき、労働基準法に違反した働き方を防止できます。また、従業員への通知機能などを利用することで、担当者の業務負担を軽減できます。

給与管理システムとの連携
勤怠管理と給与計算の連携ができれば、従業員の勤怠データ、手当などの情報を自動的に取り込んで計算でき、各情報を参照する手間が省けると同時に、計算ミスのリスクも減ります。また、従業員に対しても、給与計算の透明性が高まり、信頼性が向上します。

メリット3:法改正に対応できる

労務管理で遵守しなければならない労働法規は、しばしば改正されます。改正された際は、労務管理業務が新しい法令に適応しているか見直す必要がありますが、業務に忙殺されながら法改正の最新情報を都度キャッチアップすることは容易ではありません。

労務管理システムは法改正が行われるとアップデートされ、法令に適合するよう自動的に更新されるものもあります。担当者の負担を軽減するとともに、ミスによる法令違反などのリスクを防げます。

メリット4:場所を選ばずに対応可能

労務管理システムには、Webで情報入力が可能なものも多くあります。なお、クラウド型サービスであれば、インターネット環境さえあればどこからでもシステムを利用できます。これにより、柔軟な働き方ができるほか、緊急の状況や変更にも迅速に対応可能です。

特に新型コロナウイルスのようなパンデミックが発生した場合や、災害時にも、オフィスに物理的に出向くことなく業務を継続することができるようになり、業務効率と事業の継続性が向上します。

メリット5:セキュリティの向上

労務管理業務では、従業員の個人情報や給与データ、勤怠記録など、機密性の高い情報を扱います。不正アクセスへの対策やデータの暗号化、さらに権限設定や操作ログの記録など、セキュリティ対策が万全なシステムを選ぶことで、情報漏洩のリスクを大幅に減らせます。

また、システムがクラウドベースであれば、セキュリティのアップデートやパッチ適用が容易で、常に最新のセキュリティ対策を維持することが可能です。

ペーパーレス化で労務管理が快適に!

労務管理のペーパーレス化は、業務効率化やコスト削減を目指す上での重要な取り組みになります。
しかし、バックオフィスには伝統的に紙ベースでの業務が根付いており、その文化や慣習からの脱却が難しい場合もあります。

労務管理におけるペーパーレス化の実態

ある調査によれば、バックオフィス担当者の半数以上が紙の資料を「毎日使用している」と回答しており、9割以上が「週に1日以上」使用していることが判明しました。
新しいシステムやツールの導入による効率化は、初期の段階では操作の難しさを感じさせることがあります。特に、中高年の従業員の中には、デジタルツールに対する抵抗感を感じる人もいます。紙ベースの業務からの転換への躊躇(ちゅうちょ)が、ペーパーレス化・DX化の道を阻んでいます。特に、中高年の従業員の中には、デジタルツールに対する抵抗感を感じる人もいます。
紙ベースの業務からの転換への躊躇(ちゅうちょ)が、ペーパーレス化・DX化の道を阻んでいます。

労務管理におけるペーパーレス化の必要性

根強い紙文化と変化への抵抗感があるとしても、近年、ペーパーレス化を進めるための法改正が行われており、企業はペーパーレス化に対応しなければいけない状況になっています。

理由1:2020年4月から電子申請の義務化

行政手続きの効率化を目指す一環として、2020年4月から特定の法人では社会保険・労働保険に関する一部の手続きにおける電子申請が義務化されました。

社会保険・労働保険の電子申請義務化の対象となる「特定の法人」とは以下の通りです。社会保険労務士が手続きを代行する場合も、下記のいずれかに該当する法人であれば対象になります。

●資本金、出資金または銀行等保有株式取得機構に納付する
拠出金の額が1億円を超える法人
●相互会社(保険業法)
●投資法人(投資信託及び投資法人に関する法律)
●特定目的会社(資産の流動化に関する法律)

右表の「一部の手続き」について、e-Gov電子申請システムによる申請、あるいはe-Gov電子申請システムとAPI連携した労務管理システムによる申請のいずれかになります。

理由2:2022年1月からの改正電子帳簿保存法

社会のデジタル化を踏まえ、経理の電子化による生産性の向上・記帳水準の向上などを目的として、令和3年度の税制改正において「電子帳簿保存法」の改正が行われました。

電子取引を行った際の書類の保存に関して、これまでは紙に印刷して保存することが認められていましたが、これからは電子データで保存することが義務付けられました。

また、電子データ保存に際して隠蔽(いんぺい)などがあった場合の罰則も強化されました。隠蔽(いんぺい)・改ざん行為によって生じた申告漏れなどが発生した場合、その税額に重加算税が10%課されることになりました。

参考:電子帳簿保存法が改正されました|国税庁

ペーパーレス化で成果を上げるための3つのポイント

ペーパーレス化は、労務管理の効率化やコスト削減を実現するための重要なステップです。
しかし、その取り組みを成功させるためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。

ポイント1:ペーパーレス化の範囲を決める

どの業務をデジタル化するのか、範囲を明確にすることが重要
最初からすべての業務をデジタル化しようとすると、導入のハードルが高く、従業員からの反発も大きくなります。そこで、まずはスモールスタートで始めましょう。
最もペーパーレス化の効果が期待できる業務から取り組み、成功ノウハウを蓄積してから全社的に横展開していくことで、よりスムーズにペーパーレス化の範囲を広げられるだけでなく、従業員の抵抗感を減少させることができます。

ポイント2:全従業員が扱いやすいツールを選ぶ

全従業員が使いやすいツールを選ぶことが、成功には必要不可欠
数多くあるペーパーレス化のツールの中から最も使いやすいものを選びましょう。特に年配の従業員やITに不慣れな人がいる場合、直感的に操作できるシンプルさが求められます。
ツールの中には無料トライアル期間を設けているものもあるため、本格導入の前に使いやすさや機能を確認してみるというのも手です。

ポイント3:費用対効果を明確にする

実施意義や必要性を理解してもらうために費用対効果を明らかにする
ペーパーレス化にはシステムの導入などの初期投資が必要ですが、その後のコスト削減や業務効率化による利益増加を考慮すると、高い費用対効果が期待できます。
経営層に理解してもらうためにも、「それまでにかかっていた印刷代や郵送代などの紙のコスト」と「それに対応していたスタッフの人件費」と、「システム導入・運用費」を比較しましょう。

【おわり】


e-bookでは、今回紹介しきれなかった、「労務管理業務のペーパーレス化を進める手順」、「労務管理システムの選び方」、「【ケース別】おすすめの労務管理システムの特徴」を紹介しています。労務管理を成功させるためには、自社に適したシステムを選ぶことが大切です。ぜひ、このe-bookを活用して、システム選びの際の参考にしてください。

記事企画:@人事編集部

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今回コラムで紹介したe-bookはこちらよりダウンロードできます。
https://at-jinji.jp/library/585

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