【解説コラム】給与計算の効率化と正確性を向上しよう。給与計算システムの基礎知識からケース別のおすすめシステムを紹介
労働市場の多様化に適した給与計算システムとは? 自社に適したシステムを選ぼう
給与計算システムの導入は、企業の経理業務を効率化し、正確な給与計算を実現する重要なステップです。近年、労働市場の多様化とともに、従業員の給与体系も複雑化しています。フレックスタイム制度、リモートワーク、パートタイムやフリーランスといった働き方の多様性が増す中で、手動での給与計算は複雑かつ時間を要する作業となり、ヒューマンエラーのリスクも高まります。
給与計算システムを導入することで、これらの課題を解決し、企業はコンプライアンスを保ちながら、正確かつ迅速な給与支払いを実現できます。
しかし、給与計算システムも多様化しており数多い選択肢の中から自社に最適なものを選ぶのは労力が要ります。
この記事では、給与計算システムの基礎知識から状況・課題に合わせたおすすめサービスの紹介など関連情報をまとめています。自社の課題を解決できるシステムの選定にお役立てください。
※この記事は、@人事編集部が企画・制作をした、2023年10月26日公開の@人事e-book「《2023年版》給与計算システムの基礎知識と選び方~ケース別おすすめサービス紹介付き~」の内容を編集して構成しています。
目次
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- 押さえておくべき給与計算のリスク
- 給与計算、手作業だとどれくらい大変?
- 給与計算システムを導入するメリット
- 給与計算システムの導入でデジタル払い対応も?
- 給与計算システムを導入する前に押さえておくべき要点
- 給与計算システムを導入するステップ
- 給与計算システムを選ぶ際のポイント
- 給与計算システム導入時の8つの失敗パターン
- 給与計算システム導入時の失敗の原因
- 給与計算システム乗り換え時にありがちな6つの失敗例
- 給与計算システム乗り換え時トラブルの主な原因
- 給与計算システムを選ぶ際の注意点
- 【ケース別】おすすめの給与計算システム
CASE 01:エクセルでの管理をやめたい
CASE 02:コストを削減したい
CASE 03:勤怠情報や従業員情報と突き合わせるのが面倒
CASE 04:法改正への対応が不安
CASE 05:給与計算をとにかく省力化したい
CASE 06:テレワークや在宅勤務を始めたい
CASE 07:会社が成長したので規模に合わせて変えたい
CASE 08:上場に向けて準備したい
押さえておくべき給与計算のリスク
給与を正確に支払うためには、労働基準法や社会保険制度などの法律や規則の遵守は欠かせません。
その上で、給与計算には多くのリスクが伴います。
税務
給与計算には、所得税、住民税、社会保険料などの税務処理が必要です。
さらに、法令改正にも適切に対応する必要があります。法令への適応不足や計算、入力のミスがあると、納税額に誤りが生じたり、税務調査の対象となる可能性や、税務当局からペナルティを受けるリスクが増えます。
情報漏えい
情報漏えいとは、個人情報や機密情報が不正に取得され、外部に流出してしまうことです。
給与計算に関連する従業員の氏名、住所、勤務先、給与額などの情報が漏えいすると、従業員のプライバシーが侵害されるリスクのみならず、その情報が悪用される恐れも生じます。さらに、企業の信頼性にも影響が出る可能性があります。
労務
労務に関するリスクは、給与計算のミスによって従業員とのトラブルに発展することです。給与の計算ミスや、残業代の未払いなどは、従業員の不満や不信感を招くだけでなく、訴訟に発展する可能性もあります。
また、これらの問題は労働基準法違反となることもあり、企業にとっては大きなリスクとなり得ます。
給与計算、手作業だとどれくらい大変?
給与計算業務のすべてを手作業で行う場合、以下のような多くの課題やリスクが生じる可能性があります。
決まりごとを覚える必要がある
給与計算には、基本給や残業代の計算方法、各種手当の支給条件、税金や社会保険料の計算方法など、多くのルールが関わってきます。
これらのルールは、従業員の年齢や勤務形態によって異なることもあり、すべてを正確に把握することは容易ではありません。
勤怠情報も確認する必要がある
給与計算には、勤怠データの確認が欠かせません。
さらに、社員の特別な状況、例えば育休からの復帰後の時短勤務や、会社の任意参加イベント、遠方への出張など、勤務時間の計算が複雑になるケースも考慮する必要があります。
最新の法律を知る必要がある
給与計算に関わる法律やその解釈は頻繁に更新されるため、最新の情報を常に把握し、それを給与計算に適用することが必要です。
特に、社会保険料の率や副業に関する規定など、細かな変更が頻発する部分は注意が求められます。これらの変更を手作業で追い続けることは大変であり、ミスのリスクも高まります。
これを効率化して担当者の負担を減らすためには、給与計算システムの導入が有効です。
給与計算システムを導入するメリット
給与計算システムは、企業規模や従業員数に応じて、さまざまな種類の機能が提供されており、適切なシステムを導入することで、給与計算業務の効率化とコスト削減が実現します。
メリット01:データの一元化による生産性の向上
給与計算業務の効率化
給与計算業務が大幅に効率化されます。計算や手続きを自動化できるため、給与計算に要する時間を短縮できます。さらに、一部のシステムでは、給与明細の作成や年末調整も自動で対応可能です。
属人化の解消と引き継ぎ作業の軽減
必要な情報がシステム上に蓄積・一元管理されるため、業務の属人化を防ぐことができます。システムの操作を習得すれば、誰でも給与計算が可能となり、引き継ぎもスムーズに行えます。
人的ミスの削減
給与計算システムには、計算式や手順が組み込まれており、計算ミスを大幅に減少させることができます。もしミスが発生した場合も、給与計算の履歴から原因を迅速に特定し、修正が可能です。
人件費・外注費のコスト削減
勤怠データの入力、計算、給与明細の作成などの手間と時間を大幅に節約し、給与計算にかかる人件費や外注費を削減できます。
メリット02:法令違反の防止とセキュリティ対策
法令違反の防止と法改正への適応
給与計算システムの導入で「法定労働時間の超過や休憩時間の不履行による労働基準法違反」「源泉徴収漏れや過徴収による税法違反」などを防げます。さらに、税率や社会保険料率の変更、労働基準法の改正、マイナンバー制度などの法改正にも速やかに適応します。システムを利用すれば、法改正に伴う変更を自動で取り込み、リアルタイムでの確認が可能となり、法令違反の早期発見や対応が容易になります。
エラー回避とデータ改ざんの防止
給与計算の計算式や手続きを標準化できるため、手作業による計算や入力ミスを防止し、給与の誤算や漏れを防ぐことが可能です。また、給与明細や源泉徴収票などの重要書類は、システム上で安全に保管することができるため、紛失や改ざんを防止できます。
セキュリティの安心感
給与計算システムは、不正アクセスや情報漏えいなどのセキュリティ対策が施されています。これにより、情報資産を守り、従業員のプライバシーも保護されます。
給与計算システムの導入でデジタル払い対応も?
企業の給与支払いの効率化と従業員の利便性の向上という2つの目的から、2023年4月に資金移動業者による厚生労働省への指定申請が解禁されました。つまり給与のデジタル払いが実現されます。
給与のデジタル払いとは?
デジタル給与(給与デジタル払い)とは、従業員の給与をデジタルマネーで支払うことを指します。従業員にとってはデジタルマネーとして給与を受け取ることで、現金を持ち歩く必要がなくなり、生活の利便性が向上します。また、企業は給与支払いの振込手数料の削減など、コスト削減が期待できます。
デジタル給与が導入される場合、企業担当者は労使協定の締結や就業規則や給与(賃金)規定の改正などが求められます。また、全従業員をデジタル給与にするわけではなく希望者のみという対応になるため、管理コストが増えることも予想されます。
その際に役立つのが給与計算システムで、給与計算システムがあればデジタル給与の適切な管理とスムーズな運用を実現できるでしょう。
給与計算システムを導入する前に押さえておくべき要点
効率化の手段として給与計算システムの導入が考えられますが、選定に失敗してしまうと後々の業務に支障をきたします。
導入を検討する前に、いくつかの前提知識を把握しておきましょう。
前提 01:アウトソーシングもできる
給与計算業務は、社労士や税理士、給与計算代行会社にアウトソーシングもできます。いずれも専門知識とノウハウがあるため、正確な給与計算はもちろん、法令改正への対応もスムーズです。給与計算を外部へ委託することで、給与計算の手間と時間を削減できます。
従業員の数が多くて業務が煩雑だったり、担当者が不足している企業はアウトソーシングを検討してみても良いでしょう。
ただし、外注先の方針によっては、データ連携の必要性などから、給与計算システム自体は自社に導入しなければならないケースもあります。
前提 02:小規模の場合は無料のサービスも
特に小規模な企業やスタートアップの場合、コストを抑えるために無料で利用できる給与計算システムを選ぶことも一つの手段です。
一部のサービスでは、従業員数が10名までであれば無料で利用できるプランが提供されています。ただし、対応範囲や機能に制限があるため、将来的な拡張性もある程度は考慮して利用を検討しましょう。
前提 03:給与計算「だけ」を課題にするケースはまれ
多くの場合、給与計算システムは勤怠情報や会計情報などと連動する必要があるため、他のシステムとの連携が前提です。そのため、検討の際には勤怠管理システムや会計ソフトとセットで考え、データの互換性や連携のしやすさを確認しましょう。
前提 04:選定の経験がない人が多い
給与計算システムは何度も変更するものではないため、選定の経験がなく、どのような点に注意して検討したら良いか分からない担当者がほとんどです。
可能であれば、複数のシステムを実際に試用し、自社の業務に最も適したものを選定することが理想的です。
給与計算システムを導入するステップ
給与計算システムの導入は、単に新しいツールを取り入れるだけではなく、自社の業務フローを見直し、効率化を図る大切なステップです。導入する際の主要なステップを解説します。
STEP01:給与計算の業務フローを確認
現行の給与計算業務における課題を明確にしましょう。給与計算は、従業員の勤怠情報の確認、給与の計算、給与明細書の作成・発行、支払い、そして賃金台帳への記録など、多くのフローに分けられます。給与計算に関わる各部署や担当者とコミュニケーションをとりながら、どの部分で時間がかかり、どこでエラーが発生しやすいのか、またその原因を明らかにします。
STEP02:システム導入による改善ポイントを整理
システム導入によってどの課題を解決し、どのような改善を図りたいのかを整理します。「計算ミスを減らしたい」「リモートワーク環境でもスムーズに業務を進めたい」など、具体的なポイントをリストアップしましょう。
STEP03:社労士や税理士に相談
給与計算は法律や税制に密接に関わる業務であるため、専門的な知見がある社労士や税理士などの意見を取り入れることで、見落としがちだった課題に気付けることもあります。自社と契約している社労士や税理士が参照しやすいサービスを選定することで、運用のアドバイスを受けられます。すでに社労士や税理士が使っている給与計算システムがあれば、そろえて活用するのも手でしょう。
STEP04:選定理由と条件を明確化して導入
いくつか候補が上がってきたら、システムを選定する際の基準を明確化しましょう。導入コストやランニングコスト、製品形態(クラウド型/インストール型/オンプレミス型)、操作性、サポートの対応範囲など、自社の状況とニーズに基づいて条件を絞っていきます。事業拡大に伴う従業員の拡充など、長期的な展望も視野に入れて導入することが大切です。
STEP05:企業の成長に応じて見直し
企業の規模や業務内容が変わることで、必要な機能やデータ量が変動します。また、法改正によって新しい機能が必要になることもあります。給与計算システムが自社のニーズに適しているかどうか定期的にチェックし、必要に応じてアップグレードや買い替えを検討することも大切です。
【おわり】
e-bookでは、今回紹介しきれなかった、「給与計算システムを選ぶ際のポイント」、「給与計算システム導入時の8つの失敗パターン」、「給与計算システム導入時の失敗の原因」、「給与計算システム乗り換え時にありがちな6つの失敗例」、「給与計算システム乗り換え時トラブルの主な原因」「給与計算システムを選ぶ際の注意点」、「【ケース別】おすすめの給与計算システム」、を紹介しています。給与計算を効率化させるためには、自社に適した給与計算システムを選ぶことが大切です。ぜひ、このe-bookを活用して、システム選びの際の参考にしてください。
記事企画:@人事編集部
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今回コラムで紹介したe-bookはこちらよりダウンロードできます。
⇒https://at-jinji.jp/library/590
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