経営者の期待に応える/研修目的に沿っている/研修改善に役立つ/職場の理解を得られる

2022年度の研修レビューって本当にできていますか?

人材育成を通じて具体的なビジネス成果を出すことは重要で可能なことですが、そのためには効果的な研修プログラムが必要ですし、プログラムを実施するためにある程度の研修予算と経営・職場メンバーの理解が必要です。
そのため、この時期多くの人材育成チームでは2022年度の人材育成施策と実施研修のレビュー準備をおこなっています。しかし、残念ながら経営者の期待や職場の理解を得られるようなレビューができていない企業が少なくありません。

経営者の期待に応え、職場の理解を得られ、さらには自社の研修をアップデートさせるのに役立つ効果的なレビュー作成のヒントを紹介します。

目次

  1. そのレビューには経営者が知りたい情報が記載されていますか?
  2. 経営者が求めている人材育成に対する報告とは何か?
  3. 効果的な研修レビューのヒント
    1)  戦略的な研修の場合:職場でビジネス成果を出すこと
    2)  必須・コンプライアンス的な研修の場合:対象者全員に漏れなく受講させること
    3) 目的別・自己啓発の研修の場合:基本的な知識・能力向上と従業員の動機付け
  4. まとめ

そのレビューには経営者が知りたい情報が記載されていますか?

人材育成チームはレビューを書くために、大量の受講者アンケート、受講履歴、テスト結果などを一所懸命調べてまとめます。しかし最終的に報告される代表的な内容は次の表のようなものです。ここではイメージを喚起するため細かい数字を例示していますが、重要なのはそこで報告する項目名です。そこに注目しましょう。

従来の代表的な年間レビュー報告書要約(例として従業員数4500名を想定)
・実施済み研修の数:83 
・延べ受講者数:2318人
・研修終了アンケート結果:4.62(5点満点の平均)
・人材育成総費用:¥227,164,000 
(受講者一人あたりの費用:¥98,000、従業員一人当たりの費用:¥50,480)
・研修実施形態:対面研修:12%、リモート研修:53%、eラーニング:35% 
・今年の主な実績:1. 新任管理職研修のリニューアル
         2. 若手社員のカリキュラムの強化
         3. 全従業員に情報セキュリティー研修の受講
・一部の会社ではパンデミック前との比較や他社のベンチマーキングも行なっています。

このようなデータを集めてまとめることは結構大変です。しかしそれを全てやって報告したとしても経営者からは必ず以下のような質問が来るはずです。
「今年の研修は効果的でしたか?」
「どのような成果が出ましたか?」
「どのような工夫をすれば来年はもっと成果が出ますか?」

困りました。このような報告書だと経営者の知りたいことにはどれも答えられないでしょう。ではどうすれば良いでしょうか?

経営者が求めている人材育成に対する報告とは何か?

まず、経営者はどのような情報や報告を求めているかを把握しましょう。
研修効果測定で有名なジャック・フィリップスが発表している興味深い調査結果があります。結論は、人材育成チームの報告内容と経営者の求めている情報には大きく差があるということです。調査は人材育成の取り組みに関して「経営者に報告されていること」と「経営者が本当に知りたいこと」に対して行われました。その結果は下記のとおりです。


参照:Jack Philips, “How to Prevent a Negative ROI” 2023
https://www.chieflearningofficer.com/2020/01/31/7-steps-to-prevent-a-negative-roi/

この表を見るとすぐわかることは
・経営者の知りたいことと報告されることが合っていない
・経営者の一番知りたいビジネス成果(96%)が、ほとんど報告されない(8%)
・経営者の期待と人材育成チームの報告の差が大きいポイントは研修効果と行動変容
(期待との差:成果 84%、費用対効果 70%、職場活用 50%)
・多くの人材育成チームが大切にしている受講者の反応と知識テスト結果は経営者にとっては意外と響かない(知りたい:評価 22%、成長 28%)

一言で言うと従来の研修の年間レビューが経営者に刺さっていなくて、機能していません。より意味があって来年度に役立つレビュー

効果的な研修レビューのヒント

ジャック・フィリプスのデータに合わせて、全ての研修における職場での成果と費用対効果を調べるべきかというとそうではありません。なぜなら研修効果測定には時間とリソースがかかりますし、そもそも全ての研修に高い費用対効果を求めているかというとそれも違います。

効率良く意味のあるレビュー準備をするためにはまず研修プログラムを分類しましょう。代表的な研修の種類とそのポイントは次の3つです。

1) 戦略的な研修:職場でビジネス成果を出すことがポイント
2) 必須・コンプライアンス的な研修:対象者全員に漏れなく受講させることがポイント
3) 目的別・自己啓発の研修:基本的な能力向上と従業員の動機付けがポイント

それぞれの場合に必要なレビューのヒントを順に見てみましょう
*さらに細かい分類について知りたい場合には2022年10月のコラム「研修計画を決める際に意識したい『6階層の価値ピラミッド』」を参考にしてください
https://at-jinji.jp/expertcolumn/410

1) 戦略的な研修の報告の場合

戦略的な研修というのは受講者が職場で研修内容を活かせてビジネス成果を出すことが期待されている研修です(例えば、DX実現、コンサルティングセールズへのシフト、マネジメント風土の改革、海外赴任前研修など)。この場合には職場で成果が出たかどうかを調べる必要があります。レビューの最低ラインは研修終了の1-6カ月後に2問のアンケートを送ることです。アンケートイメージとして

問1:研修内容を職場で使いましたか?
問2:「はい」なら、どのような成果が出ましたか?

アンケート結果から大きい成果が出た受講者を数人(全受講者の1-2割が理想)ピックアップして、細かく個別ヒアリングをします。ヒアリングではブリンカホフのサクセスケース・メソッドに沿って、このような流れにしましょう。

さらに充実した報告をしたい場合には研修内容を職場で全く使わなかった数人にも軽いヒアリングをして、なぜ使わなかったか? どのような障害があったか? どうすれば良いと思う? を聞くと良いでしょう。それにより研修自体の改善のヒントや受講者の職場環境の課題を発掘できる場合もあるからです。

参考:ブリンカホフのサクセスケース・メソッドについて
・書籍:『サクセスケース・メソッド: 何がうまくいっていて、 何がうまくいっていないのかを素早く把握する』(ロバート・O・ブリンカホフ (著), 佐々木亮 (翻訳)
・ビデオ:アイデア社実践的な研修効果測定 成果を測る(Measure)編

2) 必須・コンプライアンス的な研修の報告の場合

ここで言う必須・コンプライアンス的な研修は当該の対象者に漏れなく研修を受けさせることが最優先の研修です。多くのオリエンテーション(入社時、昇格後、移動時などの周知事項説明)もここに入ります。その場合に大切なポイントは
全員がちゃんと受講できたかどうか
・より早く・スムーズ・効率よく受講させることができるか

です。

この種類の研修では個人別の行動変容も大切ですが、対象者全員に共通の行動変容を求めるところがポイントです。研修後すぐに職場で使うことも良いですが、その前に対象者全員にどのような行動変容が求められるのかを良く考えさせることが重要です。
また報告する際にはその狙いが本当に合っていたかを確認して、来年度に求める成果を詰めておくことをお勧めします。

3)目的別・自己啓発研修の報告の場合

この種の研修についてよくよく考えると、研修の内容すべてが研修直後に職場で直接的に使われて成果につながるものではありません。受講者が前提条件として身につけるべき基本知識・ビジネス基礎のスキルアップや従業員が仕事に取り組む上でのモチベーション向上の目的のほうが大切な研修もあります。
このような対象領域が広く漠然としている研修の場合には苦労して研修効果を測るより、
・どの研修テーマに関心が高かったか(研修申込者が多いのはどれか)
・各研修の評判はどうだったか(特に役立つと思われているポイントは何か)
・今後どんなテーマを開催するべきか
・研修運営の効率を高めるためにどのようなアイディアがあるか

といった報告のほうが有効性を確認する上で適切です。

パンデミック以降このような研修をオンデマンドで提供することが世界的に多くなっています。オンデマンドだと受講者数が多い研修テーマは職場の課題、従業員のニーズ、社員の関心を理解するために良いヒントになります。例えば、人気のオンデマンドコンテンツベンダーであるユーデミー(Udemy)は定期的に受講者の多い、前年比で受講者が急に増えている研修テーマのレポートを出しています。参考までに最近の結果を紹介します。


出所:Udemy Workplace “2023 Workplace Learning Trends Report”

この図のようなイメージで社内版を作って、それをベースに受講者ニーズを分析することが興味深い報告内容になります。

まとめ

人材育成を通じて具体的なビジネス成果を出すことは重要で可能なことですが、そのためには効果的な研修プログラムが必要ですし、そのプログラムを実施するためにある程度の研修予算と経営・職場メンバーの理解が必要です。その理解を得られる第一歩として、今回紹介したヒントを参考に、印象に残る研修の年間レビューから始めましょう。

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https://ide-development.com/

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