採用力を強くする採用塾

【第1回】選考による「動機付け」

選考で人物の見極めと自社への動機付けを同時に実現することが求められる

採用活動における面接は、その人物が活躍できるか・貢献できるかといった入社後の見通しを「見極める」ために行うことがほとんどです。

一方で、面接を含めた選考過程全体を通して学生を動機付け、志望動機を高める手段として活用していくことも近年トレンド化しつつあります。

売り手市場の新卒採用においては学生側に多くの選択肢がありますが、企業選択の材料が必ずしも十分でない学生には「最大の可能性」を提示することから始める必要があります。また、リクルーターの確保や品質担保が難しいこと、学生の内定・選考辞退理由に面接官や採用担当者の印象が多く挙がることなども「選考での動機付け」が一般化している要因と考えられます。

見極めと動機付けを同時に実現しなければならないため難易度は高まりますが、企業規模や福利厚生、業務内容などの「変えられないもの」と違って「変えようと思えば変えられるもの」であることは採用担当者にとって戦術の大きな選択肢となります。

見極めのみの選考と大きく変わる、つまり“追加”されるポイントは、次の4つになります。

1.情報提供

情報提供の機会と量を増やし、学生自身がより「考える」「感じる」「分析する」ことができるようにします。

表面的・画一的な自社の理解ではなく、自分の価値観や自己実現と照らし合わせて一人ひとりの「この会社に入社したい理由」をしっかりと言語化できるよう、環境を整備します。

Webサイトにおける選考フローごとの情報の出し分け、自社用自己分析シートの提供、逆面接やリクルーターとの接触など、方法は様々です。

自社の情報保有量と学生の志望度の高さは必ずしも比例しませんが、志望度を高めるための必要条件ではあります。後工程で動機付けを行う上で、学生側の“受入れ土壌”を作ることが重要です。

2.情報収集

学生本人の情報を積極的に集めます。また、そのための仕掛けや仕組みを作る必要があります。大事なことは、「動機付けのために情報収集を行う」という意識です。

前提として、適性テストやエントリーシートを「落とすために使う」だけではなく、個々人の特性やこれまで学生が考えてきたことを把握するために利用していきます。

一方で、面接や面談においては、学生本人が持っている可能性や強み、自社で成果を上げるために再現性の高そうな経験、弱点と思っているが実際にはそうではないこと・・・など、本人は気付いていないかもしれない評価ポイントを集めます。

3.動機付け

「1.情報提供」と「2.情報収集」にもとづき、選考では発展性のあるコミュニケーションを行い、問いかけ、フィードバックし、カウンセリングを実施します。

A.私たちはあなたをどのような人だと思っているのか、何を認め、何を評価しているのか、どのような可能性があると思っているのかという「本人そのものの評価」

B.その上で、あなたにとってどのようなやりがいのある仕事か、どうおもしろいと感じてもらえるはずだという「価値観のマッチングと自社と個人の適合性訴求プレゼン」

C.私たちがどうしてあなたと一緒に働きたいのか、あなたと何を実現したいと思っているのかという「未来展望と採用モチベーションの吐露」

これらを選考フェーズごとに各回実施していきますが、最も重要なのはもちろんAです。これまでの等身大の自分を認めてくれ、言葉にされれば誰だって嬉しいもの。そして、それらが本人に納得性があればさらに効果的です。

特に、学生自身が気付いていなかったことや弱点だと思っていたことを認めてあげると(弱点かもしれないがそれでも良い、も含む)、動機付けに大きく作用します。また、これらの過程を通じて学生に「私と本気で向き合ってくれた」という選択軸をもたらします。

4.全体最適

選考プロセス全体でこれらの動機付けを設計します。
採用担当者だけが奮闘、というケースはよくありますが、これでは上手くいきません。

リクルーター・人事・採用担当者、部門担当者、役員などそれぞれが何を担当し、申し送り事項を着実に伝え、活かしていくことが必要です。

リクルーターは心的距離を縮める、採用担当者は2次面接からは学生の応援者の役割を担い、○次面接では対象学生に「あなたにはこんな強みがあると思うから、我が社ではこんな活躍ができると思う」といった可能性を提示し次回までに考えてきてもらうなど、情報提供や訴求ポイントの細分化によって、役割分担は様々です。

学生に可能性を提示することは、「3.動機付け」のAでも触れていますが、とても重要です。例えば、次のようなメッセージが考えられます。
「弊社では〇〇や××はできる。一方で、△△や■■は弱点でもある。そういう意味で、あなたのここの部分はうちで力を発揮できると思うし、キャリアを長い目で見たら●●にも挑戦すべきだと思うんだ。社長には▲▲と伝えておくから、今の私の考えについても可能性を広げてくれないか?」

このように採用担当者だけに任せず、会社全体での実施体制(採用の仕組み)を構築し、エントリー前から内定者研修まで、説明会や各種プロモーションツールの設計も含めすべてをストーリーとして設計することが必要です。

以上、選考による動機付けを簡単に説明しました。

「強い動機と価値観の共有がなされた人材獲得」が新卒採用の意義

何もせずともエントリー者の多くが自社を第一志望にする恵まれた企業は別ですが、多くの企業では「いかに学生をその気にさせるか」といったマーケティング的な発想が必要なのかもしません。

それは決して学生におもねるということではありません。

強い動機と価値観の共有がなされた新入社員を獲得することは、新卒採用の存在意義そのものでもあります。しかし実態は「強い動機を得る」ということを学生の主体性に依存してしまっている企業もあるのではないでしょうか。

機会提供とフィードバックを通じて学生一人ひとりのオリジナルの志望動機を作る、企業の積極的な姿勢とシナリオ設計が重要なのです。

(イーディアス・採用コンサルタント)

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